頭蓋骨縫合早期癒合症

概念:

頭蓋骨縫合が早期に癒合した結果生じる頭蓋の変形と,それにともなうさまざまな臨床症状を合わせ頭蓋骨縫合早期癒合症あるいは狭頭症と言います.

分類:

骨縫合が早期に骨化癒合するために,頭蓋骨はその部分で成長できなくなり変形をきたしますが,その成因ははっきりしていません.頭蓋縫合早期癒合症は,主として頭蓋骨縫合のみが早期に癒合する非症候群性と,頭蓋に加え顔面骨などにも発育障害をみる症候群性に分類されます.前者には短頭蓋(両側冠状縫合の早期癒合),舟状頭蓋(矢状縫合の早期癒合),三角頭蓋(前頭縫合早期癒合)などが,後者にはクルーゾン病,アペルト症候群などが含まれます.(図1)

症状:

頭蓋骨縫合が早期に癒合すると頭蓋の発育拡張が制限され,その結果頭蓋内腔が極端に狭小化すれば頭蓋内圧が亢進します.とくに冠状縫合早期癒合症や複数の縫合の早期癒合,さらに症候群性頭蓋縫合早期癒合症では頭蓋内圧亢進をきたしやすくなります.
早期癒合がどの縫合に起きたのか,単一の縫合なのか複数なのかにより,短頭蓋(図2),舟状頭蓋(図3),三角頭蓋(図4),クローバー頭蓋(図5)などさまざまな頭蓋の変形をきたすことになります.症例によっては頭蓋内圧亢進症状をともなっておりますが,慢性的な頭蓋内圧亢進の結果,精神運動発達遅延が患者の主症状といったこともあります.また,症候群性頭蓋縫合早期癒合症では,顔面骨の発育障害をともなうため,しばしば眼球突出や上気道狭窄による呼吸障害を認めます.アペルト症候群では合指症を合併しますが,脳梁形成不全など脳奇形も合併しやすく,これが患児の知能発達障害の原因となります.(図6)

診断方法:

頭蓋の変形を注意深く観察すれば大まかな診断を下すことができますが,頭蓋単純撮影に加え3次元頭蓋骨CTを行うことにより確定診断が可能となります.合併する水頭症やその他の脳奇形の有無を確認するためにCTやMRIを行いますが,頭蓋内圧モニタリング,脳血流測定などの検査も患児の状況を正確に把握するために必要となります.

治療選択

手術目的は、頭蓋形態の正常化と頭蓋内圧亢進の是正です。これらの問題を解決する為には、早期癒合した縫合、年齢、水頭症の合併の有無などを考慮して手術適応を決定する必要があります。頭蓋内圧亢進のある症例,眼球突出や呼吸障害のある症例では早急な頭蓋形成術が行われますが,状況が許せば出生後3カ月を過ぎての手術が望ましいとされています.頭蓋の変形は患児の精神発達に悪影響を及ぼすので,その他の症状・症候がなくても早期に積極的な手術を行うべきとする意見もあります.また,症候群性頭蓋縫合早期癒合症では顔面骨を含めた骨矯正が必要となりますが,これは通常患児が10歳を過ぎた段階で行われます.

治療方法

手術方法については,早期癒合に陥った骨縫合を除去する比較的簡便な術式から,眼窩上縁と前頭骨を前方に移動するもの,さらに頭蓋骨のほぼ全域の骨を分解してこれを再構築する侵襲性の高い術式までさまざまです.1)患児の年齢、頭蓋の変形から適切な術式を選択することが重要です。

最近では,骨固定に吸収性プレートを使用したり,短頭症と症候群性頭蓋縫合早期癒合症での眼窩上縁と前頭骨の前方移動と後頭蓋の拡大及び舟状頭蓋に骨延長器を用いて頭蓋を拡張させる術式も導入されております.2)(図7)

トピックス

1990年代に症候群性の例でfibroblast growth factor receptor (FGFR)遺伝子の変異が原因であることが明らかにされました。3) 最近ではFGFR遺伝子異常の有無により症候群性頭蓋骨縫合早期癒合症が分類されています。

FGFR遺伝子の変異によりFGFRの構造が変化し、FGFシグナル伝達機能が持続的に活性化される結果、骨芽細胞の分化が誘導され、縫合が早期に骨化して癒合する。このように分子レベルでの膜性骨化の研究が進み、術後の再癒合を防止する治療法の開発が試みられています。4)

文献

  1. Persing JA, et al : Craniosynostosis. Youmans J ed, Neurological Surgery 4th ed, Philadelphia WB Sanders, p995, 1996
  2. Hirabayashi S, et al. : Frontoorbital advancement by gradual distraction. J Neurosurg 89; 1058-1061, 1998
  3. Cohen MM Jr : Capter 7, Craniosynostosis; Diagnosis, Evaluation and Management, 2nd ed. Cohen MM Jr et al. ed. Oxford University Press, New York, pp77,2000
  4. Tanimoto Y, et al : A soluble form of fibroblast growth factor receptor 2 (FGFR2) with S252W mutation acts as an efficient inhibitor for the enhanced osteoblastic differentiation caused by FGFR2 activation in Apert syndrome. J Biol Chem 279; 45926-34, 2004

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