くも膜のう胞

くも膜のう胞とは

脳は、外側から順番に皮膚、頭蓋骨、硬膜、くも膜という構造物で保護されています。くも膜は薄い透明の膜であり、脳との間には髄液という透明の液体が存在します。くも膜のう胞とは、くも膜が袋状になり内部に髄液様の液体が貯留したもので、小さな隙間から髄液が流入し流出が不良なために大きくなると考えられています。


くも膜のう胞の模式図

発生する頻度は100名に1人程度で小児期に発見されることが多く、胎児期に診断されることもあります。新生児期から2〜3才頃までは大きくなることがありますが、それ以降に大きくなることは少ないです。時に縮小や消失することもあります。頭部をぶつけた時などにMRIやCT検査を受けて偶然に発見されることも多いです。
くも膜のう胞がある場合に、スポーツの参加はどう考えればよいかについては議論が続いています。過度の心配は不要ですが、頭部外傷を契機に硬膜下水腫や血腫が起こる可能性があり、頭部外傷を頻回に受けやすいスポーツは避けるのが良いですが、本人、家族、主治医、関係者で相談して決めることが大切です。


くも膜のう胞のMRI. a; 中頭蓋窩 b; 四丘体部 c; 鞍上部

くも膜のう胞の診断と治療

症状は2つに分けられます。@くも膜のう胞で圧迫された脳や神経の症状で、運動麻痺、視力障害、眼球運動障害、小脳失調、聴力障害などがあり、のう胞のある部位によって特徴があります。A頭蓋内の圧力上昇(頭蓋内圧亢進)による症状で、頭痛や嘔吐などです。のう胞が急速に大きくなれば症状は急速に進みます。時に頭部外傷を契機にのう胞が破れ、硬膜の下に髄液様の液体や血液がたまる(水腫、血腫)ことや、のう胞内に出血することがあります。その場合は、今までなかった頭痛・嘔吐の症状が出るので注意が必要です。
MRIやCTで診断します。のう胞の大きさや周囲への影響を評価できます。大泉門が閉じていない乳児ではエコーを用いることもあります。
くも膜のう胞が原因となっている症状があるか水頭症を合併している場合は治療が必要です。
症状が明らかでなく経過観察をする場合は、胎児期や1才未満で発見された例では増大しないか特に注意が必要です。定期的にMRIで経過を観察します。

くも膜のう胞の外科治療

治療の目的は、くも膜のう胞を小さくして脳や神経の圧迫をとり除くことと、水頭症の改善させることです。手術法には@開窓術、A被膜切除術、Bのう胞腹腔シャント術があります。
@ 開窓術とは、のう胞になるべく大きな孔を開けて、脳槽や脳室という髄液が正常に存在している部位と交通をつける方法です。
A 被膜切除術とはのう胞の被膜を切除する方法です。
B のう胞腹腔シャント術とは、カテーテルという柔らかくて細い管をのう胞からお腹まで体内(皮膚のすぐ下です)に埋め込んで液体を流す手術です。
手術方法選択は、のう胞の部位、脳室や脳槽との位置関係、水頭症の合併、手術合併症のリスクなどから検討します。脳表面ののう胞には開頭術で、脳の深い部位や脳室近くののう胞は神経内視鏡で治療することが多くなっています。シャント術は、第一選択としては避ける傾向にありますが、再発時には選択されることがあります。
手術方法選択は、脳神経外科専門医としっかり相談しながらすすめてください。

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