キアリ奇形

概要:

小脳、延髄および橋の発生異常を基盤とする奇形で、小脳・脳幹の一部が大後頭孔を超えて脊柱管内に陥入する形態を呈する疾患です。

分類:

1891年オーストリアの病理学者Hans Chiariは大後頭孔から脊柱管内への小脳や脳幹の下垂などの後頭蓋の脳の形態を4型に分けて報告しました。この病名はその分類者の名前をとっています。

I型: 小脳扁桃の頸椎管内への嵌入。(図1)
II型: 小脳扁桃に加えて小脳虫部、第4脳室、延髄などが頸椎管内へ嵌入し、脊髄髄膜瘤を伴う。(図2)
III型: 小脳が頸椎二分脊椎から脱出している後頭部髄膜瘤。(図3)

本来I型とII型は、小脳扁桃のみの下垂のI型と小脳扁桃に加えて小脳虫部、第4脳室、延髄の下垂も呈するII型と下垂の程度により分類されていました。しかし、下垂の程度ではI型とII型を明瞭に区別できない為、現在ではキアリII型奇形は脊髄髄膜瘤を合併し、I型奇形は合併しないものとされています。

原著によると、W型まで分類されているが、現在では脊柱管内への菱脳の陥入を伴わないW型はキアリ奇形に含めません。ここでは主にキアリI型奇形についてまとめます。

 

 

 

 

キアリT型奇形(Chiari typeT)

概要:

小脳・脳幹の一部が大後頭孔を超えて脊柱管内に陥入する形態を呈する疾患です。キアリT型奇形の診断は大後頭孔から小脳扁桃先端が 5 mm以上下垂していることとされています。

約50%に脊髄空洞症を伴い、更に空洞を有する患者の約1/3に側彎を伴います。水頭症は10-30%に伴います。発症は20-40歳の成人で、女性に多くみられます。頭蓋頸椎移行部の先天性疾患として後頭骨環椎癒合、環椎軸椎癒合、頭蓋底陥入症を伴うことが高頻度にみられます。

症状:

小脳や脳幹の圧迫症状(小脳失調、中枢性無呼吸、嚥下障害などの下位脳神経障害、垂直性眼振、吃逆、めまいなど)、脊髄空洞症による症状(疼痛、解離性知覚障害、筋萎縮、腹壁反射の減弱、深部腱反射の亢進や低下などの錐体路兆候など)が認められます。初期症状は下垂した小脳扁桃による後頭部痛や頚部痛で、半数以上の例で認められます。この痛みは咳、くしゃみなど怒責時や活動性の増加時に増強するのが特徴です。

診断:

MRIにて楔状扁桃が特徴的で、大後頭孔部の脳槽が狭小化ないし消失します。また本来垂直に走行する脳溝の角度が斜めになり、第W脳室は正常の位置に存在するものの下方に引き延ばされた形態となります。補助検査としてはCine Phase Contrast MRが有用です。髄液動態の異常、脳幹/小脳扁桃の動き増大、peak systolic velocityが増加、大後頭孔でのflowの減少が確認されます。鑑別診断としてはachondroplasia、craniosynostosisなどに伴う続発性頭蓋陥入症、低髄液圧症候群、キアリU型奇形があげられます。

治療:

無症状の例は経過観察が推奨されます。症状のある例や脊髄空洞症が進行する例では手術を勧めます。手術の目的は、大孔部の減圧により同部の髄液循環障害を改善し、頭蓋内圧と脊椎管内圧の間の圧較差をなくすことです。手術の第1選択は大孔部減圧術(foramen magnum decompression; FMD)です。術後に後頭部痛や後頚部痛はほとんどの例で改善します。しかし、脊髄空洞症による側彎や温痛覚障害は改善しにくく、症状の進行を停止することが手術の主眼です。他に空洞シャント術が行なわれますが、長期の経過で閉塞しやすいため、癒着を伴う例など通常の大孔部減圧術では空洞の原因と考えられる病態を改善しにくい難治性の場合に行われます。

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