頭蓋咽頭腫

頭蓋咽頭腫とは

良性脳腫瘍の代表的なもののひとつで、胎生期の頭蓋咽頭管が消えずに残ったものから発生する先天性腫瘍と考えられています。原発性脳腫瘍の3%を占め、全年齢層にわたってみられますが、約20%は15歳未満の小児期に発生し、小児脳腫瘍の中の約9%(第4位)を占めます。

ホルモンの中枢である下垂体をぶら下げる柄に発生し、頭蓋底の中央にあるトルコ鞍と言う頭蓋骨のくぼみの中あるいはその直上に7割が存在します。嚢胞を形成しやすく、中にモーター油に似た内用液とコレステロール結晶を含みます。腫瘍実質内には、砂状、結節状の石灰沈着がみられます。

頭蓋咽頭腫の症状

トルコ鞍上部から上方に進展し、髄液の経路であるモンロー孔を閉塞することで、水頭症を来たし、頭痛、嘔吐の頭蓋内圧亢進症状を起こします。視神経を圧迫し、両耳側半盲を来しますが、下垂体腺腫に比べ、不規則な視野狭窄を呈します。下垂体の機能を低下させるので、小児期の身体発育を遅延させ、低身長、薄い毛髪、基礎代謝の低下等、下垂体機能不全症状を起こします。また、視床下部症状として、低体温、傾眠、尿崩症、電解質異常を呈します。成人では、視神経症状と精神症状で発症することが多いです。

画像診断:頭蓋単純X線撮影で皿状のトルコ鞍、鞍上部に石灰化、CTで鞍上部に散在する石灰化像、MRIで、嚢胞を伴う腫瘍像は、頭蓋咽頭腫を疑わせます(図譜に13歳女性の画像並びに術中所見を示します)。


図1-1. トルコ鞍部断層写真。
皿状トルコ鞍と石灰化を示しています。

図1-2. 頭部単純CT。鞍上部に低吸収域と周辺に石灰化を示します。

図1-3.造影MRI。鞍内から鞍上部に内部に嚢胞を伴う腫瘍を示します。

図1-4.術中所見。黄色の内容液をふくむ腫瘍。
表面には小石灰化巣が認められます。

図1-5.術後MRI。
腫瘍は摘出されています。
 

頭蓋咽頭腫の治療法

良性腫瘍で、境界が明瞭であることより、開頭全摘出により完全治癒が期待できますが、周辺の重要神経組織との癒着、浸潤がある場合は、全摘出は困難です。腫瘍周囲組織中に腫瘍細胞が巣状に存在しているような症例では全摘出しても数年後に再発します。非全摘例には、再発防止のために放射線治療が有効です。最近発達したガンマナイフによる残存腫瘍に対する補助的な治療は8割以上に有効とされています。嚢胞形成例には、腔内へのチューブ挿入による内容液の吸引や腔内照射、抗癌剤の注入も行われますが、これらの治療が通常の放射線治療以上に有効性があるか否かについては未だ議論があります。最近、内視鏡を併用した低侵襲手術手技の発達に伴い、開頭をせずに経副鼻腔(蝶形骨洞)的に外科的摘出術が限られた症例が対象ではありますが可能となりつつあります(図2に10歳女性、経蝶形骨洞的に腫瘍全摘がされた症例の術前後を示します)。


図2

頭蓋咽頭腫の予後と問題点

積極的に全摘出がなされるほど術後の下垂体視床下部症状(ホルモン異常、尿崩症)の障害が強く出現します。成長ホルモン等のホルモン補充や尿崩症にたいしてはデスモプレッシンの点鼻を必要とする場合がありますが、補充により正常な発達が可能です。また放射線治療後の知能発育の問題が避けられません。全摘後の10年生存率は80%を超えますが、残存腫瘍を放置すると50%となります。非全摘例に放射線治療を加えることにより、80%の10年生存率がえられます。すなわち、個々の症例に応じて、手術、放射線の両治療法の長所を組み合わせて、腫瘍をできるだけ減らし、必要に応じてホルモン補充療法を加えるのが、現在の治療です。良性腫瘍ではありますが、再発の多い腫瘍であり、長期にわたった綿密な経過観察が必須です。

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