髄芽腫

@ 髄芽腫とは

髄芽腫は、主に小児の小脳に発生する悪性脳腫瘍です。日本脳腫瘍統計によれば、日本での発生率は年々減少傾向にあり、1994年から2000年では、原発性脳腫瘍の1.1%、小児脳腫瘍の12.0%と小児では3番目に頻度の多い腫瘍となっています。年齢別には、15歳未満が84.2%ですが、成人(20歳以上)でも9.7%と少ないながら発生が見られます。性差では、男児に多く発生し、女児の1.6倍です。

腫瘍は小脳虫部を中心に発生し、第四脳室および両側小脳半球に浸潤する傾向にあります。髄液を介して頭蓋内や脊髄の他の部位に転移(播種)しやすい性質を持っています。1940年代に、腫瘍摘出後に播種の予防のため脳と脊髄全体に放射線照射を行う全脳全脊髄照射が提唱され、救命が可能となりました。さらに1970年代から化学療法法が併用されるようになり、腫瘍全摘出または亜全摘出後、放射線照射および化学療法を併用することにより、長期生存可能な症例が増加してきております。日本脳脊髄腫瘍統計によれば、1997年―2000年の髄芽腫の5年生存率は全体で58%と報告されていますが、欧米における生存率の向上と放射線治療軽減を目的とした臨床試験の成果を受けて、日本の治療も大きく変わろうとしております。

A 髄芽腫発生にて認められる症状

腫瘍は小脳虫部に発生するため、神経症候として小脳虫部障害による体幹失調および眼球運動障害が認められます。増大すると第四脳室が腫瘍に占拠され、非交通性水頭症を生じ、頭痛や嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状を認めます。症状は、比較的急速に進行します。乳児では骨縫合の離開により自然に減圧されることがあり、診断まで時間を要する場合があります。

B 髄芽腫の画像診断

診断には主に頭部CT検査と頭部MRI検査を行います。頭部CT検査では、腫瘍は比較的境界明瞭で等吸収域あるいは高吸収域として描出され、均一に強く造影されます。頭部MRI検査では、T1強調画像で低信号域として、T2強調画像で等信号から高信号として認められます。ガドリニウム増強効果は、症例によりさまざまであり、強い均一な増強効果を示す例から、全く増強されない症例まであります。播種病変の有無は、予後を左右し、治療法の選択にも影響を与えるために脊髄MRI検査も必要です。頭蓋内多発性播種と脊髄播種もMRIにて描出されますが、MRIにて髄腔内転移が認められなくても、髄液細胞診で陽性となることがあります。

頭部造影MRI画像(水平断、矢状断)

C 髄芽腫の病理学的診断

手術により摘出した腫瘍組織から、病理診断を行います。鑑別診断としては、上衣腫、星細胞腫をはじめ、髄芽腫の亜型として、髄上皮腫、髄筋芽腫、異形奇形種様・類横紋筋腫瘍、などがあります。その病理診断によって、治療法や予後がかなり異なる可能性があるので、非常に重要です。

D 髄芽腫の治療

髄芽腫に対する一般的な治療は、顕微鏡手術下に腫瘍全摘出あるいは亜全摘出術を行い、術後に、化学療法と全脳全脊髄照射を行うことです。また、水頭症に対してシャント術などが必要な場合もあります。

手術による腫瘍組織の摘出は、組織診断を明らかにするのみならず、できるだけ腫瘍を全摘出するほうが、予後が良いとされています。しかし、脳幹部や大事な血管や神経に浸潤している場合は、摘出は困難なことがあります。

手術後は、最近では、全脳全脊髄照射を含めた放射線療法と化学療法を併用する治療が広く行われるようになってきました。手術後の残存腫瘍の有無と、播種の有無によって高リスク群、標準リスク群に分け、それぞれに異なった目標を設定して治療が行われるようになりました。3歳以上の標準リスク群では、化学療法の併用により、全脳全脊髄照射線量を軽減することに成功し、これが標準的治療となりつつあります。一方高リスク群でも、強力な化学療法の併用により生存率の向上が報告されるようになりました。特に3歳未満の乳幼児では、放射線治療による障害が非常に強くでるため、放射線治療を用いず治癒させるための様々な試みが世界中で行われ、一部の髄芽腫では、放射線を用いた場合と同様の生存率が達成できることが示されています。放射線治療、化学療法の併用による治療は、治療による副作用も大きく、小児に対する全脳全脊髄照射を適切にすすめるには経験も必要なことから、治療は脳神経外科、小児科、放射線科の連携した治療が可能な、小児脳腫瘍に経験の多い施設で行われるのが望ましいと考えられています。

参考ホームページ

参考メモ:髄芽腫に対する治療に関する詳細な情報

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