神経膠腫(グリオーマ)

(1)神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマ)とは

脳神経細胞(ニューロン)は神経膠細胞(グリア)と呼ばれる細胞により支持されています。神経膠細胞から発生する悪性腫瘍を神経膠腫と呼びます。脳腫瘍には他の癌のようにTNM分類やステージ分類といったものがありませんが、その代わり悪性度(グレード)が1-4まで分類されています。良性腫瘍のほとんどは悪性度が1です。神経膠腫は大きく星細胞腫(アストロサイトーマ)と乏突起膠腫(オリゴデンドログリオーマ)に分けられますが、星細胞種と乏突起膠腫の混在した乏突起星細胞腫もしばしばみられます。星細胞腫や乏突起膠腫は悪性度が2で、これがさらに悪性化し、悪性度が3になったものが退形成性星細胞腫・退形成性乏突起膠腫・退形成性乏突起星細胞腫です。グレードが4と最も悪性な腫瘍は膠芽腫(グリオブラストーマ)です。乏突起膠腫は星細胞腫に比べてややおとなしい腫瘍で、化学療法剤によく反応します。

“脳がん“という言葉はほとんど使われることはありませんが、神経膠腫は脳から発生した悪性腫瘍であり”脳がん“にあたります。

(2)代表的症状

頭痛・片麻痺・失語・意識障害・痙攣発作など腫瘍が発生する部位に応じた症状が見られます。良性脳腫瘍は症状がゆっくり進行し長期にわたることもありますが、悪性脳腫瘍では症状が急速に進行します。時には脳内出血を合併し脳卒中との鑑別が困難なことがありますが、脳ドックなどで偶然見つかることもあります。脳は前頭葉・側頭葉・頭頂葉・後頭葉・脳幹・小脳など、部位によって様々な機能を持っていますので、 脳腫瘍が頭蓋内のどこに発生するかによって様々な症状をきたします。

脳腫瘍ができると頭痛を訴えることが多いのですが、頭痛と脳腫瘍の発生には関係ないこともあります。脳腫瘍が大きくなると頭蓋内圧亢進症状といって、頭痛・嘔気・うっ血乳頭による視力障害などをきたします。 

脳腫瘍患者の重篤な症状に痙攣発作があります。一側の手・足などの部分痙攣が、意識障害と四肢の痙攣を伴う全身痙攣に発展することもしばしばあります。

(3)診断方法

脳腫瘍をはじめ脳脊髄疾患で最も重要なことは、医師による神経学的な診断をうけることです。麻痺や失語などの症状は、脳腫瘍よりも脳血管障害が原因であることが多いので、すぐに医師の診察をうける必要があります。

脳神経外科・神経内科などの医師の診察をうけて、脳腫瘍が疑われる場合には、CT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)が行われます。MRIはCTよりも精度が高く、細かい診断までできますが、CTはMRIに比べて多くの施設で迅速に検査することができます。CTやMRIでは、必要に応じてそれぞれの造影剤を使った検査を行います。造影剤検査を行うと、腫瘍の広がりや悪性度なども術前に推定することができます。神経膠腫では悪性度が高いほど、造影剤でよく染まる(腫瘍の輪郭がはっきりする)傾向があります。(図1)

脳腫瘍と診断されると、手術を安全に行うための検査が行われます。脳腫瘍と血管の関係を見るための3D-CT撮影(ヘリカルCT)や、脳の機能と腫瘍の関係を見るための特殊なMRI検査も行われます。悪性度の検討や、CTやMRIだけでは再発かどうかわからないときには、PET検査という脳の代謝をみる検査を行います。(図2)

図1
File written by Adobe Photoshopィ 4.0
グレード1(ガドリニウム増強T1強調画像):
左(毛様細胞性星状細胞腫)、右(上衣下巨細胞性星状細胞腫)

File written by Adobe Photoshopィ 4.0
グレード2(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)

File written by Adobe Photoshopィ 4.0
グレード3(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)

File written by Adobe Photoshopィ 4.0
グレード4(びまん性星状細胞腫):
左(ガドリニウム増強T1強調画像)、右(FLAIR画像)

図2
File written by Adobe Photoshopィ 4.0
左:BPA-PET、右:タリウムSPECT

(4)治療方法

[手術について] 

神経膠腫の治療の原則は、可能な限り手術的に腫瘍を摘出し、病理診断後に放射線治療および化学療法を行うことです。

脳腫瘍はWHOの分類では150種類と多岐にわたるため、手術により診断が必要です。手術によって、摘出した標本を病理医が診断することにより、病理学的分類に基づいた診断が行われます。

悪性脳腫瘍の手術の原則は、症状を悪化させないように可能な限り摘出することです。神経膠腫のような悪性脳腫瘍は、脳の表面ではなく、脳の中から発生し、脳の中にしみこむように広がっていきます。脳は部位により役割が決まっており、右前頭葉のようにあまり重要な働きをしていないところに腫瘍ができた場合には、腫瘍を全摘出することが可能です。一方で、運動野(手足の動きの中枢)や言語野(言葉の中枢)に腫瘍が発生した場合には、腫瘍摘出により症状が悪化することがあるので、摘出術よりも診断が手術の目的になります。 

安全に手術を行うために、運動機能や感覚機能を術中脳波でモニタリングしながら手術が行われます。また言語野の位置を同定し、言語機能や高次機能を温存するために、覚醒下手術が行われます。脳は、体中の痛みを感じることができますが、脳自身の痛みを感じるレセプターや領域がないので、脳を切除しても痛くありませんので、手術中に患者さんと会話しながら手術を行います。

[放射線治療について]

グレード3/4の神経膠腫に対しては、局所放射線治療が行われます。腫瘍と腫瘍の浸潤部分に対して、これは1回1.8-2.0グレイの量を週に5回、6週間かけて行い、計54-60グレイの照射を行います。転移性脳腫瘍は腫瘍と正常の境界が比較的明瞭ですが、神経膠腫は浸潤性に発育し、腫瘍の広がりも大きいので、ガンマナイフやサイバーナイフなどの定位放射線療法では腫瘍をコントロールすることは困難です。陽子線治療や重粒子線治療は頭頚部癌(耳鼻科領域の癌)に対してはよく行われますが、神経膠腫に対する効果があるかどうか、国内外で臨床試験が行われています。

グレード2の星細胞腫・乏突起膠腫などに対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、手術診断後の早期放射線治療と、再発あるいは腫瘍増大後に放射線治療を行っても生存期間がかわらないという結果が報告されました。神経膠腫の患者さんは、再発後に症状が悪化することも多いので、多くの悪性脳腫瘍の専門家はグレード2の神経膠腫に対しても早期に放射線治療を行っていることが多いようです。

[化学療法について]

グレード3/4の神経膠腫に対しては、放射線治療と経口内服薬のテモゾロミドが行われます。乏突起膠腫は星細胞腫に比べて化学療法剤が効きやすい性質があります。手術後に放射線治療と併用して6週間の内服が行われます。その後、維持療法として5日間の内服を4週おきに行います。テモゾロミドは経口の化学療法剤ですが、これまでの薬剤に比べて貧血・白血球減少・血小板減少などの骨髄抑制が軽いのが特徴です。ただし、リンパ球減少が特徴的でニューモシスチス肺炎などの特殊な肺炎を合併しますので、専門医とよく相談しながら治療することが必要です。他の主な副作用は悪心・嘔気・便秘などの消化器症状ですが、緩下剤などと服用することにより症状が軽減します。テモゾロミドは高額な薬剤ですので、経済的問題などは、各施設の相談支援センターなどで相談してください。

再発に対しては、分子標的薬などの薬物療法が治験として国内外で行われています。


(5)予後について

神経膠腫のグレード別の治療方針と治療成績を示します。

神経膠腫の治療はまだまた難しいことも多いのですが、治療を開始して40年以上元気な患者さんもいます。

新しい化学療法剤なども少しずつ開発され、臨床試験が行われています。脳腫瘍をはじめ“がん”の病態は一人一人異なります。元気に仕事をしている人も多数いますので、医療スタッフや家族と力を合わせてお互いに努力して治療しましょう。脳腫瘍は分類が複雑で、治療も複雑ですので、専門医とよく相談して治療することが大切です。

(6)推奨ホームページ

国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービス
http://ganjoho.jp/public/index.html

このページの先頭へ

Neuroinfo Japanについて お問い合せ