頭蓋内胚細胞腫瘍

胚細胞腫瘍とは

胚細胞腫瘍は精子や卵子のもとの細胞(原生殖細胞)が腫瘍になったものと考えられています。胚細胞腫瘍は、女性では卵巣、男性では精巣に一番発生します。これを性腺胚細胞腫瘍といいます。脳の中(頭蓋内)にもこの胚細胞腫瘍が発生します。原発性脳腫瘍の約3%がこの頭蓋内胚細胞腫瘍と言われています。胚細胞腫瘍は組織によりさらにジャーミノーマ、奇形腫(成熟奇形腫と未分化奇形腫)、卵黄嚢(のう)腫瘍。絨毛(じゅうもう)癌、胎児性癌、混合性胚細胞腫瘍に分類されます。頭蓋内胚細胞腫瘍は小学校高学年から若年成人によく発生する腫瘍で、最も多いのは中学生・高校生です。

発生部位と症状

よくできる場所は大きく分けて2つあます。それは松果体部(50%)と神経下垂体部(30%)です(図1、2、3)。そのほか、大脳基底核(5%)、視床、脳幹部、脊髄、小脳にも発生することがあります。松果体部と神経下垂体部の両者に同時に発生する場合もあります(図3 右)。胚細胞腫瘍は男性に多いのですが、発生部位と頻度には性差があります、松果体部腫瘍は男性に圧倒的に多く、女児には少ないですが、神経下垂体部では性差がありません。組織型ではジャーミノーマが松果体部と神経下垂体部にほぼ同数発生し、成熟奇形腫の発生は神経下垂体部にはきわめて稀です。

腫瘍が非常に大きくなるといずれの場所でも頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、目のかすみ、意識障害)がおこります。比較的腫瘍が小さいと、腫瘍の部位に応じた症状が出現します。松果体部では眼の動きがおかしくなる(眼が上を向かない)ことによる複視、難聴、髄液交通路の閉塞で水頭症が生じ、頭痛、嘔吐、意識障害などの頭蓋内圧亢進症状が生じます。神経下垂体部では多尿(尿崩症:一日5-10リットルの尿がでる)、低身長(成長ホルモンの不足による)、活動性の低下や食欲低下(副腎刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモンの低下による)、無月経や乳汁漏出、二次性徴の遅延などが代表的症状です。腫瘍がさらに大きくなれば視神経を圧迫して視力・視野障害が出現します。


図1 胚細胞腫瘍の好発部位


図2 左:神経下垂体部ジャーミノーマ、
中:神経下垂体部ジャーミノーマ、
右:神経下垂体部混合性胚細胞腫瘍(胎児性癌が主体)


図3 左:松果体部ジャーミノーマ、
中:松果体部未分化奇形腫、
右: 神経下垂体部と松果体部の同時発生例(ジャーミノーマ)

診断

頭蓋内胚細胞腫瘍はこれまでに述べてきたように、若年者に多いこと、部位別の特徴的な症状、CTやMRIなどの画像検査である程度、胚細胞腫瘍と推測を行うことが可能です。血液や脳脊髄液中の腫瘍マーカーの検査も重要です。アルファフェトプロテイン(AFP)やヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)が代表的なもので、腫瘍の組織型の推測や治療方針の選択、治療効果の判定などにも有用です。

治療

随伴する水頭症による頭蓋内圧亢進症状に対しては、内視鏡的な第3脳室底開窓術や脳室ドレナージ術がまず行われます。腫瘍マーカーの検査や画像である程度の組織型の推測は可能ですが確定には至らないことが多いようです。胚細胞腫瘍の組織型により治療法や治療効果、予後に大きな違いが生じるので、組織学的診断を行うことは極めて重要です。したがって、手術により診断を確定することが必要となります。開頭術や内視鏡的手術による生検術が行われます。組織型により手術ですべてを取ることが望ましい腫瘍と、放射線や化学療法が治療の主体となるものとがあります。たとえば成熟奇形種は摘出が基本です。

腫瘍組織型により治療法と予後が異なり、日本では3つの群に分けています。予後良好群はジャーミノーマ、成熟奇形腫、予後中間群はジャーミノーマと成熟型奇形腫の混合、奇形種の悪性転化したもの、未分化奇形種、予後不良群は卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、胎児性癌、及びこれらの3腫瘍の要素が主体の混合性胚細胞腫瘍が相当します。最近の5年生存率では予後良好群98%、予後中間群94%、予後不良群が60%となっています。

ジャーミノーマに対しては、化学療法(カルボプラチンとエトポシド)と放射線療法(全脳室系、ただし基底核に存在する腫瘍に対しては全脳照射)が行われますが、比較的長期予後が期待できます。放射線治療は時に全脳全脊髄が選択されますが、ガンマナイフなどの定位照射はこの腫瘍の初期治療にはふさわしくありません。予後中間群の腫瘍に対しては、化学療法(カルボプラチンとエトポシド)に全脳室照射+局所照射を行い、さらに維持療法として化学療法を追加します。予後不良群に対する初期治療としては、化学療法(イフォマイド、シスプラチン、エトポシド)、放射線治療(全脳全脊髄照射+局所照射)、さらに維持療法として化学療法を追加し強力に治療を行う必要があります。この腫瘍群は脳脊髄液の中に腫瘍細胞が広がったりすることも多く、特に集中的な治療が必要となります。

中間群の未分化奇形種と予後不良群の腫瘍は初期治療の後、残存腫瘍があれば全摘出する方が予後がよいことが示されてきています。

胚細胞腫瘍は比較的まれな腫瘍であり、治療法も難しいため治療経験の豊富な施設を受診し治療を受けることが望ましいと考えられます。

このページの先頭へ

Neuroinfo Japanについて お問い合せ