脳梗塞

脳梗塞って何?

脳の血管が何らかの原因で狭窄(狭くなる)、閉塞(つまる)になるとその先にある脳細胞に血液が充分に行き渡らなくなります。脳細胞は血液に溶けている酸素と糖分で生きているのでこれが足りなくなると脳細胞は死んでしまいます。これが脳梗塞です。死んでしまった脳が手足の動きに重要な場所であれば手足の麻痺になりますし、言語に重要な場所であれば言語障害が出るのです。

脳血管がつまる原因には大きく分けて2つあります。

血栓症 動脈硬化によって徐々に血管の中が狭くなりついには閉塞するもの。症状は徐々に進行することが多く、時には一時的に麻痺や言語障害が出てその後改善する場合(一過性脳虚血発作といいます)もあります。
塞栓症 血液の固まりが血管の中を流れて脳血管に流れて閉塞させるもの。 多くは心臓の不整脈(心房細動)により心臓の中で血液がよどんで、血液の固まり(血栓といいます)ができるとこれが血液の流れに乗って脳血管に運ばれ血管をつめてしまうものです。いきなり血管がつまるため症状は突然に起こります。また太い脳血管がつまることが多いので症状も重い場合が多いと言えます。元巨人軍の長嶋さんをおそった脳梗塞がこれです。

しかし脳細胞は血液が途絶えてすぐに死に至るわけではなく、一定の脳虚血(血が足りない状態)を経て死に至ります。一般的に発症から3〜6時間を経過して死に至ると言われており、それより前に早期診断をして治療に進めば脳細胞を助けることができる可能性があります。よっていかに早く病院に運ぶかが重要となりますので様子を見るのではなく直ちに救急車を要請して下さい。


頭部CT;矢印の黒いところが脳梗塞。
右に行くほど時間がたっており梗塞が拡がっているのがわかります。

では、どのような症状が出たら救急車を呼べばいいのでしょうか。
次に当てはまるようなことがあった場合です。

このような症状はほんの一時的なもの ですぐ消失することもあります。これを一過性脳虚血発作といい今後本格的な脳梗塞になる危険信号と言われています。すぐよくなった場合でも必ず病院にかかりましょう。(脳卒中ことはじめ;山口武典から引用)

脳梗塞の種類

1)アテローム血栓性脳梗塞

動脈硬化により血管が狭くなっていき、狭くなった血管内腔の壁は不整なため血液中の血小板がこびりつき、さらに硬くなりさらに狭くなっていき最後は閉塞に至るものです。多くは高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が原因となります。症状は徐々に進行することが多く、時には一時的に麻痺や言語障害が出てその後改善する場合(一過性脳虚血発作といいます)もあります。


頭部MRI 白いところが梗塞脳血管造影

矢印が硬化によっておこった狭窄部位

 

2)心原性脳塞栓症

通常心臓は一定のリズムでうっているため血液はよどみなく流れます。この状態で血液の固まり(塞栓)ができることはありません。しかし心房細動と呼ばれる不整脈があると一定のリズムでうたないために心臓の中で血液が一瞬止まりよどんだ状態になります。もともと血液は固まる要素を持っているので心臓のなかで血液の固まり(塞栓)ができて血液の流れに乗り脳血管に飛んで血管をつめてしまうものです。いきなり血管がつまるため症状は突然に起こります。また太い脳血管がつまることが多いので症状も重い場合が多いと言えます。元巨人軍の長嶋さんをおそった脳梗塞がこれです。


頭部CT
黒いところが梗塞

脳血管造影
矢印のところで血管がつまっている

 

3)ラクナ梗塞

脳の深いところにある直径1mm以下の細い血管がつまるものです。ラクナとは湖、水たまりという意味で断層撮影検査上その梗塞があたかも水たまりのように見えることからこの名前が付きました。梗塞自体はとても小さいものですが手足の動きに大事なところが障害されるため手足の麻痺が重くなることがあります。約2〜3割の症例で症状が進行することがあります。また以前はこの梗塞のタイプは細い血管がつまったものとしか認識されていませんでした。 しかし最近になり血管の壊死(もろくなったもの)により逆に小さな出血(微小出血)をしている症例もあることがわかってきました。梗塞(つまったもの)か微小出血(血が出たもの)かの判定にMRIのT2*(T2スター)という条件で撮像することによりわかるようになりました。


頭部MRI

T2スター画像
たくさん黒く抜けているのが微小出血

(イラストによる脳卒中の診断と治療;峰松一夫から引用)

 

4)その他

動脈(もしくは静脈)奇形や感染症、自己免疫性疾患などがあります。

診断機器(早期診断が重要です)

1)頭部CT、頭部MRI

脳を何枚かに断層(輪切り)するものです。脳梗塞の検出に優れておりMRIの中でも拡散強調画像を用いるとより早く診断ができます。

2)脳血管検査

MRI(磁石を用いて画像を作る)を用いて脳血管を撮影します(MRAといいます)。造影剤などの薬物を使用せずに撮影できます。

3)脳血管造影検査

カテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根か肘の血管から入れて造影剤を流すことにより血管を写すものです。

4)脳血流検査

血管が狭窄・閉塞しているとその先の脳血流は低下しており、その程度を画像化して見るものです。


頭部MRI
拡散強調画像

MRA(MR血管検査)

脳血流検査
青い部分が血流低下領域

 

治療

薬物療法、手術、リハビリテーションがあります。それぞれの脳梗塞の種類別に現在行われている主な治療方法を説明します。

アテローム血栓症

【内科治療】

抗血小板剤(注射薬;オザグレルナトリウム、内服薬;アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾールなど) 活性化された血小板が血管壁に付着しさらに狭窄が進行していったり、壁に付着した血小板が剥がれて血管に流れてその先の血管をつめることがありこれを防ぐために用います。
抗凝固剤(注射薬;アルガトロバン) 壁が不整なところに血液が固まらないようにするものです。脳の血液が足りない部分を生かすことができます。
血栓溶解薬(注射薬;アルテプラーゼ、ウロキナーゼ) 心原性脳塞栓症の項で説明します。
生活習慣病の治療 この病態は高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を合併していることが多くこの治療も重要です。

【手術治療】

血管吻合術(バイパス術)

つまった脳血管のさらに先の血管に頭皮を走る血管を剥がしてつなぐ手術です。吻合した血管から血流が新たに確保できるため再発を 抑えることができるというものです。最近日本で行われた研究でその有用性(再発予防)が証明されました。
(JET study; Japanese EC-IC bypass trial study)

<脳血管造影検査>

左;術前:矢印のところで 血管がつまっている
右;術後:実線;吻合した皮膚血管  点線;吻合血管からつながった頭蓋内血管

頚部内頸動脈内膜剥離術

頚部の内頸動脈に狭窄がある場合、厚くなった壁(内膜)をくりぬく手術です。症状がある場合70%以上細くなっている症例にはこの手術を行うことにより薬だけで治療した症例より再発が少ないことが証明されています。


術中所見
実線;血管壁
点線;剥離中の肥厚した内膜

脳血管造影検査 術前狭窄あり 術後狭窄が改善している

 

頚部内頸動脈ステント

金属製のメッシュ状の筒を狭窄部に留置して拡げる治療です。


術前;狭窄あり 術後;狭窄改善

 

心原性脳塞栓症

【内科治療】

抗凝固剤(注射薬;ヘパリン、内服薬;ワーファリン・プラザキサ)

心臓の中に血のかたまり(血栓)をできにくくするために用います。ただし量が多すぎると出血しやすくなり皮下出血、鼻血、血尿、血便などの問題を起こすことがあり、適正量をきびしくチェックする必要があります。一般的には採血をしてINR(international normalized ratio)をチェックします。この薬を服用していない人は1,服用量が多くなるとこの値は増えていき ます。2〜3の間(高齢者は1.6〜2.6)の間にコントロールします。

2011年3月直接トロンビン阻害薬ダビガトラン(商品名 プラザキサ)が承認されました。抗凝固作用と出血合併症をきたす投与量・効果度に差が大きく、血液凝固能のモニタリングを必要とせず、これまでワーファリン服用の場合禁忌とされていたクロレラや納豆などの食事制限もない利便性の高い薬剤です。ただし、2~3時間で即効性があり、半減期12~7時間という薬剤であり一日2回欠かさず服用する必要があること、また薬価はワーファリンの約5倍となっています。主治医とよく相談して、服薬内容を検討する必要があります。

血栓溶解薬(注射薬;アルテプラーゼ、ウロキナーゼ)

血栓もしくは塞栓を直接溶かすための薬で、2005年から日本でも、脳梗塞発症3時間以内に治療可能な患者に対してアルテプラーゼ(rt-PA)の静脈注射の使用が認められました。このrt-PAを使用することで、詰まった血管をいち早く再開通させ、脳に血液を再び送ることが可能となり、脳梗塞後の後遺症の程度が著明に少なくなることが証明されています。しかしその効果の反面、脳内出血を生じる危険性も高いため、治療を受ける場合には担当医の説明をきちんと聞いて、合併症についても理解した上で、同意をする必要があります。

【手術治療】

血栓溶解療法

3〜6時間以内に発症した症例でまだ断層撮影でも梗塞がはっきり出ていない症例に限りマイクロカテーテルを閉塞部まですすめて、そこから血栓溶解剤を注入するものです。血栓溶解剤は主にウロキナーゼという薬を用います。また2010年Merciという血管内血栓除去デバイスが承認となり、血管内から血栓を除去する治療も始められています。


左:赤矢印のところで血管がつまっています
中:青矢印がマイクロカテーテルこの先から血栓溶解剤を注入
右:再開通が得られています

 

ラクナ梗塞

【内科治療】

アテローム血栓症に準じた抗血小板剤を用います。なおこの病態は高血圧との関連がわかっており降圧剤が重要な役割をします。とくにラクナ梗塞の項で述べた微小出血の症例においては抗血小板剤よりも降圧剤の意義が大きいと言えます。

またすべての病態において脳保護剤(注射薬;エダラボン)が使用されることもあります。これは死に陥った脳細胞から放出される活性酸素が周りの生きている脳に悪さをすると言われており、この活性酸素を除去する薬剤です。本邦で開発された薬剤です。

リハビリテーション

手足の麻痺や言語障害などを認めた場合、その機能回復のためリハビリを行います。現在では一日でも早く開始することが望ましいと言われています。理学療法・作業療法・言語療法などがあります。

発症・再発予防

生活習慣病の治療や、心臓病(心房細動)の治療などがあります。

生活習慣病@;高血圧治療

最近降圧剤に脳梗塞の発症・再発予防効果があることがわかってきました。血圧は限りなく正常に近づけることが重要です。研究の中には正常血圧の患者さんに降圧剤を投与してもなお、再発を減少せしめたとの報告もあります。このように降圧剤は血圧を下げるだけではなく、動脈硬化を抑えたり脳卒中再発を予防したりと様々な効果が知られていますので、処方を受けている患者さんは血圧が下がったといって自己判断で中止しないよう気をつけましょう。脳梗塞後1〜3ヶ月後で140/90mmHg未満とすることが推奨されています。

生活習慣病A;高コレステロール(高脂血症)治療

高脂血症薬においても再発予防につながる可能性があるのではないかと期待されています。高脂血症薬の服用患者さんの中で脳梗塞になる人が少ないというデータがあり、これをうけて再発予防にも効果があるのではないかと期待されているのです。スタチン系と呼ばれる内服薬で脳卒中の発症が約30%低下したとの報告があります。現在日本で研究が進んでいます。(J-STARS研究)

生活習慣病B;糖尿病治療

糖尿病は脳梗塞発症のリスクを2〜3倍にすると言われていますのでそのコントロールは重要です。

生活習慣病C;メタボリック症候群の治療

最近、メタボリックシンドローム(メタボリック症候群)と呼ばれる生活習慣病の病態が注目されています。血圧、血糖、高脂血症はそれぞれが軽症なのですが、これに当てはまる人は将来狭心症、心筋梗塞、脳卒中になる危険性があるというものです。特に腹囲が診断基準に盛り込まれているのがポイントです。腹囲が大きいということは内臓脂肪が多いことを示しています。内臓脂肪は異常な肥満脂肪細胞であり高血圧、動脈硬化を助長する化学物質を放出するため注意が必要なのです。

診断基準

腹囲 男性>85cm、女性>90cm
中性脂肪 150mg/dl以上
低HDLコレステロール
(善玉コレステロールが低い)
男性<40mg/dl、女性<50mg/dl
血圧 収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上
血糖 110mg/dl以上

この5項目のうち3項目を満たすものをメタボリックシンドロームといいます。

治療の基本は生活習慣の改善です。

食生活の改善 腹八分目、脂肪分、塩分、甘いもの、アルコールは控えましょう
適正体重の維持 BMI(肥満度)=体重(Kg)÷(身長(m)×身長(m))
標準はMBI=22で25以上を肥満としています。
適度な運動 ウオーキング、ジョギングなど
禁煙 タバコはニコチンを介しての血圧上昇作用があります。
ストレスをためない  


(脳卒中ことはじめ;山口武典から引用)

 

心臓病(心房細動)の治療

脳梗塞発症のリスクとして脳卒中・一過性の虚血発作の既往、高血圧、糖尿病、心不全、冠動脈疾患、高齢(70〜75才以上)があります。これらのいずれかに当てはまる心房細動を持つ患者さんには抗凝固剤(ワーファリンやダビガトラン)が絶対適応です。あてはまる患者さんはかかりつけの循環器医に相談して下さい。

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