脳腫瘍総論
脳腫瘍とは
脳腫瘍とは脳周囲および頭蓋内に発生する腫瘍全般を示し、2016年のWHO分類では、原発性脳腫瘍として発生起源や遺伝子検査によって約150種類以上に分類され登録されています。
成人に発生する原発性脳腫瘍は2005年〜2009年の熊本県データによると人口10万人に対して年間18.2人の割合で新たに脳腫瘍が発生するといわれています。脳腫瘍の中で頻度が高い腫瘍は髄膜腫と神経膠腫(グリオーマ)で、それぞれ脳腫瘍全体の約25%前後を占めます。神経膠腫には星細胞系腫瘍、乏突起細胞系腫瘍、上衣系腫瘍、脈絡叢腫瘍などが含まれます。この中でもっとも悪性度が高い腫瘍は膠芽腫であり、原発性脳腫瘍全体のうち10%程度を占めます。
小児のがんの中では脳腫瘍は白血病につぐ頻度であり、発生する固形がんの中では最も発生頻度が高い腫瘍です。15歳未満の脳腫瘍の発生頻度は小児人口10万人あたり毎年3.6人の割合で発生します。小児の脳腫瘍全体の1/3を神経膠腫が占めますが、膠芽腫の割合は成人に比べて少なく(1.5%)、星細胞腫が最も多く(18.6%)次いで髄芽腫(12%)、胚細胞腫(10%)の順に頻度が高い傾向にあります。
脳腫瘍の症状
脳腫瘍による症状は、大きく頭蓋内圧亢進症状と局所症状に分かれます。頭蓋内圧亢進症状とは、文字通り腫瘍の大きさや浮腫の発生により頭蓋内の圧が高くなる現象で、頭痛や悪心・嘔吐とともに進行すると意識障害を引き起こします。頭蓋内圧亢進よる頭痛は通常早朝に強い痛みを起こすことが知られています。局所症状とは、腫瘍の発生した部位にある脳が腫瘍や浮腫により圧迫され機能障害を起こすことで生じるもので、半身の麻痺や言語障害、視覚の障害などが代表的です。また、てんかん発作も多く、脳腫瘍が発見される原因の30〜50%を占め、さらに10〜30%が経過中に発作を来すと言われています。一側の手・足など部分的に起こるけいれん(部分発作)や、意識の消失や全身性のけいれん(全般発作)に発展することもしばしばあります。治療の前後でてんかん発作が起きる場合も多く、予防的に抗てんかん薬を内服することになります。最後の発作から二年間は車の運転は控えることが求められています。
脳腫瘍の分類について
腫瘍のタイプにより治療成績や予後が大きく異なるため、体のがんに使われるステージなどの病期分類は脳腫瘍においては一般的ではありません。また、診断も病理組織を用いた形態や性質のみならず、2016年のWHOによる新分類では腫瘍に生じている遺伝子の異常のパターンも加えて診断することになりました。