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第一回 医師向け 人工呼吸管理 基礎教育プログラム 質問・回答

★人工呼吸器設定

  1. Q1:PCVではVCVのプラトー圧に揃えるということは、原則まずVCVのモードを使用するということでしょうか?
  2. Q2:レスピレーター設定で、VCVとPCVで迷う時がある。例えば、じん肺(混合性換気障害があり)で、肺炎のpatientなど。VCVが使い慣れているが、肺保護よりPCVも考える。ただし、痰が多く、気道内圧が上昇した場合にはPCVだと容易に低換気、低酸素血症になることが心配です(当院ICUなどアラームに気づくのが遅れる可能性あり)。
  3. Q3:SIMVの意義(A/Cと比較して)はどう考えられますか?
  4. Q4:ある程度決まった〔RR(10回程度)、VT(6~8mL/kg)〕にPCV(自発呼吸なし)で設定した時、PaCO2がとびすぎていてアルカレミアに傾いていた場合、VTを3~4mL/kgを許容しますか?
  5. Q5:軽症ARDSでCPAP設定にしていても換気量が12mL/kgを超えてしまう症例を経験するのですが(sedationは良好に行っています)、プラトー圧が25を越えなければ許容してよいのでしょうか? それとも換気量を減らすように管理すべきでしょうか?
  6. Q6:PCVの波形で(テキストP46)、吸気プラトー前にフローが0にならない場合、「フローの上限を上げる」とはどういう意味でしょうか? フローの傾きを上げるということですか?
  7. Q7:間質性肺炎急性憎悪での人工呼吸管理はPCVが多いのですが、プラトー圧を知るためにはまずVCVで管理してプラトー圧を確認してからその圧でPCVの圧設定とした方がいいでしょうか?
  8. Q8:含気率というのはCTを用いて目算をするのでしょうか? 何か測定法があるのでしょうか?
  9. Q9:レスピレーターモードの選択として基本的には従量式で可ですか?
  10. Q10:どういう時に従圧式を選択したらよいでしょうか?
  11. Q11:人工呼吸はVCV、PCVどちらで始めていくべきか?
  12. Q12:VCVではプラトー圧に関してのアラーム設定はできないのですか?
  13. Q13:レスピレーターのアラーム設定は標準設定はあるのでしょうか? 例えば装着時に必ず、忙しいなか医師が1回1回チェックしなければならないのでしょうか? ME管理をしています。
  14. Q14:脳低温療法施行時に筋弛緩剤を使用するためとシース(AMI時など。リクルートメントして+PEEP)のため、体交が不十分なためか無気肺を認めます。循環が安定している場合、無気肺予防目的のPEEPはいくつくらいが適当でしょうか?
  15. Q15:ARDSのため high PEEP(10~14)で管理しており、P/Fが改善してきたが、まだ病態のため抜管の予定のない患者の場合、FiO2の低下にあわせてすみやかにPEEPを下げてた方が良いのか、6~8程度を残した方が良いのかどちらでしょうか?→FiO2を下げる→PEEPを下げる(感染症のためARDSが出現し、感染症のコントロールがまだ不十分な場合など)
  16. Q16:バッグバルブマスクでPEEPをかけることができますか?(人工呼吸のかわりができますか?)
  17. Q17:PEEPの効果は何時間で行えばよいでしょうか?best PEEPを具体的にどのようにして設定していますか?(タイトレーションをどのように具体的にやっていますか?)
  18. Q18:「counter-PEEP」「closing volume がFRCを上回る」、この2つの意味が上手く理解できない(なんとなくはわかるが)ので、少しかみ砕いて説明していただきたい
  19. Q19:PEEPの増減の具体的調節法は? 例えば心不全でPEEP4で開始した場合、不十分と判断されたら、次いくつに上げるか、また、上限はいくつまで上げられるか、その判断は何に基づいたらよいか?
  20. Q20:Barotraumaで気胸が発生した場合、PEEPやPSをどのように下げていけばよいのか(どちらを優先するのかなど)。また、ドレーンを挿入した時、どのくらいの圧で吸引をかけたらいいのでしょうか?

PCV の設定に慣れていない方が、最初の設定に悩んだ時に、VCVのプラトー圧を利用することで、肺メカニクスと換気設定の関係が理解できると思います。

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肺病変が不均一である場合、特に気道抵抗にバリエーションがある場合には、PCVを選択すべきです。気道抵抗が不均一であることは、PetCO2とPaCO2に大きな乖離がある場合、あるいは呼気流量がナカナカ”ゼロ”にならない、などの傍証によって推定が可能です。

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多くの人工呼吸器に SIMV の設定があり、30年以上の歴史があるモードです。利用しない理由は見つけにくいのですが、例えば PCV で A/C に設定して PCV の換気圧を下げることで離脱するのもスマートな方法です。離脱方法に正解はないのが現状ですね。

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一回換気量を下げていくと、平均気道内圧も低下します。これが含気率を低下させるので、一回換気量を下げる際には、肺胞の開存を維持するために、平均気道内圧を一定にするよう PEEP を上昇させることが必要です。

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肺胞の損傷につながるのは肺胞壁の前後にかかる圧較差です。自発呼吸を温存することが推奨されてきましたが、自発吸気が余りにも大きい場合には、プラトー圧が過剰な陽圧換気と同じレベルの圧格差が肺胞壁にかかります。このため、筋弛緩薬を用いてでも圧格差を低下させようという試みも行われています。原段階では、結論が出てない課題です。自発呼吸が強い場合にはプラトー圧で評価することは難しくなります。

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吸気時間中にコンプライアンスに応じた一回換気量が得られていないことを意味します。これは、設定された圧が高すぎるのか、あるいは最大吸気流速が遅すぎる可能性があります。その鑑別診断には先ず、フロー設定を十分に高い圧に設定して、吸気時間中にプラトーに達することを確認し、その上で得られた一回換気量が適当か否かを検討すべきです。

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特発性肺線維症のような病態は内科的治療が奏功しなければ治療できません。人工呼吸は適応外です。薬剤性IPや膠原病IPでは内科的治療が奏功しますので人工呼吸を行います。ただし速く小さい吸気なのでVCVで合わせるには筋弛緩が必要になります。PCVの場合、吸気終末に流量がゼロとなるように吸気時間を設定できれば設定圧がプラトー圧になります。ただし、IPの呼吸パターンでは吸気時間にばらつきが大きいことが多いので設定はとても難しいです。

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具体的な方法として確立されたものはないと思います。
肺保護換気のゴールを理解するために、開存した肺胞(肺気量)に応じた換気量を設定する必要のあることを説明しました。これは、研究レベルの話題です。残念ながら単一のスライスで得られた画像情報から肺全ての状態を類推することは不可能であり、臨床的に可能な何らかの方法を見いだすべきタイミングに来ています。

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構いませんが、吸気流量が固定なので強い吸気努力がある場合は吸い足りない場合が起こり得ます。そのモードのメリットデメリットを考慮して選択することも必要です。さらには、自発呼吸が回復した場合に、一回換気量は一定ではありません。時々刻々と変化する換気量に対応がスムーズな PCV を選択することが増えていると思います。

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肺内病変が不均一であるために、吸気プラトーに達するのに時間を要したり、通常の呼気時間中に呼気フローが”ゼロ”にナカナカ復帰できない症例では最適です。こうした病態を呼吸器の時定数が不均一と表現します。

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どちらでもかまいません。慣れたものを使ってください。

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できませんが、できるといいですね。

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肺に問題のない術後の一時的な気道確保目的の人工呼吸であれば標準設定ができます。特殊な状況でなければ大丈夫です。医師とあらかじめ話し合って決めておけばいいでしょう。特殊な病態では、その病変の変化の方向をチェック可能なパラメータを用いた設定になります。

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PEEP設定では、お話ししたとおり、決まった数値ややり方はなく、ある値を決めて、そこから上げ下げして、メリットデメリットを比べていくしかありません。5cmくらいが開始レベルとして妥当ですが、体格によっても増減しなければなりませんし、背景病態(COPD,敗血症性ショックに対する輸液負荷後など)によっても違ってきます。ARDSではARDSネットの提唱したPEEP-FIO2表を参考に使用してもいいですが、最終的にはさきほどの上げ下げをしてみなければわかりません。

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VILI回避のためにFIO2はすみやかに0.6以下としなければなりません。それ以降は0.4程度まで下げればよいと言われています。私たちの施設では0.25まで下げてからPEEPを下げます。その理由はその後の調整をPEEPという1つのパラメータでできるからです。病態がいまだ改善しきっていない場合でも人工呼吸を開始した当初に比べ改善が認められればweaningは進めていきますので、FIO2、PEEPの順に下げて行き、酸素化が悪化しなければweaningは続けます。酸素化が悪くなったところあるいはなりそうなところで一旦ストップし、改善を待ち、安定したら再び離脱を開始する(圧をさげる)ことになります。

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「ジャクリンリース」でできないことはないですが、その場合もいくらの圧がかかっているか、マノメータなどで確認することを強くお勧めします。何のモニタリングもなしに用手換気するのは、私個人としては賛成できません。

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呼吸不全で入室してPEEPを上げて行くプロセスと、改善傾向になり下げて行くプロセスで観察する時間経過は違います。上げるプロセスでは酸素化が許容できるレベルに達するまである程度早く上げなければなりません。10~30分でしょうか?下げる場合は下げたことにより肺胞が再虚脱を起こすかどうかを見極めるための時間が必要です。 2~4時間くらいの間隔で2センチずつ下げて行きます。1日に5センチ以上低下させることは少ないです。タイトレーションは、PEEPを上げることによる酸素化や呼吸運動(自発+の場合)へのメリットと、上げ過ぎによる循環抑制やCO2蓄積のデメリットを比較して決定します。

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closing volumeとは、気道が閉鎖しはじめる肺気量をいいます。健常者ではFRCよりも低い肺気量にあります。気道が脆弱で早く閉鎖する場合は、FRCよりも高い肺気量で気道が閉塞し換気障害を生じます。気道が開いていればこのようなことは起きないのでPEEPをかけて虚脱を防止すれば解決します。 Counter PEEPとは早期に閉塞する気道を開通させておくために使用するPEEPのことをいいます。気道が潰れようとする外側からの力に「対抗する内側からの力」となるのでcounterという用語を使うのでしょう。

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PEEPの初期設定は、経験的には心不全 4~10、ARDS 8<のことが多いです。その後、PEEPをいくつずつ上げるかは明確な基準はありませんが、2センチずつ増加させることが多いようです。循環への影響が心配される状況ではより細かく調整するでしょうし、酸素化改善を重視する場合はより大胆に上げる場合もあります。人工呼吸管理では血液ガスデータだけでなく、患者の重要臓器全体のことを考えて調整しなければなりません。PEEPの設定上限ですが、これも明確なものはありません。肺動脈圧が20mmHg程度ですのでこれを上回るPEEPを使用する場合は注意が必要です(設定していけないというわけではありませんが、慎重になる必要があります)。デメリットが発生しないように目標とする酸素化に達するまで上げていきます。酸素化の目標値は正常値ではありません。たとえば重症ARDSではP/Fで150以上、という具合に医療チームで決めていけばいいでしょう。肺の状態によっては過剰な目標設定により過剰な換気設定となりますので、病態に応じて目標値を決める必要があります。

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ドレーンを留置したら、最初は水封(平圧)か-5cmH2O程度の低圧で引きます。再膨張性肺水腫の発生に注意しつつ、次第に陰圧を強くして-10~-15cmH2O程度にするのが一般的でしょう。もちろんリークの量により吸引の仕方は変わるはずです。人工呼吸器の条件ですが、酸素化にPEEPがよく効く症例ではPEEPは下げにくいですが、FIO2を上げてPEEPを下げるのが一つの方法です。換気に問題があればPSは下げにくいですが、PSを下げても呼吸数の増加(30回/分まで)で代償できるのであれば少し下げてもよいでしょう。圧外傷は人工呼吸器との不同調が原因であることも多いので、同調性を保つ、あるいは改善するのは必須です。

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