日本慢性疼痛学会 理事長就任挨拶
日本慢性疼痛学会理事長 田邉 豊 順天堂大学医学部附属練馬病院 麻酔科・ペインクリニック |
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日本慢性疼痛学会の理事長を2025年4月1日より拝命しました田邉豊でございます。 私は、2003年より当学会事務局に関わらせていただき今回、新理事長としてご挨拶申し上げます。まずは、会員の皆さまのご支援とご協力を心から感謝申し上げます。これからも皆様と共に本学会をより良いものにしていくために努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
当学会は、第1回慢性疼痛研究会として1982年に発足し、その後1992年より学会として今日に至っております。会員総数は現在、約750名で本年、第54回大会を開催することができました。慢性の痛みに関する臨床および基礎研究を通じて、その病態の解明や診断・治療について会員相互で議論・検討し研究成果を社会に還元し、慢性の痛みに苦しむ患者のQOLの向上に務めることを目的としております。当学会会員は、多くの職種から構成されており、それが特徴的です。医師(麻酔科・ペインクリニック、心療内科、精神科、整形外科、内科や脳神経外科など)、歯科医師、薬剤師、看護師、理学療法士、鍼灸師や臨床心理士などいろいろな立場の医療従事者が集まり、同じ立場で慢性疼痛への対応を実践しています。発足当時から皆が、「慢性疼痛」についてざっくばらんに熱い議論を交わす場であったと伺っております。
2020年に国際疼痛学会(IASP)が41年ぶりに痛みの定義を改訂し、2022年には国際疾病分類第11版(ICD-11)に慢性疼痛の分類コードが加わり、今まで以上に慢性疼痛が注目され、研究や臨床に大きな発展がもたらされることが期待されています。痛みの機序分類においても痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)という新しい概念が提唱されました。一方、未だ病態や治療が明確になっていない疾患は多くあり、慢性疼痛は世界人口の約20%以上に感情的な苦痛や社会生活に影響を及ぼしているとされています。様々な病態が複雑に絡み合っている慢性疼痛を評価し病態を整理・診断し治療を行っていくうえで多様性のある、多職種が関わる集学的治療の重要性が指摘されています。当学会は、まさしくその特色を生かせる学会と考えております。
当学会独自の専門医・専門歯科医師・専門メディカルスタッフ制度が2017年に発足され現在、医師74名、専門歯科医師12名、専門鍼灸・あん摩マッサージ指圧師5名、専門心理師4名、専門療法士4名、専門看護師 1 名の計 100名(2025年1月時点)が取得しています。その特色を今後も大切にしてさらに多くの医療従事者の皆様にご参加いただき慢性疼痛で苦しむ一人でも多くの患者さまに希望を与え、日本の痛み治療に貢献できることを願っております。
2025年 吉日