2018年に世界の栄養学会(ESPEN:欧州, ASPEN:北米, PENSA:アジア, FELANPE:南米)が低栄養の診断基準としてGLIM基準を策定した。2024年度診療報酬改定ではこのGLIM基準を用いて低栄養診断を行うことが推奨されており、低栄養に対する栄養治療の重要性が示唆されている。 栄養治療では、病態に応じた適切な栄養投与経路の選択が重要であり、周術期の栄養治療では主な栄養投与経路は静脈栄養と経腸栄養である。ASPENのガイドラインでは、消化管機能が保たれている場合には経腸栄養が推奨されているが、すべての手術で腸瘻が造設される訳ではなく、また経口補助食品(ONS)の効果はコンプライアンスに大きく左右される。一方、静脈栄養では、中心静脈栄養カテーテル血流感染のリスクがあり、近年末梢静脈栄養(PPN)に注目が集まっている。さらに、PPNとONSを併用するという選択肢もある。また、がん悪液質に対する栄養治療では、栄養投与経路が疼痛緩和目的の薬剤投与経路の選択肢にもなる。しかし、栄養治療に関するガイドラインはなく、治療方針が定まっていないのが現状である。 本セッションでは、周術期の症例からがん悪液質の症例に至るまで、さまざまな病態の栄養治療における栄養投与経路の選択と栄養治療の実際について、アンサーパッドを用いてディスカッションして頂きたい。
特定機能病院において管理栄養士の病棟配置が始まり、従来の栄養サポートチーム(NST)を軸とした20年にわたる日本の栄養ケア体制は新しい局面を迎えた。 漏れが多いと言われた日本の栄養ケアは、病棟配置によりどう変化するのか? 配置された管理栄養士の質をどのように確保していくのか? 多職種チームであるNSTとコラボレーションし、どのように役割を担っていくのか? など、期待と課題が多い。本アンサーパッドセッションでは、NST活動と病棟配置における全国の状況を会場の皆さんの回答からまとめ、先進施設における取り組みを参考として、“漏れなく上質な栄養ケアを提供できる” 施設の特性に応じた栄養管理体制の在り方を探る。