イベント情報
文部科学省学術変革領域研究「学術研究支援基盤形成」コホート・生体試料支援プラットフォーム(CoBiA) 共催
令和6年度 第3回リアルワールドデータ研究のための統計学セミナー
今日からはじめる因果推論 〜DAGと傾向スコアを使った交絡調整を中心に〜 レポート
開催日 | 2025年2月20日(木) 13時00分 〜 16時50分 |
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開催形式 | Zoomによるオンライン開催 |
URL | https://sites.google.com/kurume-u.ac.jp/rwd2025 |
令和6年度もバイオメディカルデータ解析支援の一環として、臨床研究の実施における支援のためにオンライン開催にてリアルワールドデータ研究のための統計学セミナーを2月20日に開催した。全国から736名の参加登録があったことから本セミナーへのニーズの高さが垣間見られた。
はじめに、バイオメディカルデータ解析班・班員の室谷健太(久留米大学)教授からCoBiA事業に関する概要と支援応募の方法、本セミナーの講師の紹介等が行われ、セミナーが開始された。
第1部では田栗正隆(東京医科大学)教授から「因果推論の基礎」と題して、因果推論の導入として、潜在アウトカム、ATEやATT等の推定対象、交絡の概念、DAGに基づいた共変量の選択基準など基礎概念から示唆に富む実例にも触れながら明解な解説が行われた。因果推論における重要なキーワードとその意味が具体例と共に伝わりやすい言葉で表現され、以降の傾向スコアの議論にも繋がる有意義な話題提供を頂いた。
第2部では原田和治(東京医科大学)助教から「交絡調整のための傾向スコア分析(方法論編)」と題して、第1部で学習した因果推論の基礎概念をベースに、リアルワールドデータ解析において頻出の傾向スコア分析について方法論的な観点から講演を頂いた。傾向スコアを適用した研究は数多く存在するが時にこれは正しい適用になっているのだろうか、と悩ましい研究があることも少なくない。本講演は自身が研究するときも、他の研究者が行った研究を読み解く上でも重要な知識が網羅された素晴らしい講演であった。
第3部では折原隼一郎(東京医科大学)助教から「交絡調整のための傾向スコア分析(実装編)」と題して、第2部で学習した傾向スコア分析を実装する際のRのプログラム、パッケージ、使い方、解釈の仕方、活用上のポイントについて痒い所に手が届く大変丁寧な解説を頂いた。発表時のプログラムやシミュレーションデータについては、参加者に事前共有され、参加者自ら手を動かしながら解説を聞くことができる学習効果の非常に高い講演となった。講演後の質疑応答では数多くの質問が出され、活発なディスカッションが行われた。
最後に、中杤昌弘(名古屋大学大学院)准教授より終わりの挨拶が行われセミナー閉会となった。今年度は事前登録736名もの事前参加登録(うち科研費取得登録者は約22.4%)であった。因果推論の基礎、DAG活用、傾向スコアの考え方と実装は観察研究における必須の手法である。全国から様々なバックグラウンドを持った参加者であったことが印象的であった。リアルワールドデータ研究に対する分野を問わないニーズの高さを感じることが出来た。次年度も多くの研究者のニーズに沿ったテーマのセミナーを通じて、研究者の支援を継続していきたいと考えている。