概要
文部科学省科学研究費学術変革領域研究 コホート・生体試料支援プラットフォーム 研究支援代表者 醍醐 弥太郎 (東京大学医科学研究所) |
コホート・生体試料プラットフォーム(CoBiA)は、2016年-2021年度まで実施された文部科学省新学術領域『学術研究支援基盤形成』事業の4つのプラットフォーム(PF)の一つで、過去6年間の支援活動に対する高い評価に基づき、2022年度から文科省学術変革領域『学術研究支援基盤形成』事業として新たなスタートを切った学術研究の支援活動です。
最近の生命医科学は、その発展の必然として著しく先端化、細分化され、最新の解析手法やヒト試料の解析結果の有無が、研究成果の質を大きく規定する状況にあります。そこで文科省では、科学研究費受給者を対象に、最先端の解析手法や試料を共有するコアラボラトリーを、全国の研究者の連携により構築する取り組みを行ってきました。研究者の多様なニーズに効果的に対応するため、 大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点を中核機関とする関係機関の緊密な連携の下、学術研究支援基盤の形成を図る制度です。中でもヒト生体試料は、その解析結果がヒト疾患に関わる知見に直結し、情報量の豊富さから考えても、最もニーズの高い研究基盤の一つと位置付けられます。しかし、一般的にはアクセスが困難で、また倫理・社会・法的規制を遵守した解析計画が必須であることから、研究者が個別にヒト試料を利用することは困難です。そこで、全科研費受給者を支援対象とし、ヒト試料、情報とその解析手法を一体化して支援するPFであるCoBiAが生まれ、被支援者、支援者間の双方向性の努力により発展してきました。そして、現在は、健常人コホート、ブレイン、生体試料、データ解析の4種について、これまでの8年間で6,930課題を支援し、1,131報の原著論文の発表に貢献してきました。また、毎年度、支援成果と研究者の最新のニーズを評価し、新たな支援項目を加えて、さらに充実した支援を目指しています。
具体的には、研究の基礎・基盤となるリソース(資料・データ、実験用の試料、標本等)についての収集・保存・提供や生体試料やバイオメディカル情報の解析技術等の支援を行います。このために、当プラットフォームでは、中核機関(東大医科研)ならびに連携機関の施設・設備や、それぞれの機関が持つ高度に専門的で先進的な技術を組み合わせて、先端的で学術的価値の高いリソースの提供や解析支援を実施します。また、令和2年度からは、COVID-19克服に向けた研究に対する支援、またCOVID-19による研究の支障解消と加速化のための支援も行っております。
研究支援の目的
本プラットフォームの目的は、大きく4つに分かれます。第一は、日本人一般健常者集団約13.5万人のコホートデータおよびDNA等の生体試料を系統的に収集・整理・安定保存し、これを日本人の体質に応じた個別化予防・医療の創出に向けた基盤研究に広く活用されるための研究インフラを構築することです。我が国を代表するバイオリソースであり、そこから世界最先端の研究成果が期待されます。
第二は、剖検で得られた死後脳をオープンリソースとして、精神・神経疾患の解明を目指す研究を支援するために、日本ブレインバンクネットワークを構築し、それらの実質的な運用の促進を目指します。
第三は、個別の研究者にとってはアプローチが極めて困難ですが、支援要望の多い多彩なヒト生体試料を用いた生体内分子動態や生体指標の高感度かつ多角的解析支援を、豊富な生体試料・情報の収集・提供と独自の多分子超高感度解析・オミックス解析支援により行うことです。これにより、生命現象の本体解明を行う画期的な研究成果の発出と次相移行を支援します。
第四は、生体試料解析手法の爆発的発展に伴って大量に入手可能となった生体試料に関するゲノム情報、オミックス情報をはじめとするバイオ情報や、リアルワールドデータをはじめとする個々人の健康情報、臨床情報などのメディカル情報の単独、また統合的解析を、必要な研究者に支援することによって、独創的な研究成果の創出を図るとともに、バイオメディカル情報解析を専門とする人材の育成を目指します。
最後になりますが、生命科学を研究される皆様には、本支援活動を積極的に活用されることにより、ご自身やグループの活動のさらなる発展に役立てるとともに、その成果を世界に向けて発信いただくようお願いいたします。同時に、一般社会に対して研究の成果や内容を発信し啓発活動を行うことにより、国民の皆様との科学・技術に対する対話を推進して頂くようお願い致します。
また、本ホームページにアクセスされる一般の皆様には、研究紹介等を通じてわが国における生命科学研究の現状・成果の一端についてご理解を深めて頂き、研究及び研究者に対して更なるご支援・ご協力を賜りますようお願い致します。