Q & A

◆ 病気のご家族を持つ方の悩み

◇ 病気のお友達を持つ方の悩み

○ 診断、治療、予防法について

△ 病気とのつきあい方についての悩み

$ その他

  父が躁うつ病になり困っています

  友人から「精神科にかかっている」と助けを求められました

  夫が躁状態で浮気して困っています

  夫が躁うつ病で再発を繰り返しています

  躁うつ病の息子が病院から友人・知人に手紙を出すのが心配です 

 非定型精神病と診断されました。躁病ではないのでしょうか?

  躁うつ病の義妹に取り返しのつかないことを言ってしまいました 

  母が不治の病にかかった思いこみ病院に行こうとしません 

  母が3年以上うつ状態のままです。このまま治らないのでしょうか?

  認知療法を受けたいのですが… 

  子供が躁うつ病を発症するのを予防する方法はありませんか? 

  どうやって医師や病院を選んだらよいのでしょうか? 

  電気けいれん療法について教えていただきたいのですが…? 

  気分変調症は性格の問題と言われましたが本当でしょうか? 

  うつ病の友人にどうアドバイスしたら良いでしょうか? 

  母が膠原病(SLE)から躁病となりました。今後が心配です 

  母がまた、自殺未遂をしました。家族は皆疲れ果てています… 

  躁病の伯父が借金を作って困っています 

  部活の後輩が躁状態でセクハラをして困っています 

  躁状態で入院中の弟が退院したがって困っています  

◆  どうやって躁状態の母を病院に連れて行ったらよいかわかりません 

  躁状態では記憶力が悪くなるのでしょうか? 

  夫のうつ病が良くならず、むしろ悪くなっています 

○◆ 母のうつ病が遺伝しているかどうかを調べる検査を受けたいのですが… 

  彼女がうつ病になってしまいました 

 なかなか病気が治りません。大学病院にかわった方が良いのでしょうか  

△ 躁うつ病と両立できる仕事はあるのでしょうか 

◆ 父の躁状態で家族が大変なことになっています 

$ 主治医が通院医療費公費負担制度を申請させてくれないのですが… 

$ 是非研究に協力したいのですが余計なお世話でしょうか? 

 うつ状態がなかなか治りません。今の薬で良いのでしょうか?  

 躁うつ病はどのように回復していくものなのでしょうか?  

 パニック発作を伴う双極性障害の治療について 

躁うつ病の罹患経験を活かして医学部を目指しているのですが…  

「カルシウムが足りないとイライラする」というのは嘘と聞きましたが… 

○ 気分安定薬3種を服用していますが波が止まりません。他に治療法は?  

 「躁うつ病のホームページ」を立ち上げたきっかけは何ですか?  

 「うつ病」の生物学的な原因は何ですか?  

○ 「うつ状態」がなかなか改善せず悩んでいます  

○ 13種類の薬をのんでいるのですが…  

○ 主治医にリチウムから非定型抗精神病薬への変更を勧められたのですが…  

○ 抗うつ薬誘発性躁病というのがあるのでしょうか?

○ リチウムは寝る前にまとめて服用しても良いのでしょうか

○ 双極性うつ病の新薬開発は進んでいるのでしょうか 

○ 光トポグラフィーで双極性障害とうつ病が鑑別できるのでしょうか? 

○ うつ病はテストステロンの低下によるというのは本当でしょうか? 

○ 前大臣が軽い躁状態で入院したと報道されていますが… 


父が躁うつ病になり困っています

 私の父が、躁状態と診断されました。これまでも何回か躁状態にはなりましたが、家族が気づきだいたい初期の段階で病院へ行き、それほど ひどくなりませんでした。しかし、今回はいろいろなストレスが重なったこともあり、少し激しいようです。父は 現在69才ですが、まだ仕事をしています。

Q1) 父は69歳ですが、このままずっと リーマスを飲みつづけなければならないのでしょうか?

 躁うつ病は70歳、80歳になってもやはり再発を繰り返す病気です。ですから原則としては予防療法を一生続けると考えるのが普通だと思います。

 ただ、仕事を引退すれば、再発してもそれで人生を棒に振るという訳ではなくなるでしょうから、仕事を引退したら、予防療法を中止して、再発したら早めに治す、という選択もあり得ます。

Q2) 躁状態がひどくなって入院すると、病院でふらふらする位強い薬を調合されるようなのですが、大丈夫なのでしょうか。

 ひどい精神症状で、放置したら本人の名誉、お金、人間関係などを損なう危険があるのなら、ふらつく位の薬を飲むことになるのは仕方ないと思います。また、頭脳明晰で意欲も満々な躁状態の方に、入院していなさいと言ってもとても納得できるものではありませんから、ある程度鎮静効果のある薬を飲んでいただく方はご本人にとっても苦しみが少ないと思います。

Q3) 父の通っている病院では脳内リチウム濃度の検査をしていないようですが、どこかこの検査をしている病院はありませんか?

 脳内リチウム濃度の検査は、今は日本で行っている病院はありません。

 これまでの研究で、必ずしも脳内濃度を測定する必要は無いことが分かりましたので、測定する必要も特にありません。

 具体的には、躁状態では、多少手が振るえるくらい飲めば、脳内濃度は十分な量に達しますので、必ず効果が得られます

 また、予防効果がないのは脳内濃度が低いせいではないことが分かりましたので、きかなければ他の薬を使うしかありません。

Q4) 父に聞くと、最近あまりリチウム濃度の検査をしていないようですが、このままで良いのでしょうか?

 血清リチウム濃度は、半年に1回位の定期的な検査に加えて、副作用が強く出た時、腎臓が悪くなった時、脱水症状などがある時、リチウム濃度に影響を与える他の薬を併用した時などに測れば結構です。

 とは言え、私自身もついつい忙しさにかまけて測り損ねてしまうことが多いのです。(正直なところ、2030人の患者さんが並んでいる時に、検査をオーダーするのは、たとえ数分の手間でもかなり心理的にハードルが高いのです。)

 前回の測定から半年以上たってしまっていたら、「それそろ測らなくても良いですか?」ときいてみたら如何でしょうか。

Q5) できれば、薬を飲まずに検査で再発を防げないものでしょうか?

 現状では、それは無理です。躁うつ病の経過を調べる検査は現在のところありません。

 肝臓のように、GOTが高くなってきたから気をつけましょう、というような具合に早めに診断できるようになると良いのですが。

Q6) リチウムを長く飲み続けると副作用が心配です。

 リチウムは、確かに長期の服用で腎臓が悪くなるという意見もありますが、これは中毒を繰り返した場合ですから、中毒にならないように注意していれば大丈夫です。

Q7) 漢方で治せないでしょうか?

 中国では、軽いうつ状態などに対しては漢方治療を行うこともあります。しかし、躁うつ病に対しては、中国でもリチウムが使われているのです。漢方の教科書にも、「躁うつ病には漢方は無効」とはっきり書いてあります。 

Q7) 父は夜眠れる薬といって 4つぐらいの薬を飲んでいます。リーマスだけでは、いけないのでしょうか。

 これについては、私もまだ分かりません。

 寝る前だけで4種類ということは、おそらくいわゆる睡眠薬の他にも抗精神病薬などが含まれているのかも知れませんね。ひどい不眠であれば、私も躁状態でなくても抗精神病薬を勧めることはあります。不眠が続くと躁病になりやすいので、不眠をコントロールするのは躁病再発予防のためにはとても重要です。(葬式の後に躁病になる方が多いのは、単なるストレスと言うよりも葬式では眠る暇がないことが多いためだとも言われています。) 不眠がひどければ、薬の種類が増えることはあります。

 予防療法に関しては、理論的にはリチウムだけで良いはずですし、私が最初から受け持っている患者さんでしたら、ほとんどリチウムだけ、あるいはそれにロヒプノールなどの睡眠薬1種を不眠時に使ってもらう程度にしています。しかし、精神科医の中にも色々な意見を持っている先生がおられまして、躁うつ病の長期予防療法に抗精神病薬(セレネース、ヒルナミンなど)を使う先生も多いようです。

 では、理論的に必要ないならやめればよいかというと、そう簡単でもないようでして、私自身、この薬は必要ないからやめましょうと患者さんに勧めて、それまで服用していた抗精神病薬を中止していただいたところ、その方が1カ月位で再発してしまって、申し訳ありませんでした・・・と苦い思いをしたことがあります。こうした薬が実は予防にある程度有効なのか、あるいは急に中断することが再発を起きやすくするのか、あるいは偶然か、それはまだ分かりません。

 医学では、本当はまだわからないことだらけなのです。

 実際には、主治医によく相談することでしょう。紹介状なしに私が1回診察させていただいても、主治医の先生がなぜその薬を処方しているのかは分かりませんので、とにかくまず主治医によく説明してもらうことです。医者はなかなか時間が無いので、黙っている患者さんにはなかなか十分説明しない場合もあるかも知れません。この薬は何故必要なのですかと尋ねて、十分説明を受けた上、4種類の薬を続けるべきか減らすべきか相談してみては如何でしょうか。

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友人から「精神科にかかっている」と助けを求められた

 友人から、「最近、体調が良くなく憂鬱なときが多く困っている。精神科医に診てもらい、診断名は、 自律神経失調症・神経性鬱症と言われた。毎日、薬漬けでこれから先のことを考えると 今のままでは良くないと思う。他に、なにかいいものが無いものか?」と相談されました。

Q1)友人は医者から「自律神経失調症・神経性鬱症」と言われたそうです。躁うつ病と友人の病気 自律神経失調症・神経性鬱症と同じなのでしょうか?

 いずれも私自身は使わない病名ですので、その先生がどういう意味でこれらの病名を使っているかはわかりません。精神科では医者によって使う病名が違ったり、患者さんには(医者が使っている病名でなく)わかりやすい、あるいは不安を与えない病名を伝えることもあります。ただ、一般には躁うつ病の方にこれらの病名を伝えることは考えにくく、躁うつ病というわけではないのだろうと思います。

 病名そのものというよりは、やはり直接主治医の先生にどのような経過をたどる病気か、どう治療したら良いか、周りの者はどう対処したらよいのか、どう過ごしたら良いのか、などを尋ねると良いと思います。

Q2)友人は、薬漬けになっている、と悩んでいるようです。治るまで、薬づけなのでしょうか?

 薬づけという言葉はどういう意味なのでしょうか? ここには「自分の意志でなく、無理矢理飲まされている」という意味が含まれているように思えます。なぜ自分の意志ではないのでしょうか。医者の説明に納得していないのでしょうか? まずその辺をはっきりして欲しいと思います。自分が納得して必要だと思って飲めば、薬漬けとは思わないはずです。

 ひょっとするとそのお友達は、自分が病気になってしまった事を受け入れられず、否認しようとし、それがそのような発言になっているのかも知れません。あるいは、うつ状態の時には何事も悪い方にしか考えられませんから、理屈では必要と分かっていても悪い方にしか考えられない(「薬漬けだ」)のかも知れません。

 その場合は、友人として冷静な判断を伝えたら良いと思います。本人が困っていて、医者が必要と判断していて、ひどい副作用も無いのなら、飲んでも良いのではないか、高血圧で薬を飲むのと何ら変わりないじゃないか、と。

Q3)どうしたら治るのでしょうか? ストレス原因を見つけて排除すれば良いのでしょうか。

 それはその方がどのような病気なのかによりますのでわかりません。一般論として、うつ病はストレスの原因を排除するだけでは治りません。自然治癒力を越えた状態だからこそ休日に休んだくらいではなかなか治らず長引いて医者に助けを求めに行ったのでしょう。ストレスの対処法を考えるのは今の状態が治ってからで良いと思います。

 一般論として、精神疾患を持つご友人にすべきことは、その友人に対して変わらぬ態度で接し、その人間性を認め、病気を抱えていることを含めて受け入れ、治療を受けたり休養を取ることに協力することなどだろうと思います。

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夫が躁状態で浮気して困っています

 夫はこれまで何度か躁状態になったことがあります。最近夫が水商売の女性と浮気をして、家族を捨てるとまで言い出していますが、これは躁状態のせいなのでしょうか? もし躁状態だとしたら、精神科受診を勧めたいのですが、嫉妬と取られてしまい、勧めても無視されそうです。(主人は、普段は決して浮気をしません・・・とは言いきれませんが、したとしても、私に気づかれるようなことはしません。)

Q1) 夫の浮気は躁状態のせいでしょうか。本人は、自分は過去も躁病だったことはないし今も病気じゃないと言いますが、最近は4時間しか寝ていないし、やたらと部屋の模様替えをしたりします。また、普段吸わない珍しい銘柄のタバコばかり吸います。でも、金遣いは荒くなっているとはいえ、以前の時みたいに大きな買い物(別荘、スポーツカーなど)はしていませんし、まじめに仕事に取り組むときもあります。また、普段は言いもしない「一期一会」という言葉を好んで使っています。

 やはり躁状態のようですね。別荘やスポーツカーをどんどん買うという前回の躁状態がひどすぎただけで、今回も十分躁状態です。「一期一会」というのもいかにも躁病の方らしい感じがしますし、私の患者さんでも躁状態になると同じようなことをおっしゃる方がいました。浮気も躁状態のせいだろうと思います。 

Q2) 躁状態ではなく、性格が全く変わってしまったのではないでしょうか? 些細なことですごく怒る、人前で私をどなったり無視するなど子供じみた態度をとることもあり、私から見ると、以前とは別人になったように見えます。元々は穏やかでやさしい人だったのですが・・・。

 これは性格ではなく、やはり躁状態だと思います。躁状態は、治療しないと1年くらい続くこともあり得ます。治療していないために躁状態が治っていないだけで、性格とは違います。

Q3) しかし、躁状態だから治療を受けなさいと言うと、「おまえは病気だと言うが、それは嫉妬しているだけだ」「仕事の邪魔をするな」などと言います。どうやって病院に連れていったらよいでしょうか?

 大変難しい問題ですね。まず第一は、何でも良いから本人が困っていることを探すことです。「浮気を女房に止められていらいらする」「眠らないで仕事をしているとさすがに気が張りすぎてちょっと肩が凝る」でも何でも良いから、とにかく受診のきっかけになることを探して、「いらいらするなら、以前見てもらった先生のところへ行きましょうよ」と説得してみて下さい。しかし、これは難しいかも知れませんね。

次の手段は、ご主人のご両親がご主人のことを病気と気づいているようなら、協力してもらいましょう。ここは一つ、ご両親に一肌脱いでもらい、「お前は×子さんに迷惑ばかりかけているじゃないか。病気だぞ。病院へ行きなさい」と言ってもらうよう頼んでみて下さい。そうすれば、ご本人は「病気じゃないから行く必要はない」と言うかも知れませんが、そうしたらあなたは「それなら精神科の先生に病気じゃないとお墨付きをもらえば良いじゃない?」と受診を勧めてみてはどうでしょうか。

 もう一つの手段は、ご主人が会社で一番信頼している上司に頼んで、病院への受診を指示してもらうことです。病院に行って診断書をもらってこないと出社してはだめだ、等はっきりと指示してもらう方が良いでしょう。躁状態の方でも、社長、部長など、権威ある上司の指示であれば従ってくれることが多いようです。

Q4) 小説で、ミトコンドリアは、母親のものしか子供には伝わらないということを読んだことがあります。先生のいうミトコンドリア遺伝子の異常というものは父親からも遺伝するものなのでしょうか。

 ミトコンドリア遺伝子の件は、まだ学会でも通説になったわけではなく、まだ証明されたとは言えません。ですから、今のところ無視していただいて結構ですし、少なくとも、はっきり「異常」と言えるものは何も見つかっていません。(確かに私の学会発表がそういうタイトルになっていますが、これは知らないうちに主催者側からこういうタイトルをつけられてしまっていたのです。今思えばこのタイトルはちゃんと変えてもらうべきでした。) もう少しはっきりしたことが言えるようになり、その対策が分かってきたら、皆様にお知らせしたいと思います。

 と言っても余計に気になるかも知れませんので申し添えますと、躁うつ病と一対一対応するようなミトコンドリア遺伝子の異常が見つかったわけではなく、あるミトコンドリア遺伝子の種類を持つ方は躁うつ病になる確率が2.4倍くらいに増える、という程度のものです。この遺伝子を持っていても、ほとんどの人は躁うつ病になりません。しかも、それさえ色々な大学から同じようなデータが確認されるまでは本当かどうか分からないのです。今確実に言えることは、むしろ躁うつ病は一つの遺伝子異常によって起こる遺伝子病ではないということです。親が躁うつ病でも、9割方子供は躁うつ病になりません。

 ちなみに、ミトコンドリア遺伝子が母親からしか遺伝しないのは事実で、ミトコンドリア遺伝子の病気があんまり宣伝されると女性いじめになってしまうのではないかと心配しています。女性の名誉のために念のため申し添えますと、父親からしか遺伝しない、という遺伝の仕方もあり、躁うつ病と関連した遺伝的素因の中にも、父親からしか伝わらないものがあるようです。

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夫が躁うつ病で再発を繰り返しています

 私は東北に住む35才で、もうすぐ5才になる子供を持つ主婦です。主人が躁うつ病で、ただいま入院中です。主人は、教職13年目になる36才です。一昨年の11月ぐらいからうつになり冬休みを利用しながら静養したのですが、3学期からは普通に復帰することが出来たのも束の間、もう薬には頼らないとか云っているうちに新学期には躁転してしまいました。 6月から3ヶ月ぐらい入院して12月まで休職し自宅で静養していました。 また3学期から復職し、調子も良くやっていたのですがまた新学期が始まり、忙しい日が続くと躁転してしまいました。一度経験しているし薬も続けて飲んでいたので、もしも次になりそうなときには早めに気付いて、自分でコントロール出来るのでは…、と思っていたのに、初期症状が出始めても自分では認めずあれよあれよという間に上がってしまいました。

 

Q: 親戚に躁うつ病の病歴がある人はいないのですが、やはり主人もまた何度も繰り返していくのでしょうか? 完全に治ることはないのでしょうか? 考えるととても怖いです。

 

A: 躁うつ病はやはり再発する病気です。ある研究によると、リチウムによる予防療法を中断した患者さんは、5年以内に94%の人が再発したと言います。その意味では考えると怖いのは確かです。しかし、私は無意味に脅かしているわけではありません。現実を見つめて、その中でどのような対策を立てたらよいか、そこを考えていただきたいのです。世の中には色々な病気があります。糖尿病、高血圧、ガン、膠原病…その中で躁うつ病は、と考えると、決して悪性の病気では無いことがおわかりいただけるでしょう。何しろ予防法があり、予防していれば健康な人と全くかわらぬ生活ができるのです。その意味では、リチウムを飲んで落ち着いている状態であれば、「治っている」と言っても良いと思います。「治っている、そして再発を予防している」のです。完全に治る、というのはどういうことでしょうか? 人生、8割よければそれでよし、と考えてみてはどうでしょうか。

 なお、最初の質問ですが、家族に躁うつ病の人がいる場合の方がむしろリチウムが効きやすい傾向があると言われています。すなわち、間違いなく典型的な躁うつ病だから、ということです。もちろん、家族に病気の人がいないと治らないという訳ではありませんが。

 

Q: 関係ないことかもしれませんが、主人の母は機関銃のように良くしゃべる人で、68才になるのに毎日4時間程度しか睡眠を取らず(行事の前日などは貫徹してしまう)いろんな病気を抱えながらも(喘息など)殆ど毎日働き無駄な買い物をバンバンしてしまうという、まるで毎日が躁状態のような人です。何か関係はありますか?

 直接お逢いしたわけではありませんので何とも言えませんが、このような性格は、高揚性格(hyperthymic temperament)と呼ばれ、「気分循環症」の1種に位置づけられています。これは、病気ではなく性格の一種という考え方と、双極性障害の軽症型という考え方があります。いずれにせよ、このような方は、躁うつ病患者さんのご家族に多く見受けられます。このような方がその後双極性障害を発症することももちろんあり得ますし、発症しない方もおられます。いずれにしても無関係とは言えないでしょう。

 しかし、このような性格は生活の障害をおこすようなものではありませんし、むしろ仕事の能率はあがるはずですから、これ自体は全く問題のないもので、治療を要するようなものではないことは言うまでもありません。

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躁うつ病の息子が病院から友人・知人に手紙を出すのが心配です

Q: 躁うつ病で入院している息子に、一生「精神病院に入院していた人」というレッテルが貼られ、他の子供達の将来にもマイナスになるのが心配で、親としては、息子が精神科に入院している事は誰にも話していません。

 しかし、息子は入院中に病院の名前を書いて友人に手紙を出しているようです。息子を世間から隔離したい訳ではありませんが、息子は「精神科に入院している」と言ったとき世間にどう思われるかがよく分かっていないのではないかと心配です。

 どのように対処したらよいのでしょうか?

 

A: まず、ごく形式的なお答えですが、精神病院の管理者は、精神科に入院中の患者さんが信書を送ることを制限してはならないこと、及び通信は自由であることを患者さん本人に説明しなければならないことが、精神保健福祉法第三十七条及びそれに基づいた厚生省告示第130号に定められており、病院側としては患者さんが手紙を出すのを制限することはできません。通信以外の面会、電話については、症状によっては制限して良いことになっていますから、直接会ったり電話で話したことにより受ける偏見に比べ、手紙を出すことについては、偏見を受けるデメリットよりも信書の自由の方を守るべきだ、という法律上のバランス感覚だと思います。

 従って、現実的には、実際には患者さん本人にそのような手紙は出さないように、と説得するしか方法はないと思います。

 精神科に入院したと言うことで偏見を受ける事実は確かにあると思いますが、少なくとも法律上は、入院したことを周囲に明らかにしてその偏見を受けて生きていくか、入院を隠して生きていくか、それは患者さん自身が選択するものだということになります。未成年ならどうなのか、精神症状で判断能力を失っている場合はどうか、となると色々議論はあるでしょう。

最近アメリカで、親と医師が勧める心臓移植を拒否した16歳の少女に、裁判所が本人の意志に反して心臓移植手術を受けさせる決定をしたことが話題になりました。このように明らかに生命の危機にかかわる問題では保護者の判断が優先されるでしょうが、「手紙を書くと偏見を受けるから出さないで欲しい」という問題の場合は、偏見を持つ周りの人たちの方にも問題があるわけで、事情は少し違うかも知れません。皆さんはどう思われるでしょうか?

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非定型精神病と診断されました。躁病ではないのでしょうか?

 Q: 躁鬱病ではないようなのですが,まるで天国にいるような不思議な体験をしました.

 「まるで自分が死んで天国にいるような感覚。奇妙な興奮状態。血管のどっくんどっくんという感触を感じ、心臓は破裂寸前。高揚感を覚え、世界の秘密を知ってしまったような感じ。世界が痙攣し、それが快感。私は有頂天でした。私は世界とともにあったのです。世界の全ての動きは私に感じられ意味を持ちました。どんな小さな事も私の五感に感じられた事は、私にとって特別な意味を持ちました。その時全ては、私の現実だったのです。私の今がはじまったのです。私の時が来たのです。世界の本質に触れて、世界がリセットした感じ。世界がリセットした日の朝、私は公園で素晴らしい光景を見ました.空は晴れ渡り,恋人たちは写真を撮り,幸せそうな背の低い老人は私にほほえんで挨拶をしてくれました.喫茶店にはいるとそこには信じられないほど美しい調べの音楽が流れていました.その前夜私は満月の中で木々と話をし,突然現れて私にじゃれついた黒い猫と戯れました.」

 当初わたしは精神分裂病と診断を受けましたが,先生によって見方が変わり,精神分裂気味の躁病だとか言われたこともあります,1、2週間で完全に直ってしまい、現在では「非定型性精神病」との診断を受けています。「私は躁うつ病ではないか?」と医者に聞いたところ、「そうかも知れない」と言われ、炭酸リチウムを処方されました.その他にリントン3mgも処方されています.

 

Q: 私の体験は悟りと呼ばれるものではないでしょうか?

A: これは私のお答えできる範囲を超えていますが、「恍惚体験」とでも呼ぶべき体験のようですね。その最中の症状には、私たちが「妄想知覚」「妄想気分」と呼ぶものも含まれているようです。

Q: わたしに処方されているリントンは適量でしょうか? それは正しい処方でしょうか? また、私は躁病ではないのでしょうか?

 よく分かりませんので、責任を持ってお答えすることはできませんが、確かに単なる躁病ではないのかも知れません。

「非定型精神病」は、躁うつ病と精神分裂病の中間的な存在として京都の満田博士により提唱された概念で、「意識障害」を伴う、などとされているのですが、その意味するところが非常にあいまいで、いくらでも拡大解釈できるため、医者によって診断がばらばらになってしまいます。現在では、私を含め多くの医師が国際診断基準を用いているので、通常は「非定型精神病」という歴史的な用語はもう使いません。

 歴史的な経緯から、一般に東京の医師よりも関西(特に京都)の医師の方が「非定型精神病」と診断しやすい傾向があり、実際、ある関西の病院の先生に聞いたところ、「うちの病院には躁病の患者はほとんど入院しません」と言っていました。入院するほど重症の躁病患者は皆、非定型精神病、と診断されているようです。

しかし、あなたの場合は必ずしもそういう地理的な問題だけで、双極性障害なのに昔の病名で「非定型精神病」と診断されてしまった、という訳ではなく、むしろ(言葉は変ですが)「典型的な」非定型精神病なのかもしれません。非定型精神病の古典的な記載にも、こうした「恍惚体験」が記載されています。

あなたの症状は、確かに昔「非定型精神病」と言われていた病気にも相当するでしょうが、国際診断基準では「急性多型性精神病性障害(ICD-10)」ないし「分裂病様障害、予後の良い臨床像を伴うもの(DSM-IV)」と呼ばれるものかも知れません。

 「急性多型性精神病性障害(IICD−10)の基準は、以下の通りです

AA  急性(2週間以内)の発症

  脳に異常がない、躁病・うつ病ではない、依存性薬物の使用による症状ではない

B.B症状が1日のうちで急激に変化する

C.C 幻覚または妄想が一時的に出現

D. 以下のうち2つが同時に起こる

 (1)極度の至福感や恍惚感、圧倒されるような不安、著明な易刺激性を特徴とする情緒的混乱

 (2)困惑、または人物や場所の誤認

 (3)著明な運動性の増大あるいは減退

 当てはまっていますか? もしこのような「急性多型性精神病性障害」であれば、リントンの量も適当と思います。精神分裂病ではもう少し多い量を使うことが多いのですが、このような病気ではより少量で有効とされているからです。リチウムは試す価値はあると思いますが、必ずしも有効ではないかも知れません。  

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躁うつ病の義妹に取り返しのつかないことを言ってしまいました

Q: 私は北海道に住む27歳の一児の母です。

 夫の妹(現在25歳)が19歳のころから躁うつ病で入退院を繰り返していますが、母親が昨年他界してから、父親、祖母と3人で暮らしています。

 彼女は中学時代、いじめにあってひがみっぽくなったうえ、高校を卒業した頃に友達にだまされてショックを受け、家に引きこもるようになったそうです。その後、躁状態で精神科に入退院を繰り返すようになりました。

 私が夫と婚約した時は、「自分は何もお祝いをしてあげられない」と自分を責めてうつ状態になり、入院しました。直前に退院して結婚式に出てくれたのは良いのですが、結婚式ということで興奮したのか躁状態で出席し、式の間じゅう大声でしゃべり続けていました。昨年は、以前だまされた友人より年賀状がとどき、相手が幸せそうなのを見て落ち込み、話もせず家にこもるようになってしまいました。

 その後母親が亡くなったのですが、彼女は葬儀の時も涙ひとつ見せませんでした。初七日が済むと、だんだん悲しくなったのか、食事もろくにせず、風呂にも1週間も入らないという状態でした。その後だいぶ様子が落ち着いたと思い、四十九日の前日につい、「もう明日で気持ちを切り替えなさい。いつまでもお父さんを頼ってばかりじゃだめよ! 思ったことはちゃんと伝えないと周りの人はわからないんだから。あなたは目も耳も不自由ないし声も出るんでしょ? 人と会ったとき話さないのはその人達に失礼よ!」などと言ってしまいました。すると、翌朝起きてこず、無理やり起こして四十九日の法要に出席させたものの、親戚の人とも一言も話さず、食事の時もお箸を持ったまま固まりボーっとするという状態です。

Q1 このホームページを見て私は取り返しのつかないことを言ってしまったのではないかと思いました。どうしたらよいでしょうか?

 どんな言葉も本当に「取り返しがつかない」ということはないと思います。病気についてアドバイスなどするより先に、まず「病気のことを良く知らずにあんなことを言ってしまってごめんね。すごくつらかったでしょう」と謝れば良いと思います。

Q2 妹は重度のうつ病なのでしょうか? 妹は母が再入院してから薬を飲むこと、病院へ行くことを拒否しています。無理やりにでも病院へ連れて行き、薬を飲まさなければならないのでしょうか? しかし、私の家は彼女の家からは遠いし、生後間もない長男を抱えておりどうしてよいか分かりません。父もお手上げのようです。何かよい方法はないでしょうか?

 現在は確かに、うつが重くて病院にいけないのではないでしょうか。うつが重いと、しんどくて、あるいは病識(自分が病気であるという認識)がなくなってしまって、病院にいけなくなります。その時は家族が連れていく必要があります。

 ただ、義理の姉というと、いわゆる小姑にあたり、一般論としては微妙な関係ですよね。(すなわち、親切が親切と受け足られず、お節介や干渉と思われるかもしれません。) 貴方としては、ご主人を説得して、ご主人自身ないしお義父さんに動いてもらうのが得策と思います。

 今回はそれで良いとしても、なぜこんなに再発を繰り返しているのでしょうか。

 色々ストレスのことが書いてありますが、ストレスを100%避けることはできませんし、ストレスに見えるものが実は症状の始まりということもよくありますので、あまりそれにとらわれすぎない方が良いと思います。

 躁うつ病が治りにくい理由には、1)治療がうまく行っていない 2)薬が効かない の2つの場合があります。 1)の場合、医者は信頼できるか(薬のことや治療方針をたずねるときちんと答えてくれるか、治療薬にどんな選択肢があるかを教えてくれるか、質問したら怒り出すようなことがないか、など)、薬は指示通り飲んでいるか、などを確認します。薬を飲んでいない場合、患者さん本人は病気のことをどのように理解しているのかを確認します。

 医師が正しい治療を行っていて、本人も病気のことを良く理解しているし、薬も飲んでいるのに治らない、という場合も、まれですがあり得ないことではありません。その場合、親戚としてはやさしく見守るしかないかも知れません。どんな病気も100%治るとは限らないのです。しかし、「天命を待つ」前に、まずは「人事を尽くして」ください。

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母が不治の病にかかっていると思いこみ、病院にも行こうとしません。一体どうしたら良いでしょうか

 私の母はうつ病です。更年期障害から始まり、8年くらい前に乳がんを患って以来「自分はいつ死ぬかわからない。長くはない」と何度も口にするようになりました。

あんまりひどい時は、家に一人でおいておく事もできず、家族も疲れてしまって、精神病院に入院させ、病院にまかせてしまいました。母は、そのことも「家族の汚点だ、みんなに申し訳ない」と嘆いています。家族の誰ひとりとしてそんな事は思っていないのですが。それでも昔はこんな感情があっただけ良かったのです。

ここ1、2年、感情の変化がまるでありません。ただただ沈みっぱなしです。笑うのも泣くのもみた事がありません。涙もでないようです。この1年お風呂にも入らず、髪さえも洗っていません。それどころが、肌着も全く着替えていないのです。顔さえも洗ってない事を、恥ずかしながら最近知りました。仕事にかこつけて、私自身も母の事を見て見ぬ振りをしていたのかも知れません。それに気づいてかかわるようにしたら、最近は3日に1回は顔を洗うようになりましたが、お風呂には絶対に入ってくれません。「体を洗うと皮が剥がれ落ちてしまう。髪が抜け落ちてしまう」というのです。もう長い事お風呂に入っていないので、当たり前だといっても、「いや、違う。不治の病にかかっているんだ」と言います。その考え方がうつ病なのでしょうが、本当にどうすればそんな考えができるのかと思うような事ばかりいいます。まさに妄想にとりつかれている感じです。

自分の病気は特別だと思っているようで、いくら受診をすすめても絶対病院に行こうとしません。体からでてくるものが垢でなければ何なのか調べてもらおうと言っても、「病院にいっても治らないんだ」といいます。一緒について行って事情は全部私が説明してあげるからと言ってもだめです。

Q: とりあえずどうしたらよいのでしょうか?何をしたらいいのかわからなくなってきました。治療の第一歩の導きをお願い致します。

 

A: どうやら、お母さんが病院に行こうとしないのは、心気妄想(自分が不治の病気にかかった、病院に行っても治らない)、病識欠如(自分がうつ病であることを否定する)などのためで、病気のために病院に行こうとしない、病院に行かないから病気が治らない、という悪循環のようです。これを解消するには、やはり本人の気持ちに逆らって無理にでも病院に連れて行くしかありませんね。

 12年も心気妄想などの精神病症状を伴ううつ状態が続いているのなら、かなり重症で難治性の可能性があります。こうした場合、電気けいれん療法(ECT)を考えても良いと思います。最近広く行われている「修正ECT」と呼ばれる方法は、これまでのECTに比べ、比較的安全でしかも100%に近いほどの効果がありますから、うつ病であればかなりの効果が期待できます。

 私の知る限りでも、例えば東京でしたら、国立精神神経センター武蔵病院、都立荏原病院、NTT東日本関東病院、JR東日本東京総合病院など、関西なら滋賀医科大学附属病院など、全国の多くの総合病院で修正ECTを受けることが出来ます。

 とにかく本人が受診を嫌がっているのも病気のせいですから、手をこまねいていては何も解決しません。まず、他に1人でも2人でも、相談できる親戚を探して下さい。そして、貴方一人でも構いませんから、入院できそうな、できれば修正ECTもやっている総合病院精神科を受診して、入院予約をして下さい。入院の日にちを決めたら、お母さんに、貴方はうつ病だから入院治療すれば必ず治ると言われたので入院を決めてきた、と話して下さい。本人をだましてこっそり入院させるのは絶対にいけません。嫌がりそうなら、入院当日手伝ってくれる人を捜して、押し込んででも何とか車に乗せて、病院に連れて行って下さい。

 病院で診断を受け、治療方針が決まれば、後は医師や看護婦に相談できるでしょう。

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母が3年以上うつ状態のままです。このまま治らないのでしょうか?

  母は68歳ですが、3年前に仕事を退職してからうつ病になりました。毎日身体がだるいと言っていますが、薬はどれを飲んでも副作用が強く、結果がすぐに出ないことにいらいらするためもあって、薬をしばしば変更してもらい、今は「ドグマチール」を処方されていますが、効果はありません。本には、「うつ病は必ず治る」と書いてありますが、これだけ治らないことが続くと、私も本人も、「このまま治らないのではないか」と思い始めています。

Q1: うつ病が治らないこともあるのでしょうか

 うつ病という診断でよいのかどうか、これまでの治療内容などよくわかりませんので、医師としての責任を持ったお答えは出来ませんので、あくまでも参考程度の答えですが…。  

 2年もうつ状態が続いているすると、「難治性うつ病」と言って良いと思います。抗うつ薬が副作用で十分量使えていないのでしたら、電気けいれん療法(ECT)を考えても良いと思います。厚生省のうつ病治療ガイドラインでも、どの薬も効果がなければ最終的にはECTを行うことになっています。

 上の質問でも書いた通り、最近広く行われている「修正ECT」と呼ばれる方法は比較的安全で、90%位の方に効果がありますから、うつ病であればかなりの効果が期待できます。これは通常手術室で全身麻酔をかけた状態で行います。ECT自体は10分程度で終わってしまうあっけないほどのものですが、週2回、計5-8回位で、多くの場合うつ病が改善します。

 最近では、多くの総合病院精神科で修正ECTを受けることが出来ます。どんな治療法にも副作用や危険はありますし、ECTの場合も頭痛、記憶障害などの副作用が出る場合がありますので、その辺は担当医によくご相談下さい。

 たしかに、うつ病と診断されていても治らないままに痴呆状態になってしまったりすることもないとは言えませんが、最後の手段であるECTをする前に、治らないとあきらめてしまうのは早いです。

Q2: 担当医が替わってから、「横になってばかりではだめ」と言われましたが、本にはうつ病の時はなるべく休むようにと書かれています。どうしたら良いのでしょうか?

 なるべく自分にとって楽で休める生活をしてもらった方が良いのですが、出来る限り1日の生活のリズムを保ち、日の光にあたることは必要です。気が向けば、散歩など軽い運動はした方が良いですが、絶対に無理強いしてはいけません。 

Q3: 先生に「性格を直さないとうつ病は治らない。考え方を変えなければいけない」と言われました。病人が考え方や性格を変えるなんて、簡単にできるものでしょうか。それに、性格が簡単に治る位なら、最初から病気になんてならないと思うのですが…。

 どんな性格の人でもうつ病にはなります。性格を直さないとうつが治らない、と言うことはありません。うつ状態のために元々の性格がより強調されて、例えば元々依存的な傾向のある人が子供のようにだだをこねたり、ということはよくあることです。この場合、逆にうつ病が治れば性格が治る、と言っても良いくらいです。

 うつ状態に特有の、悪い方に悪い方に考えてしまう考え方を修正する方法は、「認知療法」として定式化されています。しかし、これは本人にやってみようという気持ちがあって初めて出来るもので、周りが強制するものではありません。

 主治医の先生にどのような説明を受けたのかわかりませんが、「考え方を変えないと治らない」でなく、「うまく考え方を修正することでうつ病が治ることがある」とお考え下さい。

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認知療法を受けたいのですが…

Q: うつ状態が長引いていますが、担当の先生は薬を処方するだけで、あまり相談に乗ってくれません。認知療法、行動療法などに興味を持っていて、薬の他にこうした治療をどこかで受けられたら、と思っています。どうしたらよいでしょうか? 

A: 認知療法的な面接という程度なら、多くの精神科医がしていると思いますが、本格的な認知療法は1セッション1時間位かけるもので、保険診療の枠内では難しいと思います。(ご指摘の通り、精神科も、内科とさして変わらない3分診療の場合が多いのです。一人一時間診察していると、病院の採算がとれないからです。) 保険で薬物療法を受けながら平行してカウンセリングを行った場合は、自費で11時間800012000円位というのが相場だと思います。認知療法を受けられる施設については、「カウンセリングについて」をご覧下さい。

ただ、認知療法も薬物療法同様、万能ではありませんので、過度な期待は禁物です。専門の先生に認知療法をお願いしている私の患者さんの感想は、「…まあ大体予想した通りの内容でしたが、それ以上でも以下でもありません」というものでした。自習でもある程度役に立つと思います。詳しくは、「うつ状態の過ごし方」をご参照下さい。

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子供が躁うつ病を発症するのを予防する方法はありませんか?

 45才の主婦です。躁うつ病で7年間通院し、薬を飲んでいますが、いまだに症状がなくなりません。以前よりよくなったと感じるのは、そうとうつの間に症状のない期間が少しあるようになりました。また、うつが軽くなったような気がします。

Q1: 少しずつでもよくなれば、治療の効果が出ていると思ってよいのでしょうか?

A1: そうです。リチウムの効果は、飲んでいれば100%病気が止まるという方はおよそ3分の1で、多くの人では軽い病相が残ります。貴方の場合も薬の効果はでていると考えて良いでしょう。他の薬と組み合わせて少しでも症状を軽くしながら、うまく病気とつき合っていくと良いと思います。

Q2: 遺伝のことがとても気になっていたのですが、それほど心配することはないと分かって、少し安心しました。ただ、20歳の娘がおり、高校の時に不登校になり、病気の始まりではないかと言われました。母から娘へ遺伝するケースが多いと聞きましたが、そうなのでしょうか?

A2: 一般に女性の方が男性の2倍位うつ病になりやすいのです。躁うつ病(双極性障害)の方のご家族も同様で、娘さんの方が息子さんよりうつ病のリスクは多いと思います。しかし、うつ病自体は女性の25%が一生のうち一度はなる、というものですから、双極性障害になったり、再発を繰り返すのでなければ、それほど心配しなくても良いのではないでしょうか。また、母親が双極性障害の場合と父親が双極性障害の場合で、子供の発症率には明らかな差はないと言って良いと思います。

Q3: 娘は現在のところ落ち着いていますが、娘のために何か気をつけてやられることはないのでしょうか?

A3: 親が躁うつ病を持っていても、精神的に問題なく普通の社会生活ができている人たちの特徴は、1)親の病気を冷静に理解していること、および2)親と自分を別の存在として行動する傾向があること、の2点だそうです。ここから、お子さんの躁うつ病発症を予防するためには、1)お子さんが親の病気(躁うつ病)のことをよく理解すること2)あなたとお子さんが、大人どうしのコミュニケーションを築けるようにしていくことの2つが有効と考えられます。

 具体的には、1)時には子供と一緒に病院に行って、医者からよく病気の説明をうけること、2)子供を(自分の一部ではなく)一人前の大人として扱い、お子さんが親に対してそのように振る舞うよう期待する、ということが良いと思います。

Q4: 主治医に、家族、肉親に同じような症状の人はいないかと聞かれましたが、心当たりはありません。が、そのような体質かどうか、また、子供にそのような体質が遺伝していないかということを調べる方法はないのでしょうか?

A4: 躁うつ病になりやすい体質は、一つの遺伝子でデジタルに決まるものではありません。おそらくは何十、何百という遺伝子の組み合わせてなりやすくなったりなりにくくなったりするのだと思われます。ですから、お子さんの場合も、なりやすい体質かなりにくい体質か、2つに1つという訳ではありませんので、考えても仕方ないし、もちろんそれを調べる方法も今のところ無いと思います。

血小板の情報伝達機能(セロトニンに対するカルシウム反応の亢進)は、躁うつ病になりやすい体質を反映すると考えられていて、躁うつ病のなり易さを調べる検査として有望だと思いますが、血小板の機能により発症が予測できるかどうかを調べた研究がまだない上、多めの血液が必要で検査法も難しいので、今のところ実用化はされていません。

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どうやって医師や病院を選んだらよいのでしょうか?

Q: どうやって医師を、病院を選んだらよいのか非常に迷っています

 私の弟が躁うつ病で入院しています。3年前に初めて躁状態で入院しました。1週間ほとんど眠らず、新宿でふらふらしているところを、家族が集まって何とか抑え、病院に連れていきましたが、「オレは新宿で一番だ!」などと言い、自分はすごい、ということをずーっとしゃべり続けていました。

退院時は調子がよかったのですが、担当の先生が替わり、その先生は「カウンセリングはしない。薬だけで治す」とおっしゃって、弟の話にはあまり耳を傾けてくれませんでした。例えば、弟が「福祉関係の仕事に就きたいと思っているんですけれども」といっても、「そんな口、ないでしょ」とあっさり言われてしまったこともあったようです。(私も詳しいことは解りませんが・・・。)

昨年また躁状態で入院しましたが、退院後、薬で気持ちが落ちすぎ、うつ状態になって自宅で自殺を図ったことがありました。先生の言うとおりに薬を飲んでいたのに、何故そんな風になるのか、私たち家族も憤りを感じました。そのときも、その先生は「じゃあ、薬を減らしましょうか。」と、あっさりしたものでした。

今回、処方箋の通りに毎日欠かさずに服薬し、しかも外来治療も熱心に通っていたにもかかわらず、また調子をくずし、3度目の入院をすることになってしまいました。我々家族は、言われた通りにしていただけなのに、なぜこういう結果になるのか、腹立たしくて仕方ありません。担当の医師に対して、不信感が募るばかりです。

今後、退院してきた場合には、医師を変えようと思っています。

どうやって医師を、病院を選んだらよいのでしょうか?

A: 正直なところ、医者同志ではどの先生が良いか、というのはわかりません。

本をたくさん出している有名な先生でも、患者さんにとってはそうでないこともありうるし、その逆もあるでしょう。第1、有名な先生ほど患者さんがいっぱいだったり、実際には管理職であまり患者さんを受け持っていなかったりで、直接診てもらうことが難しくなります。また、大きな病院では、希望に応じて主治医を選べる病院は少ないと思います。また、大学病院はどうしても医者がすぐに入れ替わるので、長く同じ主治医とつき合いたい方には必ずしも好都合とは言えません。私自身が良い医者かと言えば、Yさんが主治医に思っているようなこと(薬ばっかり、なぜ言うとおりにしているのに再発したのか、など)を、私に対して思っている方も多いと思いますし、実際に言われたこともあります。

一つは、本当にその医者がひどい医者なのか、病気が治らない怒りを医者にぶつけているだけなのかを振り返っていただきたいと思います。(こうした気持ちの動きを心理学用語では投射projectionといい、誰にでもよくあることです。) Yさんが「あっさり言われてしまった」と感じたことは事実と思いますが、その医者の言い方が悪かったとは言い切れません。

 確かに医者の技術の問題はありますが、どんなにうまく治療しても、なってしまった躁状態はその後うつ状態を経由してからでないと治らないことが多いのです。すなわち、躁とうつは1セットの病相として襲ってきます。その場合、躁→うつという一連の波を予防しない限りうまく予防できないものです。

正直なところ、躁状態の方を積極的に引き受けようという病院、医師は多くありません。ご家族の方々が苦労しておられるのと同様、医者にとっても躁状態の方の人格を尊重しつつ、患者さんにつらいことを言われたりするストレスに耐えながら治療を続けるのは大変なことだからです。ですから、不用意にこの病院が良い、などと書くのは気が引けます。

一般論としては、激しい躁状態を伴う「双極I型障害」なら、入院を待たされたり開放病棟しかない大学病院や外来クリニックよりは、単科の精神病院が良いかも知れない、軽躁状態しかない「双極II型障害」なら、外来クリニックが良い、「病院」の名前よりも、「医者」との相性を考えよう、と言ったところです。

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電気けいれん療法について教えていただきたいのですが…

 父は現在、64歳です。青年期よりうつ病をわずらっており、現在も精神科に行って投薬を受けておりますが、薬の副作用等が心配であまり使用したくないようです。

父は44年前に「電気ショック」(電気けいれん療法)を受けたことがあり、その時の効果の著しさを実感しているため、再度電気けいれん療法を受けたいといっております。 父は電気けいれん療法を頼んでも地方の病院等では受けさせてくれないのではないかと、首都圏で電気けいれん療法を実施している医院や病院、クリニックを探しています。電気けいれん療法についての基礎的なこと、またそれらを実施されている病院等がありましたらご教示下さい。よろしくお願いします。  

A:適応があるかどうかがまず問題です

電気けいれん療法の暗い過去

お父さんが受けられた時代の「電気ショック」は、おそらく簡単な麻酔程度で、けいれんを伴うものだったと思います。こうした方法(有けいれんECT)は、薬物療法のない時代には濫用され、十分な安全管理が出来ない状態で行われたこともあったため、事故により亡くなられた方もあったと思われます。また、見た目が残酷なこともあって、逆に懲罰的に使われたこともあったと言われています。

実際の方法

他の質問でも書いた通り、現在の「修正ECT」と呼ばれる方法では、手術室で、麻酔科医による全身管理の元、全身麻酔をかけた状態で、筋弛緩剤によりけいれんがおきない状態にして頭部に数秒間の通電を行います。ECT自体は10分程度で終わってしまうあっけないほどのものですが、週2回、計5-8回位で、多くの場合うつ病が改善します。

なぜ効くのか?

この方法がなぜうつ病に効くのか、まだ完全には解明されていませんが、一つは、通電後の脳内のけいれんにより、多量の神経伝達物質が放出され、その受容体の働きが低下することにより、受容体の過敏性という、うつ病に伴う脳内の神経伝達異常を改善する、という考え方です。これは抗うつ薬の作用メカニズムと似ています。もう一つは、けいれんを誘発することにより、逆説的ですが、脳にけいれんに抵抗する働きが生じ、「けいれん閾値」が上昇することが作用と関係するという説です。これは、躁うつ病に抗てんかん薬が有効という事実と関係がありそうに見えます。いずれにせよ、まだはっきりしたことはわかりません。

どこで受けられるのか?

厚生省の躁うつ病研究班の調査によれば、最近では、大学病院・総合病院精神科の約75%で「修正ECT」が行われていますので、首都圏でないと受けられないということはありません。入院設備が必要なので、クリニックでは行っていませんし、麻酔設備と麻酔科医が必要になるので、単科の精神病院ではあまり行われていないと思われます。

副作用は?

副作用のない治療法はありませんが、ECTの場合も例外ではなく、頭痛、記憶障害(記銘力の低下)などの副作用が出る場合があります。また、施行直前の記憶はほとんどの場合失われます。また、ごくまれ(5万回に1回と言われていますが、その実態は必ずしも明らかではありません)ですが、不整脈による心停止などの死亡事故もあり得ます。 (ECTの詳細については解説をご覧下さい)(なお、東大病院では、現在諸般の事情によりECTは行っておりません。)

 さて、お父さんの場合の適応についてですが、この「修正ECT」は、以前の方法に比べればずっと安全とは言え、やはり多少なりとも危険を伴う治療法ですから、「薬の副作用が心配」という程度の理由ですと、ほとんどの病院では電気けいれん療法(ECT)の対象外とされてしまうと思います。

お父さんの場合はまず、「どんな症状が治っていないのか」「薬を飲むのがなぜ嫌なのか」をよく主治医と話し合い、適切な治療法をよく相談することが第一と思います。すぐにECTを受けられる病院を探すというのは、あまりにも早計ではないでしょうか。

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Q:気分変調症になる人は未熟で依存性が強いと言われましたが本当でしょうか?

 私は東北で産婦人科医をしている27歳の女医です。

 軽症の鬱病と診断されて、もう3年近く精神科に通っていますが、よくよく考えてみると、学生の頃から発症していたのかもしれません。薬物療法と、忙しくてなかなか通えませんが、精神分析も受けています。最近知ったのですが、私の詳しい病名は「気分変調症」だそうです。朝になると最悪の気分と、得体の知れない全身倦怠感におそわれながら、ギリギリの状態で出勤し、午前中の診療をし、お昼を過ぎた頃から、少し楽になり、帰る頃にはだいぶ楽になりますが、家へ着くと、布団に潜り込んでぐったりしています。でも、何とか働けているし、他の人ともふつうに話しているので、自分ではとてもきついのだけれども、病気とは思われず、苦しい胸の内を周りの人に理解してもらえず、伝えられず、つらい思いをしています。

 ある本には、気分変調症になりやすい人は、未熟で、依存性の強いと書いてあるのをみて、自分を責めても仕方がないことはわかっていても、この性格がいけないのか、自分はわがままな人間なんだ、と自分を責めてしまうという悪循環に陥ってしまいました。

 大うつ病エピソードに関する情報は結構多いですが、自分の病気のことについてかかれているものはあまりないようです。軽症でも抑鬱か強いときはとてもつらいです。

 気分変調症に関してもっと詳しく教えていただけないでしょうか。

 これからもこの病気とつきあっていかないといけない私や、同じ病気で悩んでいる方のためにもお願いします。(A

 

A: 

気分変調症とは何か?

 気分変調症は、大うつ病の診断基準(5つ以上の症状が2週間以上)のうち、症状数は少ないが2年以上の長期にわたっている場合を言います。ご指摘の通り、旧来性格的問題によるとされてきた「抑うつ神経症」が名前を変えた診断名ではありますが、名前が変わった理由は、こうした方の場合、抗うつ薬による薬物療法が有効な場合が意外に多いことから、気分障害の範疇で考え、積極的に薬物療法を行うべきであるという考えに基づきます。実際、気分変調証と思って抗うつ薬で治療していたら躁転した、という場合も少なくなく、まずはうつ病として薬物療法を行うべきだ、というのが最近の一般的な見解と思います。

 気分変調症は、「軽症のうつ病」と見なされがちですが、その社会機能の障害はうつ病の同等以上と言われており、深刻な問題です。

気分変調症と性格

 さて、Aさんの性格は私にはわかりませんが、「気分変調症になる人は未熟で依存性が強い」などと一概には言えないと思います。たしかに未熟、依存的、という性格はうつ病のリスクファクターの一つではあり、統計学的にもそう言う方が多いようですが、全員がそうだという訳ではありませんし、長期のうつ病の症状そのものによって、一見もともとそういう性格であるように見えている場合も少なくないのです。

 うつ病ではメランコリー親和型性格、躁うつ病では循環性格と古くから言われていましたが、これらは病気にかかったあとで性格を調べたものであり、病気そのものの影響を強く受けています。若い頃に性格を検査し、その後の発症を調べた前向き研究(Angst 1986, Hirshfeld 1989)では、躁うつ病(双極性障害)と循環性格の関連は否定的ですが、うつ病に関しては、神経質、内向性などの性格が発症と関係しているのは確かなようです。

 気分変調症では、うつ病よりも「人格障害」の合併が有意に多いとされ、気分変調症は性格の問題の場合と、気分障害に位置づけられる場合と、大きく分けて2つに分けられるとの考え方もあるようです。

気分変調症の治療

 気分変調症の治療としては、抗うつ薬のRCT(無作為化対照試験)が3つあり、imipramine(三環系抗うつ薬)、sertralinefluoxetineSSRI)、moclobemide(MAO阻害薬)などがプラセボに勝る効果があり、有効性は5070%と、うつ病と同程度でした。

 精神療法の有効性を示した確実な報告はまだありませんが、無効であると証明された訳ではなく、どんな精神疾患でも精神療法が有意義なことは言うまでもありません。精神分析が有効かどうかは、ケースバイケースでしょう。

 自分でもできることとしては、うつ病への有効性が証明されている認知療法を試みてみてはいかがかと思います。自分の性格を責めても何も解決しません。性格はそう簡単に変わりませんが、自分の性格を良く知り、それとうまくつき合うことは出来るはずです。

(古川壽亮: 気分変調症、臨床精神医学講座第四巻 気分障害p257-272、中山書店 などを参考にしました)

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Q:うつ病の友人にどうアドバイスしたら良いでしょうか?

 友人でうつ病になっている人がおり、そのため色々と文献を当たったり、先生のホームページも見て自分なりに勉強しました。その中で私なりに、「心因性うつ病は、一種の自己防衛的な状態であり、あるストレスに対して、心理的に対応できないために、うつ状態となることにより、その期間に心の中でそのストレスに対抗できる状態、あるいは、自分の中で受入れることができる状態をつくる準備期間である」という理解をしました。
 それであるならば、心因性の場合は薬を服用することにより確かに非常に苦しいうつ状態から脱却することができ否定的な考えを是正することもできますし、本人としても気分は晴れてきますが、逆に、原因となったストレスに対抗する準備が、心の中で出来ないのではないでしょうか?
 うつ病の治療として、うつとなった根本的な原因を追求するより現時点での問題や不安を解決していく方が良いとありましたし、薬を服用することにより、脳内の神経伝達物質の量も増加し医学的には不安を解消する準備が出来るように思いますが、果たして、それで本当の意味での心理的な準備もできるのでしょうか?
 現在、その友人から色々と話を聞いており自分としても、出来る限りアドバイスをしてあげたいと思っています。  是非ご回答をよろしくお願いします。

A: 友人としてできることは、アドバイスよりも心の支えになることです。

うつ病のご友人へのアドバイス、ということですが、あまり専門的な理論に基づいて「アドバイス」をされなくても、ふつうに優しく支持的に接して、よく本人の話を聞いていただければよいと思います。
うつ状態で落ち込んでいる人が、友人に必要としているのは、アドバイスではなく、こころの支えなのです。
理屈でいろいろ考えてアドバイスするより、真心に従って接した方が間違いは少ないということです。(支持的精神療法に比べると、指示的な精神療法は、副作用もありえます。生兵法は危険と言うことです。)
うつ病の方にどうアドバイスすべきか、専門的なやり方を身につけたいということであれば、今回は心理士や医師に任せつつ、そのやり方を見守り、もしあなたがさらに勉強されて、専門家になって独り立ちしてから、その後ほかの方々に助けになっていけばよいと思います。
冷たい言い方と思われたら申し訳ありませんが、お友達のことも考えてあえてはっきり書きました。
なお、ストレスはうつ病のきっかけにはなりますが原因ではありません。治ったときには、何であんなことで悩んでいたのかなあ、と思うこともあるのです。

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Q:母が膠原病(SLE)から躁病となりました。今後が心配です

 母は、SLEの病状が最悪の時に、言動がおかしくなり躁状態となりました。今まで、精神的には全く健康で気分的に落ち込む事も、ノイローゼにもなった事はありません。明るく面倒見の良い人です。主治医の先生は、膠原病が良くなれば頭の方も治りますよ。とおっしゃって下さいました。しかしこの先、再発は全身性エリテマトーテスが原因の場合、どの位の割合で起こるんでしょうか?

 発病の原因はなんであれ、再発の確率というのは、みな同じなのでしょうか? 膠原病の上、躁病(まだ、うつにはなっていませんが、もしかしたら躁うつ病になるのかな?)を背負うのは、娘として辛いし、母がかわいそうでしかたありません。

 いままで、SLEから躁病になられた方の、その後の躁病の再発の程度はどの位か、教えて下さい。母は今までステロイドを嫌い、今回が始めてのステロイド投与なので躁状態はステロイドによるものではなく、病気の進行の為のものです。

 母や家族はいつか再発するかも、と心積もりをして生活した方がいいでしょうか?

 ぜひ、よろしくお願いします!

A: 膠原病による躁状態は躁うつ病とは全く別の病気です。

 SLEは、脳の炎症、血管の炎症などを来すこと、治療に用いる副腎皮質ステロイドの作用など、様々な因子の相乗効果により、高い頻度で精神症状を伴う病気です。膠原病が悪化したときには、軽い意識の障害(昼夜がわからなくなったり、周囲の人を別の人と間違えたり、といった症状が見られます)を伴って躁状態が出現することがありますが、こうした状態は比較的よく治ります。こうした場合、情動の不安定さ(涙もろくなったり、逆に笑いころげたりする)が目立つなど、ふつうの躁うつ病とは症状からも区別がつきます。この場合、再発の予防はSLE自体のコントロールということになり、治療薬もリチウムなどの躁うつ病の薬よりも、ステロイド剤が中心になるでしょう。一方、脳の血管の炎症によって、脳梗塞などの病変ができてしまったことによる精神症状の場合は、症状が治りにくい場合もあり得ます。

 お母さんの場合がどのような症状なのかはよくわかりませんが、主治医の先生のご説明によれば、SLEの調子が良くなれば良くなる、というのですから、前者に該当すると判断されているのかもしれませんね。

 いずれにしても、ふつうの「躁うつ病」とは症状も治療も異なり、私にとっても専門外なので、担当の先生によく相談してください。

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Q:母がまた自殺未遂をしました。家族は皆疲れ果ててしまいました 

 母がまた自殺未遂をしました。2週間分の睡眠薬とアルコールを飲んだのです。

 きっかけは父の浮気です。

 父に暴力を振るい、アルコールを大量に飲み、酔った勢いで自分の体に傷をつけ、親戚中に「私はこれから死にます」と電話したり、睡眠薬を大量に飲んだり…。

 これだけのことをして後でケロっとしているのが不思議ですが、覚えていないというのです。

 母は前から不眠症で精神科のクリニックで薬をもらっていましたが、主治医の先生は「病気じゃない」といっています。

 うつのときはなるべく話を聞いてあげて下さい、と言われても、毎日毎日朝夜関係なく、会社にまで電話して来て過去のことばかり話してきて、興奮すると止まらないし、気に入らないことを言われると逆に激怒するのではたまりません。もう何年もです。はっきりいって家族は皆疲れ果ててしまいました。

 私は、これからどうしていいのかわかりません。これから先ずっとと思うと心が暗くなってしまいます。

 入院すれば治るのでしょうか?

A: お手紙の内容のみでは、うつ病なのかどうかを含め、判断できないので、何とも申し上げられませんが、ご家族の悲鳴は主治医に伝えた方が良いと思います。

 うつ状態における3大入院理由は、

 1)自殺の恐れがある

 2)食事がとれない

 3)家庭看護困難

 です。お母さんの場合、1)3)を満たしているわけで、こういう状態であることは主治医に訴えた方が良いと思います。

確かに、うつ病でなく性格の問題と判断した場合、入院では良くならない、あるいは入院することで悪くなるのではないか、と医師が判断することもあり得ます。

しかし、たとえ「うつ病ではない、性格の問題なので入院だけでは治らない」と言われてしまった場合でも、「今回の入院で完全に治らなくても良いから、家族を一時休養させてほしい」などと訴えれば、主治医もわかってくれて、たとえ期限付きにしても、入院を考えてくれるかも知れません。

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Q:躁病の伯父が借金を作って困っています 

 私の母の弟は現在五十代の前半ですが、躁うつ病のようです。会社員として勤めてきましたが、借金の催促電話がひどいことから、ついに「入院か退職か」と宣言されました。その母である私の祖母も、アルツハイマー病型老年痴呆になり、祖父はもう亡くなっているので、私の父母が世話にあたっています。

叔父は浪費癖が昔からひどく、最近はサラ金からの多額の借金を返せず、退職金の前借までしていて、残る財産は祖母と共同名義の土地だけです。さらに悪いのは、叔父が一年程前に再婚した妻です。「精神病の夫とは一緒に住めない」などといって、叔父の世話を全くしないくせに、お金だけはしっかり握り、莫大な借金があるのがわかっていながら、百万円もする指輪を買わせているそうです。恐らく財産目当ての結婚で、退職金や年金など、取れるだけ取ったら。すぐいなくなるだろう、と私たち誰もが思っています。今はその妻と組んで、祖母の意向を無視して、私の父母の言うことも全く聞かず、勝手に土地を売り払おうとしています。

叔父は病院へやってきて、痴呆でわけのわからない祖母に怒鳴り散らし、無理やり同意書にサインさせようとしました。見ていて背筋が凍る想いがすると同時に、何と哀れな人だろうと思いました。精神科は受診しているのですが、先生は「分裂病のような躁病のような…」と曖昧なことしか言ってくれません。

今は好き勝手ができ、奥さんもいて、本人はいいのです。私たちも今のままならいいのです。でも、この調子ではあっという間に財産などなくなり、会社からは退職を迫られていますから収入も途絶えます。奥さんはそのうち見切りをつけていなくなるでしょう。

 そうなったとき、私の家族に助けを求めてくると思いますが、私たちはもう叔父に迷惑な感情しか持っていません。

 勿論病気ですから、治るなら一番良いのですが、今までのことを思うとよくなるとは思えません。そして本人に病識は全くありません。配偶者も頼りになりません。ですから任意入院は出来ません。そしてお医者様は、躁病に詳しくないのだと思います。私たちは八方塞りで、未来に怯える毎日です。

 躁病に詳しいお医者さんに巡り合って受診出来ないか、もう治らないものなら、長く入院させてくれる病院や施設などがないでしょうか。

 

 A: お話を伺いますと、叔父さんを病院へ入院させるのは、保護者である妻が同意しない限りは無理のようですね。

叔父さんの行動は確かに行き過ぎているようですが、あなたとは利害関係があるので、単なる叔父さんの精神疾患の問題として、(たとえば措置入院といった形で)単純に解決するのは難しいのではないでしょうか。

 お話を伺った限りでは、まず痴呆のおばあさんの後見人を早めに決め、叔父さんが勝手におばあさんの財産の名義を書き換えたりできないようにすることが第一でしょう。(これも相当もめそうですね)

 次に、叔父さんも、被補助人制度を利用して借金を不可能にできれば良いでしょうが、奥さんがそんな具合だと難しいかもしれません。

 いずれにせよ、医者よりは弁護士に相談した方が良いと思います。

 こうした成人後見人制度については、MOKAさんのホームページ(躁うつ病・躁病患者会)に紹介されています。

 

 http://www4.justnet.ne.jp/~hana_fan2/souutubyou/souutubyou/souutubyou.html

 

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Q: 部活の後輩が躁状態でセクハラをして困っています。

私は大学生です。部活の後輩に気分障害の男子がいるのですが、このところ躁状態が続いており、先輩女性に対してセクハラ行為をしています。周囲が注意すると、しばらくはおとなしくしているのですが、またそうした行為をし始めます。セクハラをされている女性が「やめてよ!」というと、「××さんが冷たい。僕がこんなにも愛しているのになんでそんなに冷たくするの〜?」と言ったり、周囲が注意すると、行為はやめますが、「みんなが僕に冷たい。みんなが僕の邪魔をする。僕には敵しかいない。」とか、言っていじけます。

 一体、周囲やセクハラを受ける被害者はどういうアプローチをすればいいんでしょうか? さらに、これから新入生が入部する可能性もありますのでそのことについても、意見等を聞きたいのですが…。

  突然で申し訳ありませんが、彼が社会に出た後のことをとても心配しておりますので、教えて頂けませんでしょうか?

A: こうした問題は、なかなか対応が難しいです。以下は、私の考えであって、一般的意見でも定説でもないし、他に解決法があるかも知れません。あくまでも、参考までに、ということです。

 会社であれば責任上司から注意してもらい、「病気のせいなら、病気が治るまで出勤しないように」と指示してもらうことができますが、学生だとそうも行きませんね。

 まず、この人の家族に相談して、状況を伝えた方が良いと思います。家族の方が、病院を受診させるなり何なりの対応をとってくれるかも知れません。

 家族があまり対応してくれない場合どうするか? 

 これは難しいです。

 強制的な治療の対象になるのは「警察沙汰」だけで、「迷惑」と「警察沙汰」の間には大きな隔たりがあり、そうした対応は出来ないでしょう。

 基本的には、周囲の人は病気だからと思ってあきらめたり腫れ物にさわるようにしないで、常識的な対応をした方が良いと思います。まず、「××さんが冷たい。僕がこんなにも愛しているのになんでそんなに冷たくするの〜?」と言ったり、「みんなが僕に冷たい。みんなが僕の邪魔をする。僕には敵しかいない。」とか、言っていじけるのは、甘えているだけ。相手にせず、放っておけばよい。彼が、普段の彼を取り戻して、また心の交流を持てるようなら関係を取り戻せばよいが、そう言う行動を注意してもやめないなら、冷たくされても仕方がないでしょう。(そのことで一生傷つく、ということはまず心配しなくて良いと思います。)

 そして、躁状態が治った時に、真剣に話し合うこと、こちらの方が大事だと思います。(躁状態の時に真剣に話し合おうと思っても無理です。)

 「またあのような躁状態になったらとても友人としてつきあえない。きちんと薬を飲んでコントロールしてほしい。薬を飲んでもおさまらず、迷惑行為が続いていて、皆が迷惑と思っている時は、休んでほしい」などと皆で談判して、場合によっては本人の念書を取る。(精神状態が正常なうちに、躁状態での自分の行動についての誓約書を書かせる。living will(生前の遺書)みたいなものです。)

 躁状態になって、事前に書いてもらった誓約書を見せても相手にせず、迷惑行為があまりひどいようなら、顧問の教師に相談して、出校停止等の処置をしてもらう。強制猥褻と言えるほどの行為であれば、告訴するしかないでしょう。

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Q:  躁状態で入院中の弟が退院したがって困っています 

弟が躁病と診断され、いやがるのを無理矢理入院させ、現在治療中です。弟は入院時から比べるとだいぶ落ち着きを取り戻し、多少感情的にはなりますが、以前の状態と変わらない様子です。

そろそろ通院治療にきり変えることはできないでしょうか?

 というのは、職場復帰のことを考えると、30日の診断書提出していますが、弟の地位(管理職)を考えると延ばすことは、地位、昇進、異動のハンデやリストラの対象になるのではと義妹と共に心配しているのです。職場復帰を考え、出たがる弟を無理に入院治療を続けるのが良いのか? 自宅療養で通院治療でも良いのでは? と迷っています。

 担当の医師は、出たがる間は無理との判断です。入院後初めての検査後、薬の投与量も増えたようです。医師の判断から察すると無理と思われますが、私自身多少説明不足の医師に対し多少なりとも不満があるので通院または転院も考えています。ただその結果振り出しに戻っては、何にもならないので迷っています。症状が改善されているので、今の病院では適切な治療であることは理解しています。多分私の聞き方も悪いのでしょうが、もう少し納得のいく説明が欲しいです。

 入院治療と通院治療では、かなり違うものなのでしょうか?

A: 入院中で、躁状態はほとんど改善したもののまだ感情的なところがあり、早く出たいと言っている、という状況であれば、通院治療はまだ早いのではないかと思います。確かに、職場の状況を考えると1日も早く復帰したいのは確かですが、躁状態が残った状態で復帰したら、これもまた社会的生命にかかわります。職場とは、その辺の事情を事前によく説明しておいた方が良いかもしません。多くの会社は、多少早く復帰するよりも、完全に直してから来ることを望むと思います。

 私は、もう少し入院が必要という担当医の判断は妥当だと思います。治療内容に問題があるほどでもなさそうだし、今転院しなければいけないほどではない感じがします。

 暇な医者というのもいませんし、おとなしくしているご家族の方より、ついつい色々聞いてくる方への説明に時間をかけてしまうと言うことはありますから、うるさいくらい尋ねているうちに、この人はきちんと説明しないとだめだな、と思ってくれるのではないでしょうか。

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Q: どうやって躁状態の母を病院に連れて行ったらよいかわかりません

 母が躁状態になり、特にこの23日で逸脱行動が激しくなりました。昨日は家族が帰宅したら家からいなくなっていて、探したら、夜10時過ぎというのに近くの集会場で大きな音で音楽をかけながら掃除をしていました。そのまま深夜まで帰ろうとせず、帰宅してからも朝5時まで話しつづけていました。「帰ろう」とか、「もう寝よう」などというと、「干渉するな」「自分のペースがある」「帰りたいなら勝手に帰れ」などと激怒します。毎日そんな状態なので、一緒に暮らしている家族はみな疲れ果て、限界に近い状況でどうして良いかわからず、途方にくれています。本当につらくて泣き出したいような気持ちで、家族で母のことを話していると父も涙ぐんでしまう程です。今の母は、「自分はおかしくなったわけではない、世の中の全てを悟ったのだ」などと言い張り、「私を少しでも精神病扱いしたらすぐに家出する」とも言っているので、本人の同意を得て神経科に連れて行くのは到底無理な状況です。そういう時どうすればいいのか、無理に保護入院させるしかないのか、もしそうならその具体的な手続きなどについて教えて下さい。

A: これは本当に王道がないのです。

・受診まで

 ご本人はとにかく調子が良いと思っていますが、それなりに困っていることがあります。例えば、自分がやろうと思っていることを家族が止めるのでいらいらするとか。そういった、たとえ本質とは離れていても良いから困っていることを引き出して、何とかそれを医者に相談させると良いと思います。そして、何かでも良いからまず受診し、少しずつ専門の精神科へ受診させるようにし向けます。最後の手段は、結局、兄弟や親戚を集めて力ずくで車にのせて受診させる、ということになってしまいますが、その前に手を尽くして説得した方が良いと思います。

・医療保護入院

精神科に受診して、精神科医の説得により本人が入院します、と言えば良いですが、なかなかそうは行きません。本人が入院を拒むけれど、家族は入院を希望し、精神科医も躁状態で入院しないと本人の危険を招く、ないし他人に危害を与えるおそれがある、と判断されれば、医療保護入院が検討されます。外来担当医が精神保健指定医でなければ、他の指定医が呼ばれて診察し、本人は同意しないが入院が必要、と判断されると、指定医は患者さんとご家族に、精神保健福祉法で定められた文書で、本人の意思に反して入院となることの説明をします。それでも本人が納得しなければ、他の医師や看護婦さんも呼ばれて、注射をして落ち着くようにして、病棟に連れて行きます。

ただし、大学病院や総合病院では、鍵のかかる病棟がないことも多く、その場合はこうした形での入院はできない場合も少なくないと思います。他の鍵のかかる病棟のある病院に搬送する、ということになると、また一悶着がありますので、事前に家族が受診して相談して、どこの病院なら入院できそうかを相談しておき、最初からすぐ入院できそうな病院に連れて行った方が良いと思います。

・措置入院

どうしても病院まで連れていけないという場合、民間救急車などという、屈強な男が何人も来て、車に乗せて病院に連れて行くという会社を使ったご家族の話を聞いたことがあります。しかし、これは何と言っても人権問題ですし、料金も法外(数十万円)のようです。また、一度でもこういうことをすると、患者さんは2度と入院は受け入れなくなるし、家族間の信頼関係が完全に失われてしまいますので、本当に互いの命に関わるような時、すなわち殺すか殺されるかという程の緊急事態以外は、絶対に避けるべきだと思います。そして、それ程の時なら、警察を呼んだ方がましです。警察が介入した結果、「自傷他害のおそれがあり、精神障害らしい」となると、精神保健福祉法の規定に基づき、警察官が保健所に通報します。

その後、警察官が数名で鑑定医のいるところへ連れて行ってくれ、精神保健指定医2名が診察します。その結果、自傷他害の恐れあり、ということだと、措置入院となります。措置入院が決まると、本人のみならず、家族だけの希望では退院できなくなりますので、逆に家族と本人の退院を巡る攻防は回避できます。

・入院してから

本人の意志に反して入院した場合、保護室という特殊な部屋に入ってもらうことが少なくありません。これは、外から鍵がかかり、中からは開けられない部屋で、危険のないように余計な調度品などは置かれていませんし、窓もない場合があります。

こういう場所に入るのは心地よいことではないと思いますが、危険を避けるためには他に方法がありませんし、スタッフが興奮している患者さんを安全に治療するには必要なことです。  

こういう部屋に入ることは、ご本人にとっても愉快なことではありませんし、躁状態で普段以上に頭脳明晰な状態でこのような部屋に入るのはとても辛いことなので、十分眠って安静に出来るように、薬の量を調整します。

 

Q2 躁状態では記憶力が悪くなるのでしょうか?

なお、今の母は自分が過去に体験したつらい出来事などについては驚くような記憶力で延々と話して止まらないくらいなのですが、一方で今日が何日か何曜日かわからなかったり、家族が「今日は○時に帰る」と言って出かけても、まったく覚えていないのです。こんなことは今まで決してありませんでした。躁状態では記憶力が良くなるのでしょうか、低下するのでしょうか?

A2

 これは記憶ではなく、注意の問題でしょう。躁状態では、頭の回転は速くなりますが、注意散漫になるので、人の言ったこと、自分のしたことをいちいち覚えていないのです。

 

***半年後の後日談***

 

4月に地元で医療保護入院した母は、入院先の事情などで一ヶ月後に病院をかわって通院治療となり、一度うつに転じた後、約半年経ったいまではなんとか落ち着いています。

母は加藤先生のご著書2冊やHPの文章(「うつ状態の過ごし方」など)を数回にわたって熟読し、「加藤先生の本にはリーマスのことばかり書いてあるね。私が飲んでいる薬(パキシル)は昨年でたものだから、載ってなくて残念だ。」と感想を漏らしたり、「認知行動療法」を覚えて実践するなど、日々自分の病気に対する知識を深めています。

現在の母の状態としては「退院後の鬱は自覚があるが、躁病だった自覚は今でもない(入院する必要はなかった)。ひどい病院に無理矢理入れられた」と言っているのが気になるのですが、今は定期的に通院して薬もきちんと飲んでいるので、とりあえずは父も私も安心しています。

 

それにしても今回の母のことで一番痛感したのは、本人の自覚がないときに診察を受けさせることがいかに難しいか、でした。

 

 

躁状態になった母はほとんど何も食べなかったので日に日に痩せていき、体力的にも一刻を争うような状態だったのですが,かかりつけの総合病院では「本人の同意がないと診察が出来ない」と言われ、その他の病院でも、同じ理由で家族の相談すら受け付けてくれませんでした。

保健所に紹介されたいくつかの病院に問い合わせてもすべて「ベッドが空いていない」と言われ、県の緊急救急センターに問い合わせてもだめでした。そうしているうちにある日、ついに母が錯乱状態に陥ったとしか思えない状態(家に鍵をかけて父を締め出し、私が家に入ったら訳のわからないことを大声でしゃべり続けている)になったので119で救急車を呼んだ時も、「これだと閉鎖病棟がある病院でないと受け入れてくれないだろうし、そういう病院でベッドに空きがないならたらい回しになるだけなので連れて行けない」と言われるだけでした。結局、衰弱がひどく命に関わるということで一時的に警察に保護してもらうことになり、翌日保健所経由でベッドを無理矢理開けてもらう形になりました。やせ細った母が冷たい留置所に一日留め置かれたことを想像すると耐えられないくらい辛い思いでしたが、万策尽きた結果の、最後の手段でした。警察の方が非常に親切に対応してくれたことと、措置入院ではなく医療保護入院になったことが、せめてもの救いでした。

 

精神的な病の場合、本人の同意がないと診察を受けることさえ難しい・・

人道的な見地から仕方がないとはいえ、これでは今回の母のような自覚のない人をすぐに医師に診せることが、通常ではできないことになります。保健所も救急医療センターも、ベッドが空いていない病院をいくつか紹介してくれただけで実質上ほとんど助けにならず、社会体制の矛盾をしみじみ感じました。

今回の母の場合、警察を通す以外ほかにどんな方法があったのか、いまでもわかりません。もし警察に保護を断られていたら、一体どうなっていたのかとも思います。 

また、家族の精神的ショックも予想以上でした。父は母の入院後、鬱病になってしまい、実は現在も精神科に通院しています。私自身もショックが大きく虚脱状態のようになり、しばらくはカウンセラーに話をきいてもらっていました。今では父も私も大分良くなりましたが、母の入院後しばらくは親戚も含め、皆どうしていいかわからないくらい疲れてしまっていました。

母の入院騒ぎから約半年経ち、こうして嵐が過ぎ去って振り返ってみると、結果的には治療が受けられて快復に向かい、よかったと思います。でも躁うつ病という病気のために、今まで何事もなく暮らしていた我が家に大きな心の傷が出来てしまったことは確かです。精神的な病気など、これまで我が家には無関係のことだと思っていましたが、はからずも躁うつ病という病気に関わってみると、その辛さは当事者の家族や本人でないとわからないかもしれないと思います。

ご著書などで先生の文章を拝見するたびに、躁うつ病のメカニズムが一刻も早く解明されることを祈らずにはいられない気持ちになります。

先生のご研究が今後も進まれることを、本当に心からお祈りしています。

 

コメント

 

 本当に大変でしたね…。

 お母様、良くなられたとのこと、良かったです。躁状態についての自覚は今もないということなので、このままだと服薬の中断が心配ですが、ご家族のご理解と支えがあれば何とかなるでしょう。

 入院のいきさつの問題は、本当に困った問題です。

 20011020日(土曜日)のNHKスペシャル、ご覧になったでしょうか?

 措置入院の現場などを丹念に取材しており、精神医療のある種の問題を浮き彫りにしていました。しかし、それでも、家族の苦悩という視点は全くありませんでした。こういう苦しみが存在する、ということ自体、なかなかわかってもらえないことで、それがまた23重のつらさになってしまうと思います。

 白状しますと、私自身も、大学病院で勤務していたときは、あなたのおっしゃるようなたらい回しに荷担していたかも知れません。保護室もない開放病棟では何ともしようがないと思いながらも、じゃあどうすれば良いの、と言われると答えられなかったと思います。

 こうした問題の存在についてアピールして、よりスムーズな精神医療の態勢を整えていかないといけないと思います。

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Q:主人がうつ病で症状が改善されず、むしろ悪くなっています。

 

うつ病になった直後から先生のホームページを読ませていただいていました。

最近、薬による副作用が出始めたようでやむにやまれずお便りしている次第です。

先生の「うつ病は必ず治る」という言葉を信じて頑張っています。

どうかアドバイスをお願いいたします。

以下、今までの経過です。

 

 主人がうつ病になり、今年の4月から会社を休んでいます。

すぐに本人がうつ病のけがあるのではと近くの心療内科および神経科の医院を受診、現在も通院しています。

 初めは、頭痛、だるさを訴えゆっくり静養するよう言われ、うつ症状の改善のため

坑打つ剤を処方され半年ほど服用しました。

 9月には身体的な症状が改善されましたが、やる気が出ないということで「やる気を出す薬」に替わり、現在も服用しています。

 

 ある金曜日に受診した時の事(薬が変わった直後)、だるさ、脂汗などの副作用と見られる症状が現れ、落ち着きをなくしました。かなり辛かったようで診療時間が過ぎてしまっていたため私が精神科医のいる救急病院へ電話をし指示を仰ぎました。もらった薬名を告げ、説明してもらいこのまま薬を飲むよう言われその晩はがまんしました。

 薬が体になじむまで時間がかかることも理解していたのでその後は落ち着きを取り戻したこともあり、服用を続け、このことも主治医の先生にもお話をしました。

 

 身体的症状が改善されたのであとはやる気が出てくるのを待つという治療法にかわり、薬の服用をしていましたが一向に良くならず一日の大半を布団の中で過ごすという生活をしていました。

 先生にも、やる気がまだ溜まってこないので体を動かすことからまず始めてみましょうと言われ、外に出るよう誘ったりしてきました。

 そうこうしているうちに歩き方が変わってきて、動作も鈍くなり別人のようになってしまい、会社を休み始めた直後にはできていたことがほとんどできなくなり、まるで病人になっていまいました。

 社会復帰はもちろん今の状況では日常生活もままならず不安が募り、先生にお話を伺ったところ、典型的なうつ病とは異なり病的な素質をもっていたか、かなり以前から病気を抱えていた可能性があるので治癒には年単位で考えてほしいと言われました。

 社会復帰を最終目標に気長にこのまま治療を続けようと思っていた矢先、夜寝つけなくなり、脂汗が出て、気分が悪いと訴え、じっとしていられなくなりました。

 一ヶ月ほど前からもらっていた睡眠薬を飲んでもなかなか寝つけない様子で、立ったり座ったりうろうろ歩き回りだしました。

 次の日、さっそく主治医のところへ受診し、状況を説明しとりあえず今の症状(うろうろ落ち着きなく歩き回るといった)を押さえてもらう処置(注射)をしてもらいました。

 口がもつれたり(主人の場合足や体全体が震える)するのは薬の副作用とのことで、これらの症状を押さえる薬と睡眠薬を一錠から二錠に増やしてもらいました。

 

 以上、長々となってしまいましたが今までの経過です。

主治医の先生のことは信頼していますしこれからも根気よく治療していこうとは思っています。が、薬の副作用もうつ病治療のための一過性のものでいずれ治るものなのか、やる気を出すための薬もうつ病の治療に欠かせないものなのか(頭痛など身体的症状がなくなってもうつ病なのかがわからない)

主人の今の病状は客観的に見てどんな状況なのか、こういった症状はごくありふれたことなのか聞きたくて書きました。

 

 もし可能ならば、Q&Aにアドバイスを載せていただけたらありがたいです。

 

A: 拝読しただけでは、正直なところよくわかりません。

 出ている副作用は、「薬剤性パーキンソン症候群」としてはしばしば見られるもので、そのような副作用が出やすい薬は「抗精神病薬」ですが、うつ病でも抗精神病薬を使うことはありますし、主治医の先生がなぜその薬を使ったか、それが客観的に見て妥当かどうかは、よくわかりません。

 また、「立ったり座ったりうろうろと歩き回る」という症状は、うつ病が重症になった時の「焦燥」と呼ばれる症状、逆に躁状態によりじっとしていられないという症状、「薬剤性パーキンソン症候群」による「アカシジア(静坐不能)」という症状、など、色々な可能性がありますが、実際に診察しないとわかりません。

 「うつ病」という診断でしたら、「治癒には年単位で考えて欲しい」というのはどういうことかわかりません。診断が「躁うつ病」や「分裂病」に変更された、というのなら、まだ納得できないこともありませんが、そういう訳でもなさそうですし…。

 いずれにしても、一度、他の医者の意見(セカンドオピニオン)も少し聞いてみたい、と相談して、紹介状をもらって大学病院に行ってみるのが良いのではないかと思います。

 信頼している主治医に、他の病院にも行ってみたい、と切り出すのは、確かに少々勇気のいることではありますが、たとえこころよく思わなくても、心ある医師なら紹介状位は書きますし、そのことで信頼関係が失われることにはならないと思います。 

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Q:母のうつ病が遺伝しているかどうかを調べる検査を受けたいのです

 

私の母はうつ病です。母のうつ病が、私に遺伝しているかどうかを検査する方法があるのかを教えてください。本やインターネットの情報で、うつ病の遺伝に関する一般的な考え方は理解したのですが、私についてはどうなのかを知りたいのです。母が通院している病院の主治医の先生に伺ったのですが、一般的なお話しか聞くことはできませんでした。

私には結婚したい女性がいます。その相手の両親が、うつ病が生まれてくる子供に遺伝するのではと結婚を反対し、一般的なうつ病の遺伝の話だけでは納得してもらえません。遺伝の検査がまだ確立されていなくて、その結果が例え100%信頼できるものでないとしても、検査方法があればどうしても受けたいのです。検査はどこへでも受けに行くつもりでおりますので、どうかよろしくお願いします。

 

: 残念ながら、そういう検査はありません。

 大変深刻な問題なのですが、そもそも、うつ病が遺伝している、遺伝していない、という状態自体が、定義不能です。どんなに素因があってもうつ病にならない人の方が多い上に、家族に誰一人うつ病の人がいなくてもうつ病にはなりますから。結局、環境因(ストレス)の関与の方が大きいということです。

 うつ病の「遺伝素因」というのがあるとすれば、それは多数の遺伝子の組み合わせによるもの(多因子遺伝と呼ばれます)です。一卵性双生児のように、100%遺伝子が同じでも、もう一人がうつ病になる確率は2分の1以下と考えられますし、これが50%の遺伝子の一致となると、急に低下するのが、多因子遺伝の特徴です。

 その多くの遺伝因子の組み合わせが、うつ病になりやすくなっているのかいないのかが知りたいところですが、何しろうつ病の遺伝子研究自体、非常に少なく、関与する遺伝子自体がほとんどわかっていません。そういう検査があり得るとすると、例えば500個位の遺伝子を一度に調べて、発症確率を計算する、というような検査になると思いますが、そのような検査は、残念ながらまだ開発されていません。(将来的には開発したいと思っていますが…)

  500個のうち一つでも知りたい、と思われるかも知れませんが、現在行われている遺伝子研究は、「診断」ではなく、あくまでも「研究」なので、私が関与した倫理委員会への申請でも、「精神疾患にかかわる遺伝子はまだ明らかにされておらず、診断法としての精度が低いため、その結果は被験者には知らせない」と銘記されており、研究に参加していただいても、その結果をお知らせすることはできません。

 遺伝子検査の他では、「バイオロジカルマーカー」(例えば画像診断[前頭葉機能的低活性など]、血液検査[血小板セロトニン刺激性カルシウム反応、培養リンパ芽球細胞内カルシウム濃度]など)で、うつ病は無理でも、躁うつ病のかかりやすさを調べる方法が、今後開発されていく可能性はあり、我々も研究していますが、躁うつ病のかかりやすさとこれらの所見の関連自体がまだ科学的に実証されたとは言えないこと、これらの手法は難しすぎて、簡単に検査できるものではないことなどから、残念ながらまだ確立しておりません。

ということで、現状では、遺伝子検査法を考えるよりも、必要ならカウンセリングを受けるなどして、現在の状況を整理して、御自身が何を一番大切と考えているのかを考え直し、対応策を見つけていく、ということが建設的なのではないかと思います。

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Q: 彼女がうつ病になってしまいました

 

私(28歳男性)の、今つきあっている彼女がうつ病のようです。

病院に行って、薬も飲んでいるようです。仕事を1ヶ月休んだ後、復職しましたが、わずか1週間で、またうつ状態になってしまったようです。

彼女がうつ状態になったのは初めてで、どう対処・接していいかわかりません。

HPを読んで参考にはなりますが、いいアドバイスあったらお願いします。

今は、”もう、いい・・”とか”今までありがとうね・・・”とか、”遠くに行くね”とか言っています。また、食事中も会話がありません。

助けてあげたのですが、どうしていいのか何をしてあげていいのかわかりません。

お手数ですが、いいアドバイスお願いします。

 

A: 少し心配なようです。

たぶん、あなたがお感じになった通り、

 「今までありがとう」とお礼を言う

 「遠くに行く」

というのは、死にたい気持ちを伺わせるような言葉ですね。

しかしながら、うつ病の方に、友人として、恋人としてかかわるのはなかなか難しいことで、家族の方に中心にケアしてもらう他ありません。

なぜなら、うつ病の方は友人や恋人といつもの関係を保つ心の余裕がなくなってしまい、むしろ負担に感じたりすることもあるからです。家族に対してすら、同じような気持ちを持つこともありますが、そうした事態を乗り越えて、最後まで面倒を見ることができるのは結局家族だけのように思われます。

相手に負担にならない形で、心配していること、いつでも待っていることを伝えてはいかがでしょうか。具体的には電話や訪問よりメールや手紙の方が良いかと思います。人と会うのがつらいうつ状態の方にとって、電子メールが生命線になることも確かにあるようです。

また、死にたがっているように見えるときは、すぐにご家族に伝えて、受診(場合によっては入院など)を勧めてもらった方が良いと思います。

 

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