カルシウムが足りないとイライラするというのは嘘だと聞きましたが…?

 

Q: よく「カルシウムが足りないとイライラする」といいますが、「医者がイライラを訴えて診察に来た患者さんに、カルシウムが不足しているから、という診断を下すことはありえない」「イライラを訴えている人にカルシウムを含んだ薬を処方しようとしても保険適用されない」「細胞内カルシウムイオンの調節異常が、不安や抗うつなどの発症に関係しているらしいということから誤解が生じ、いつのまにか広まった」などという噂も聞きます。

 「カルシウムが足りないとイライラする」というのは、全く根拠がないことなのでしょうか?

 

A: 「カルシウムとイライラ」についてですが、血液中のカルシウム濃度が低下する病気で、情緒不安定、集中困難といった精神症状(イライラ、といっても良いでしょう)が起きることは医学的にも認められています。

 ところが、このような病気は、カルシウムの摂取不足で起きるのではなく、ホルモンの病気(副甲状腺機能低下症)やビタミンD 欠乏症で起きるもので、カルシウム摂取の不足によって起きるものではありません。カルシウムを著しく制限した食事をとれば、血液中のカルシウム濃度が低下する可能性はあり得ますが、そのような患者は、現代日本では著しくまれだと思って良いと思います。

 低カルシウム血症の場合、テタニー(筋のけいれん)や、慢性的ならくる病などの症状を伴うことが多く、イライラだけが出現することは滅多にないと考えられます。「イライラ」を訴えて外来を受診された患者さんがいたとすると、他の低カルシウム血症を疑わせる症状、副甲状腺機能低下症を疑わせる病歴(例えば甲状腺の手術等)、あるいはビタミンD欠乏症を疑わせる病歴(極端に偏った食事等)など、いずれかの理由がなければ、「イライラ」というだけで低カルシウム血症を疑うことはまずありません。

 とはいえ、「“カルシウムが足りないとイライラする”という考えは正しくない」とまで言い切るのは、言い過ぎではないかと思います。

 

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