Q: NHKのテレビ番組で、うつ病の多くがテストステロン低下によるものだと知って、自分がうつ病と診断されたのは誤診だったのではないかと心配です。テストステロンの検査を受けた方が良いでしょうか? 

 

A

1117日のNHK「ためしてガッテン」で、うつ病のかなりの部分は、テストストロンの減少(”LOH症候群”)によるものだと放映されたそうですね。

確かに、以前、テストステロンレベルとうつ状態が関係するのではないかと報告されたこともあったようですが(Barrett-Connor E, et al: J Clin Endocrinol Metab 84:573-577, 1999)、その後、複数の研究(Delhez M, et al: Psychoneuroendocrinology 28:863-874, 2003Tancredi A et al., Eur J Endocrinol 151:355-360, 2004)により否定されました。

更に、最近になって、これまでで最も大規模な、しっかりした研究(Wu FCm et al: N Engl J Med. 363: 123-35, 2010)が報告され、テストステロン値とうつ状態には関係がなく、テストステロン値と関係があるのは性機能の低下だけであることがわかりました。

このように、学会では、“LOH症候群”がうつ病の主な原因であるとは考えられておりませんし、そもそも、この“LOH症候群”の概念には議論があるようです。

このように、メディアでは、医学界においては多数意見でない意見が大きく採り上げられてしまう場合もありますので、伝えられる情報の読み解き方には充分な注意が必要だと思います。