双極性障害に伴うパニック発作の治療について

 

もう15年も前に担当させていただいた患者さんですが、「躁うつ病とつきあう」にご登場いただいたあの「Eさん」から、随分久しぶりに近況とご質問をいただきました。15年ぶりにまた「再発」して心配しているというのです。大したことはないようですが…。

 

Q: さて、質問なのですが、以前、寝られなかった時から、ずっとロヒプノール(フルニトラゼパム)2mgを常用していますが、たまに飲まないと寝られません、やはり依存性でしょうか?

 また、今は、昔のような何も全くできないというような深刻なウツはなくなりましたが、20年ぶりにパニック発作(圧迫、息苦しさ、イライラ感などの発作)がでました。こちらの治療はまた別でしょうか?

 

A: お久しぶりです。その後、ひどい躁うつの波が収まっていることは何よりです。リップルの会の由来の通り、小波位はよしとしようではありませんか。

 さて、ご質問ですが、躁うつ病の持病があっても、うつでも躁でもない時は、通常、睡眠導入剤は必要ないと思います。ロヒプノールをたまにやめると眠れないのは、やはり多少は依存もあるかも知れませんね。ごくごく少量ずつ減らせば、何とかやめられると思います。たとえば、1週間に1割ずつ位減らすなどの方法を試みてみては如何でしょうか。そんな細かくは割りにくいですが、院外処方薬局で事情を話して頼めば、多分細かく割ってくれると思います。

 

 次のパニックですが、パニック発作を伴う双極性障害の方は、急速交代型、すなわち年に4回以上再発するような病状を伴うことが多いと言われています。(これはEさんにも当てはまりますよね。大昔の話ですが。) その他、パニック発作を伴う双極性障害の方にはラモトリジンがよく効く、不安障害を伴う双極性障害患者さんの家族には、同じパターン(不安障害+双極性障害)の組み合わせで症状がでる人が多いなど、「パニック障害を伴う双極性障害」は、他の双極性障害とはちょっと異なる、独立の病気だという説が、少しずつ確かになってきています。

 ラモトリジンは、双極性障害のうち、とくにうつ状態の治療と予防に有効と報告されている、期待の持てる薬なのですが、残念ながら日本では未発売です。そのため、現状では、「パニック障害を伴う双極性障害」の場合、双極性障害とパニック障害の治療を平行して行うのが普通です。

しかし、両者が合併した場合、バルプロ酸(デパケン)が有効、という報告もあります。あまり確実なデーターに基づいた論文ではないので、参考程度にしかなりませんが、バルプロ酸を追加で服用してみることで、改善する可能性があるかも知れません。

 

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