脳神経外科の未来・展望
吉峰俊樹
大阪大学
1.脳神経外科に望まれるもの
外科の長所は、他の方法では治せない疾病を手術で治せることにあります。
一方、短所は人体に傷をつけることです。傷が必ず確実に治るという保証はありません。また、手術という「手仕事」には不測の事態もないとは言い切れません。
手術の短所を考えると、行きつく先は非侵襲的治療です。せめて低侵襲化が望まれます。一方では、長所を活かし、不治の病を治す新しい外科的治療法の開発が望まれます。
2.「新しい脳神経外科」の研究・開発状況
脳神経外科における現在の研究・開発は次のような状況にあります。
- 手術の安全性を高めるため、各種の術中機能モニタリング法が研究・開発されていいます。
- 手術の精度、確実性の向上のため、種々の画像誘導法が研究・開発されています。
- 究極の低侵襲治療をめざし、新しい血管内治療技術が開発され続けています。
- 「開頭せずに」、手術を行う方法(収束超音波法など)が研究・開発されています。
- 幹細胞を用いた脳や脊髄の再生医療が研究・開発されています。「神経系は再生しない」という概念はうちやぶられつつあります。
- 神経機能に変容を加えて治療する「ニューロモジュレーション」技術が研究・開発されています。
- どうしても再建できない神経機能を補うため、脳とコンピュータを結合する新しい分野(脳・コンピュータ結合技術、BCI、BMI)が誕生してきました。
3.脳神経外科の未来
脳神経外科は、「神経系を知って」「神経系に手を加えて」「神経系の病を治す」領域です。
現在のところ、脳や脊髄の仕組みやその病変の理解、治療技術はまだまだ不完全です。
これから多くのことが明らかになり、多くの新しい治療法が開発されることと思います。脳神経外科の未来は果てしなく広がっています。