診療体制と診療の現況
現在医療は多くの専門分野で構築され、神経内科、循環器内科、内分泌内科、眼科、耳鼻科、小児科、放射線科、精神神経科、整形外科、形成外科、麻酔科といった多くの診療科とチーム医療を行うことが脳神経外科診療の常識となっています。また、医師のみではなく看護師、薬剤師、理学療法士、言語療法士、放射線技師、検査技師、栄養士と言った多くの職種との円滑なチームワークが患者さんの予後を高めるためには必須であります。また、脳神経外科診療自体も年々高度となり、一個人で脳腫瘍、脳卒中から小児奇形まで診断・治療を行うことは事実上不可能となってきました。すなわち、脳神経外科診療でも「細分化」と「統合」が行われております。細分化されたsubspecialtyは日本脳神経外科学会員が主たる構成メンバーである以下の関連学会を中心として生涯教育、研究を進めております。
- 日本脳卒中の外科学会/脳卒中学会
- 日本脳神経血管内治療学会
- 日本脳腫瘍の外科学会/脳腫瘍学会
- 日本神経外傷学会
- 日本脊髄外科学会
- 日本てんかん外科学会
- 日本定位・機能神経外科学会
- 日本小児神経外科学会
一方、日本脳神経外科学会では医療の質を担保するため「専門医制度」を日本で最も早期に発足し、「専門医訓練施設」を整備し、訓練した医師の技量を厳しく試験して公正に選ばれたもののみを「脳神経外科専門医」として従来から認定してきました。この専門医は前述のsubspecialtyの知識を含め、統合された脳神経外科の知識・技量を持つものとして認定されております。この意味で「専門医訓練施設」は脳神経外科診療の要であり、一年毎に審査され、手術数や種類等の基準に満たない施設については指定が取り消されています。「専門医訓練施設」は大規模の施設(A項施設:全国で382施設、専門医が2人以上おり,脳神経外科手術年間100例以上,うち脳腫瘍や動脈瘤手術など30例以上を施行)と、これと研修プログラムを共有する連携施設(C項施設:857、専門医1人以上おり,脳神経外科手術年間30例以上を施行)とにより構成され、それぞれの施設の特徴を活かして全体として実益ある診療と訓練をおこなっています。 現在全国で日本脳神経外科学会会員は8000名おり、平均年齢は45才、女医さんは約4%です。その中で専門医は約6000人で、各支部の人数は北海道支部(327人)、東北支部(516人)、関東支部(1838人)、中部支部(890人)、近畿支部(1064人)、中国四国支部(678人)、九州支部(662人)となっております。皆様のお住まいの近くで専門医をお捜しの場合は社団法人日本脳神経外科学会HP(http://jns.umin.ac.jp/index.html)から「専門医リスト」をクリックして頂くと、県別の専門医訓練施設とアイウエオ順で検索できる専門医リストが検索可能です。現在日本には脳神経外科のベッドが約5万有ると考えられており、報告されている年間入院数は約80万人、手術総数は17万5千件です。