「アビガンは毒薬」を立証した「観察研究」
―リアルワールドエビデンスが示した「死亡率12倍」
はじめに:毒薬とは何か?
毒薬・劇薬とは、内服や注射をした時など体内に吸収された場合に、人や動物に副作用などの危害を起こしやすい、毒性・劇性の強い「医薬品」であり。薬機法に基づいて厚生労働大臣が指定する。毒薬と劇薬の違いは,動物実験での毒性(致死量)で決められている.ともに普通薬と区別して貯蔵する必要があり,毒薬は施錠保管する.アビガンと同じ抗ウイルス薬では、サイトメガロウイルス感染症治療薬である、ガンシクロビル(先発商品名デノシン)、バルガンシクロビル(同バリキサ) が毒薬に指定されている。通常、毒薬・劇薬は動物実験での毒性(致死量)で決められるが、アビガンの場合には、ヘルシンキ宣言が作成された1964年以降、根絶されたと思われていた「ヒト対象非臨床試験」によって、その毒性が立証された。以下、アビガンが毒薬と呼ばれるに相応しい、極めて頑健なリアルワールドエビデンスを示す。

COVID-19患者に対するアビガンの毒性アビガン真理教事件
COVID-19患者に対するアビガンの毒性については、既に我が国で藤田医科大学を中心として検証が行われており(ファビピラビル等の抗ウイルス薬が投与されたCOVID-19患者の背景因子と治療効果の検討(観察研究)、以下、「とやら観察研究とやら」と略)、その中間報告結果が公開されている。この研究自体では対照が設定されていない。しかし幸いなことに厚生労働省科学研究費「COVID-19に関するレジストリ研究」(以下レジストリ研究)が連携しているので(左の図はレジストリ研究の公開資料より。クリックして拡大)、リアルワールドにおける理想的な対照を提供してくれている。

アビガン軽症群での死亡率はレジストリ軽症群での死亡率の12倍
右の表
は「とやら観察研究」とレジストリ研究の患者転帰を比較したものである(レジストリ研究のオリジナルの表は、とやら研究の結果と比較しやすいように改訂した。(表はクリックして拡大)。
 最も重要なのは軽症群の死亡率である。酸素投与も必要ない軽症ゆえに、アビガンが投与された患者がいたとしてもごく僅かであろうレジストリ研究では軽症群死亡率が0.4%なのに対し、アビガンが全例投与されている「とやら観察研究」では、軽症群死亡率がレジストリ研究における軽症群死亡率の実に12倍、5.1%にも上っている。
 ところが中等症例、重症例での死亡率は、アビガン投与群と対照群で同程度である(中等症でアビガン群12.7%、レジストリ群14.7%。重症でアビガン群31.7%、レジストリ群33.8%)。
 このことは、軽症例における死亡率の差は、ひとえにアビガンによるものであり、他の交絡因子では到底説明できないことを示している。特に軽症群における異常な死亡率の増加については、2020年7月2日付けの薬害オンブズパースン会議による意見書でも重大な懸念が表明されている。
 それでも、軽症例だけでこれほどまでに死亡率が上昇し、中等症、重症ではそのような極端な死亡率の上昇が見られなかった原因がわからないことを理由に、軽症例での死亡率上昇は「受け容れがたい」という感傷論に浸る向きもあるかもしれない。それはそれで結構だが、デキサメタゾンの有効性を示したRECOVERY試験でも、統計学的有意差とはならないまでも、軽症例での死亡率上昇は観察されている(デキサメタゾン群17.8% vs.プラセボ群 14.0%; rate ratio, 1.19; 95% CI, 0.91 to 1.55)。アビガンによる軽症例での死亡率上昇は決して例外的なものではない。なお、軽症、中等症、重症各群の定義については両研究で共通していることを申し添えておく。

 そもそもこの「とやら観察研究」はアビガンの安全性を検証するために行われたものである。その研究が示したこれだけの強い毒性の原因がアビガン以外にあろうはずがない。「とやら観察研究」はアビガンが正に毒薬の名に相応しい薬であることを明白に示している。なお、ここで示したデータはいつもながら、公開されている資料であり、誰でも検証できる。ここに書いてあることは全て、大阪府警科捜研(当時)の土橋均によるでっち上げ同様、秘密でも何でもない。

「とやら観察研究=ヒト対象非臨床試験」の「功績
「とやら観察研究」の問題点は、介入研究を偽装して観察研究と称したことではないそもそも 「とやら観察研究」は臨床研究でさえ無かった。「GCPなんかクソ食らえ、アビガンを恵んでやるとお触れを出せばホイホイやってくる被験者に臨床研究保険なんか要るもんか」。そんなスローガンの下、ヒポクラテスの誓いを破り、ヘルシンキ宣言に違反し、被験者の人権を踏みにじった行為を臨床試験とは到底言えない。それこそ正に「非臨床試験」である。アビガンの毒性が明らかになったのも、 「とやら観察研究」(以下、ヒト対象非臨床試験)の非倫理性ゆえである。この 「ヒト対象非臨床試験」で検証しようとしたのはCOVID-19という未承認効能だけではない。用量も未承認だった。アドレナリンやワーファリンのような古典的でリスクもベネフィットもよくわかっている薬でも、2.5倍投与すれば患者は確実に死ぬ。にもかかわらず用量設定試験もなく、いきなり既承認の2.5倍という、およそ臨床試験では許されないmega-doseを被験者に投与した。これを「ヒト対象非臨床試験」と呼ばずして何と言おうか。タミフルに負け、プラセボに勝てなかった。もちろん何の市販後経験もないアビガンを、人類が初めて経験する病気を負った患者に対し承認用量の2.5倍投与した。それが「とやら観察研究」なのだから、死亡率12倍という数字にも何ら不思議はない

リアルワールドデータが示すアビガンの揺るぎない毒性
有効性を検証するため、内的妥当性(生物統計の観点から見た頑健性)を重視して、交絡因子を徹底的に排除したランダム化臨床試験は、実診療とはかけ離れたおとぎ話の世界で行われる。ここにランダム化臨床試験で得られる安全性情報の限界がある。この限界は外的妥当性(=実診療に見合った)を犠牲にして成り立つランダム化臨床試験の宿命である。一方、レジストリ研究や 「とやら観察研究」は、ともに実診療で得られたデータに立脚して成り立っている。二つの研究の共通点、すなわち、ほぼ同時期に、同一疾患に対して日本国内で診療が行われ、対象患者がほぼ全てが日本人という特徴も、重大な交絡因子を排除し、群間比較を可能にしている。レジストリ研究と 「とやら観察研究」との比較は実診療で得られる最高に頑健な安全性情報を提供してくれている。上述のアビガンの毒性に揺るぎがないのも正にこの点にある。

今様アイヒマン達
薬害オンブズパースン会議が2020年7月2日に「ヒト対象非臨床試験中止を勧告してから既に3ヶ月が過ぎた。しかし、その後アビガンが緊急回収されたという話は寡聞にして知らない。つまり2020年10月現在でも、アビガンは大手を振って世の中を罷り通っている。だから薬害アビガンの犠牲者もどんどん増え続けている。にもかかわらず、富山化学はもちろん、 「ヒト対象非臨床試験」を推進した「専門家」達もサボタージュを決め込んでいるように見えるが、実は違う。毒薬と知りつつ宣伝するほど・投与し続けるほど、芸能人も医師も悪人にはなれない。少なくとも私はそう信じたい。すべては無知が為せる技だ。
 裏口承認の立役者である裸の王様とその取り巻きは2020年9月16日に王宮から華々しく逃亡した。機を見るに敏なることを至上の美徳とする彼らにとって「アビガン」は最早忌み言葉に過ぎない。そんな変わり身の早い裸の王様チームと一緒になり、「アビガンのおかげで奇跡の生還を遂げた」とメディアで盛んに吹聴した芸能人・スポーツ選手同様、医師免許があろうがなかろうがノーベル賞を受賞していようがいまいが、アビガンヨイショで嬉々として踊りまくった連中も完全に梯子を外された
 彼らはなぜそんな羽目に陥ってしまったのか? もちろんそれは彼らの医薬品リテラシーが全員「ゼロ」だったからだ。だからこそ 「ヒト対象非臨床試験」などという前世紀の悪夢が復活し、その「おかげで」毒薬アビガンの正体が暴かれた。そんな彼らはいまだに事の重大さを理解できないでいる。医薬品リテラシーゼロどころか、ヒポクラテスの誓いさえ弁えない彼らは、薬害加害者としての当事者意識もゼロだ。だから自分たちの不作為をサボタージュとさえ思っていない。ましてやアビガンの緊急回収の必要性など思いも及ばない。彼らはアビガンによる薬害の責任など、これっぽっちも感じていない。被告席に座った彼らは異口同音に言うだろう。「私はただ命令に従っただけだ」と。しかしそこには肝心の命令を出した王様はいない。なぜなら「詐欺師達に裸踊りをさせられ、大切な晩節を汚された」と捨て台詞を残して敵前逃亡してしまったからだ。
updated on 18 October, 2020
アビガン薬害の元凶とは―能天気なお医者様達へ
「空気」が生んだ薬害アビガン
薬害オンブズパースン会議.「藤田医科大学アビガン「観察研究」中間報告における死亡者を踏まえた意見書 (新型コロナウイルス感染症に関して)」
裸の王宮と詐欺師達-審判の日に備えて-
アビガン薬害訴訟:2400年前のポツダム宣言
私の内なるアイヒマン
東京裁判2020
薬害アビガン(目次)
法的リテラシー
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