裸の王宮と詐欺師達
−審判の日に備えて−
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GoTo、政権が見誤った世論 二転三転で傷口広げる (2020/7/25日本経済新聞)
「Go To トラベル」が22日から始まった。実施前に政府・与党の方針は二転三転し混乱を招いた。初日に新型コロナウイルスの1日の新規感染者数がそれまでの過去最高を更新し、不安も広がっている。感染防止と経済再開のはざまで世論を見誤った安倍政権の傷は深い。(以下略)
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悪いのは王様?それとも詐欺師?
詐欺師と王様のどちらに「責任」があるか?という問いに対して,多くの人は「見え透いた嘘に搦め捕られた高慢ちきな王様の方に決まっているじゃないか」と答えるだろう.しかし,上記のシナリオの場合はどうだろうか?そもそも詐欺師とはだれだろうか?「第2波で10万人(42万人とも)が死ぬ」とでっち上げた,当代一の理論易学疫学者とノーベル医学生理学賞受賞者の凸凹コンビではないだろうか.だとしたら,本当に王様とその取り巻きに一義的な責任があるのだろうか?
アビガン詐欺だって,騙されたのは王様だけではなかった.取り巻きはもちろん,日本医師会長も,ノーベル医学生理学賞受賞者も(結局は彼らも取り巻きだったわけだが),大学教授を含む数多のタレントと一緒になって「アビガンは正にコロナを治す特効薬だ」と本気で信じていた(可能性が極めて高い→アビガンがとんでもないイカサマだと知りながら激賞していたとしたら大問題だが,彼らの言動・行動から,彼らがまともな医薬品リテラシーはおろか,添付文書の読解能力さえも持ち合わせていないことは明白だからだ).アビガン詐欺の張本人は,もちろん裏口承認に向かって特攻した富山化学とその一味なのだが,薬害オンブズパースン会議以外からは糾弾の声がいまだに聞こえてこないどころか,百害錠剤の開発をまだ諦めていないところを見ると,裸の王様は官邸の外にもまだたくさんいらっしゃるようだ.
新型コロナ/アビガン真理教の持続可能性は?
事ほど左様に,新型コロナ/アビガン真理教は,まだまだ根強い人気を持っている.裸の王様は官邸の主だけではない.官邸の外でも,自粛ファシスト実働部隊として日本中を跳梁跋扈している.彼らは,「新型コロナ様はスペイン風邪の再来である」「第2波で10万人が死ぬ」というでっち上げをとっくの昔に見抜いているサイレント・マジョリティに対し,空しい同調圧力をかけまくっている.その自粛ファシスト達の背後に御座(おわ)しますのが,ともに京都帝国大学教授でいらっしゃる,42万人死亡説の提唱者とアビガンセールスマンのお二人である.いまだに自粛ファシスト達が元気なのも無理はない.
しかし,お二人に詐欺師の自覚はない.自分のような天才の考えが間違っているわけがないと信じているからである.そして彼らが騙す裸の王様&市民達は,彼らに向かって「よくも騙してくれたな」とは決して言わないからである.もちろんお二人の主張がでっち上げに過ぎないと知っている市民が大多数である.しかし彼らはあくまでサイレント・マジョリティに徹している.エビデンスのかけらもないからと,マスクを拒否して自粛ファシスト達を挑発しても,何の得もないことぐらい,みんなわかっている.時が経てば必ず審判の日がやってきて,でっち上げが白日の下にさらされことぐらい,みんなわかっている.そしてその審判の日がやってくるまで,ハンセン病ほど長くはないこともわかっている.なぜなら,既に弱毒株優位になった感染自体がもうすぐ終息するからだ.
オリンピック開催を巡る攻防戦:ワクチンでの和解は不可能
「長い戦い」を標榜する自粛ファシスト達が目の敵にするのは,
「Go To トラベル」のような「不謹慎な」キャンペーンを賛同する「非国民ども」である.冒頭の記事が示すように
「Go To トラベル」は取り敢えず骨抜きになったが,これは前哨戦の始まりに過ぎない. 自粛ファシスト達にとっての本当の天敵は,何が何でも「Tokyo 2021」を実現しようとする集団である.このままでは,年内に激突せざるを得ない.では,「良く効くワクチン」ができれば,正面衝突が回避できるだろうか?無理だ.「コロナに良く効くワクチン」なんて,絵に描いた餅だ.もう忘れてしまったのだろうか?デング熱の国内感染例で大騒ぎになったのが,デングウイルスが分離されてから70年も経った2014年だったということを(約70年ぶりに確認された国内感染デング熱の第1例に関する報告 IASR 2014年12月15日)
そもそもワクチンの開発は治療薬の開発と違って困難を極める.マラリアのワクチンはいまだにできていない.デング熱ワクチンとて,1943年に堀田進先生が世界で初めてデングウイルスを分離してから80年近くが経とうとしているのに,いまだに満足なものが得られていない(武田薬のデング熱ワクチン、後期試験で有効性確認 一部は効果限定も).サノフィのDengvaxiaがADE(antibody-dependent enhancement)による死亡事件を含めて大きな混乱をもたらし、フィリピンで訴訟を含む巨大な社会問題に発展したことは記憶に新しい(デングワクチンDengvaxia事件の原因は(おそらく)ADE→原文はこちら)
マラリアやデング熱のような古典的な感染症でさえ,これほど苦労しているに,未知の要素ばかりのSARS-COV-2に対抗できるワクチンが1年やそこらでできるなんて,まるきりの素人ならばいざ知らず,その道の人間は誰も信じちゃいない(あなたはワクチン開発の難しさを知らない).特に拙速の中で初期に出てくるワクチンは要注意だ.何が起こるかわかったもんじゃない(史上最大のワクチン事業 〜その挫折と教訓〜 2020年6月15日 日経新聞)(1976年の豚インフル:集団予防接種で副作用による死者多発 WIRED 2009.04.30 ).そもそも季節性インフルエンザワクチンでさえ,死亡率や入院を減少させるというハードなエビデンスはない(神風は吹かない).それに,そんなハードエビデンスを得る目的の試験を始める前に,流行そのものが終わっている可能性が高い.かくして今や雨後の竹の子のように乱立したワクチンシーズが中和抗体の上昇を証明しただけで開発を終了する羽目になる.そんな中途半端な代物が,偉大なアスリート達が十二分にその能力を発揮するための武器になるとは,誰も思わないだろう.
審判の日に備えるという意味
COVID-19には,2018-19年冬に3325人が死亡した季節性インフルエンザほどの脅威もないことは始めからわかっていた.さらにそれが弱毒化した第2波も,ほどなく終わる.もはやアビガンやワクチンのデマに構っている暇はない.自粛ファシスト達と「Tokyo 2021」推進派との激突もどうでもいい.必要なのは,必ずやってくる審判の日に今日から備えることだ.審判といっても,対象は王宮関係者や詐欺師達だけではない.全ての市民が周囲の人から,コロナ祭り期間中の言動,行動についてpeer reviewを受ける.ただし,その判定結果があなたに対して文書で突きつけられることはない.あなたを評価する能力のある人は,あなたをそんなふうに甘やかしたりはしない.あなたと適切な距離を取って,あなたの面倒な部分をやり過ごすだけだ.このような本来の意味でのsocial distancingは,COVID-19流行のはるか以前から知られていた知恵だ.もしその知恵にあなたがここで初めて気づいたとしたなら,幸いである.自分で自分を騙していた詐欺師達は,死ぬまでそのような幸運に巡り会うことがないのだから.
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