臨床の問いから、子どもの未来を変える発見へ
遺伝学、免疫学、発生学、データサイエンスなど多様な方法を活用し、希少疾患から社会的な小児健康課題まで研究します。
過去3年の代表的な研究成果に、100周年記念誌に記録された各研究班の歴史と研究の系譜を加えて紹介しています。論文名義のリンクからPubMedをご覧いただけます。
感染班
研究紹介代謝内分泌班
研究紹介神経班
研究紹介精神保健班
研究紹介新生児班
研究紹介呼吸器班
研究紹介心臓班
研究紹介腎臓班
研究紹介血液・腫瘍班
研究紹介遺伝班
研究紹介免疫・アレルギー班
研究紹介急性期・集中治療班
研究紹介感染班
100年の歩みと研究の系譜
2000年以前には感染症の各領域が個別に研究を進め、その後しばらく専任の上級スタッフが不在となった時期を経て、2013年から感染班として再編されました。インフルエンザ、小児細菌感染症、ワクチン免疫に関する長年の研究蓄積を基盤に、2017年以降は微生物学・免疫学教室との連携から腸内細菌叢研究へ展開し、基礎と臨床を往復する研究体制を築いています。関連病院ネットワークを用いたインフルエンザワクチン有効性研究も、この教室の感染症研究を長く特徴づけてきたテーマです。
感染班では、小児感染症の疫学・予防、ワクチン、移植後感染症などの臨床研究に加え、宿主と腸内細菌叢の相互作用を対象とした基礎研究まで幅広く取り組んでいます。臨床で生じる感染症の問いを、関連施設ネットワークを用いた臨床疫学から微生物学まで多層的に検証することが特徴です。
基礎研究では、健常人由来の腸内細菌から構成した18菌株の常在菌コンソーシアムが、腸管内の栄養ニッチを生態学的に制御することでKlebsiellaやEscherichiaなどのEnterobacteriaceaeを排除し、マウスで腸管炎症を軽減することを示しました。臨床感染症を専門とする小児科医が、腸内細菌学・微生物学の最前線へ研究を展開した成果です。(Furuichi et al., Nature 2024)
ワクチン研究も大きな柱です。肝移植後の弱毒生ワクチンについて20年間のコホートを解析し、移植後の免疫獲得・維持に関わる因子を検討しています。(Furuichi et al., Vaccine 2025) また、慶應小児科関連施設のネットワークを生かして、季節性インフルエンザワクチンの有効性を継続的に実臨床で評価しています。(Shinjoh et al., Vaccine 2026)
さらに、臓器移植後のEBウイルス血症・移植後リンパ増殖性疾患のリスク評価、RSウイルス、百日咳、先天梅毒、細菌性髄膜炎などのサーベイランスにも取り組み、感染症を入口として公衆衛生・医療提供体制まで研究対象を広げています。(Yamada et al., Front Pediatr 2024)
代謝内分泌班
100年の歩みと研究の系譜
1984年の班創設以来、臨床で見いだした希少疾患の病態を分子レベルで解明する研究を一貫して続けてきました。歴代メンバーによる英文論文は1000編を超え、国内外への留学と学位研究を通じて多くの小児内分泌専門医・研究者を育成してきたことも特徴です。代表的な成果には、SAMD9変異によるMIRAGE症候群という新しい疾患概念の確立と原因遺伝子の同定があり、現在の非コード領域、ゲノム、ステロイド産生、リアルワールドデータ研究へとつながっています。
代謝内分泌班では、小児内分泌・代謝疾患を対象として、希少疾患の原因解明と新しい疾患概念の確立を研究の大きな柱としています。患者さんの詳細な臨床像を出発点に、ゲノム解析による原因遺伝子・変異の同定、患者由来試料や培養細胞を用いた機能解析までを一貫して行い、「一人の患者から得られた臨床上の疑問」を新しい医学的発見へつなげています。
その代表例として、家族性の非自己免疫性甲状腺異常を手がかりに、15q26.1の非コード領域に存在するTTTGマイクロサテライトの機能的変異が疾患を引き起こすことを発見しました。全ゲノム解析、患者・対照集団での検証、エピゲノム情報と機能解析を組み合わせ、タンパク質をコードしない反復配列の異常がメンデル遺伝性のヒト疾患を生じることを示した研究です。(Narumi et al., Nat Genet 2024)
副腎疾患でも、新たなメンデル遺伝病の同定と病態解明を継続しています。原因不明の先天性副腎機能低下症患者からZNRF3 exon 2の単一エクソン欠失を同定し、構造予測と細胞機能解析によってWnt/β-cateninシグナルの障害が先天性副腎低形成をもたらすことを示しました。(Amano et al., J Clin Endocrinol Metab 2024) さらに、原発性副腎機能低下症の家系からCPOXの両アレル機能喪失変異を同定し、一部の患者が46,XY性分化疾患を伴うことを見いだしました。患者由来試料を用いた解析から、ヘム合成系がヒト副腎・性腺のステロイド産生に重要であるという新たな疾患機序を提示しています。(Honda et al., J Clin Endocrinol Metab 2025)
性分化疾患はもう一つの中心的テーマです。日本人46,XY DSD 185例の遺伝学的・臨床的解析を行い、原因遺伝子と臨床像の関係を体系的に検討しています。(Hayashi et al., J Clin Endocrinol Metab 2025) また、小児期発症副腎不全を前向きに追跡し、副腎クリーゼの発症頻度とリスク因子を明らかにするなど、希少疾患の病因研究を日常診療の改善へつなげる研究も進めています。(Hosokawa et al., J Clin Endocrinol Metab 2024)
研究対象は希少疾患だけにとどまりません。成長、甲状腺、性腺機能、骨・カルシウム代謝など幅広い臨床研究に加え、育児アプリから得られる数万人規模のリアルワールドデータを用いた小児データサイエンス研究にも領域を広げています。乳児の頭蓋形態をスマートフォンアプリの大規模データから解析するなど、「一人の患者」から「大規模小児集団」までを対象に、小児の成長・発達と内分泌疾患の理解を深めています。(Narumi et al., Clin Pediatr Endocrinol 2026)
神経班
100年の歩みと研究の系譜
研究の中心には一貫して「神経系の発達とその異常」があります。2000年代以降、頭部画像解析とゲノム科学の進歩を背景に、小児神経疾患の分子病態解明を加速させ、学内外の基礎医学教室との共同研究、疾患特異的iPS細胞を用いた再生医学的アプローチへ展開しました。抗てんかん薬の胎内曝露が神経前駆細胞の増殖・分化に及ぼす影響など、発達神経科学と臨床課題を結びつける研究の系譜が現在の急性脳症、神経遺伝学、頭蓋縫合早期癒合症研究に受け継がれています。
神経班では、小児神経疾患の診断学、神経遺伝学、神経代謝疾患、急性脳症などを中心に研究しています。ゲノム情報、臨床神経生理、画像、モデル動物を組み合わせ、早期診断と治療につながる病態理解を目指しています。
急性神経疾患では、熱性けいれん重積後の早期脳波を周波数解析し、二相性けいれんと遅発性拡散低下を特徴とする急性脳症を早期に識別できる可能性を検討しています。(Ogawa et al., Epilepsy Res 2025)
基礎・トランスレーショナル研究では、PDGFRB関連頭蓋縫合早期癒合症モデルマウスを用いてRunx2の関与を解析し、頭蓋縫合異常の分子機序を検討しています。(Ogawa et al., Hum Mol Genet 2025) また、治療可能なSLC5A6異常症で出生前から脳病変が存在することを示し、迅速な遺伝学的診断と早期治療の重要性を提示しています。(Ogawa et al., Am J Med Genet A 2025)
精神保健班
100年の歩みと研究の系譜
臨床活動と並行して、乳幼児精神保健、トラウマ、母子関係、心身症を主要テーマとしてきました。2011年東日本大震災後のトラウマ支援や、COVID-19流行期の医療者メンタルヘルス支援など、社会的課題にも応答してきました。近年は小児期・思春期のやせや神経性やせ症に焦点を当て、一次医療を担う医療従事者・学校保健関係者への教育が早期発見・対応に与える効果を検証する研究へ発展しています。
精神保健班では、思春期の心の問題を、本人の精神症状だけでなく家庭・学校・社会環境まで含めて捉える臨床研究を行っています。救急受診や入院診療を入口として、虐待、自傷、学校不適応、家族関係、社会的支援の不足など複数の心理社会的要因を評価しています。
新宿・歌舞伎町周辺に集まる、いわゆる「トー横キッズ」と呼ばれる家出少女の救急搬送例を症例集積として解析し、薬物過量摂取や飲酒などの急性問題の背景に、多面的な心理社会的リスクが存在することを報告しました。(Nakamura et al., Pediatr Int 2025) また、宗教的虐待と神経性やせ症の世代間影響を扱う症例研究など、表面的な症状だけでは捉えにくいトラウマや家族背景にも焦点を当てています。(Nakamura, Pediatr Int 2025)
新生児班
100年の歩みと研究の系譜
新生児医療の臨床基盤を背景に、出生前後の環境と新生児予後、低血糖、遺伝・エピジェネティクス、周産期リスクなどを研究してきました。NICU開設以来の長期的な診療データと、関連病院を含む地域周産期ネットワークは大きな研究資源です。近年は生殖補助医療や親の年齢とインプリンティング異常、妊娠糖尿病母体から出生した新生児の低血糖リスクなど、胎児期から新生児期の環境がその後の健康へ及ぼす影響を定量化する研究を進めています。
新生児班では、早産児・低出生体重児を中心としたNICU診療の質と安全性を高める臨床研究を幅広く行っています。疼痛、体温管理、栄養・代謝、感染症、周産期医療など、NICUの日常診療から生まれる課題を研究テーマへ発展させています。
新生児疼痛では、医療者だけでなく家族も参加したDelphi法により、日本の新生児疼痛ガイドラインで重視すべきアウトカムを選定し、エビデンスを診療指針へ落とし込む研究を進めています。(Arimitsu et al., Front Pediatr 2023)
新生児搬送時の体温管理では、搬送用保育器のアクセスポートカバーによる保温効果を、計算流体力学を用いて保育器内の気流・温度分布まで解析しています。(Kobayashi et al., J Perinatol 2026) また、妊娠糖尿病母体から出生した新生児の低血糖リスク因子や、社会活動制限と乳児ビタミンD状態の関係など、産科・周産期領域と連携した研究も行っています。(Arimitsu et al., Endocr J 2023) (Seki et al., Keio J Med 2026)
呼吸器班
100年の歩みと研究の系譜
小児呼吸器学の発展に深く関わってきた教室の伝統を背景に、気道形態、先天性肺疾患、呼吸器感染症、長期呼吸機能などを研究してきました。CHARGE症候群における上気道閉塞の内視鏡所見、先天性嚢胞性肺疾患の手術時期と長期肺機能、呼吸器リスクをもつ小児での院内ウイルス感染症など、実際の診療で生じる疑問を観察研究へつなげることが特徴です。現在は気道内視鏡・呼吸生理・分子診断を組み合わせ、希少呼吸器疾患の診断精度向上にも取り組んでいます。
呼吸器班では、基礎疾患をもつ小児の気道・呼吸管理を中心に、日常診療で用いる検査や手技の精度を高める研究を行っています。気道内視鏡を活用した診断・処置と、複雑な基礎疾患をもつ小児の呼吸評価が特徴です。
閉塞性睡眠時無呼吸のスクリーニングとして用いられる夜間パルスオキシメトリーについて、基礎疾患を有する小児では連続する2夜の測定値に変動があることを示し、単回測定の限界を検討しています。(Oguri et al., Keio J Med 2026) また、気管支鏡を利用した経鼻胃管挿入など、気道管理が難しい小児に対する手技上の工夫も報告しています。(Kobayashi et al., Pediatr Int 2023)
心臓班
100年の歩みと研究の系譜
基礎研究と臨床研究の両輪を長く維持してきたことが心臓班の特徴です。先天性心疾患の発症分子機構については、GATA6変異と心流出路形成異常の機序を明らかにするなど世界をリードする成果を挙げてきました。これに、心臓カテーテル治療、不整脈、肺高血圧、成人先天性心疾患などの臨床研究が加わり、現在は低侵襲治療と長期予後の改善へ研究領域を広げています。
心臓班では、先天性心疾患を中心に、心エコー・MRIによる非侵襲的評価、カテーテル治療、周術期管理、肺高血圧、川崎病まで、臨床に密着した研究を幅広く行っています。現在の班の研究では、血行動態を定量化し、治療判断や予後予測へつなげることが重要な軸となっています。
心房中隔欠損症の小児を対象に、右室の複数の径を体格補正したZ-scoreの平均値が、心臓カテーテル検査による肺体血流比(Qp/Qs)と相関することを示し、通常の心エコーから短絡量を非侵襲的に推定できる可能性を提示しました。(Sumitomo et al., Circ Rep 2025) また、先天性心疾患術後の肺高血圧について全国レジストリを用いて中期予後とリスク層別化を検討しています。(Sumitomo et al., Am Heart J Plus 2026)
画像研究では、Fallot四徴症術後の右室流出路血流を4D flow MRIで解析するなど、新しい画像技術を複雑先天性心疾患の血行動態評価へ応用しています。(Iwashita et al., Heart Vessels 2024) 治療面では、主要体肺動脈側副血行路の塞栓に用いるhydrogel coilと術後炎症反応の関係など、カテーテル治療の質を高める研究にも取り組んでいます。(Kojima et al., Cardiol Young 2026)
川崎病についても、冠動脈瘤症例の多施設レジストリや高リスク例に対する初期治療強化など、冠動脈後遺症を減らすための研究に参加しています。(Koyama et al., Eur J Pediatr 2023) 先天性心疾患の遺伝・発生学的研究にも国内外の共同研究を通じて関わりつつ、現在の教室では画像・血行動態評価と臨床アウトカム研究を研究活動の中心に据えています。
腎臓班
100年の歩みと研究の系譜
臨床研究では小児腹膜透析の全国レジストリ、難治性ネフローゼ症候群に対する治療研究など、日本から国際的なエビデンスを発信してきました。基礎研究では、胎児期・新生児期の環境が腎臓の構造・機能へ及ぼす影響など、発達腎臓学の研究を継続しています。透析・移植から希少腎疾患、発達起源の腎障害までを一続きに捉える研究の系譜が現在の臨床研究に受け継がれています。
腎臓班では、小児腎・尿路疾患の早期診断とリスク層別化を中心に、日常診療へ直接還元できる臨床研究を行っています。学校検尿や尿バイオマーカー、発熱性尿路感染症など、小児腎臓診療で頻繁に直面する課題を研究対象としています。
先天性腎尿路異常(CAKUT)では、尿中α1-ミクログロブリン/Cr比およびβ2-ミクログロブリン/Cr比が腎機能障害を伴うCAKUTの検出に有用かを検討しています。(Hamada et al., Pediatr Nephrol 2023) また、2歳未満の発熱性尿路感染症において、他の感染症を思わせる随伴症状と抗菌薬開始の遅れとの関係を解析し、見逃しを減らす診断戦略を探っています。(Asato et al., J Infect Chemother 2026)
血液・腫瘍班
100年の歩みと研究の系譜
多施設共同研究と日常診療を往復しながら、治療成績の向上と治療負担の軽減を目指してきました。小児慢性骨髄性白血病でのチロシンキナーゼ阻害薬中止試験や、AYA世代の骨・軟部腫瘍における新規融合遺伝子の同定など、治療選択を直接変え得る臨床研究・病理分子研究を展開しています。今後はゲノム情報に基づく個別化医療を、より多くの患者へ届けることを目標としています。
血液・腫瘍班では、小児がんの分子病態・精密診断と、それに基づく治療開発を中心に、治療後の長期支援や在宅・緩和医療まで幅広い研究を行っています。脳腫瘍、白血病、遺伝性腫瘍素因などを対象に、腫瘍ゲノムやエピジェネティクスの情報を臨床へ還元することを目指しています。
遺伝性腫瘍素因では、日本小児がん研究グループのLi-Fraumeni症候群コホートを用いて、TP53遺伝子型と臨床表現型の関係を解析しています。(Yamazaki et al., Cancer Sci 2026) 脳腫瘍では、特殊なBRAF変異を有する毛様細胞性星細胞腫に対する分子標的薬治療など、個々の腫瘍ゲノムに基づくprecision oncologyを実践しています。(Tanaka et al., JCO Precis Oncol 2024)
一方で、研究対象は治癒そのものに限りません。難治性脳幹部神経膠腫の患児を対象に、日本の小児在宅医療システムを用いた症状管理や終末期支援を検討するなど、患者さんと家族の生活の質を支える研究にも取り組んでいます。(Osumi et al., BMC Palliat Care 2025)
遺伝班
100年の歩みと研究の系譜
1998年の班設立以来、先天異常学・臨床遺伝学を基盤に、新規疾患の発見を研究の柱としてきました。IRUDは一万人を超える患者・家族が参加する規模へ発展し、班のメンバーはTakenouchi-Kosaki症候群を含む多数の新規疾患・疾患概念の同定に関与してきました。PDGFRB変異による過成長症候群など、臨床観察から病名と分子機序を確立する研究の伝統は、現在の全ゲノム解析・機能解析研究へ直結しています。
遺伝班では、診断困難な希少疾患に対するゲノム診断と、診断後の病態解明・治療開発を一体として進めています。短鎖リードでは捉えにくい構造異常、インプリンティング異常、非コード領域変異などに対して、ロングリードシークエンスや全ゲノム解析を積極的に活用しています。
Prader-Willi症候群・Angelman症候群では、nanopore long-read sequencingを用い、メチル化異常の検出とその原因機序の解析を一つの手法で行う診断法を示しました。(Yamada et al., Eur J Med Genet 2023) また、全ゲノム解析とRNA解析で同定したBPANの深部イントロン変異に対し、アンチセンスオリゴヌクレオチドによって異常pseudoexonをスキップさせることにin vitroで成功し、個別化治療へつながるproof-of-conceptを提示しています。(Yamada et al., Sci Rep 2024)
患者由来iPS細胞から神経・オリゴデンドロサイト系細胞を作製し、Sjögren-Larsson症候群の脂質代謝異常を解析する研究も行っています。(Yamaguchi et al., Congenit Anom 2025) さらに、MPS IIに対する脳室内投与酵素製剤の市販後調査など、希少疾患治療の実臨床における安全性・有効性評価にも関与し、診断から治療実装まで連続したゲノム医療を目指しています。(Kosuga et al., Mol Genet Metab 2026)
免疫・アレルギー班
100年の歩みと研究の系譜
班の創設以来、臨床研究と基礎研究の双方に力を入れ、とくに近年は食物蛋白誘発胃腸炎(FPIES)の研究を継続してきました。鶏卵によるFPIESの増加など、日本で変化する疾患疫学を明らかにするとともに、病態の多様性、診断バイオマーカー、自然歴へ研究を展開しています。定期的な勉強会・論文抄読会と関連施設との連携を通じて、研究成果を診療水準の向上と次世代育成へ還元しています。
免疫・アレルギー班では、食物アレルギーを主要な研究テーマとし、とくにfood protein-induced enterocolitis syndrome(FPIES)など非IgE依存性食物アレルギーの病態・診断・自然歴を研究しています。研究には、慶大小児科の教室構成員でもある国立成育医療研究センター アレルギーセンターの森田英明部長との連携が重要な基盤となっています。
FPIESについては、誘発食品、発症年齢、地域差、臨床像などの多様性を整理し、FPIESを単一の病態ではなくheterogeneousな疾患群として捉える視点を提示しています。(Akashi et al., Allergol Int 2024) さらに、IgE依存性食物アレルギーとFPIESを区別する指標として尿中プロスタグランジン代謝物を検討するなど、診断バイオマーカーの開発にも取り組んでいます。(Umezawa et al., Allergy 2025)
国立成育医療研究センターとの共同・関連研究では、経口食物負荷試験を用いたFPIESの寛解・再発の検討など、自然歴を明らかにする研究へ展開しています。(Umezawa et al., Clin Exp Allergy 2026) また、育児アプリ約6万人規模のデータから日本の離乳食開始時期の変化を解析し、個々のアレルギー患者を対象とする研究から、population levelの予防・養育行動研究まで研究領域を広げています。(Kaburagi et al., Eur J Clin Nutr 2026)
急性期・集中治療班
100年の歩みと研究の系譜
集中治療の研究対象をPICU内に限定せず、院内全体の患者安全と医療の質へ広げていることが特徴です。RRS、医療機器関連感染、薬剤安全、ストレス潰瘍予防など、日常の重症診療から生じる問いを各専門班との共同研究へつなげています。関連病院とも重症症例の検討会を定期的に行い、研究・教育・地域連携を一体化して小児急性期医療の標準化を進めています。
急性期・集中治療班では、小児ICUにおける治療の有効性だけでなく、医療関連合併症を減らす患者安全・質改善研究に取り組んでいます。「慣習的に行われている治療をエビデンスで問い直す」「医療機器関連感染を減らす」という、集中治療の質と安全性を高める研究が特徴です。
尿道カテーテル関連尿路感染症の研究では、若年小児の重症患者を解析し、尿路形態異常などの患者背景と感染リスクとの関係を検討しています。(Oikawa et al., J Infect Chemother 2024) また、重症小児に広く行われてきたストレス潰瘍予防について系統的レビュー・メタ解析を行い、ランダム化比較試験を中心とした現在のエビデンスを整理しています。(Oikawa et al., Clin Exp Pediatr 2026)
