事前指示書とは
ここでいう事前指示書 (Advance Directive)とは、1986年にアメリカ合衆国連邦政府の委員会が、各州で作っている終末期医療につての関連法律を統一するモデル法 (Uniform rights of terminal ill act)において提示した法的書類を意味しています。
その中で、まず第一に、リビング・ウィルを推奨し、これは、ある状況下において自分がして欲しい医療、あるいは、して欲しくない医療につき述べる書類であると説明し、次いで、自分が思考能力も含め無能になった場合に備え、誰かに自分の医療につき決定する権利を委任しておく書類を定めるよう推奨しています。
すなはち、リビング・ウィルだけが書かれてある書類ではなく、同時に、思考能力がなくなったときに備え、自らの医療に関する決定をする代理人を定めている書類です。
昨今、わが国を含め、人口の高齢化によって、全世界的に認知症患者が激増していることから、最近では、代理人も決めておくのを含めた、この事前指示書の方が広く使用されるようになっています。したがって、厳密には、リビング・ウィルと事前指示書は違ったものですが、ほぼ同意義で使用されることが多くなっています。
また、厚生労働省が2018年に3度目の改訂版を出した「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」において初めて導入したアドバンス・ケア・プランニングの概念は、この事前指示書とよく似ています。しかしながら、事前指示書は本人自らが自分の意思を直接表示している文書ですが、アドバンス・ケア・プランニングは、患者さんが病院に入院したり介護施設に入所するたびごとに、本人と医療ケアチームが話しあい、終末期の医療・ケアの方針を決めたり、自らの意思を伝えられない状態になる場合に備えて、本人の意思を推定する者について家族等の信頼できる者を前もって定め、文書にしておくものであり、当該の医療・介護施設のみに適用されます。