リビング・ウィルと事前指示書 -書き方と例文-        

















































          リビング・ウィルは なぜ必要か



日本は世界一の長寿国で、男性の最新の平均寿命は81.1歳、女性は87.3歳です。

一方で、数年前から厚生労働省が発表し始めた健康寿命(介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を健康的に送れる期間)は、2016年で男性72.1歳、女性74.8歳と驚くほど低く、同年の平均寿命との差は、男性で8.8歳、女性で12.4歳もあります。

病人、認知症患者、寝たきり高齢者、介護なしでは生きてゆけない高齢者や無理やり生かされている高齢者が意外と多いのです。

また、厚生労働省研究班の推計では、90〜94歳の日本人男性の49%、女性の65%が認知症になり、95歳以上では、男性の51%、女性の84%が認知症になると推計されています。そして、認知症予備軍を含まない正真正銘の認知症患者が全国で462万人もいると推計しています。四国4県と島根県を合わせた総人口とほぼ同数ですから、背筋の寒くなるような恐ろしい現実です。

重い病気や認知症に罹り、飲むことも食べることもできなくなった高齢者は数日の内に静かに息を引きとります。
しかし、人工呼吸器を用いたり、胃ろう・鼻管や点滴で栄養や水分を補給すれば、心臓が動くかぎり生き続けることは可能です。

内閣府の調査では、55歳以上の日本人の9割以上が、延命のみを目的とした医療は行わず自然にまかせてほしいと願っています。
にもかかわらず、わが国の医療・介護の現場では、無意味な延命治療が日常的に行われていることは衆知の事実です。

医療は尊厳ある生命をできる限り維持することを至上の使命としており、誰であっても生命を短くすることはできません。
医師も看護師もそのように教えられており、日本の社会や法律もそれを要求しています。

ですから、たとえ見かねた家族が延命治療の中止を希望しても、医療側としても簡単に実行はできませんし、警察の取り調べを受けることにもなりかねません。

無意味な延命治療を止めることのできる唯一の方法は、患者さん自身が延命治療の中止を希望され、その意思を表明されている場合です。
といっても、終末期の患者さんは、意識がなくなったり、朦朧としているのが普通ですから、そのような意思を表明することはできません。

リビング・ウィル(終末期の医療・ケアについての意思表明書)とは、このような場合に備えて、意識もあり理性的判断ができる内に、終末期において自分がして欲しい、あるいは、して欲しくない医療・ケアに関しての意思を表明しておく書類です。

リビング・ウィルは、欧米のように法制化されてはいませんが、わが国の一流病院・医療者は、患者さんの自己決定権を認めており、厚生労働省、日本救急医学会、日本医師会などから出されている終末期医療のガイドラインにおいても、リビング・ウィルを尊重することが謳われています。

皆さんが人生の終末期において、自分自身はもちろんのこと、家族も医療側も迷い苦しむことなく、やすらかな最期を迎えるには、元気なうちにリビング・ウィルを書き残すのがベストです。

ご自身だけでなく、高齢のご家族にも是非書き残してもらいましょう。