ごあいさつ

科長 福土 審  

東北大学大学院医学系研究科心療内科学分野教授
東北大学病院心療内科長
福土 審

心療内科長の福土審(ふくどしん)です。私は1983年に東北大学医学部医学科を卒業後にすぐ心療内科に入局し、 1999年まで心療内科助教授・副科長を務め、1999年から大学院医学系研究科行動医学分野教授に就任、心療内科を兼担し、2011年から科長を務めています。
  心療内科は、ストレスによって発症あるいは増悪する疾患群(ストレス関連疾患)を診療対象にしています。   内科の一領域ですので、当然ながら、ストレスが影響する内科疾患(心身症)を最も得意にしています。   ストレスは器質的疾患も悪化させますが、当科の受診患者さんに特に多いのは機能異常を呈する人です。   機能異常には不調をきたしている臓器だけでなく、自律神経・中枢神経が関与しています。疾患を診断し、   中枢神経機能、自律神経機能、末梢臓器機能を評価し、患者さんの心理状態と社会的背景の病態への関与度を正確に判断した上で、薬物療法や心理療法などの治療法を施行する。これが心療内科です。  
 当科は、ストレス関連疾患の中でも機能性消化管障害や摂食障害などの患者の診療と研究を得意にして来ました。 私自身も過敏性腸症候群を専門にしており、この疾患の脳腸相関の病態を軸に診療・研究しています。 これらの疾患を世界最高水準の医療機関群と協力して扱っています。摂食障害は厚生労働省・宮城県の支援により東北大学病院内に摂食障害治療支援センターが設置されています。その中心を担っているのは心療内科です。
 研究面・先端的病態評価面では、脳機能画像、内臓知覚大脳誘発電位、経頭蓋磁気刺激、消化管電気刺激、バロスタット、  消化管内圧、消化管通過マーカー、心理計量学、遺伝子多型、バイオマーカー、マイクロビオームなど、国内でも充実したシステムを用い、疾患の謎に迫っています。  その水準は国内では日本医学会分科会である日本心身医学会理事長として、また、  国際的には機能性消化管障害の国際委員会であるローマ委員会国際連携委員に指名されるなどして、評価して貰っています  (Nature Reviews Disease Primers 2016; 2: 16014, Nature Reviews Gastroenterology and Hepatology 2013;10: 569-571, Neurogastroenterol Motil 2009; 21: 789)。  
 治療面では、中枢神経、自律神経、末梢臓器を調整する薬物療法を駆使しています。  これに、心理療法が加わりますが、具体的には、心身医学療法(一般心理療法、自律訓練法、交流分析法、絶食療法)、認知行動療法、その他の治療を行っています。  
 教育面では、日本内科学会から研修カリキュラム(総合内科)心療内科分野世話人に指定されています。  東北大心療内科に来れば、まず内科専門医を取得し、次いで心療内科専門医を効率良く取得することができます。  研究を深め、新しい医学・医療に貢献したい人には、博士(医学)を取得する道を推奨します。  意外に知られていないのですが、心療内科は、心身を深く診療するため、医学・医療の中でもこれからの時代に最も必要であり、  最も機械化することができず、医師が若手の時代からベテランになるまで専門を変えずに一貫して充実した医療を実践できる素晴らしい領域なのです。
 心療内科が担当する疾患群は、次々に新しい現象が見つかり、新薬や新規治療法の開発が盛んな医学の加熱領域です。  当科の患者さん達を治癒に導くための普遍的原理を見出し、それに基づいて科学的な治療をすること、これが東北大心療内科の目標です。どうぞ宜しくお願いいたします。


東北大学心療内科の新たな時代

東北大学大学院医学系研究科心療内科学分野教授
東北大学病院心療内科長
福土 審

 東北大学心療内科は、これまで東北大学病院の診療科としてのみの立場でした。このほど、2021年4月1日より、大学院医学系研究科心療内科学分野として新たな時代を迎えることになりました。東北大学に心身医学を根付かせた幾多の先人の営々たる努力に感謝するとともに、これからの時代に真に必要とされる医学領域としての新たな決意を表明したいと思います。
心療内科は極めて判り易い科です。心療内科はストレスによって発症あるいは増悪する内科疾患を主な診療対象にしています。内科疾患は、器質的疾患のみならず機能異常を呈する疾患が多く存在します。機能異常の背景には自律神経・中枢神経機能が関与しています。疾患を診断し、中枢神経機能、自律神経機能、末梢臓器機能を評価し、患者の心理状態と社会的背景の病態への関与度を正確に判断した上で、薬物療法や心理療法などの治療法を施行するのが心療内科です。
心理社会的ストレスが健康と疾病に及ぼす悪影響は世界的にも日を追って増して来ています。心療内科は極めて先見性がある科のため、多少早見え過ぎて日本における評価がまだその先進性に追いついていない部分があります。日本心身医学会・日本心療内科学会でも現代のストレス社会に合致した医療制度になるように働きかけています。しかし、患者さんからストレスの悪影響を取り除くことは、極めて普遍性が高い活動である、と断言できます。この活動に賛意を持って参加する幾多の人材を大いに歓迎します。
心と身体の相互関係を心身相関と言います。そこに切り込む方法は、科学的かつ先端的でなくてはなりません。脳機能画像、ゲノム分析、腸内細菌分析、オミックス分析とともに、心身の状態を定量的に計測し、次々に新しい現象が見つかっています。新薬や新規心理療法を含む治療法の開発も盛んで、医学の中の加熱領域でもあります。心療内科を受診する患者さん達を心身ともに治癒まで持ってゆくための新たな科学的な知見を、東北大から続々と出すことを実現可能な夢としています。
現代がストレス社会であり、文明度が高まるにつれ、また、社会情勢の急激な変化により、ストレス関連疾患の頻度と重要度が増して来たことは異論のないところでしょう。関係各位にご理解いただくとともに、東北大学心療内科の一層の発展を決意し、結びといたします。