学会概要

会長挨拶

会長就任の挨拶

旭川医科大学医学部 若宮伸隆
若宮伸隆

 さる7月4-6日旭川で行われた、第50回補体シンポジウムに多くのご参加を賜り、誠にありがとうございました。雨男である私のせいで、中日夕方には若干の雨が降りましたが、懇親会中に雨もやみ、若手、壮年研究者の和やかな歓談や討論の光景が多くみられたことで、参加者皆様が、補体研究会の活発な討論と北海道の味覚を楽しんでいただけたと感じ、大変うれしく思いました。

 さて、この第50回の記念すべきシンポジウムの運営委員会と総会で、木下先生の後任として若宮が4年間会長を務めるように推挙されました。補体シンポジウムへの参加の頻度も多くなく、研究会に大した貢献もしていなかった私が、会長を務めるのは役不足という思いを持ちましたが、私が行ってきたコレクチン研究や小児科医から出発したキャリアが皆様のお役に立てることがあると信じ、会長を引きうけることにしました。

 ここ数年の補体研究は、大きな転換期を迎えていると感じます。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、C1インヒビター (C1-INH) の量的または質的欠損でおこる疾患でありましたが、日本での患者把握が進んでおらず、補体研究会が率先してその疾患の啓蒙や治療ガイドラインの策定に貢献しました。その結果、多くの患者さんにC1-INH製剤 (商品名ベリナート®P) が適切に投与され、福音がもたらされました。また、補体関連薬としての初めて分子標的剤である、抗C5単クローン抗体Eculizumab (商品名Soliris) が、発作性夜間ヘモグロビン尿症 (PNH) に対する薬として2010年に認可され、実際に使用され非常に良い結果が得られました。さらに、この分子標的剤が、補体活性化を阻害する薬として、PNH以外の疾患であるaHUS(非典型溶血性尿毒症症候群)に投与される可能性もでてきて、補体関連薬が大変注目すべき薬となりうることを世間に知らせました。

 いままで、補体研究という分野は存在してきましたが、補体関連因子に対する抗体や因子そのものが薬剤として実際に多く使用されていなかったために、臨床医の補体研究者が減少してきた歴史があります。本研究会もその影響をうけて、補体研究会の会員が大幅に減少しました。しかし、今回の補体シンポジウムにおいて、今まで参加されなかった分野の臨床の先生方の参加がみられ、さらに今回残念ながら発表に至りませんでしたが、次回は是非参加したいというご意見も多数いただいております。よって、私の感想では、木下会長時代に会員数の減少が底を打って、現在はあきらかに上昇モードに入ったように感じます。

 そこで私の役割としては、今までの基礎系補体学という分野はさらに高みを目指すことはもちろんですが、この臨床補体関連学というべきジャンルを拡大して、より多くの臨床系研究者の参加を促したいと思っております。さいわい、HAEのガイドライン作りに多大の貢献をされた堀内孝彦先生 (九州大学病院 別府病院内科) に会長補佐を引きうけていただきましたので、井上事務局長と3人で協力して頑張ろうと思っています。

 また、国際補体ワークショップ(ICW)は、1993年に当時大阪大学の井上教授により開催されましたが、本ワークショップを2016年金沢に誘致することを、運営委員会で決定いたしました。ICW誘致のために、今年、来年に開催される補体関連の国際会議に出席し、そこで行われる運営委員会での働きかけを、行っていくことを計画しております。そのためにも、すこし遠方ですがブラジルで開かれるICWに、是非多くの日本人研究者の研究発表を望みます。

 最後になりますが、次の世代へ良い状態でバトンを渡せるように、精一杯努力いたしますので、4年間どうぞよろしくお願い申し上げます。

(2013年7月)

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