主訴からirAEを検討する|息切れの場合
訴えがあったが結局何も起こらなかった(不定愁訴のパターン)
手順1
【主訴から想定する疾患】(手引書P.5-6)の主訴から該当する項目「息切れ」にチェックします。想定される疾患には○印がついているので関連性を検討します。主訴「息切れ」の場合、「インフュージョンリアクション、血液障害、感染、甲状腺機能亢進症、肺障害・結核、心臓障害、筋肉障害、神経障害」が想定される疾患です。
手順2
手順1でチェックした主訴(息切れ)が分類されている症状(呼吸器症状)に関する【症状別のStep3】(手引書P.13-14)で、さらに検討してください。
- ・「レッドフラッグサイン」に該当する症状はないか
- ・Step1:irAEを見逃さない
- ・Step2:irAEと決めつけない
- ・Step3:対応が後手に回らない
の順に検討していきます。
該当しないことを確認します。
今回のCaseでは「日常生活が送れない程度の息切れ」はないため、レッドフラッグサインには該当しません。
チェックを入れた症状に対して、見逃してはいけない疾患に○印が付いています。
「息切れ」にチェックし、いつから症状があるのか、増悪しているかを確認します。特に見逃してはいけない疾患として、「重症筋無力症、ギラン・バレー症候群、循環器症状」が挙げられるため、これらの可能性がないかを確認します。また、「息切れ」以外にも随伴症状がないか確認します。
該当する症状にチェックし、irAE以外の疾患(基礎疾患の再発・再燃、他の疾患)の可能性がないかを検討してください。
主訴「息切れ」の場合、基礎疾患の有無からその再発や再燃、放射性肺臓炎、感染症・FN、インフュージョンリアクション、血液障害の可能性がないかを検討します。
・感染症・FNを疑う臨床所見ないため、除外しました。
・インフュージョンリアクションはICI投与後から24時間以上経過していること、また症状が増悪していないことから除外しました。
・血液障害については、採血の結果問題ないことを確認し除外しました。
疑ったirAEの対応が遅れないよう、検査漏れがないかを確認します。
疑ったirAEに関連する検査で未測定のものがあれば、測定依頼を検討します。
これらの検査項目と【専門医へ引き継ぐまでの間に実施を考慮する追加検査】(手引書P.9-10)から総合的に検討してください。
今回のCaseでは、1週間前に「息切れ」があったとの訴えがありましたが、一方でレッドフラッグサインとなる「息切れ」がないこと、またこの1週間で「息切れ」は増悪していないこと、他に随伴症状は認められなかったこと、一般検査結果からも総合的に判断して経過観察としました。患者には息切れが増悪するようであったらすぐに連絡するようにと説明しました。また、未測定の検査項目がないことも確認しました。
注意似たような症例であっても、必ずしも同じ経過をたどるとは限りません。