亜急性硬化性全脳炎(SSPE)
6.SSPEの診断
血清および髄液中麻疹抗体価の上昇があれば確定診断できます。脳波上の周期性同期性高振幅徐波結合も参考所見となります。
現在の診断基準では、SSPEと診断するための髄液麻疹抗体価の基準値は設定されておりません。このため、診断法の標準化を目的として、SSPEが疑われる方に対して、山口大学で髄液と血清の麻疹抗体価を測定し、一般的な基準値のある「CSQrel」を補正式で算出し、検討しております。詳細は次の「研究協力機関への説明書 麻疹抗体価CSQrel測定」をご参照いただき、測定をご希望の先生はメールアドレス<matsu@yamaguchi-u.ac.jp>宛にお問い合わせ下さい。
7.SSPEの治療
保険適用のある特異的な治療としては、イノシンプラノベクス(イソプリノシン)の内服療法と、インターフェロン(αまたはβ)の髄注もしくは脳室内投与療法があります。近年、研究的治療法として、リバビリン脳室内投与療法が試みられるようになりました。
イノシンプラノベクス
抗ウイルス作用と免疫賦活作用を合わせ持つ薬剤で、SSPE患者さんの生存期間を延長するとされています。血中尿酸値の上昇、肝機能異常、赤血球増加、血小板増加、消化管出血、尿路結石、白血球減少(1.5%)などがみられることがあります。
インターフェロン
ウイルス増殖阻害作用を持つ薬剤で、イノシンプラノベクスとの併用により、有効であったとする報告が多くみられます。副作用としては、発熱がほぼ全例でみられます。その他、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、食思不振、意欲低下、白血球減少、血小板減少、甲状腺機能異常、耐糖能異常、間質性肺炎、不眠、うつ状態、網膜症、脱毛、皮膚掻痒、皮疹、一過性の低血圧、頻脈、上室性期外収縮、心筋炎などが報告されています。
リバビリン
広い抗ウイルススペクトルを有する薬剤で、麻疹(SSPE)ウイルスに対しても優れた抗ウイルス効果があります。リバビリンを脳室内に直接投与する「リバビリン脳室内投与療法」では、髄液中リバビリン濃度はウイルスの増殖を完全に抑制する濃度に達し、重篤な副反応は認めず、少数例ではありますが臨床的有効性が報告されています。これまでのところ、病期の比較的早い時期(第Ⅱ期)にリバビリン治療が開始された場合は、臨床症状に明らかな改善が認められる症例が多いようです。他方、病期の進んだ症例(第Ⅲ期以降)では、痙攣や強直の軽減などの軽微な改善や、髄液麻疹抗体価の低下を認めますが、病期が改善する程の効果はないようです。リバビリンはウイルスの増殖を抑制し、病状の進行を抑える薬剤であり、一旦進行してしまった神経障害を改善するものではありません。リバビリンは現在のところSSPEに対する保険適用はなく、本療法は未だ研究的治療法です。したがって、治療を開始するに当たっては、所属施設の倫理委員会の承認とご家族に承諾を得なければなりません。また、治療期間中は、髄液リバビリン濃度をモニタリングし、副作用の発現を厳重に監視するなど、さまざまな制約があります。治療法に関する問い合わせがありましたら、SSPE治療研究グループ事務局まで連絡ください。
*SSPE治療研究グループ事務局:細矢光亮(福島県立医科大学小児科 )
(Tel:024-547-1295、Fax:024-548-6578)