プリオン病/亜急性硬化性全脳炎(SSPE)/進行性多巣性白質脳症(PML)とは
感染予防
黒岩義之(横浜市立大学医学部大学院医学研究科神経内科)
リスク保有者の方へ
プリオン病のリスク保有者とはプリオン病の家族歴・遺伝歴を持っている人やプリオン病の汚染を受けた可能性のあるひと(例えばプリオン病の可能性のある人の硬膜や角膜の移植を受けた人,プリオン病の脳外科手術をした同一の器具で手術を受けた人)のことを言います.これらの方々には専門医による定期的な診察,画像検査などのフォローをしていくことが望ましいと思われます.
消毒滅菌法
プリオン病の消毒滅菌法はガイドラインで次のように推奨されています.
- 焼却
- 3%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)5分間,100℃
- 高圧蒸気滅菌:132℃で1時間,オートクレーブにて高圧滅菌する.
- 1N水酸化ナトリウム溶液に1時間,室温にて浸す.
- 1.5%次亜塩素酸ナトリウムに2時間,室温に浸す.
- 註1:a, b は,プリオンを完全に消失させ,c, d, e は10-3以下のオーダーで不活化させます.
- 註2:可燃物については,aを第一選択とし,不燃物についてはbを第一選択とし,cが次の適用となります.a, b, c が適さないような高温に耐えないもの及び巨大なものについては,d, eを適用します.
日常生活,診療,病理検索での注意
プリオン病は異常型プリオン蛋白により伝達するが,基本的には空気感染・飛沫感染・接触感染はしません.中枢神経系の組織や臓器を扱わない限り,感染はしないので日常生活で感染することはまず考えられません.診療では中枢神経系の検査(腰椎穿刺)のみ感染する可能性があるため,その検体の処理には注意を要します.検査時に扱う器具は全てディスポで行うようにします.病理検索はガイドラインに従えば,感染症対策解剖室でなくても、さらに専用の備品がなくても一般病院の病理部門で中枢神経系を中心とする病理解剖が可能です.剖検は乾式で行い,解剖時の血液・体液は紙などに吸着させて焼却することが必須です.また,脳組織は蟻酸処理が必要でこれにより,初めて感染性は無視できるまで低下します.