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プリオン病

感染予防

黒岩義之
(財務省診療所/ 横浜市大/ 東京都医学総合研究所/
冲中記念成人病研究所/ 帝京大学附属溝口病院脳神経内科)

リスク保有者、リスク保有可能性者の方へ

プリオン病のリスク保有者、リスク保有可能性者とは,プリオン病の家族歴・遺伝歴を持っている人やプリオン病の汚染を受けた可能性のあるひと(例えばプリオン病の可能性のある人の硬膜や角膜の移植を受けた人,プリオン病の脳外科手術をした同一の器具で手術を受けた人)のことを言います.これらの方々には専門医による定期的な診察,画像検査などのフォローをしていくことが望ましいと思われます.

消毒滅菌法

プリオン病の消毒滅菌法は「プリオン病感染予防ガイドライン2020」で次のように推奨されています.ただし,消毒滅菌を行う手術器具などによって適応できる方法は異なるので,詳細は上記ガイドライン(左タブからダウンロードできます)をご参照ください.

  1. プリオンを完全に不活性化する方法:
    高温による焼却
  2. 感受性実験動物に対する伝達性を失わせるレベルの不活性化:
    次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)(次亜塩素酸ナトリウムとして2%,もしくは20,000ppm以上),高濃度アルカリ洗浄剤(pH12 以上),ドデシル硫酸ナトリウム/ 水酸化ナトリウム(SDS/NaOH) (SDS 0.2% を含むNaOH3% 水溶液 )
  3. 不完全な不活性化(伝達性が残存):
    オートクレーブ(134℃,18 分),3%SDS ボイリング,1M〜2M NaOH(20℃,1 時間 ),中濃度アルカリ洗浄液(pH12 以下, 55℃もしくは65℃),過酸化水素ガス滅菌(濃度,温度条件により伝達性が検出できない場合もある)
  4. ほとんど不活性化されない(伝達性がかなり残る):
    過酢酸,SDS(室温),過酸化水素水,酵素洗浄剤,ホルマリン,グルタールアルデヒド,紫外線など

日常生活,診療,病理検索での注意

プリオン病は異常型プリオン蛋白により伝達するが,基本的には空気感染・飛沫感染・接触感染はしません.中枢神経系の組織や臓器を扱わない限り,感染はしないので日常生活で感染することはまず考えられません.診療では中枢神経系の検査(腰椎穿刺)のみ感染する可能性があるため,その検体の処理には注意を要します.検査時に扱う器具は全てディスポで行うようにします.病理検索はプリオン病感染予防ガイドライン2020に従えば,感染症対策解剖室でなくても、さらに専用の備品がなくても一般病院の病理部門で中枢神経系を中心とする病理解剖が可能です.剖検は乾式で行い,解剖時の血液・体液は紙などに吸着させて焼却することが必須です.また,脳組織は蟻酸処理が必要でこれにより,初めて感染性は無視できるまで低下します.
感染対策や病理解剖に関するご相談はプリオン病サーベイランス事務局へお問い合わせください.

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