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4.曝露後(汚染後)の処置
ア.HIV
  HIVによる針刺し切創の場合、エイズの治療に用いられている3剤併用による抗HIV療法(HAART: Highly Active Antiretroviral Therapy)を感染予防にも4週間行なう方針が採用されています。針刺し切創後、1時間以内、遅くとも2時間以内に開始することが必要とされています。しかし、HIVによる感染確率が0.5%前後と低く、さらにHAARTは副作用が多いうえ、飲みづらく、長期安全も確立していないので、メリット・デメリットを考慮して服用の是非を決定する必要があります。最近の予防内服は服用しやすくなっています。 中空針で傷が深い場合、あるいは患者のHIV-RNAが多い場合などには服用が勧められていますが、傷が浅くほとんど出血しない、もしくはわずかににじむ程度の場合には積極的に勧める必要はありません。いずれにしても服用するかしないかの最終判断は、受傷者本人に任せるのが望ましいです。
イ.B型肝炎
 患者のHBs抗原が陽性の場合で、受傷者のHBs抗体、HBs抗原が共に陰性の場合は、高力価抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)を48時間以内に注射する.「抗HBsヒト免疫グロブリン」はすでに体内に侵入したHBウイルスを高力価(力のつよい)のHBs抗体で中和排除することにより、HBウイルス感染を予防します。
 患者のHBe抗原が陽性の場合、あるいは今後の再事故に備える場合には、HBe抗原陰性であっても、受傷者のHBs抗体、抗原が共に陰性であれば、HBsワクチンを事故直後~7日以内、1ヵ月後、6ヵ月後の3回にわたり投与します。このHBsワクチンは、人工的にHBs抗原を接種することにより、HBs抗体を作り、HBウイルス感染を予防するために使わます。医療従事者は医療現場に勤務する前にあらかじめ接種することが重要です。

患者の免疫状態 曝露源患者のHBs抗原の有無別の曝露後感染予防策(*1)
陽性(+) 陰性(-) 不明
HBV感染歴あり 無処置 無処置 無処置
ワクチン未接種 HBVワクチン(*1)コース(*2)かつHBIG(*3)を1回 HBVワクチン(*1)コース(*2) HBVワクチン(*1)コース(*2)








HBs抗体基準4以上 無処置 無処置 無処置
HBs抗体基準4未満 HBVワクチン(*1)1回追加かつHBIG(*3)を1回 無処置 HBVワクチン(*1)1回追加
HBs抗体無反応者 HBVワクチン(*1)コース(*2)かつHBIG(*3)
またはHBIG(*3)2倍量
無処置 リスクが高ければ
HBs抗原(+)と同じ処置
 (*1) 曝露後感染予防はできるだけすみやかに,可能ならば24時間以内に実施する.
 (*2) 0,1,6ヵ月後の計3回接種.
 (*3) 抗HBs人免疫グロブリン「日赤」1バイアル(1000単位,5ml) を筋注.
 (*4) 各施設で使用する抗体測定系により異なる.

ウ.C型肝炎
  HCVに関するワクチンや免疫グロブリンはありません。しかし、インターフェロンに関しては、感染予防効果があるという証明は得られていませんので、予防のための投与は勧められていません。しかし、受傷後にHCV抗体検査の結果が陽性と判定され(感染成立)、C型肝炎として治療を要する状態であると医師が判断した際には、インターフェロンによる急性C型肝炎の治療は行なわれることがあります。しかし、暴露後の感染予防(PEP: Post exposure prophylaxis)として、確立していないため、2001年10月現在では推奨されていません。しかし、最近、インターフェロンαによりウイルス排除が可能であるとの報告があり、C型肝炎に罹患しても治療により治癒しうる可能性がある.いずれにしても院内産業医、インフェクションコントロールドクター(ICD)、もしくは肝炎の専門医の指示を仰ぐことが必要です。
エ.梅毒トレポネーマ
梅毒に汚染された血液に暴露された場合、ペニシリン系抗生剤の内服投与が勧められています。
「病院等における災害防止対策 研修ハンドブック 針刺し切創防止版」(発行 地方公務員災害補償基金、平成22年2月) からその一部を、許可を得て転載。