わが国における食物アレルギーの有病率は乳児が5-10%、学童以降が1.3%程度と考えられ、全年齢を通して推定1-2%程度の有病率があると報告されている。しかし、血清中の抗原タンパク質に結合する抗原特異的IgEを測定する現行の診断検査法では偽陽性や偽陰性が問題であり、食物アレルギーを含めアレルギーの診断および治療法の開発は世界的に重要な課題である。
ペプチドアレイは医学、薬学分野においてハイスループット・スクリーニングとして用途の広いツールになりつつある。しかしながら、DNA等核酸に関する網羅的解析はDNAマイクロアレイ等により工業レベルで実現されているが、ペプチドに関しては同程度の解析ツールという点でまだ開発途上にある。本研究では従来報告されているSPOT合成法やピン式アレイとは異なり、ピエゾ素子微小液滴吐出法によりpL単位の抗原量で大量生産可能な高集密化ペプチドアレイの作製に成功した。この技術を用いて、IgEエピトープを利用したミルクアレルギーの高精度アレルギー診断法の構築を試みている。抗原タンパク質であるミルクタンパク質の全アミノ酸配列を網羅する16マーのペプチド断片を合成し、スライドグラス上に配置したペプチドアレイを開発し、ミルクアレルギー患者の血清を用いたIgEの結合するエピトープの解析を行い、患者群において特異的に高結合が見られるエピトープの組み合わせを探索している。
本研究は名古屋大学大学院工学研究科 本多裕之教授ならびに日本ガイシとの産学・医工連携プロジェクトとして行っている。