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Akio Horiguchi MD
Dept of Urology, NDMC

尿道狭窄症とは?What's urethral stricture?

尿道狭窄症とは

尿道狭窄症とは

尿道狭窄症は男性に多くみられる疾患です。怪我、炎症、尿道カテーテル挿入や尿道内視鏡手術(経尿道的手術)の後遺症によって尿道粘膜に傷がつき、修復される過程で尿道粘膜や尿道粘膜を取り囲む尿道海綿体に線維化、瘢痕化という異常が起こり、尿が通る内腔が狭くなる疾患です。症状が重い場合には自力で排尿ができなくなり、尿道や膀胱にカテーテルを入れた状態で生活しなければなりません。適切な治療を行わないと生活の質を著しく損なうばかりか、尿路感染症や腎機能障害に至ることもあります。

尿道狭窄症の進行
正常な尿道(1)に傷が入ると尿道粘膜の瘢痕化が起こります(白い部分が瘢痕です)(2)。
重症化すると、尿道粘膜を取り囲む尿道海綿体に瘢痕が拡大し、内腔が狭くなってきます(3、4)。
さらに進むと尿道海綿体の外(陰茎海綿体)に瘢痕が広がり内腔が完全に閉塞したり(5)、ひび割れ(ろう孔形成)が起こります(6)。

尿道狭窄症は尿道のいたるところに起こりますが、球部尿道(肛門と陰のうの間の部位)の狭窄が最も多く、次に振子部尿道(陰茎部尿道)の狭窄、外尿道口(尿の出口)の狭窄、膜様部尿道(骨盤を貫通する部分)の狭窄が続きます。

男性の尿道周辺の解剖
振子部尿道と球部尿道を前部尿道、膜様部尿道と前立腺部尿道を後部尿道といいます。


尿道狭窄症の原因は

尿道狭窄症の原因は、尿道カテーテルや経尿道的手術などによる医原性狭窄が最も多く、30~40%を占めています。10〜20%が怪我による狭窄(外傷性狭窄)です。また、原因がはっきりしない例も30%程度存在します。

1.外傷

  1. 騎乗型損傷:何か硬いもので股間(会陰部)を打撲することで起こります。恥骨との間で球部尿道が挫滅されます。挫滅された尿道は線維化、瘢痕化を起こし、高い確率で球部尿道狭窄になります。尿道狭窄症の約30%の原因は不明ですが、患者さんが記憶していない小児期の騎乗型損傷が原因不明の中にかなり含まれているとも言われていますので、騎乗型損傷は尿道狭窄症の重要な原因といえます。鉄棒やフェンスをまたがろうとして誤って手足を滑らせて会陰部を打撲、風呂場や温泉で湯船に入るときに足を滑らせて会陰部を打撲、といったケースが典型的な受傷パターンです。受傷直後は尿道が強く挫滅を受けていますので、すぐに修復手術をしたり、尿道にカテーテルを通すことはせず、膀胱ろう(下腹部に小さな穴をあけて膀胱に直接カテーテルを留置すること)を作成して尿の出口を確保することが最良の選択です。受傷後3−6ヶ月経過して、炎症がおさまってから尿道形成術を行うのがベストです。
    騎乗型損傷
    会陰部を鉄棒などの硬いもので打撲すると、球部尿道損傷が起こります。損傷された尿道は線維化、瘢痕化をおこし、狭窄にいたります。
  2. 交通事故や作業中の事故による骨盤骨折:後部尿道外傷は交通事故や労働作業中の事故によって起こる骨盤骨折の約10%に認められます。尿道は膜様部で骨盤に固定されていますが、骨盤を左右から圧迫されたり、ねじるような大きな力が加わると後部尿道(膀胱頚部から膜様部尿道までのいずれか)に損傷が起こります。例えるならば、”りんご(前立腺や膜様部尿道)を枝(固定されている骨盤の壁)から引き抜く”ような力が加わり、尿道が断裂してしまうのです。交通安全の向上や労働環境が整ったことにより、骨盤骨折の原因となる大きな外傷は減少傾向にあるため、後部尿道外傷自体も減少傾向にあります。騎乗型損傷と同様に、受傷後すぐには修復をせず、3〜6ヶ月待機して尿道形成術を行うのがベストです。
    骨盤骨折による後部尿道断裂
    骨盤に固定されている膜様部尿道が断裂し、血液が断裂部に貯留しています(黒い部分、血腫)。血腫は線維化、瘢痕化を起こします。
                                          
2.尿道カテーテルや経尿道的手術
  1. 尿道カテーテルの長期留置:他の病気の治療中に尿道にカテーテルを入れることがよくあります。長期間にわたり尿道にカテーテルを挿入されていると尿道狭窄になることがあります。カテーテルが尿道を内側から圧迫することで、尿道の血液の流れが悪くなります(虚血)。虚血を起こした尿道は壊死し、線維化して内腔が狭窄します。カテーテルによる圧迫を受けやすい部位(球部から膜様部、振子部と球部の境界、外尿道口)が尿道カテーテルによる狭窄の好発部位です。
  2. 経尿道的手術:前立腺肥大症や膀胱がんの内視鏡手術(経尿道的手術)を受けた方の数%に尿道狭窄症が起こります。狭窄の好発部位は尿道カテーテルによる尿道狭窄と同様です。
3.炎症
  1. 淋菌性尿道炎:以前は尿道狭窄症の主要な原因でしたが、抗菌薬が進歩して衛生環境の整った先進国では、淋菌性尿道炎による尿道狭窄症はまれになりました。
  2. 硬化性苔癬:淋菌性尿道炎に変わって主要な炎症性尿道狭窄の原因になってきたのが硬化性苔癬という陰部に好発する慢性的な皮膚病の一種です。免疫異常、ウイルス感染など様々な原因により起こるとされていますが、詳細はよく分かっていません。男性よりもむしろ女性に多い疾患です。男性の場合、30歳から40歳に好発します。初期は陰茎包皮や亀頭部が白く硬くなり、包茎のような状態になります。さらに進行すると外尿道口から前部尿道全長に病変が拡大し、難治性の尿道狭窄症に進展する可能性があります。以前に淋菌性尿道炎による尿道狭窄症と診断されていたケースの多くが、実は硬化性苔癬が原因であったという報告もあります。包茎と排尿困難がある場合には、まず疑う必要のある疾患です。

4.その他

前立腺がんの根治手術、放射線治療後や尿道下裂の手術後の後遺症として尿道狭窄症がみられることがあります。

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