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Akio Horiguchi MD
Dept of Urology, NDMC

尿道狭窄症の治療法は?What's treatment for urethral stricture?

尿道狭窄症の治療法は

  • 尿道狭窄症の治療方法は狭窄の原因、狭窄の長さ、部位によって変わります。狭窄の原因が怪我ではなく、狭窄箇所が一ヵ所のみで1cm未満の短い狭窄は、まず尿道拡張(ブジー)や尿道内視鏡で直接観察しながら狭窄部を切開する内尿道切開術といった比較的容易に行える経尿道的治療を行うのが一般的です。しかしながら、このような経尿道的治療は短期的には有効でも、長期的には高率に再狭窄します。再狭窄した例に再度経尿道的治療を行っても効果はなく、逆に狭窄を複雑で治りにくいものにしてしまいます。また、怪我による狭窄、1cmを超える長い狭窄、複数箇所に及ぶ狭窄は経尿道的治療ではまず治りません。このような尿道狭窄症を根本的に解決する唯一の方法は、尿道を作り直す手術、つまり尿道形成術を行うことです。
  • 尿道狭窄症はさほど頻度の高い疾患ではありません。それゆえに十分な尿道形成術の治療経験を持った医師が少ないのが現状です。尿道形成術は特殊な治療で技術的にも難しいため、泌尿器科医の多くは比較的手技が容易で合併症の少ない経尿道的治療を行っています。医療技術が世界一進んでいる米国でも約6割の泌尿器科医は尿道形成術の経験がなく、年間に10例以上の尿道形成術を執刀している泌尿器科医は全体の1%に満たないのです。
  • 確かに経尿道的治療は一回一回の治療は低侵襲ですが、一生続けなければなりませんし、決して完治することはありません。治療を繰り返すうちに瘢痕が拡大し、あとで尿道形成術を行う際に手術が難しくなるというデメリットもあります。医療経済的な側面からみても、一度経尿道的治療後に再狭窄した患者さんは、その時点で尿道形成術を行った方が、再狭窄後に経尿道的治療を繰り返すよりも低コストである、という試算が海外から報告されています。
  • 私が行っている尿道形成術はすべて通常の保険診療で認められている治療法です。 また、全身麻酔に耐えられる体力があれば、手術適応に年齢制限はありません

尿道再建手術とは

尿道再建手術の方法は狭窄の原因、狭窄している尿道の部位、長さによって決まります。以下に代表的な術式を説明いたします。

狭窄部切除、尿道端々吻合術 (Stricture Excision and Primary Anastomosis, EPA)

狭窄している部分だけをきれいに切除して、残った正常な尿道同士を縫い合わせるという非常にシンプルな方法で、最も成功率の高い方法です。

狭窄部切除、尿道端々吻合
狭窄部を切除し、正常な尿道を吻合し直すシンプルな方法です。

尿道端々吻合の最も良い適応は、球部尿道狭窄症(特に膀胱に近い中枢側球部尿道)です。球部尿道はもともと恥骨の裏側でカーブをしていて長さに余裕があるので、2cm程度の狭窄であれば、尿道端々吻合術で修復することが可能です。

球部尿道の直線化

球部尿道の短い狭窄であれば、長さに余裕があるので無理なく端々吻合することが可能です。

一方、尿道の出口寄りの末梢側球部尿道や振子部尿道(陰茎の部分)狭窄は、たとえ1cm程度の短い狭窄でも、切除してしまうと陰茎の変形を起こしたり、勃起に伴う陰茎の伸縮により血液の流れが悪くなり再狭窄する原因になるので、尿道端々吻合は適応にならず、後述する他の組織を利用した尿道形成術を行う必要があります。

後部尿道外傷の修復術(後部尿道形成、Posterior Urethral Reconstruction)

後部尿道外傷は交通事故や作業中の事故による骨盤骨折の約10%に合併します。直腸や膀胱などの多臓器損傷を伴っていることが多く、まずそちらの治療を優先して行う必要があります。受傷後間もない時期は、尿の出口となる膀胱ろう(膀胱に直接カテーテルを留置する方法)を作成しておき、落ち着いてから尿道形成術を行います。尿道形成術を行うタイミングは、尿道の炎症や感染がなくなって、瘢痕化が完了したときで、一般的には怪我から3〜6か月が望ましい時期です。
手術は瘢痕部分を切除して尿道端々吻合を行いますが、断裂した膜様部尿道や前立腺が頭側へ持ち上がっていることが多く、うまく吻合するためにいろいろな工夫が必要になります。したがって、球部尿道の尿道端々吻合に比べて手間と時間のかかる難しい手術になります。

口腔粘膜を利用した尿道再建術 (Buccal Mucosal Urethroplasty, BMU)

振子部尿道狭窄症、2cmを超える長い球部尿道狭窄症では狭窄部切除、尿道端々吻合が不可能であるため、何らかの代用組織を利用して尿道を再建する必要があります。私は狭窄部分を尿道の走行に沿って縦方向に切開し、尿道の代用となる組織をパッチとして縫い合わせて、尿道の内腔を拡張させる手術(オンレイ法)を好んで行っています(以下のリンクからイメージをご覧いただけます)。狭窄部分の切開を入れる方向により、いくつかのバリエーションがあります。
オンレイ法の説明.swf へのリンク

狭窄部の瘢痕化が強く、内腔が極端に狭い場合、尿道下裂の修復術後に生じた狭窄などの複雑なケースでは手術を2回に分けて行います。まず、狭窄した尿道を切除したあとに代用組織を貼り付ける手術を先に行います(1期目の手術)。半年から1年待って貼り付けた代用組織がしっかりと体に馴染んだところで尿道の形に作り直します(2期目の手術)。

二期的手術の概要
うすいピンク色の部分が代用組織です。
1期目の手術では代用組織をしっかりなじませる(生着させる)ために、手術直後はガーゼで俵のように圧迫をします(図4)。
二期目の手術では、体になじんでしなやかになった組織を筒状に形成して尿道を作ります。

尿道の代用になる組織には皮膚、膀胱の粘膜、口の粘膜(口腔粘膜)があります。私は口腔粘膜を尿道の代用組織として好んで利用しています。口腔粘膜にはいくつかのアドバンテージがあります。口腔粘膜は少々熱いものや硬いものに触れても問題になることはありません。それに、口の中にはたくさんの雑菌(口腔内細菌)が繁殖していますが、口の粘膜が感染して腐ってしまうことはありません。つまり、口腔粘膜は頑丈で感染に強いのです。さらに良いことに、粘膜を採取しても創は口の中に隠れているので、外から見てもどこを切ったかはわかりません。美容的に問題になりにくいということです。

口腔粘膜の採取部位
赤い部分が採取部位です(左頬から採取する場合)

口腔粘膜は左右どちらかの頬の裏から採取します。狭窄が長くて片方だけの粘膜では足りないときは、両方の頬や舌の裏から取ることもあります。”口の中から粘膜を取る”と聞くと、大抵の患者さんは最初びっくりされます。”ものすごく痛いのではないか”と心配されます。手術後は歯の治療後のような頬の腫れや痛みがありますが、1週間をピークに徐々に痛みはなくなってきます。食事は手術翌日から可能です。痛みと炎症を抑えるため、アイスクリームやシャーベットのような冷たい物から食べ始めることをすすめます。口の中がひきつれるような感覚、口の中のしびれが約半数の方にみられますが、手術後半年くらいで大部分は消失します。口を開けられなくなるといった、重度の後遺症を心配する必要はありません。


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