Akio Horiguchi MD
Dept of Urology, NDMC
私が治療を担当した患者さんの経過を一部ご紹介いたします。
ある日、作業中脚立から転落して会陰部を強く打撲されました。直後から自力での排尿ができなくなり、救急病院へ搬送されました。球部尿道断裂と診断され、膀胱ろうカテーテルを入れることになりました。内尿道切開を受けましたが、狭窄が長く対処不可能であったため、私の外来を紹介受診されました。
手術は尿道端々吻合術を行いました。手術後に排尿の具合は怪我をする前と変わらなくなりました。ご本人も”絶好調です”と大変満足されたようです。
手術前の尿道造影矢印の部分で球部尿道が断裂しています。 |
手術後の逆行性尿道造影矢印が吻合部です。狭窄なく、スムースに造影剤が流れています。 |
手術後の排尿時膀胱尿道造影矢印が吻合部です。膀胱に貯まった造影剤が抵抗なく排出されています。 |
仕事中にパワーショベルで骨盤を左右から挟まれるという大けがをされました。骨盤骨折による後部尿道断裂と診断され、自力で排尿ができずに膀胱ろうカテーテル管理された状態が3年半ほど続きました。手術を希望し、私の外来を受診されました。検査の結果、尿道は膜様部で完全に断裂しており、前立腺が頭側に持ち上がってしまっていました。
手術は尿道端々吻合を行いました。現在はカテーテルも必要なくなり、問題なく排尿できています。
手術前の尿道造影、排尿時膀胱尿道造影膜様部で完全断裂しており、中枢側尿道は頭側に持ち上がっています。 |
手術後の逆行性尿道造影矢印が吻合部です。狭窄なく、スムースに造影剤が流れています。 |
手術後の排尿時膀胱尿道造影矢印が吻合部です。膀胱に貯まった造影剤が抵抗なく排出されています。 |
かなり前から尿が出にくいことを自覚されていました。ある日、突然尿が全く出なくなり、ご近所の先生に診ていただきました。振子部と球部尿道に複数の狭窄があることが判明しました。かなりの長期間にわたり尿道狭窄症を患っていたようで、すでに腎機能はかなり悪くなっていました。内尿道切開を受けましたが、狭窄が長く不可能であったため、膀胱ろうカテーテルをつけて生活されていました。それから1年半ほど経って、尿道再建手術を希望され、私の外来を受診されました。
振子部狭窄は口腔粘膜を利用したオンレイ法、球部尿道は狭窄部の切除と尿道端々吻合を行いました。
自力での排尿ができるようになり、久しぶりにカテーテルから解放され、”これでやっと孫と温泉に行けます”と喜ばれていたのが印象的でした。
手術前の尿道造影振子部尿道に長い狭窄(細い矢印)、球部尿道に2cm弱の強い狭窄(太い矢印)が認められました。 |
手術後の逆行性尿道造影細い矢印は口腔粘膜を利用した形成術を行った振子部、太い矢印は尿道端々吻合を行った球部尿道です。 いずれも狭窄なく、スムースに造影剤が流れています。 |
手術後の排尿時膀胱尿道造影細い矢印は口腔粘膜を利用した形成術を行った振子部、太い矢印は尿道端々吻合を行った球部尿道です。スムースに排尿できています。 |
10年ほど前から尿の勢いが弱いことを自覚されていたようです。6年前からご近所の先生に定期的に尿道ブジー(拡張)をしていただいておりました。ある日、突然尿が出なくなりました。緊急で近所の先生に膀胱ろうカテーテルを入れてもらいましたが、その後も自力では尿が出せない状況が続き、私の外来を受診されました。尿道造影を行ったところ、驚くことに振子部から球部にかけて、非常に広範囲な狭窄を認めました。
典型的な硬化性苔癬による尿道狭窄症で非常に狭窄が長いため、両方の頬から10cmを超える長い粘膜を取らせてもらい、オンレイ法で尿道再建を行いました。
現在はブジーも必要なくなり、快適な生活を送られています。
手術前の逆行性尿道造影(左)と排尿時膀胱尿道造影(右)前部尿道全長に及ぶ、広範囲な狭窄を認めます。 |
手術後の逆行性尿道造影(左)と排尿時膀胱尿道造影(右)(矢印が再建部位です)尿道造影では狭窄していた尿道は充分に拡張いたしまし。排尿時膀胱尿道造影では自力でのスムースな排尿が確認されました(右)。 |