出前授業
 

神経学、医療面接、臨床研究・臨床試験、薬事行政、リスクコミュニケーション
医療人とmedia & publicrelations、BSE、認知行動療法・・・その他たくさん

神経学を中心に、医療面接実演、臨床研究・臨床試験の進め方、日本の薬事行政の問題点から認知行動療法の臨床応用に至るまで、多彩なメニューを取り揃えて、その日から現場で役立つような授業を出前します。主な対象は、医学部学生と臨床医(経験年数や診療科、所属施設に関わらず)ですが、臨床現場に関心のある方に広く聞いていただけるような内容を心がけています。ご希望の方はメール(massie.ikedaあとまあくgmail.com )にてご連絡ください.
 

どんな内容?
具体的には,10-20人の医学部学生(4-6年生)が中心になって,開業医の先生方が数人,時には,保健師,訪問看護師,SP(模擬患者)の方や,大学 総合診療部の偉い先生方も加わって,医療面接,神経疾患の病歴聴取のこつ,診察手技などをみんなでわいわいがやがや,体を動かしながら,楽しく学んでいき ます.現場の診療そのものを学びますから,学生さんのadvanced OSCEにも,その日から役立つ内容です.

講演に使ったスライドを公開しています.内容を知りたい方はどうぞご自由にご覧下さ い.

従来の,”講義”,”授業”,セミナー”とは全く異なる臨床学習の場で,参加者の多くは,”道場”と呼んでいますが,実は学生中心のパーティ,合コ ンの雰囲気です.かといって,学習内容が貧しいわけでは決してありません.何と言っても,マッシー池田の神経内科快刀乱麻病歴から学ぶ神経 内科研修医に捧げるtips一 般内科医のための神経内科の執筆者が実際にみなさんの目の前に現れるのですから.

特長
この”道場”の特長は,出身大学,経験年数,専門分野といった属性とは全く関係なく,学び,議論できることです.PCFMネットのメンバーを始めとして, 診療所での学生教育に熱心な先生方のご協力をいただいていますが,あくまで学生が自主的に計画し,学びたいことをやる.楽しいこと,面白いことを優先しま す.モットーは次の通りです.

1.神経内科専門医でも病歴で8割,病歴と視診で9割以上までわかるなら,神経内科医以外の臨床医は,病歴だけでもいいじゃないか.面倒くさい診察 はずっと後回しにしよう.
2.筋萎縮性側索硬化症も,脊髄小脳変性症も,パーキンソン病も,全部病歴だけで診断できる.
3.診察を学ぶにしても,忙しい外来でのうまい手抜きの仕方を学ぼう.
4.腱反射よさようなら.ハンマーがなければ診断できない病気なんか,この世の中に一つもない.

*”公演”は誤植ではありません.2002年に新潟市でBSEの講演をした時に、学生が作成したポスターに、”池田正行先生公演”と書いてあったので、主催者がひどく恐縮していたのですが、私は、自分の話の面白さを宣伝するまたとないキャッチコピーだ、やったぜ、これ、イタダキ!! と思って(これも認知の歪みが是正された瞬間ですね)、それ以来、講演ではなく、公演にしているのです。笑いを取る、眠らせないというプレッシャーが演者にかかる点も有用ですし、ネットで検索をかける時も、講演スライド集とすると、特異度が低くて私のページがなかなかヒットしませんが、公演スライド集とすれば、特異度が100%となり、必ずトップページに上がってくるという利点もあります。

2011年
08/19:青梅市立総合病院
陶守副院長,鶴和救急科医長のおかげで,10人以上もの研修医の方々が集まってくれました.みなさん,私の話を熱心に聴いてくださったばかりでなく,率直な質問もどんどん出て,あっという間の2時間でした.産婦人科部長である陶守副院長とは大学同級で,卒後30年,お互いここまで何とか商売を続けてきて,時間も診療科も空間も越えて,次の世代を育てるために協同作業ができるとは,本当に感慨深いものがありました.(写真1:研修医の皆さんと写真2:陶守副院長と


2009年
1/10-11:岡山道場
所沢から長崎へ,物理的な距離ばかりではなく,仕事の内容も大きく異なりますし,新しい職場での仕事の立て込み方がどうなるのか,これまでのように週末を使っての地方巡業ができるのか,見通しが立たなかったので,しばらくお休みしていたのですが,ここなら大丈夫という岡山での復帰第一戦でした.定番の,「MRIは脳卒中の診断に役立たない」の公演,道場にご協力くださっている開業医の先生からの紹介患者さんの問診,診察実演とその後の学生さんたちとの議論,懇親会ではコミュニケーションの性差についての爆笑セッション
 

2008年
7/26-27:亀井内科(名古屋市)
亀井道場では,学生さんのアシストが,私の医療面接の展開に大きく影響します.学生さんが丁寧に問診,診察してくれるので,そこからヒントが得られるのです.サッカーで言うと右サイドからデイヴィッド・ベッカムが走り込んでくれるので,左サイドの空いたところでボールを待っていればいい.野球で言えば,前のバッターがさんざん粘ってピッチャーの球種,組み立てを見せてくれるので,その後の打者はとても楽な気持ちで打席に立てるといった具合でしょうか.患者さんばかりでなく,学生も私に教えてくれる,私を助けてくれることを学んだのも亀井道場でした.それがわかると学習効率が格段に上昇します.

6/30-7/2:第7回医学研究のための倫理に関する国際研修コース(長崎大学熱帯医学研究所)
討論の様子→写真1写真2写真3
主催:長崎大学医学研究倫理研究会、米国NIH、ノルウェー・ベルゲン大学,共催:アジア太平洋地区倫理委員会連絡会議(FERCAP)/ TDR

平山先生,大変有意義なセミナーにご招待いただき,誠にありがとうございました.津谷先生,永田先
生.長崎までお出でいただき,御礼申し上げます.加納先生の教育が30年の時間を超えて長崎の地で結
びついた.その結びつきが,さらに時間も空間も超えて医薬品となって世界中に広がっていく.教育の
力を感じます.

長崎での3日間は,予想以上に充実していました.今回の倫理コースで学んだことはたくさんあります,
要点を書き出しますと:

○臨床試験における倫理問題の面白さを再認識:哲学,倫理学は実学中の実学なのに,あたかも実生活
から遠く離れたところに蟄居させられています.しかし,臨床試験という舞台では,倫理という道具を
使わなければ仕事ができない.臨床試験のデザインの段階から,倫理を道具箱から取り出して,生物統
計,行動科学,心理学,社会学,地理・歴史といったアイテムと組み合わせて,計画を立て,実行し,
検証する.

○充実した内容:実際に開発に携わっている我々が真剣に討議したくなるのですから,その内容は世界
中のどこへ出しても恥ずかしくないものです.

○若い人たちへの刺激:確かに,アフリカ,アジア,南米からもたくさんの参加者が来て,国籍,経歴
,年齢,資格に関係なく議論できる場に参加できたことは,とくに若い人にとって,新鮮な驚きだった
と思います.MPHの学生さんからは,講義や討論の英語についていけなかったというフィードバックがあ
りましたが,実は,あまり大した問題ではありません.日本人は完全主義者になりがちですが,大筋が
わかったからこそ,あそこにいたわけですし,何よりも,あの場の雰囲気を20代で味わえたことが大切
なのです.

○円滑な運営:見事なセミナー運営の手腕にも驚きました.充実した講師陣を揃え,administirationの
手際のよさ,そして毎晩繰り広げられる宴会(^^;).一日目は平山先生がいなかったにも関わらず,何事
もなかったようにセミナーは進行していきました,

○広く知って評価してもらうために:research ethicsに関してあれだけ充実したセミナーを組めるとは
.日本では熱研だけです.それも,今年で7回目.運営も極めて円滑.本当に驚きの連続でした.もっと
広く知ってもらって,もっと高く評価されていい.次回から,私も貢献させていただければと存じます

6/21:長浜市(滋賀県 湖北医師会)
楽しく、充実した時間をありがとうございました。研修医の方々に大勢来ていただいけて感激しました。私の本やDVDを購読・購入していただいた方も多く、大変ありがたく存じます。

私の知名度には明らかに地域差があります。数字としてのデータはありませんが、明らかに関西地方で高い印象です。一方、東北では、マッシー?なんだそれって感じで、実は関東でも私の知名度は高くありません。これは私の出すメッセージに対する親和性の地域差と、人&口コミの交流の地域差が成せる技と考えています。

マッシー池田を知らなくても、日々の生活や診療には何の支障はありません。マッシー池田を知らなくても給料は下がりませんし、昇進にも関係ない。ならば、私を呼ぶ動機は何でしょうか?神経学の勉強がしたいから?そうではありませんよね。だとしたら、昨日の公演では、神経学の勉強なんかほんのちょっぴりだったわけですから。

面白い奴がいる。なぜ面白いのか、どんな奴だろう。こんど呼んで話をさせてみよう。そういうことですよね。この、面白さ、好奇心を大切にする文化が根強いところが、私を呼んでくれるのだと思います。

研修医の方が、こんな田舎にマッシーが来てくれるなんて と言っていましたが、それは勉強不足に基づく誤解でしょう。滋賀県はいつの時代も交通の要所です。人々が行き交うところだから、いろいろなところから文化を受け入れる進取の気風があるのです。

私を呼ぶセンスのあるところが、時代の最先端を行っているのです。そして私の話も、医療崩壊への処方箋提示という、これまた時代の最先端。その処方箋の正体が近江商人のモットーという落ちもつきました。答えはいつも足元にある。だから地元が時代の最先端。長浜は決して田舎なんかじゃありません。

今、人間生物学の知識や専門分野を云々する以前に、基盤である医師免許が揺らいでる。地盤、土台が揺らいでいる時に、家のメインテナンスや増改築もへったくれもありません。

私は医療崩壊が取り沙汰される四半世紀以上前から、すでに医学生の時代から、医者やりたくない病、医者になってからは医者辞めたい病という重大な地盤沈下を自分自身で経験しています。その三十年にわたる闘病経験が医療崩壊の時代に役に立ちます。医者辞めたい病患者会代表兼医療崩壊戦線影の参謀総長みたいなものです。(もともと医者辞めたい病で体力がないので、表の司令官・参謀総長は体力のある方々にお任せ) なけなしの体力を消耗せずに、どうやって生き延びるか。それを、なかなかカムアウトできない、医者辞めたい病患者とこれからも一緒に考えていきます。
 

6/18:駒場(東京大学教養学部セミナー)

6/14-15:臨床薬理研究会・愛媛大学(松山市 愛媛大学)

6/2:東京(在日米国商工会議所)

5/30:藤沢市(介護支援セミナー)抄録

4/20:千葉市 第43回全国禁煙アドバイザー育成講習会→親しい人の禁煙支援がなぜ難しいのか?
私は禁煙支援のことは全く知らない。喫煙したことがないので、自分自身の禁煙の経験もない。だから、初めはお断りしたのだが、でも、高橋裕子先生から、「聴衆はみなさん、禁煙支援活動のことを考えている人ばかりですから、禁煙以外のことを話してください」と言われて、それもそうだなと思い直してお引き受けした。御題は、「つながり」。健常者と病者、現世と彼岸のつながりについてお話した。スライドは→こちら

4/12:東京(PIPC研究会懇親会)→春の銀座で大宴会
PIPCはペントシリンではありません。Psychiatry in primary care。井出広幸先生がファシリテーターとなって、内科医(勤務医・開業医を問わず)が中心となって、プライマリケア場面での心療の知恵を伝え合う会と言えばいいでしょうか。私もPIPCセミナーには非常に興味を持っていたが、なかなか参加の機会がなかった。幸い土曜で余裕ができたので、参加希望を出したところ,せっかく来るのなら芸をしろとの仰せが賜ったので,15分ほど,いつもの与太話をさせていただいた.→要旨

4/11:東京(東京厚生年金病院 プライマリケアセミナー)
演題は、「MRIは脳卒中の診断に役立たない」で、特に目新しい出し物ではなかったわけですが、病院周辺の医師会の先生方がたくさんいらしていただいて、東京厚生年金病院と、周囲の先生方との連携が非常にうまく行っていることがよくわかりました。都市部の病診連携のモデルケースであり、もっとたくさんの人に知ってもらいたいと思いました。

3/22-23:防府市(自治医大山口県人会勉強会)→記念写真
山口大学の学生さんも12人来てくれました.従来、自治医大卒業生の内輪の勉強会だったものが、地元山口大学の学生さんが参加してくれて、自治医大と山口大学の交流ができたことは素晴らしいことです。地域医療を支えるインフラはこうやって整備していくという見本ですね。そこで、義務年限を終えた10年目の自治医大卒業生から、自分のキャリアを振り返るプレゼンテーションをしていただきました。結果的に、バランスのとれた判断のできる素晴らしい医師になったわけですが、プレゼンテーションの中で非常に印象的だったのは、「何とかなるだろう」という言葉が、重大な決断の説明の度に出てきたことでした。
あるまじめな学生さん、「そんないい加減なことでいいのかな?と疑問に思った」と率直な感想を告白してくれました。いいですね、学生さんは。彼に対しては以下のように説明しておきました。

「all or nothingのデジタルな判断ではなく、いろいろな要素のバランスを考えた上で、現実的な落としどころを探った上で、自分が全ての要素をコントロールできるわけではない。過剰なコントロール願望を抑制する言語化が、”何とかなるだろう”という言葉なんだ。コントロール願望が過剰になると、それが実現できなくなった時に攻撃性(自分&他人や組織に対する)が高まって強いストレスを受ける。”何とかなるだろう”という言葉は、それを予防するためだ」

そんな素敵なプレゼンテーションの後ですから、医師のキャリアパス危機管理&医者辞めたい病に対する認知行動療法のお話したので、みなさん、納得してもらえたようです。興味ある方は,医者を辞めずに済む方法の解説スライドをご覧下さい.

3/19-21沖縄(県立中部病院、琉球大学・慈恵医大合同フォーラム:地域医療と臨床研究)
卒後教育の対象(中部病院2年目研修医への手紙) 

合同フォーラム:パネリストとしての私の要約
あらゆる医療は地場産業、すなわち地域医療である。また、臨床をやれば必ず疑問が生まれる。疑問が
生まれれば、必ず研究する心が生まれる。だから、地域医療で臨床研究をやることはご飯に味噌汁がつ
くぐらい,当たり前のことである。この当たり前のことが新奇に聞こえる背景には、医療、研究それぞ
れに対する特異な信仰がある。大きな建物の中にある高価な機械による診療や、莫大な開発費をかけた
大規模試験に対する信仰が、地域医療での臨床研究を阻害している。しかし、他人が持つこれらの信仰
の根強さに絶望する必要はない。優れた臨床研究は,地域医療に携わる臨床医の素朴な疑問から生まれ
るからである.そんな優れた臨床研究も,それ自体が目的ではなく,質の良い診療を実現するための手
段に過ぎない.自分の診療,自分の地域,自分の疑問に拘ることによって生まれる臨床研究こそが医療
に関わる人々の行動を変える原動力となる.

参考→なぜ地域医療なのか?なぜ臨床研究なのか?

3/13:大阪市(大阪府医事懇話会)→混合診療問題に関するスライド
医事懇話会の勉強の頻度と、ぜいたく極まりない一流講師陣を拝見して、このような高い見識を持ち、勉強熱心な先生方に、果たして私のような者がお話して、聴いていただけるのだろうかと、はなはだ心許なかったのです。ましてや、混合診療問題を日本でおそらく一番真剣に考えていらっしゃる先生方を相手に、混合診療問題をお話するなんて、滅茶苦茶です。そこで、私は、この機会に勉強させてもらおうと開き直りました。何しろ、学生さんや研修医からも、たくさんの知恵を授けてもらっている身なのですから。

私の話に新鮮味や独創的な点を感じていただけたとしても、それは私が独自に作り出したものではありません。本当は先生方の頭の中にあったことを引き出したに過ぎないのです。だからこそ、先生方に納得していただけたのです。私は、今回のお話を組み立てるに当たって、現場を預かる臨床医、厚労省、PMDA, 製薬企業、患者、いろいろな立場に自分を置きました。お送りした履歴でも、本当にいろいろなところを転々として、いつまでたっても出世できないでいることがわかっていただけると思いますが、その経験もまんざらではないと、大阪での夜の後、改めて気づいた次第です。演者写真

また,この席で,医師会の先生方も,混合診療絶対反対と言いながら,実は日常的に混合診療をしていることをお話しました.→あなたもやってる混合診療

3/8-9:名古屋市(総合診療医学会)
今や世界でもトップレベルの医学教育の場となった亀井道場。そこではどんな教育が行われているのか?それが、総合診療医学会という、晴れの場で公開された、それはそれはわくわくするイベントでありました。参加した皆さんの感想はどうだったでしょうか?亀井先生が勝ち取り、営々と積み上げてきた患者さんからの信頼、それを支えるスタッフ、師範代とのつながり、各地から学生が集える地の利・・・・これだけ完成度の高い教育現場を今見せられれば、うちではとてもじゃないがと思ってしまうかもしれません。でも、亀井道場を支えるこれらお要素一つ一つは、決して特別なものではありません。亀井内科呼吸器科も、地道に働くみなさんがいるのと同じ診療所です。

界最高水準といっても、特別仕掛けがあるわけではありません。だから、自分なりの形で、学生達が目を輝かせるような教育がやりたいし、できるのではないかと考え、各地を回っています。そればかりではなく、週に一度お世話になっている東埼玉病院でも、年に3回、神経学セミナーを開催できるようになりました。今回の公開亀井道場で、若い人達から学ぶ楽しみを得られる人たちがもっと増えますように。

2/23:静岡市(静岡赤十字病院)→楽しい懇親会写真こんな感じで話していました
志の高い,素晴らしい若い人達に囲まれて羨ましいですね.全国どこへ呼ばれても,今の若い人達は私の世代と違って学生時代からいろいろなことを考えているのがよくわかります.前回.3年前に伺った時は,研修医のみなさん随分と引っ込み思案に見えたのですが,それは私の方に問題があったのではないかと思いました.

というのは,今回は,研修医の方から症例を呈示してもらう形を取ったので,双方向の要素が加わって,よりフロアからの発言が増えたからです.私も大いに勉強させて貰いました.懇親会も短い時間でしたが,おいしいお料理を前に盛り上がりましたね.次回は是非もっとゆっくりできるようにいたします.

2/16:国立病院機構東埼玉病院神経学セミナー:神経学という名の文化→参加者感想
セミナーが終わって帰りのバスの中、一緒に帰る参加者も乗っていたのだが、何の会話も交わすことなく、ただぼうっとして暮れなずむ車窓の外を眺めていた。一体今日のセミナーは何だったのだろうと。それだけ特別な体験だった。

15人の医者が1症例に八時間。生まれて初めての経験だった。われわれはこういう時間が欲しかったのではないか。患者を大切にして、医師も大切にする。お互いに人間を尊重する時間だった。限られた時間の中でまとめる作業はもちろん大切だが、それはいつもやっている。この目の前の患者さんの訴えの意味は何か、様々な訴えの一つ一つは、診断にどう結びつくのか、その訴えを裏付ける所見を診察で見つけるためにはどうすればいいのか?、治療はどうすればいいのか?どんな薬をどのタイミングでどれくらい? 有効性の評価はどうするのか? 退院すればどんな生活環境にいて、どう生活することになるのか、その中で、我々ができることは何なのか?ああ、我々はこんなにたくさんのことを考えていたのか。そうだよなあ、これなら、一人の患者さんに15人の医者が8時間かけても不思議はないよなあ。

我々はいつも何を考えて仕事をしているのか?どんなに忙しくても、決して何も考えずにルーチンでやっているのではないことが、15人の医者が、1症例に8時間かけて議論を重ねた結果わかった。確かに、内容は普段の我々の症例検討会の水準と同じだった。しかし、専門医から非専門医に何かを教えるという集まりではなかった。そこには医師ならば、誰でもやっている「はず」のこと、誰でも考えている「はず」のことがあった。ただ、お互いに何を考えているのか、それを1症例に八時間もかけて話したことがなかっただけだった。1症例を15人で8時間かけて検討できる。それが、神経学という名の文化なのだが、実際に、15人の医者が1症例に八時間かけられる環境を維持できている場所を私は他に知らない

2/9-10:広島市(田坂メモリアルレクチャー)
田坂さんのことーあれから1年経ってー

1/26-27:松山市(愛媛大学医学部)その時の写真.みんなリラックスしながら活発に議論している様子がわかる.愛媛大学医学部 藤原 崇志君達のレポート
生まれて初めて訪れた愛媛県でした.当然,松山市も初めてで,てっきり北側にあると思い込んでいた瀬戸内海が,西側にあることも,訪ねて初めて理解できました.決して人数は多くなかったのですが,それだけに密なやり取りができて,私自身にも新たな発見がたくさんありました.

1/19-20:名古屋市(亀井道場):参加者の感想から

2007年
12/1-2高松市(TFC香川):個人的にメールをいただいた複数のリピーターの学生さんからは、「これまでの公演よりも一段と上手くなった」と褒めてもらって、嬉しさ一杯です。五十を過ぎて、自分の息子のような年齢の学生さんから、「上手くなった」とメールがもらえる。この嬉しさは、年を取らないとわからないかもしれません。四十を過ぎたら臨床能力なんて伸びないだろうと何の根拠もなく思いこんでいたのが、2003年7月、47歳で田坂佳千先生に広島で公演を始めてから、ぐんぐん力がつきました。

これは、老若男女、診療科、経歴・経験を問わずに師を求めた結果です。教え魔=教えられ魔。「万年研修医」との田坂先生のキャッチフレーズは、謙遜ではなく、効率的な学習のための戦略だったのです。→公演後のやりとり

11/24-25:飯塚市(麻生飯塚病院)
去年に引き続き2回目。前回は患者さんの診察は一人だけだったが、今回は3人。パーキンソン病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、歩いてくる脳梗塞と、多彩だった。それも診断が確定してすでに治療も始めた症例を、簡単な病歴だけで、その他の情報は一切無しで(もちろん診断を教えられることなく)、その後は全て私一人で、参加者の目の前で、病歴を取りながら診察し、診断するという鍛えられ方だった。

以下は,長年,メールでやりとりして,DVDも拝見しながら飯塚の地で初めて直接お目にかかった名医から,お食事会でほんの少しの時間しかご一緒できなかったことについてのお手紙の返事

ご丁寧なお手紙ありがとうございます。実際に初めてお目にかかるとはとても思えず、もう何年も前から一緒に仕事をしているように感じました。先生のDVDを拝見し、メールでのやりとりも通して、お互いに何を大切にして仕事をしているのか、共感を明確に意識してきたからでしょうね。M先生や、H先生とお話ししても同様な感じを持ちました。

翌朝、M先生とたまたま朝食をご一緒して、全国にいる自治医大の卒業生の話を伺ったのですが、遠くに仲間がいることは、距離が遠くなって接触しにくくなるという欠点よりも、共有した情熱が遠くにまで広がって継続していくと考えれば、距離が遠いということは、むしろ利点になるのでは という思いを強くしました。

それは物理的な距離ばかりではなく、診療科間の距離もそうです。だって、専門分野が全く異なる人々が、飯塚の地に集まって、あれだけ熱く議論して、今日はまたそれぞれの持ち場に戻ってやっているのですから。共有言語である”臨床マインド”を持ちながら。

11/17:津市(三重大学)
11/16:名古屋市(国立病院総合医学会)
11/10-11:大阪市(家庭医療学会セミナー)
11/4:枚方市(大阪歯科大学)

10/27-28:岡山市(岡山大学):第四回目の定期公演となった岡山。公演開始前のセミナー室に満ち溢れる華やかな雰囲気は、試合開始前のウィンブルドンセンターコートのよう。→私の感想、そして、愛媛大学医学部 藤原 崇志君達のレポート

2007/8/4-6第19回医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー(千葉県野田市)
年に一度の夏祭りに参加してきました.五十を過ぎた私にとって,若い人と,広い座敷でくつろいで夜中までお話できる貴重な機会です.今回は第三日目に,キャリアパス危機管理と題して,セッションを担当し,主に,医者辞めたい病について,議論をしました.その時に撮影していただいた写真1写真2写真3写真4.こうして,若い人と話せると,ああ,医者続けていてよかったなと思えるのです.

7/7:大阪(耳原総合病院):医者やめたい病についてお話しました。活発な議論によって、この病気の病像が、妊娠・出産の影響を始めとして、男性と女性で大きく違うことがよくわかりました。
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本日は本当にありがとうございました。みんなすごく喜んでくれました。先生の公演と後半のディスカッションを通じてひとりひとり思うところがあったようで、その気持ちが今後みんなの中でどう発展していくのか非常に楽しみです。お互いの気持ちを話し合う下地は十分に作っていただいたと思いますので、今後も機会を作って率直に話をできればと思います。

私自身は後半を聞けなかったことだけが心残りです。みんなの話を聞いてその場の空気を感じたかったと思いましたが、せめてビデオを見て雰囲気を味わいたいと思います。

先生のお話は本音の話ができる空気を作る本当にいいきっかけになると改めて実感しました。ぜひベテランの先輩医師や学生たちにも聞いてもらいたいと思いますので、何とか機会を作ってまたご連絡させていただきたいと思います。研修医たちは神経内科のレクチャーも希望していましたのでそちらの方でもお願いさせていただくかもしれません。その節はどうぞよろしくお願いします。

今回は直前にお願いさせていただいたにも関わらず快くお受けいただき、わざわざ遠方よりご足労いただきまして本当にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
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6/30:船橋市(船橋市立医療センター):下記、亀田総合病院での講演の翌日、同じ千葉県岩岡英明先生のお招きでした。研修医を中心に、若い人がたくさん来てくれました。私の公演は初めてだったので、みんな遠慮がちでしたけど、また呼んでください。繰り返すことによって、道場の雰囲気が出てきて、活発な議論ができますよ。

6/29:鴨川市(亀田総合病院):岩田健太郎先生のお招きで、いろいろなところで話題になっている亀田総合病院に伺いました。それまで4年勤めたPMDAでの経験をふまえて、日本の規制当局の存在意義などをお話しました。亀田院長や岩田先生からは、亀田の理念を伺い、その理念がどう病院の運営に具体化されているかを実際に見せていただくことができました。トップや幹部だけでなく、窓口、接客業務にあたる現場の各人の仕事の手際のよさ、hospitality、面接の上手さが強く印象に残りました。

5/16-18:名古屋(日本神経学会+岐阜大学+亀井内科+藤田保健衛生大学+名古屋市立大学)
出雲市からわずか二日おいての名古屋でしたが、3日間で、上記の5つのサイトを回りました。神経学会では発表、岐阜大学では診断シミュレータの開発打ち合わせ、藤田保健衛生大学では医者やめたい病の講演、名古屋市立大学では、神経学における問診と病歴と検査の関係の講演で、いずれのサイトでも、若い人たちと、そして若くない人たちとも大変楽しく充実した時間を過ごすことができました。

5/12-13:出雲市(島根県立中央病院)
島根大学医学部の学生さんと、島根県立中央病院のスタッフが中心でした。とくに学生さんに当たるべからざる勢いがあって、私もたくさんの刺激を受けて、勉強にもなりました。ここでも医者やめたい病のことを話させてもらいましたが、学生さんも、研修医も、そしてベテランの先生も、共感していただきました。

2007/4/21-22:高知市(高知大学医学部)
高知大学医学部の学生さんが,ACT-K (Asssociation of Clinical Training Kochi)というグループを結成して,呼んでくれた.高知大学の学生さんを中心に,大学総合診療部の先生方や高知医療センターの先生方にもいらしていただいて,参加者は30名近く.またSP研究会の方々も加わって充実した時間を過ごすことができた.医療面接や診察の修練を通して臨床を勉強していこうとする学生さんの活動拠点が日本全国にできていくのを見ると,私の学生時代とは隔世の感がある.”医学の進歩”とはこういうものなのだなとつくづく思う.→楽しい集合写真

2007/4/13-15:熊本市(菊池病院)
菊池病院臨床研究部の原井先生のお招きで,熊本を訪ねた.前回の熊本訪問は,1986年の神経学会だったから,20年ぶりだったわけだ.一日目は,国際協同治験時代のPMDAの存在意義について,突っ込んだ議論をさせていただいた.二日目はがらりと変わって,重症心身障害者病棟と痴呆症のモデル病棟を見学させいただいた.その前後で,神経学における問診と診察戦略についてお話させていただいた.

2007/3/24-25:名古屋(亀井道場)
これも定席となって久しい亀井道場.もはや多くを語る必要はない.学生さんの感想をどうぞ

2007/2/24:東京(王子生協病院)
都内での初公演となりました.もうすでに現場に出ている方々のご希望で,”しびれ”の話と”後発品”の話という,面白い組み合わせになった.前半は,神経内科医として,後半はPMDAのDirector Medical Reviewerとして話したわけだ.→感想の一部

2007/2/17:蓮田市(国立病院機構東埼玉病院)
私にとって,”定席”である,ここ東埼玉病院でのセミナーも,3回目となり,スタッフもすっかり慣れた.今回は,これまでと趣向を変えて,診察手技の実習を中心にした.腱反射と眼底鏡の実習だったが,どれ一つとっても奥が深い.この日のレクチャーのために作ったスライドが→事前確率の形成過程:予診から診察の組み立てまで

2007/2/10:学びあう文化(前橋協立病院)
高柳先生,こちらこそ,勉強の機会を与えていただいてありがとうございました.一番印象深かったのは,私よりも年上(と思われる)先生方の真剣に学ぶ姿で した.今まで,あちこちの病院を回りましたが,院長・副院長先生と揃って出ていだいたことだけでも初めてでしたのに,最後まで研修医を交えての討論に,そ れこそ研修医の謙虚さと勉強熱心さを以って積極的に加わってくださったことに,ああ,ここに教育があるなあと感激しました.

一生勉強と,口で言うのは易く,行なうのは難し.しかし,目の前で実例を示していただくと,勇気が出ます.励みになります.さらに菅野先生のような 一流の臨床医・教育者が外部から参加なさって自由に意見を言ってくださる.実際に病院に伺って,改めて前橋協立病院の教育力の秘密がわかりました.

医者が行なう様々な活動の中で,患者さんを守る=医者を守るという本質的なアウトカムへの貢献度から考えると,教育,それも地域医療の現場で近いと ころで行なう教育が一番効率的(資金,人手,時間)です.基礎研究を比較対照として考えると,それは誰の目にも明らかとなります.たとえネイチャーやサイ エンスに論文を載せても,その論文の結果が,医薬品開発に結びつく可能性は限りなくゼロです(*).お金と人手に余裕があった頃はまだよかったのですが, これからの日本は,もう,そういう時代ではありません.

教育に力を入れ,人が育てば,患者さんが助かり,育てられた人も育てた人も楽になります.育つ人は医師ばかりではなく,その他の医療従事者全てが教育の対 象です.病棟看護師の観察能力ばかりでなく,受付窓口の方のコミュニケーション能力,臨床の知識が,救急患者さんの命を助けることもあります.

昨日は2時間半で帰れました.今後もどうぞ,お気軽に及びください.特に症例検討セッションは勉強になりますね.今回のめまい,しびれはそれぞれ重量級で したが,今後は,私からのレクチャーを一つ,1時間以内で納めて,その後,神経内科(らしき)症例何でもあり(診断が決まってなくてもいい)の検討・相談 会という,より手軽な形で,年に2−3回やってもいいんじゃないでしょうか.

*たとえば
○UCLAのStanley Prusinerは100万人に一人しかないプリオン病の研究でノーベル賞をもらったけれども,いまだにプリオン病の治療法はない.同じノーベル賞でも,ピロリ菌の研究に比べたら雲泥の差.
○これまで,アルツハイマー病に関連して,400余りの論文がNatureとScienceに載ったが,アルツハイマー病の予防あるいは治療薬はまだない.
○脳梗塞急性期を対象とした神経保護薬をめぐっては、これまで、1000以上の薬剤が動物モデルで検討され、114の薬剤が臨床試験に入ったが、いまだFDAに承認されたものは一つも無い。

2007/1/28 市立堺病院 総合内科
堺病院にお招きいただき、ありがとうございました。みなさんとの議論を通して、また自分の臨床を磨くことができました。

臨床現場に出る時間の少なくなった私にとって、地方巡業は、実は、私が皆さんに何かを教えるためにやっているのではありません。逆に私が皆さんに教えてもらうためにやっています。みなさんはきっとそう意識していないでしょうが、そこが狙い目です。みなさんの素朴な疑問が、私を鍛えるから。池田を鍛えてやろうなんて意識したら、素朴な疑問は絶対に出てこない。その意味で,堺病院での議論は私を徹底的に鍛えてくれました.

いつも現場に出ている人の注文に合わせて、納得してもらわなくてはならない。そこには、診療科、卒業大学、経験年数、施設といった属性の別は関係ありません。実際にめまいの患者さんを診ている人、しびれの患者さんを診ている人の疑問に答えて納得してもらわなくてはならないのです。公演は,私自身が,自分の臨床の腕を上げるためにやっています。

私の地方巡業は、厳しい顧客の注文に応える工房の職人にも例えられます。たとえば、”めまい”の話は、臨床に厳しい家庭医療学会の会員向けのセミナーで、どうしてもめまいの話をしなくてはならない状況に追い込まれて組み立てた作品です。一昨年は、まともな作品を作れる自信が全然なくて、頭痛としびれの話で勘弁してもらったのですが、次の年にはよろしく言われて、受注せざるを得ませんでした。

去年の4月末から、5月はじめの連休を使って、これなら何とか行けそうという段階の試作品を作り、それを6月に自分が週に1回勤めている出ている国立東埼玉病院のセミナーと名古屋の亀井道場で試し、何とか使えることを確認して、11月の家庭医療学会に臨みましたが、結果は今一つしっくり来なかったので、家庭医療学会のすぐ後に、Dix-Hallpikeの動画を取り入れるなどしてバージョンアップを図りました。

”しびれ”の話でも、pure sensory strokeの臨床研究の紹介、高齢者のcryptogenic sensory neuropathyの話といった点で、DVDよりもバージョンアップして、より使いやすい診療道具になっています。これも、実は田坂先生から,”高齢者で,進行はしなくて,筋力低下もなく,原因もはっきりしないしびれって,たくさんいますよねー”との注文がきっかけでした。

地方巡業は、全国の現場で活躍している臨床にうるさいお客さんの生の声を聴いて、より使いやすい診療ツールを作るためなのです。臨床にうるさいお客さんというのは、しばしば若い人です。現場に長くいると、自分独自の診療ツールを作ってしまうので、診療のプロセスには困らなくなってしまうのです。困らなくなってしまうのは、困りますよね。困らなくなるということは、問題意識がなくなるということです。決して問題がなくなったわけではないのに、問題意識がなくなるのは危険極まりないことです。われわれは困り続けなければなりません。困らなくなったらおしまいです。

2007/1/13
松本協立病院(長野県松本市)で,”しびれ”の解説と腱反射の診察手技実習,それから懇親会で”医者やりたくない病”の解説をした.その後頂いた感想
 

2006/12/2-3:高松(TFC高松) 
羽生善治の話から
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難しい決断の場面では、誰しも答えを単純化したい、明確化したい欲求に襲われます。でも、あえて答
えを決めず、方向性だけを決める。そうした曖昧さや漠然とした状況を残しておくことも大切なことだ
と思います。ある意味、それは答えを出さないことに対する不安や恐怖に打ち勝つことができるかどう
かという問題です。
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今回,最も印象的だったのは,やはり実際の面接・診察セッションでした.第一回目TFC高松とはまた別の意味
で,臨床医としての私の実力が,参加者の目の前で問われました.第一回目は道場での木刀→真剣とい
う場面転換が命がけでしたが,診断そのものは完璧に読めていたわけです.

ところが今度は,関連が思いつかない病態,病歴が混在して,診断そのものが見当がつかない.病歴を
とっていても,テニスに例えると,なんで,こんなコースに球が来るんだ,なんでこんなところにサー
ブが入るんだって感じでした.自分のこれまでのテニス理論が間違っていたのか,昨日,飲みすぎて認
知機能障害になってしまったのか?とさえ思ってしまいました.

わざわざ勉強会においでいただくという患者さんは,やはりそれだけ,意識せずとも,教育者の資格を
備えているのでしょう.私を鍛えてやろう,私を鍛えることを通して,参加者を教育しようという意気
込みですね.

おかげで,面接・診察の最中に,戸惑いながらも,”診断名を決めることが診療の目的ではない””診
断名を特定せずとも,患者さんの不安感を解消する方法はある””単にわからないと突き放すのではな
く,どこまでがわかって,どこからかがわからないかを明確にすること” というように,参加者に伝
えるべきメッセージが浮かんできました.

やはり患者さんはありがたいですね.

2006/11/25-26:広島(県立広島病院)
> ベテランの先生が協力し合って会を盛り上げることができ、ただただ感謝です。

自治医大の先生方やTFCの大幹部の先生方,いずれも私よりもずっとめまいをよく診ていらっしゃる方々を前に,よくもまあ,わかった風な講釈を垂れること ができたもんだと,我ながら呆れますが,まあ,大阪にも広島にも,勉強させていただくために参りましたので,私の方は大儲けの万万歳でした.やっぱり,苦 手な”めまい”の話を引き受けてよかった.私が一番得をしました.

広島の先生方が,経験なさった神経疾患をしっかり記録に残していらっしゃることには敬服いたします.これもRS-baseの聖地ゆえでしょうか.中西先生 には神経内科専門医顔負けの本当に多彩な症例呈示をしていただきました.おかげさまで,私を含めて,参加者が貴重な症例からたくさんのことを学ぶことがで きました.

とくに広島で感じたのは、神経内科のこつ、面白さを、すでに多くの先生方が直感的に会得なさっていることです。中西先生や田坂先生のプレゼンを拝見しますと、臨床の実力は私がお世話になっている東埼玉病院の6−7年目並で、患者さんから学ぶ姿勢は専門医以上です.

参加された先生方のお話を聞いていますと,もう,すでに多くの方が,神経学の面白さを十分楽しんでいらっしゃるようにお見受けしました.プライマリ・ケア 診療場面での醍醐味は,病歴と診察で勝負を決めることですが,神経内科はそういう疾患(とくに病歴の比重が非常に高い)が多いので,診療所の先生方に大い に活躍していただける領域です.広島ではそのことを現実に証明してくださっていますね.

それだけに,議論が非常に実戦的なものになり,現場に出た経験があれば,言葉を尽くさずとも直感的に分かりあえるやりとりが多くなってしまって学生さんや 研修医の方には,わかりにくかった部分があったかもしれません.遠慮せずにどんどん質問してもらえるような雰囲気作りも必要かなと思いました.

2006/11/11-12:家庭医療学会公演: 大阪(天満研修センター)
実はわたしもめまいが苦手です。だから、今まで、めまいの話からは逃げ回っていました。私のような神経内科医ばかりでなく、耳鼻科医や脳神経外科 医の多くも、それぞれ自分の領域だけで、めまいの中でも限られた患者集団の、横断的症状しか診ていないから、自信が持てないのです。では、なぜ、今回、私 がめまいの話をする気になったのか?それも、私が苦手だからです。眼振の症候学や、眼球運動生理検査の解釈の難解さ、結局MRIに頼らなければならないの かという無力感、小脳・脳幹梗塞を除外しきれないもどかしさ・・・苦手の私だからこそ、みなさんの気持ちがよくわかるのです。

これまで”めまい”は難しいので勘弁してくださいと逃げ回っていた私も、家庭医療学会の依頼ならば引き受けよう、公演の準備や、実際の公演で、いろ いろな人に教えてもらって、自分の勉強の機会にできるからと決断することができました。そして、その決断が正しかったことを、参加者のみなさんが証明して くださいました。まだまだ、めまいの診療が得意になったわけではありませんが、私がみなさんと一緒に悩む共通の基盤ができました。

2006/11/3-4:札幌:勤医協中央病院にて
2月の登別温泉道場が、大雪による千歳空港の閉鎖でキャンセルになったリベンジでした。→写真
感想とコメントなど

2006/10/21: 埼玉(東埼玉病院)
週に一度勤務している東埼玉病院で,研修医向けの神経学ショートコースに参加しました.たった二人の患者さんの病歴に,25人もの医者が休日の10時から 7時間あまり寄ってたかってああでもないこうでもないと議論するのを見るのは,誠に壮観でありました.圧巻だったのは,評価,診断が一通り終わった後の患 者さんへの説明の訓練です.多系統萎縮症,筋ジストロフィー,どちらも根本的な治療法がなく,徐々に進行していく疾患を抱えた患者さんに,自分は何ができ るのか,患者さんに愛想を尽かされずに,通ってもらうにはどうしたらいいのか?

神経難病の患者さんとの対局の中で,初診からずーっと考え続けてきたことどうまとめるか,アウトカムをどう得るか,患者さんと自分の両方がどこまで 納得できるか,我々が普段やっていることを,そのまま伝えるといえば,ひどく簡単なことのように見えますが,それをどうやって目に見える形で表現するか, 教育として明示するか,それを初めて明らかにした,医学教育史上,画期的な出来事でした.

人材不足,自縄自縛のようなしきたり,教育には金がかかるという誤解・・・,教育機関としての大学の機能が低下しつつある現在,若い人のために,教 育の場を大学の外にも作ってあげる必要があります.

今回,4人の若手神経内科医がsmall group discussion(SGD)のチューターになってもらいました.4人ともSGDのチューターは初めてでしたが,全く戸惑うことなく,活き活きしていた のが印象的でした.教育の面白さ,自分よりも若い世代と議論することにより,自分が学び,自分も伸びて行く面白さがわかったに違いありません.

今回はパワーポイントを全く使わずに,与えられた30分の中でお話をきれいにまとめるお手本を見せてもらいました.パワーポイントを使って話をする ことの問題点の一つは,聴き手が,話し手の言葉を翻訳してノートをに書き留めるプロセス(それが,自分の頭の中で考えるプロセスでもある)を奪ってしまう ことかな と思いました.とはいえ,私の場合はまだまだ漫談芸ですから,自分の話に余裕がなく,聴き手に考えてもらう余裕を与えるところまで至りません. しばらくはパワーポイント依存症から抜けられそうもありません.

2006/10/14-15: 名古屋(亀井内科呼吸器科)第七回
4人の患者さんとの出会いがありました.1人は,亀井先生が,”米が研ぎにくい”という訴えからパーキンソン病と診断した患者さんで,以前お目にかかって いました.もう一人は,旦那さんにやはり以前お目にかかったことがある方の奥様.繰り返し名古屋に通っていると,こうやって御縁が深まります.あとのお二 方は初対面で,パーキンソン病と,肺癌の末期の方.いずれも在宅で,訪問看護ステーションの車で市中を回って御宅におじゃますると,ああ,医者やってるん だなあと,上着にネクタイ姿で新薬審査や対面助言の霞ヶ関での毎日との対比を思い,両方ともできるなんて,恵まれているなとつくづく思うのでありました.

2006/10/7:東京(I−CUBE)
東京は一ツ橋にあるI-CUBE事務所で,医者のキャリアパス・キャリアパスクライシスのお話をしました.医者なりたくない病の医学生,研修医時代はもち ろん,専門医になってからも医者辞めたい病に悩まされつづけた一人として,自分の病歴を語ることによって,如何に粘るかをお話しました.

2006/9/30-10/1:岡山(岡山大学OCSIA)
今回も、模擬患者さんとのセッション2つ、清輝橋グループの先生方からの紹介患者さんお二人の面接、診察で、学生さんと競演しました。若い人達の厳しい目 はもちろん、大切な患者さんを紹介してくださった先生方の目の前での面接・診察は、外科医が自分の手術を実況中継されるのと同様で、緊張の連続ですが、素 晴らしい勉強になり、自分でも臨床の力が向上するのがよくわかります。 →第三回岡山道場を終えて

2006/9/23-24:福岡(飯塚病院)
初めて飯塚病院に行ってきました。レジデントの間の連帯感が非常に強く、レジデントの間で教 えあう、経験・知識を共有する文化が根付いていると感じまし た。この4月から働き始めた1年生でも、一人前のケースプレゼンテーションができる点が非常に印象に残りました。そのプレゼンの病歴のところで一旦プレゼ ンをやめて、ここまでの病歴だけで鑑別診断と各疾患の事前確率はどう考えるという議論に、みんな乗ってくる点に大いに頼もしさを感じました。懇親会の時の医師のキャリアパスクライシスに対しても,興味を持ってもらえました.いろいろうれしい感想もいただきました.

2006/9/16-17: 防府(山口県立総合医療センター)
去年に引き続いて,自治医大山口県人会勉強会に呼んでいただきました.台風が近づき,天気が荒れましたが,学生さん,研修医から,山口県立総合医療セン ターの部長クラスの偉い先生方まで,経験年数や診療科の区別なく,いらしていただいたのに感激しました.貴重な不随意運動の症例を見せていただき,神経内 科医でもよくわからない患者さんが地域医療の現場に現れた時,どう対処すればいいのか,みなさんと一緒に悩んで,私にとっても,大変いい勉強になりまし た.GOMERの話も,医者のキャリアパスクライシスの話も随分と共感を得られました.

2006/8/5-7:越後湯沢で行なわれた,家庭医療学会の研 修医・学生部会の第18回夏季セミナーに行ってきました.新潟市での前回では,新潟中越地震から学ぶCommunity-Oriented Primary Care と題して,災害時の情報ロジスティックについてお話したのですが,今回は,最高齢の一般参加者として参加しました.(今回は何を話すのですかと,何回も聞 かれたのですが(^^;),公式の演者とはなりませんでしたが,その分,懇親会では,二晩連続で,いろいろな人とたくさんのお話をしました)

2006/5/20-21:2005年10月に引き続き高松市の道場でした.香川大学医学部の長谷川朝彦君が事務局となって,TFC 香川の 応援を受けての開催でした.出し物は,GOMER感情,神経学診察手技,めまい・ふらつき(β版初公開),くも膜下出血にCTは役立たない,意識障害と血 圧といったメニューでした.いつものことながら,週末を潰してやってきてくれる学生さんの気迫と,鋭い質問には,思わずたじろいでしまいますが,それに誠 実に答えようとすることは何よりの勉強になります.もちろん,私がわざわざ強調するずーっと以前から,病歴と診察だけで,地域での名声を維持している TFC香川の先生方の厳しい目を意識してのことです.

2006/4/15-16:歴史ある出雲市での初めての道場を,島根県立中央病院研修医なりたての岩下君が中心となって開催してくれ まし た.学生と研修医だけで30人近く集まってくれた上に,何と岡山SP研究会の強力メンバーを3人も来てくれて,密度の濃い医療面接の教育・訓練ができまし た.これほどまでにレベルの高い教育セッションが研修医・学生だけで組織できる素晴らしさに感心しました.臨床は面白い.勉強すればするほどその面白さが わかって,もっと勉強したくなる.その実例を示してくれた道場でした.

2006/4/8-9:亀井道場(名古屋)第六回:安城更生病院の林直子先生による,症例呈示は,今や,亀井道場定番の林劇場となっ た感がありま す.今回は,救急外来での神経学的診察をどこまでできるか,やるかを巡って活発な議論が展開されました.私の方は,3月の広島道場で議論した話題を,”負 けない診断”,”GOMER感情という名の診断リスク”と題して,林劇場のプレゼントからめてお話しました.
参加者の感想
その後の亀井先生とのやりとりの一部

2006/3/11-12:広島(県立広島病院):季節柄,学生さん,研修医の参加がほとんどなく,現場経験の長い方々がほとんどで した.比較的少 人数(それでも十名を超える参加者でした)なので,かえって,密度の濃い議論ができました.とくに,診断リスクの低減,患者さんに対するネガティブな感情 への対処から,血小板凝集抑制剤の使い分けの議論は,これまでの道場になかった,診療現場経験者ならではなの,奥の深いものになりました.

2006/2/4-5:登別温泉は大雪のため,千歳空港閉鎖,飛行機が飛ばず,大変残念ながら中止となりました.北海道の皆さん,これに懲りずに, 是非ともやりましょう.

2005年
2005/12/10-11:亀井道場(名古屋)第五回:今回も,安城更生病院の林直子先生による,ハワイ大学PBL顔負けの症例呈 示+白 熱の議論あり,患者さんの面接・診察セッションあり,とびきり美味なイタリアン弁当を前にしてのワーキングランチありで,熱い二日間でした.→学生さんの感想と,私のお返事

2005/11/19-20岡 山道場第二回. 岡山大学から17名(2年生から6年生まで),川崎医科大学から3名,滋賀医科大学から1名,清輝橋グループの先生方3名と,岡山SP研究会から2名と多 くのみなさんが参加してくださいました.SPさんを交えた医療面接勉強セッションで,去年と同様,火花が散りました.参加したみなさんから,”楽し い”,”医者になりたいという気持ちが強くなった”と言われるのが何よりの励みです.また,学生さんから嬉 しい誉め言葉もいただきました.

2005/11/13:家庭医療学会主催,第 13回家庭医の生涯教育のためのワークショップ.全共連ビル.頭痛(くも膜下出血と髄膜炎)としびれについて講演しました.それぞれのセッショ ンに50人もの方が集まってくださって,盛況でした.

2005/10/22-23:TFC香川主催で,香川医科大学にて. 学生,開業医, 勤務医が30人ほど集まってくれました.神経難病の患者さんとの面接も設定されて,私自身,大変な勉強になりましたし,学生さんも,本番の医療面接を目の 当たりにして,このような”道場”の企画を立てる段階から参加したいという意欲を持つようになってくれました.私の芸が大道芸とすると,その興業を組む興行師の面白さに気づいたということなのだと思います.

2005/9/24-25:山口県は防府市の県立総合医療センターにて. 鬼怒川勉強会 という,自治医大卒業生が中心の勉強会に,同センターの研修医の方々も来てくださいました.ご多分に漏れず,地域医療での医師不足の中で奮闘するみなさん と,気軽に,専門医に紹介できない状況で,プライマリケア医がどこまで神経疾患の診療ができるかという問題について,熱い議論ができました.その時の議論 の成果が,プラマリ・ケア医とパーキンソン病です.

2005/7/9-10:亀井道場(名古屋)第四回.これまで神経内科の道場を三回主催してくださった亀井三博先生は,神経内科チーフレジデント並 みの実力を獲得なさいました.

2005/2/26:静岡赤十字病院臨床研修セミナー.内科部長の長濱貴彦先生が声をかけてくださいました.若手中心で30名ほどだったでしょう か.しびれ,頭痛といったいつもの話題から,視診のポイントなどもお話させていただきました.静岡済生会総合病院 神経内科の鈴木 康弘先生も駆けつけて くださって,専門医からの立場で議論に参加してくださいました.

2005/2/11:新潟市民病院にて:何かと御縁のある新潟ですが,神経内科のお話で伺うのは初めてでした.獣医公衆衛生学会でシンポジストとし て呼ばれたので,その後,公演をやらせてくれと押し売り半分だったのですが,新潟大学ばかりでなく,富山,福島からも,学生さん,研修医の皆さん,開業の 先生方といった多彩な面々が,50人近く集まってくれたでしょうか.

2005/2/5:広島公演第二回:県立広島病院で企画していただきました.不随意運動の患者さんの問診と診察を実際に見ていただきました.40人 以上の方にご参加いただきました.午前9時からはじめて午後3時まで昼食休憩を除いても5時間あったのですが,あっという間で,話せなかった話題も随分と ありました.

2004年
2004/11/20-21:名古屋道場第三回:亀井内科呼吸器科クリニックにて.20人をゆうに超えてしまいましたが,参加ご遠慮いただいた方, いつもながらごめんなさい.信州大学の学生さんが,ある教授から,”そんなに面白いものなら,参加して報告してくれ”と言われたとか.面白いものは広がり ます と前から言っていますが,この動きが広がるのは案外早いかもしれないと思っています.→学生さんの感想

2004/9/22:横浜市民病院での診療実演とセミナー(神奈川県を中心にして近隣の学生,研修医,医師が20人以上もいらしていただきました)

2004/9/4-5:岡山道場第一回(岡 山大学にて:岡山,倉敷,広島,大阪,松本から,総勢30名近くになりました)

> 医療面接が楽しいというのは語弊があるかも、、、と思いながら書きました。
> 患者ー医者間のせめぎ合いには独特の緊張感がどうやらありそうで、
> その中には充実感や達成感を感じる瞬間もありそうだと感じた、という方が
> より誤解が少ないでしょうか。(この充実感や達成感を「楽しい」と表現したつもりです。)

この”緊張感にわくわくする”という感じを一言で表す日本語がなかなか見つからないのですが、スポーツの試合の緊張感にたとえれば医療者以 外にも、よりわかりやすく説明できるかな。私はテニスに例えたけれど、剣道でもいいんです。集団の球技でも一対一で考えなければならない状況はいくらでも ある。思えば、テニスボールや竹刀を介した非言語性のコミュニケーションが、これらの競技の本質ではないかと。スポーツでは、一般的には、技術の上達よ り、この非言語性のコミュニケーションの面白さが理解できるようになる時期が後にやってきます。ですから、若いうちは、診断や治療に血道を上げて、診療技 術が上達していく時期があっていい。そのうちに、医療面接の面白さがわかってくる。次に自分でわかるだけでなく、実際の診療場面で、その面白さを人前で披 露することによって、他人にもその面白さを理解してもらえるようになる。

2004/4/24-25:名古屋道場第二回:亀井内科呼吸器科クリニックにて.やはり名古屋,岡山,松本から,と,亀井三博先生のチーム+名古屋 大学総合診療部の鈴木先生も

2004/1/24-25:名古屋道場第一回:亀井内科呼吸器科クリニック にて地元名古屋はもちろん,岡山や松本から,合計13人の医学生と,亀井三博先生のチーム

2003年
2003/7/5-6:第3回広島TFC講習会:中電病院にて.開業医の先生方を中心に,医学生も交えて60人以上の聴衆でした.