The
FDA has wrestled for years with diabetes drugs' CV effects. In 2013,
the first large outcomes trials with two other dipeptidyl peptidase-4
(DPP-4) inhibitors ? saxagliptin (Onglyza) and alogliptin (Nesina) ?
found no effect on CV outcomes. However, results suggested a possible
increased heart failure risk, although this endpoint was not rigorously
studied. Recently, an FDA advisory committee reviewed the trials and
declined to add new restrictions, but they did recommend that the new
trial data be added to the drugs' labels.
糖尿病治療薬が心血管系に及ぼす悪影響は,FDAにとって長年の悩みの種だった.2013年にはsaxagliptin (Onglyza) と alogliptin (Nesina)の二つのDPP-4阻害薬が,心血管系に対して有効性が認められないばかりか,心不全リスクを高める可能性が示唆された.このリスクは入念には検討されず,臨床試験を審査したFDAの advisory committeeも新たな注意喚起は必要ないとしたものの,これらの試験結果を添付文書に追加するように勧告した.
Sanjay Kaul,
a frequent FDA adviser, pointed out the paradox of the large commercial
success of sitagliptin despite the absence of any proven clinical
benefit: "So, we have a drug that yields modest glycemic efficacy, is
neutral with respect to cardiometabolic factors (lipids, weight, blood
pressure), does not kill you or land you in a hospital, and yet is a
blockbuster drug nearly five times over! What is the big news here?
That it does not kill you or land you in a hospital? Or that it is a
blockbuster drug nearly five times over without evidence of
microvascular or macrovascular outcome benefit? Miracle of medicine or
miracle of marketing?"
FDAに対してしばしば助言もするSanjay Kaul医師は、臨床的有用性のない薬がこれだけ売れる(↑上記参照)不思議な状況について次のように述べている。「血糖をそこそこ下げ、脂質、体重、血圧といった心血管系イベントのマーカーには影響を及ぼさず、入院や死亡率を減らすこともない。そんな薬が世界中で年間60億ドルも売れている。すごいニュースなんだろうけど、一体どこがすごいんだろうね。有効性がプラセボと同じだったこと?それとも有効性のエビデンスが無い薬が世界中で年間60億ドルも売れているってこと?すごいのは薬、それとも商売のやり方?」
そもそもNICEのガイダンスでファーストラインとしてのメトホルミン、セカンドラインとしてのスルホニルウレアに次いであくまで三番手に位置づけられているDPP-4阻害薬がなぜこうも売れるのか?ACE阻害薬と比べて有効性・安全性両面で何の優位性もなかったARBがACE阻害薬よりも遙かによく売れていたのを彷彿とさせる。ジャヌビアはディオバンと同じ道を歩んでいるように私には見える。
毒にも薬にもならない代物にバカ高い薬価がついて売り上げナンバーワンに躍り出る。こんなペテンが日米欧三極の「国際標準」で罷り通っている。試されているのは捏造を見破る技術ではなく、我々の医薬品リテラシーなのだ。やれドラッグ・ラグだの、世界標準の薬の承認が遅れているだの、大騒ぎしたのがこの様だ。では、見事にMission Impossibleを完遂したジャヌビアは、これからも堂々とブロックバスターの道を歩めるのだろうかというと、決して楽観的にはなれない。私がそう考える理由を以下に示す。
結局この試験は、Vioxxの悪夢の再来におびえるMerckが、FDAからの「お勧め」もあってやった試験なんだろうが、 プラセボに対して非劣性ということは、患者を副作用のリスクのみに晒すことに他ならない。確かに心血管系イベントはプラセボと変わらないことを「証明」したわけだが、低血糖はもちろんのこと、アナフィラキシー・過敏症、 Stevns-Johson、血管性浮腫、腎機能障害等、因果関係がはっきりしているジャヌビアの副作用はいくらでもある。
TESCO 試験の結果が明らかになった以上、ジャヌビアを処方し続けることは、血糖を下げるという情けないことこの上ない代用エンドポイントだけを根拠に、患者を副作用のリスクにさらし続けることに他ならない。心血管系イベントのリスクを低下させないことが明らかとなった降圧剤やスタチンを平気で処方し続ける医師にかかりたいと思う患者がいるだろうか?これぞ正に日常診療における利益相反を我々に問いかけている。
結局全ては金目当て。この種の薬はリスクも大きいから、せいぜい今のうちに稼いでおこうって魂胆なんだろう。ずっと後になって、膀胱癌みたいな思いもしなかったところで足をすくわれて、上場以来初めての最終赤字になるとも限らない。でも、この試験結果が明らかになった以上、米国ばかりでなく、各国のHTA当局や支払基金も、ジャヌビアを含めたDPP-4を当然厳しい目で見てくるだろう。我が国にも脳循環代謝改善剤の承認整理という、一部の方々はあまり思い出したくないだろうが、他の方々には大変参考になる出来事があった。
結局は、各企業と個々の医師の行動と利益相反、規制当局、HTA当局や支払基金。各ステークホルダー達の行動観察に、一層の学習意欲と楽しみを提供してくれるジャヌビアなのであった。
2015/9/20追記:EMPA-REG OUTCOME試験との比較で,TECOSの組み入れ基準を見直して,気づいたこと.1.TECOSでは(イベント数を稼ぎたかったためか??)50歳以上を組み入れている.一方,EMPA-REG OUTCOME試験では,治療組み入れ時のHbA1cが8以上と高い,心血管リスクの非常に高い集団を対象にしている.これもイベント数を稼ぎたかったためだろう.
TECOS試験が示すシタグリプチンの安全性の問題、特に急性膵炎については,別のページで説明している.
以下糖尿病治療とは全然関係ない余談:
将兵から「馬鹿な大将、敵より怖い」と恐れられ、「鬼畜の牟田口」と呼ばれていたと伝わる牟田口廉也は、戦後シンガポールで戦犯(B級?)として裁判を受けたが、1948年に釈放されている。その理由は、もっぱら拙劣な作戦指揮により帝国陸軍兵士を消耗させ、連合国軍の勝利に貢献した点が評価されたためと言われている。釈放された牟田口がその後どういう人生を送ったかは各自で検討されたい。「鬼畜米英」から無罪と認定された「鬼畜の牟田口」の運命は、今回無罪を勝ち取ったかのように今は見えるジャヌビアの今後の運命を考察するにあたって、大いに参考になるだろう。。なお再審で無罪を勝ち取るのは一層困難だが、その点については余所で散々書き散らしているのでここでは触れない