こっちも死んでる:NEJM (2010/8/8)
ーJUPITER Trial:こいつは治療じゃなくて福引きだー
ランセットのことはさんざん話したからもういいだろう。「2008年は,ランセットにどんなに質の悪い論文が載っても,誰も驚かなくなる年になるだろう」と言ったが、その通りになった.つまり、ランセットには誰も見向きもしなくなったから、誰も驚かなくなったというわけだ。
その2年も前,2008年にNEJMに載ったイカサマ論文の事後解析が、先日ランセットに載った(Lancet 2010; 376: 333)。実は、ランセットを見切った同じ時期から、NEJMも、もう読んでいない。馬鹿げた論文を読まされるのが嫌だからだ。今更だが、典型的なアホ論文が冒頭に出てきたのを見た時は、ランセットと全く同じだと思った。言うまでもない。JUPITER trial (N Engl J Med 2008;359:2195-207) のことである。こんなカスの役にも立たないイカサマ試験が巻頭を飾るんだから、2008年の時点で既に、死んでるのはランセットばかりじゃなかったというわけだ。
そもそも、発想からして、これは医療・臨床ではない。何のリスクもない無症状の健康人から血を採って、CRPが高ければクレストールを飲ませてしまうという、スナック菓子の宣伝同様の発想に基づく、臨床試験ならぬ「健康人体実験」である。出発点からして完全に狂っている。
しかも、最後までやると有害事象が対照群より多くなって困ることがあらかじめわかっているから、そうなる前に途中で止められるように、試験をデザインする段階で、ごくわずかな有効性が認められた時点で、試験が止められるように仕組んであった。これがイカサマでなくて何がイカサマか。
中間解析で有効性が「確認」されたら試験を止めるというデザインは
1.試験を続けたら,有効性が消えてしまうのではないか
2.試験を続けたら,プラセボと比べて有意に有害事象が増えてしまうのではないか
この2つの重大な懸念に対処する=誤魔化すためである.(文句あっか!!)
おかげで、最後までやれば、途中まで認められたごくわずかな有効性が消えて、実薬群の有害事象だけが高くなるという結末を回避できたので、大喜びで投稿した。複合エンドポイントで考えても、なんとNNTが200となる「有効性」とは、福引きも同然の「治療」(スナック菓子に相応しいおまけ同然の有効性)だが、ここまではよくあることだ。
こともあろうに、NEJMはそんなとんでもない論文を受理して載せてしまった。ねつ造論文ならまだ取り下げできるが、この論文のお陰でどんな馬鹿げた診療行為が行われようと、取り下げることはできない。そんな取り返しのつかない過ちで、NEJMは自らの使命を放棄してしまった。だから死んでいるというのだよ。
参考
Gordon Guyattのコメント(Youtube): 公共放送なので、かなり慎重な物言いだが、 Was JUPITER as good as the hype?(JUPITERは詐欺も同然?)とのサブタイトルの通り、言っていることの本質は私より厳しい。彼のことだから、相当腹に据えかねているのではないだろうか。
→「歴史に残る」子供だまし−これがホントの「誇大広告」&NEJMは「死んだふりしたブラック企業」−(2015/9/24)