タイトルだけ&つぶやくだけ→古いもの 2015年分2014年分


薬物依存治療はどこでやるのが効率的か?
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警察が薬物依存患者を逮捕せずに治療に向かわせる取り組みが効率よく機能している BioTodayニュースレター 2016年12月27日
助けを求めるヘロインやオピオイド等の薬物依存患者を警察が逮捕せずに24時間体制ですぐに治療へと直接送り届ける取り組みがマサチューセッツ州のある都市(Gloucester)で始まり、最初の1年間のデータを調べたところ100%近い割合(94.5%、417件中394件)で適格患者を治療に向かわせることができていました。この取り組みは28州の153の警察で採用されており、今後は警察を介して治療に至った薬物乱用患者の経過を把握する必要があります。
A Police-Led Addiction Treatment Referral Program in Massachusetts. N Engl J Med 2016; 375:2502-2503 December 22, 2016 DOI: 10.1056/NEJMc1611640

薬価が市場原理主義で動く国
Cleveland Clinicが自社開発したアルゴリズムとやらを売り出して、さらに儲けるというビジネスモデルを成功させれば、次期大統領から表彰状が出そうですな。薬価が市場原理主義で動くお国柄では、審査なんて要らない。だからFDA長官はファンドマネジャーでいい。そういうことなんでしょうな。実にわかりやすく、嘘がつけない人。
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薬価上昇に応じて米国病院が薬剤管理を変えている Biotoday 2016/12/19
昨年の米国病院薬剤費の約11%増加は薬価上昇に主に起因しており、病院は薬価上昇に応じて薬剤管理を変えています。かつて1バイアルあたり8ドルだったバソプレシンはPar社によるFDA承認取得やEndo社によるPar社取得を経て166ドルにも上昇しました。この薬価上昇を背景にしてユタ大学の非営利病院はバソプレシンを救命カート(crash cart)に常備するのをやめ、必要に応じて病院薬局から調達するようにしました。
今年Cleveland Clinicは薬の卸値を毎週解析するアルゴリズムを開発し、かつて数週間〜数か月経たないと分からなかった薬価の突然の上昇を検出できるようにしました。痛風薬Aloprimは今年2倍以上に値上がりしましたが、Cleveland Clinicの病院はより安い薬に速やかに切り替えて年間8万ドルを節約することができました。

Hospitals Alter Routines to Control Drug Spending

注射の痛みをリドカイン事前塗布で抑える
私は主要評価項目に興味があったので論文を見たところ,下記のように記載してありました.
The primary outcome was infant distress assessed using a continuous scale validated for infant vaccination pain, the Modified Behavioural Pain Scale.16 This tool incorporates 3 domains of infant behaviour (facial grimacing, crying and body movements) that are individually assessed in a 15-second interval and summed together for an overall score from 0 (no pain) to 10 (maximum pain). An absolute change of 0.6 points has been used to support practice change.
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乳児へのワクチン注射時の痛みをリドカイン事前塗布で抑えうる Biotoday 2016-12-18 -

ワクチンを接種する乳児が参加した無作為化試験の結果、注射部位に予めリドカインを塗ることで注射時の痛みをより抑えうると示唆されました。乳児への痛みの負担を軽減するためにリドカインを使うことを考慮すべきと著者は言っています。経口ショ糖摂取の痛み緩和効果は認められませんでした。

Topical Lidocaine Could Help Make Infant Vaccines Less Painful /Physician's First Watch
Relative effectiveness of additive pain interventions during vaccination in infants. CMAJ December 12, 2016 First published December 12, 2016, doi: 10.1503/cmaj.160542

米国郡レベルでの死亡率解析
JAMAの論文は無料でダウンロードできます.郡レベルで解析すると同じ州の中でもひどく偏りがあります.ミシシッピ川沿いに心血管イベントによる死亡率 と悪性腫瘍による死亡率の両方が高いのは,川沿いに人が移動するから??でも他の疾患ではそうでもないし・・・不思議なことばかり・・・
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米国各郡の主な死因別死亡率を推定〜どの死因による死亡率も郡間で大きな開きあり  Biotoday 2016-12-18 -
1980〜2014年の21の主な死因別の死亡率を米国の郡レベルで解析した結果、どの死因による死亡率も郡間で大きな差がありました。心血管疾患(CVD)による死亡率はミシシッピ川流域の南半分で高く、自傷や暴力による死亡率は南西部の郡で高く、慢性呼吸器疾患による死亡率はケンタッキー州東部やウェストバージニア州西部で高いという結果が得られています。

Study Finds Large Differences in Mortality Rates between U.S. Counties
US County-Level Trends in Mortality Rates for Major Causes of Death, 1980-2014. JAMA. 2016;316(22):2385-2401. doi:10.1001/jama.2016.13645


恒例のBMJクリスマス特集
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BMJ誌年末報告〜Pokémon Goでの運動量、尿のアスパラガス臭など2016-12-18 -
BMJ誌恒例のクリスマス報告が今年も始まりました。Pokémon Go(ポケモンゴー)での運動量、アスパラガスを食べた後の尿の臭いが分からないことに寄与する変異の同定などの研究成果が報告されています。

Pokemon Go's Health Benefits, Asparagus Smell in Urine Considered /Physician's First Watch
Sniffing out significant “Pee values”: genome wide association study of asparagus anosmia. BMJ 2016;355:i6071 (Christmas 2016: Food for Thought)
Gotta catch’em all! Pokemon GO and physical activity among young adults: difference in differences study. BMJ 2016;355:i6270 (Christmas2016: Being Well)

eteplirsenhはカバーされず
Woodcockは何て言うだろうかって?そりゃ決まってるさ。「コメントする立場にない」。「あたしの知ったこっちゃない」なんて口が裂けても言わないだろうよ。
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反対を押し切って承認された筋ジストロフィー薬に多くの保険会社は反対している BioTodayニュースレター 2016年12月15日
投資銀行Jefferiesの解析によると、FDAスタッフJanet Woodcock氏が反対を押し切ってFDA長官に承認させた筋ジストロフィー薬Exondys 51 (eteplirsen) を多くの保険会社は支払い対象に含めていないか制限を設けています。Anthemは、Exondys 51は実験段階の薬であり、治療に必要とはみなせないとの見解を示しています。Humanaは車いすが不要で歩くことができる患者に限って同剤使用の費用を支払うと言っています。

Medical Policy
Analysts track a payer revolt against Sarepta’s controversial Duchenne drug

構造不況業種へ
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大製薬会社の研究開発費に応じた利益率は下がり続けていて2016年は3.7%に縮小  BioTodayニュースレター 2016年12月15日
Deloitteの解析によると、世界屈指の製薬会社12社の研究開発への投資に応じた利益率(ROI)は2010年の10.1%から年々下がり続けていて2016年は3.7%に縮小すると予想されました。ROIの低下は、新薬の開発費が15億ドル程で変わらないのに対して製品の売り上げが落ち続けていることによります。製品の年間売り上げのピークは2010年から下降の一途で、2016年は3億9400万ドルに落ち込みました。
Measuring the return from pharmaceutical innovation 2016
Big Pharma’s woeful numbers on drug R&D just got even worse

甲状腺癌大幅増加の原因
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韓国での甲状腺癌の大幅増加のほぼ全ては主に検診で見つかった小さな腫瘍に起因 BioTodayニュースレター 2016年12月13日
韓国での甲状腺癌の大幅な増加の9割以上(94.4%)は主に検診で検出された20 mm未満の小さな腫瘍で占められ、韓国での甲状腺癌の蔓延は放っておいても大丈夫な癌の過剰検出に恐らく起因すると示唆されました。無症状の一般人の不必要な超音波検査を減らす全国的な取り組みが必要と著者は言っています。
Association between screening and the thyroid cancer “epidemic” in South Korea: evidence from a nationwide study. BMJ 2016;355:i5745

FDA長官人事
つまり審査は要らないってこと.Woodcockのやり方をTrumpが追認しただけでしょ.
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Bloombergが得た情報によると、PayPalの共同設立者の一人で億万長者のPeter Thielに近しい投資運営者Jim O’Neill氏を次の米国FDA長官にすることを次期大統領Donald Trumpへの移行チームは検討しています。過去50年間、医師か著明な科学者がFDAの長官を務めてきましたが、O’Neill氏はかつてブッシュ大統領に仕えたことがあるものの医学の素養はなく、科学者でもありません。安全性が確立した薬剤を承認し、効果は承認後に証明できればいいという考えを彼はかつて披露したことがあります。
Trump Team Said to Consider Thiel Associate O’Neill for FDA
Seasteader, drug libertarian and now FDA Commissioner? Peter Thiel backs a radical shift

薬の有害事象による救急受診
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米国での薬の有害事象による救急科(ED)年間受診率は1000人あたり4件 BioTodayニュースレター 2016年11月28日
米国の2013-2014年の医薬品有害事象による救急科(ED)年間受診は1000人あたり4件で、その半数近く(47%)は抗凝固薬、抗生剤、糖尿病薬に起因すると推定され、27%は入院を要しました。

医薬品有害事象によるED受診に占める65歳以上高齢者の割合は2005-2006年に比べて2013-2014年には上昇しており(26% vs 35%)、高齢者は入院に至る割合が特に高いという結果が得られています(44%)。

Study Examines Rates, Causes of Emergency Department Visits for Adverse Drug Events
US Emergency Department Visits for Outpatient Adverse Drug Events, 2013-2014. JAMA. 2016;316(20):2115-2125. doi:10.1001/jama.2016.16201

ビルの新たな野望
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便所を,よりヒトを惹きつける良い匂いの場所にする香料の試験がインドやアフリカで開始 BioTodayニュースレター 2016年11月24日

嫌な臭いを認識する受容体を遮断する香料をスイスの企業が作製し、その作製を依頼したビル・ゲイツ氏が同社を訪れてその効果を確認しました。下水、汗、熟れすぎたチーズなどの嫌な臭いをかがされてもその香料のおかげでゲイツ氏は一緒に調合された甘い香りだけを享受できました。

ぼっとん便所(pit latrine)をもっと使うことで貧困国の衛生が改善するとゲイツ氏は考えていますが、その臭いが利用を妨げています。

スイスのジュネーブで120年前から一族が所有しているFirmenich社が今回作製したような新しい香料を利用すればヒトをより惹きつける良い匂いの場所へと便所を仕立てられそうであり、アフリカやインドでその効果を試す試験を同社は始めています。

Eau de poop: Bill Gates tests a new way to sweeten the world’s worst odors
A Perfume that Smells Like Poop?

薬価の無い国
「アメリカには薬価がない」って,こういうことだったのですね.不勉強で,知りませんでした.
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米国大都市圏の薬局で心不全薬ジェネリック3品一式の値段が40倍ほども違った BioTodayニュースレター 2016年11月21日
ある米国の大都市圏(セントルイス)の薬局を調べたところ、心不全薬後発品一揃え(カルベジロール, リシノプリル, ジゴキシン)の3か月間処方の値段に40倍ほどの開きがあり(30〜1145ドル)、100ドル未満で売っている薬局の割合は僅か5%でした。医療従事者は安いところに患者を向かわせることを意識すべきだとNEJM Journal Watchの著者は言っています。

Are Generic Medications Always Fairly Priced?
Prices for Generic Medications Can Vary 40-Fold in One City
Variability in Retail Pricing of Generic Drugs for Heart Failure. JAMA Intern Med. Published online November 15, 2016. doi:10.1001/jamainternmed 2016.6955

米国で深刻化する「薬価」問題(上)ジェネリックが暴騰する仕組み

追伸:ということで下記の主張には一理はあるのですが,一方でオプジーボの薬価のような横車を押すから,交渉じゃなくて喧嘩になるんですよ.
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外国平均価格調整、価格比較の対象国からアメリカを除外すべきか MedWatch 2016/11/9

 後者(2点目)では、外国平均価格調整において、価格比較の対象国からアメリカを除外すべきではないか、との指摘が多くの委員から出されました。8月時点では、同薬剤のアメリカでの価格(当時の為替レートで58万6001円)に引っ張られて、高額な薬価が設定されるなど、従前から「アメリカの価格を比較対象とすることは適当ではない」との指摘がなされています。
 中川委員は「アメリカの価格は、言わばメーカーの希望価格であり、値引きを前提に高く設定していると考えている」と指摘。同じく診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)や支払側の花井委員も「アメリカの価格は参考程度にとどめ、価格比較対象からは除外すべき」と提案しています。
 これらの指摘を受け、迫井医療課長は「従前から指摘されているテーマであり、今後、中医協で議論していただき改善に努めたい」との考えを示しています。
 このほか、中川委員は「新薬開発の推進に異議はないが、その原資を診療報酬に求めることには無理があるのではないか。経済産業省予算などで、新薬開発のための補助金を創設することを検討してほしい」と要望。また幸野委員は、「8月の申請時に比べて、薬価が10万円も下がっているが、それでも経営が成り立つようだ。医薬品における『営業利益率』が次期薬価制度改革に向けた大きな課題となる」とコメントしています。
 これまでにも中川委員を筆頭に、中医協では「薬剤費の伸びが医療費を膨張させる主因となっている。2018年度に向けて薬価制度全般を根本から見直す必要がある」との指摘がなされており、今後、中医協の薬価専門部会を中心に、さまざまな角度から薬価制度改革論議が行われることになりそうです。

著しく高額な医療機器を用いる医療技術、費用対効果評価の検討開始
 9日の中医協総会では「高額な医療機器を用いる医療技術の費用対効果評価」について、具体例を選定して検討していく方針が固められました。
 医療費が膨らむ中で、「あらゆる医療技術を保険収載していくことは近い将来難しくなり、医療技術の費用対効果を評価して、公定価格を考えていく必要があるのではないか」との議論が中医協でなされ、現在、医薬品(オプジーボなど)と医療機器(胸部大動脈瘤の治療に用いるカワスミNajuta胸部シテントグラフトシステムなど)については、費用対効果評価の検討が具体的に進められ、2018年度改定時に「再算定」が行われる見込みです(関連記事はこちらとこちらとこちらとこちらとこちら)。
 今般、厚労省は「著しく高額な医療機器を用いる医療技術」についても、2016年度診療報酬改定の附帯決議を踏まえて、費用対効果評価の考え方を検討することにしたものです。9日の総会では、まず「具体例」を選定し、制度設計に向けた整理を行うことが確認されました。具体例について厚労省は明らかにしていませんが、例えば粒子線治療などが思い浮かびます。
 今後、中医協の費用対効果評価専門部会で、対象機器や技術を選定し議論していきますが、評価結果を2018年度改定につなげる(点数に反映させる)かどうかなどはまだ決まっていません。
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薬価、10万円ダウンでも問題なし?トルツ薬価再申請、企業戦略と薬価算定方式に異論続出
M3.com レポート 2016年11月9日 (水)配信橋本佳子(m3.com編集長)
(前略)
「米国と日欧の比較、フェアではない」
 日医の中川氏はまず、一連のプロセスと外国平均価格調整の方法を問題視、「為替レートの推移を見ながら、調整がかからないように上手に企業戦略としてふるまったという理解でいいか」「場合によっては、(薬事承認から原則)60日以内、遅くとも90日以内、薬価基準収載するというルールは守らなくていいのか。メーカーの勝手ということか」などと問い質した。トルツ皮下注の製造販売承認日は、2016年7月4日だ。
 厚労省が薬価収載の再申請を指定した期日は、10月3日。同省保険局医療課薬剤管理官の中山智紀氏は、「薬価算定組織の議論に間に合うように期日に設定した」と述べ、「60日ルール」「90日ルール」は、原則守るものだが、その期間内に収載されないこともあり得ると説明した。
 中川氏はさらに、外国平均価格調整に用いる諸外国の価格についても問題視。「アメリカの価格は、メーカー希望小売価格。これに対し、欧州と日本の薬価は公定価格。これらを同列に並べるのはフェアではない」と指摘し、アメリカを比較対象国から除外するなど、外国平均価格調整の在り方の抜本的な見直しを求めた。
 日本病院会常任理事の万代恭嗣氏も、「リストプライスではなく、マーケットプライス(実際の取引価格)で提示してもらいたい。しかし、後者の把握には、一定程度の費用がかかるため、あくまでアメリカの薬価は参考程度にする、とした方が現実的」と中川氏の意見を支持。
(後略)
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救急外来での下肢蜂巣炎の診断
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救急外来での下肢蜂巣炎の診断はしばしば間違っている
 Biotoday 2016-11-05
救急外来(ED)での下肢蜂巣炎の診断の31%は間違っており、本来不要な抗生剤処方、入院、医療費負担を強いていることが示されました。 下肢蜂巣炎と誤診された患者のおよそ2/3は主にそれを理由にして入院しましたが、もし正しく診断されていれば85%の入院は必要なかったと推定されました。また、誤診入院患者の9割以上(92.3%)が本来不要な静注抗生剤治療を受けました。

What Are Costs, Consequences Associated with Misdiagnosed Cellulitis? / JAMA
Cellulitis Often Misdiagnosed in ED / Physician's First Watch
Costs and Consequences Associated With Misdiagnosed Lower Extremity Cellulitis. JAMA Dermatol. Published online November 2, 2016. doi:10.1001/jamadermatol.2016.3816

病は気から
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健康を不安視している人は虚血性心疾患を生じやすい BioTodayニュースレター 2016-11-04
ノルウェーでのプロスペクティブ試験の結果、健康を不安視していることと虚血性心疾患(IHD)リスク上昇が関連しました。 この関連は心血管リスク因子を考慮した解析でも維持され、不安レベルが高い人ほどIHDリスクもより高いという結果が得られています。

Being Worried About Health May Put Patients at Risk for Heart Disease / Physician's First Watch
Health anxiety and risk of ischaemic heart disease: a prospective cohort study linking the Hordaland Health Study (HUSK) with the Cardiovascular Diseases in Norway (CVDNOR) project. BMJ Open 2016;6:e012914 doi:10.1136/bmjopen-2016-012914

血清尿酸値は当てにならない
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米国内科学会の新たな痛風ガイドラインで血清尿酸目標レベルが廃止された Biotoday 2016-11-03 -
米国内科学会(ACP)の新たな痛風治療ガイドラインでは、2012年のガイドラインとは対照的に、広く知られている血清尿酸レベル目標・357 mol/L (6 mg/dL) 未満までの低下が推奨されていません。そのレベルまで下げても痛風症状は生じうるとACPは言っています。ACPは診断ガイドラインも発表しており、以下のような推奨がなされています。

・痛風発作を鎮めるにはコルチコステロイド、NSAID、コルヒチンがよい。
・コルヒチンを使うなら高用量と効果が同じで副作用が少ない低用量を投与する。
・発作が1回またはたまに起きたぐらいでは尿酸レベルを下げる長期治療はたいてい必要ない。
・精通した医療従事者が関節からうまく吸引して尿酸結晶を検出できる体制が整っているなら痛風の診断に滑液検査をすべき。

New ACP Gout Guidelines Exclude Treat-to-Target Recommendation / Physician's First Watch
Management of Acute and Recurrent Gout: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians
Diagnosis of Acute Gout: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians
Management of Gout: A Systematic Review in Support of an American College of Physicians Clinical Practice Guideline
Management of Acute and Recurrent Gout: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians

CTは冠動脈造影前のスクリーニングに有効
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冠疾患が疑われる患者をまずCT検査することで安全に冠動脈造影の利用を減らせる BioTodayニュースレター 2016年11月1日
非定型狭心症や胸痛があって冠動脈疾患が疑われる患者340人が参加した無作為化試験の結果、CT検査は心血管重大有害事象を増やすことなく安全に侵襲性冠動脈造影の利用を減らし(14%に低下)、冠動脈造影の閉塞性冠動脈疾患診断率(diagnostic yield)を有意に高めることが示されました。

CTは入院期間の短縮とも関連しました。一方、被曝量の減少はもたらしませんでした。患者はまずCTを受ける方針を好みました。

Evaluation of computed tomography in patients with atypical angina or chest pain clinically referred for invasive coronary angiography: randomised controlled trial. BMJ 2016;355:i5441

元も子もない
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電子タバコをよく吸う若者は燃やすタバコを後により多く吸う BioTodayニュースレター 2016年11月10日
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米国の10代若者(平均年齢15.5歳)を調べたところ、電子タバコをよく吸うことと燃やすタバコを後により多く吸うことが関連しました。

禁煙のために電子タバコを使う若者がいることは知られていますが、端から燃やすタバコも吸っていた若者において電子タバコ使用とその後の燃やすタバコの使用減少は関連しませんでした。

More Frequent Vaping among Teens Linked to Higher Risk of Heavy Cigarette Smoking
http://media.jamanetwork.com/news-item/more-frequent-vaping-among-teens-linked-to-higher-risk-of-heavy-cigarette-smoking/

Association of e-Cigarette Vaping and Progression to Heavier Patterns of Cigarette Smoking. JAMA. 2016;316(18):1918-1920. doi:10.1001/jama.2016.14649
http://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2579858
CDCはHPVワクチンを推奨
CDCの姿勢を薬害オンブズパーソンはどう考えているのだろうか?
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GSKが米国でのHPVワクチン販売停止〜Merckの製品Gardasilの独擅場となる BioTodayニュースレター 2016年10月31日
需要が滅法低いのでGlaxoSmithKline(GSK)社がヒトパピローマウイルス(HPV)2価(HPV-16/18型)ワクチンCervarixの米国販売をやめています。顧客への通知によると注文の受け付けは8月29日に終わっており、最後の出荷は8月31日だったようです。これで米国のHPVワクチン市場はMerck & Coの製品Gardasilの独壇場となりました。米国小児のHPVワクチン接種率は目標に比して低く、昨年は女児で40%、男児では21%でした。アメリカ疾病管理センター(CDC)は2020年までに男児と女児ともにHPVワクチン接種率が80%となることを目指しています。

IMPORTANT INFORMATION
GSK exits U.S. market with its HPV vaccine Cervarix

マンモグラフィー乳癌検診の過剰診断
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マンモグラフィー乳癌検診の過剰診断は早期発見よりだいぶ多い BioTodayニュースレター 2016年10月14日
マンモグラフィー乳癌検診は放っておいても臨床症状をもたらさない腫瘍の検出(過剰診断)の方がそうでない腫瘍の早期発見より多いことを示す試験結果が報告されました。この試験では米国のマンモグラフィー普及前(1975-1979年)と普及後(2000-2002年)のデータが比較され、マンモグラフィー普及に伴う小さな腫瘍病変(2 cm未満)の検出の増加はより大きな腫瘍病変の発生の減少をだいぶ上回りました。また、乳癌死亡率の低下のせいぜい1/3がマンモグラフィーのおかげと推定され、少なくとも2/3は治療法の改善によると示唆されました。

Screening Mammography: Overdiagnosis More Common Than Early Detection
Solving the Problem of Overdiagnosis. N Engl J Med 2016; 375:1483-1486October 13, 2016DOI: 10.1056/NEJMe1608683
Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness. N Engl J Med 2016; 375:1438-1447October 13, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1600249

急性放射線障害治療薬
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Sanofi 緊急事態への備えとして急性放射線症候群治療薬を米国政府に供給する Biotoday 2016-10-11
2016-10-11 - 2016年10月6日、Sanofiは、大量被ばく者に生じる急性放射線症候群の治療として開発されているLeukine (sargramostim) を緊急事態への備えとして米国政府に供給して管理する契約を発表しました。 Sanofiは3760万ドルを得てLeukineを供給/管理します。
BARDA Awards $37.6 million Contract to Sanofi to Supply Leukine® (sargramostim) for Potential Public Health Emergency / BUSINESS WIRE

輸入麻疹の研究
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海外での麻疹感染者がワクチン接種率が低い地域に戻ってその流行を招いた事例解析 BioTodayニュースレター 2016年10月11日
フィリピンで知らぬ間に麻疹(はしか)に感染したワクチン非接種男性2人がワクチン接種率が低いオハイオ州アーミッシュ集落に戻ってその流行を招いた事例
の疫学的解析結果が報告されました。オハイオ州の非アーミッシュ地域のワクチン接種率は88%超であり、アーミッシュと非アーミッシュの相当の交流にもかかわらず感染はほぼ完全にアーミッシュに限定されました。麻疹の制御にワクチン接種の普及が重要なことを今回の事例は示しています。

A Measles Outbreak in an Underimmunized Amish Community in Ohio. N EnglJ Med 2016; 375:1343-1354October 6, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1602295
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1602295
名前の影響を検証する
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有名機関の著者の論文を所属を知ったうえで査読すると受理が推奨されやすい BioTodayニュースレター 2016年9月30日
論文の査読者の判断に論文の著者の所属を知るか知らずかが影響を及ぼすことが示されました。著明機関に所属する外科医が書いたとする論文を著者の所属を知らずにレビューした場合に比べて著者の所属を知ってレビューした方が受理すべきと判断されることが多く(68% vs 87%)、方法やその他の項目の評価が高めになることが示されました。論文に仕込んだちょっとした間違いの検出は両群で差はありませんでした。

Single-Blind vs Double-Blind Peer Review and Effect of Author Prestige
Single-blind vs Double-blind Peer Review in the Setting of Author Prestige. JAMA. 2016;316(12):1315-1316. doi:10.1001/jama.2016.11014

ROCKETいまだ疑念払拭できず
医師会雑誌がこういう記事を出すのが,UKの凄いところ.
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抗凝固薬Rivaroxabanの承認を導いた試験のINR測定装置の欠陥をJ&Jは黙っていた BioTodayニュースレター 2016年9月30日
BMJの調査によると、2011年にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、心房細動患者への経口抗凝固薬Rivaroxaban(リバーロキサバン)の出血リスクはワーファリンより低いという結果となったROCKET AF試験で国際標準化比(INR)の測定に使われた機器の欠陥を開発会社J&Jは把握していたのに安全性監視委員会や米国FDAに承認前に知らせませんでした。

試験で使われた機器は精度不良により後に回収され、同試験の結果は問題視されています。機器の欠陥のせいでINRは本来より低い数値となり、Rivaroxabanが実際よりも安全と誤って判断された恐れがあります。いまやROCKET AF試験の結果を信頼できるかどうかは不明だと著者は示唆しています。
Pharma withheld faulty device info in rivaroxaban trial
ROCKET AF Trial of Rivaroxaban Again Called into Question
Manufacturer failed to disclose faulty device in rivaroxaban trial. BMJ2016;354:i5131

NSAIDsと心不全再び
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個々のNSAID鎮痛剤と心不全入院リスク上昇が心不全経験の有無を問わず関連 BioTodayニュースレター 2016年9月30日
欧州4か国で2000-2010年にNSAID鎮痛剤使用を始めた成人約770万人の症例対照試験の結果、長く使われている7つのNSAID・diclofenac, ibuprofen, indomethacin, ketorolac, naproxen, nimesulide, piroxicamはどれも心不全の経験の有無を問わず心不全入院リスク上昇と関連し、用量が多いほどそのリスクはより高まることが示されました。一方、一般的な用量のcelecoxib使用と心不全入院リスク上昇の関連は認められませんでした。

More Evidence Linking NSAIDs to Heart Failure Hospitalization (PHYSICIAN'S FIRST WATCH for September 29, 2016)
Individual nonsteroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs) are associated with increased risk for heart failure hospitalization, according to a large study in The BMJ.Using electronic health databases from four European countries, researchers identified 7.7 million adults who started taking prescription NSAIDs in 2000–2010. The 92,000 patients who were admitted for heart failure were matched to controls without heart failure admissions.

Current use of any NSAID was associated with a 19% higher risk for heart failure hospitalization. The following individual, FDA-approved NSAIDs carried higher heart failure risk: ketorolac (odds ratio, 1.83), indomethacin (1.51), piroxicam (1.27), diclofenac (1.19), ibuprofen (1.18), and naproxen (1.16). The results were significant in patients regardless of their history of heart failure. Higher doses were associated with greater risk.

Editorialists conclude: "A more restricted policy by regulatory authorities on the availability of NSAIDs and requirements for healthcare professionals providing advice on their use and potential harm is warranted."

Link(s):
The BMJ article (Free)
The BMJ editorial (Subscription required)
Background: Physician's First Watch coverage of AHA list of drugs that could lead to heart failure (Free)

Golden hoursは7.3時間以内
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脳卒中の血栓摘出装置治療は発症から7.3時間以内に施された場合に限り有益 BioTodayニュースレター 2016年9月29日
虚血性脳卒中の血栓摘出装置治療は発症から7.3時間以内に施された場合に限り有意な身体障害抑制と関連しました。5つの無作為化試験に参加した頭蓋内大血管閉塞による虚血性脳卒中患者総計およそ1300人のメタ解析の結果です。

Endovascular Thrombectomy Better Than Medical Therapy for Stroke - But Only When Performed Early

Time to Treatment With Endovascular Thrombectomy and Outcomes From Ischemic Stroke: A Meta-analysis. JAMA.2016;316(12):1279-1288. doi:10.1001/jama.2016.13647

治療法にも賞味期限がある
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心筋梗塞後1年以上のβ遮断薬使用に伴う生存改善は認められず〜早めの使用が有効 BioTodayニュースレター 2016年9月22日
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心不全や左心室機能不全のない急性心筋梗塞患者のβ遮断薬使用の生存改善効果は時と共に徐々に弱まっていくようであり、入院後48時間以内の使用は30日間の死亡率低下と関連しましたが、1年間の使用継続は5年生存率低下と関連しませんでした。この試験ではフランスの患者およそ2700人が追跡されました。

Beta-Blockers Seem Most Effective Early After MI
β blockers and mortality after myocardial infarction in patients without heart failure: multicentre prospective cohort study. BMJ 2016;354:i4801

外傷性脳損傷患者の減圧開頭手術
亡くなるか,植物状態になるかの分かれ目を作っているだけ?
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外傷性脳損傷患者の減圧開頭手術で死亡率が低下〜自宅での自立生活率も上昇 Biotoday 2016-09-12

無作為化試験の結果、外傷性脳損傷(TBI)患者の減圧開頭手術の死亡率は内科治療に比べて低く(27% vs 49%)、少なくとも自宅で自立生活を送れる予後良好な患者の1年時点での割合がより高い(45.4% vs 32.4%)ことが示されました。
ただし減圧開頭手術患者の植物状態率や要介護率は高いという結果も得られており、減圧開頭手術患者のQOLは植物状態から良好な回復まで様々であるとの認識が必要と著者は言っています。

'Opening the patient's skull' after head injury reduces risk of death from brain swelling
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2016-09/uoc-tp090516.php

Trial of Decompressive Craniectomy for Traumatic Intracranial Hypertension. NEJM. September 7, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1605215
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1605215


医師の事務仕事
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医師は患者の診察時間4時間あたり約2時間の事務仕事を要する Biotoday 2016-09-12

米国4州の医師57人を調べたところ、患者の診察時間4時間あたり約2時間の電子カルテや書類関連作業を要していることが示されました。 今回の結果によると面と向かって患者を直接診る時間が記録作成支援によって増やせそうです。
Heavy burden of EHRs could contribute to physician burnout / EurekAlert
Half of Physician Time Spent on EHRs and Paperwork / Physician's First Watch
Allocation of Physician Time in Ambulatory Practice: A Time and Motion Study in 4 Specialties. Ann Intern Med. Published online 6 September 2016 doi:10.7326/M16-0961

捨てる神と拾う神
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Novartisでお荷物だったワクチンがGSKに移って予想を遥かに超えて売れている   BioTodayニュースレター 2016年9月2日
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Bloombergによると、米国でのB型髄膜炎の流行や髄膜炎で亡くなった英国女児の悲惨な写真のネット拡散などに助けられて、Novartisでお荷物だったワクチン事業がGlaxoSmithKline(GSK)に移ってから当初の予想を上回る売り上げをもたらしています。

GSKは昨年3月にB型髄膜炎ワクチンBexseroを含む同事業をNovartisから取得し、昨年の売り上げはNovartisの予想を5倍も上回りました。今年は更に良くてNovartisの予想を9倍上回るとGSKは見込んでいます。

昨年GSKは値段交渉の末に英国で世界で初めて乳児へのBexsero接種方針に漕ぎ着けました。来月にはイングランドの会議で新たな有効性や安全性データが報告される予定であり、その結果によって米国や他の国もワクチン接種方針の採用に向かうかもしれません。

Struggling Vaccines From Novartis Turn Into Sales Boon for Glaxo

血中RNAによる小児発熱の鑑別診断
下記に関連記事あり。
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赤ちゃんや小児の発熱が細菌感染によることを識別する血中RNA特徴が同定された Biotoday 2016/8/25
赤ちゃんや小児の発熱が自然に解消するウイルス感染ではなくより危険な細菌感染によることを識別する血中RNA特徴が同定されました。
1つの試験では僅か2つのRNA(FAM89AとIFI44L)で発熱小児の細菌感染をウイルス感染と区別しうることが示されました。
もう1つの試験では生後60日以内の発熱赤ちゃんの細菌感染を10の遺伝子発現で識別しうることが示されています。
Studies Explore Use of Genetics to Help Determine Appropriate Treatmentfor Fever in Children
Genetics and the Evaluation of the Febrile Child. JAMA. 2016;316(8):824-825. doi:10.1001/jama.2016.11137
Diagnostic Test Accuracy of a 2-Transcript Host RNA Signature for Discriminating Bacterial vs Viral Infection in Febrile Children. JAMA. 2016;316(8):835-845. doi:10.1001/jama.2016.11236
Association of RNA Biosignatures With Bacterial Infections in Febrile Infants Aged 60 Days or Younger. JAMA. 2016;316(8):846-857. doi:10.1001/jama.2016.9207

魚心あれば水心
「製薬メーカーから医師への支払い」って表題を見ると,何やら大層な話に聞こえますけど,「1回の支払い額の中央値は13ドル」ってことは,ランチョンセミナーのお弁当の代金ほどですよね.
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製薬メーカーから医師への支払いが多い地域ほどより処方が多い BioTodayニュースレター 2016年8月23日
米国の公的医療メディケアの経口抗凝固薬と糖尿病薬(インスリン以外)の処方データを解析した結果、製薬メーカーから医師への支払いが増えるにつれて処方が増えていました。地域毎の解析の結果、支払いが1回(支払い額の中央値は13ドル)増える毎に処方日数がおよそ80日分増えました。
Association between payments from manufacturers of pharmaceuticals to physicians and regional prescribing: cross sectional ecological study. BMJ 2016;354:i4189

一次資料に当たる意義
当たり前のこと
、なすべきことがなされていないところに研究のネタがある。だとすれば、研究のネタはどこにでも転がっていることになる。
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薬剤の有害事象解析は試験プロトコールや治験総括報告書も含めればより良くなる
Biotoday 2016-08-18 -
 臨床試験での有害事象申告方法や総括のされ方はあまり分かっていないという現状を背景にして実施された解析の結果、肥満薬orlistatの臨床試験報告では有害事象が総じて実際より少なく記されているらしいことが示されました。

公表論文に加えて試験プロトコールや治験総括報告書(CSR)も対象とすることで薬剤の包括的レビューの改善が見込めると著者は言っています。

A popular weight-loss pill was buoyed by studies that understated its harms / statnews

Assessment of Adverse Events in Protocols, Clinical Study Reports, and Published Papers of Trials of Orlistat: A Document Analysis. PLoS Med 13(8): e1002101. doi:10.1371/journal.pmed.1002101

PCSK9阻害薬の費用対効果

PHYSICIAN'S FIRST WATCH for August 17, 2016
David G. Fairchild, MD, MPH, and Lorenzo Di Francesco, MD, FACP, FHM

Drugs known as PCSK9 inhibitors, although effective at lowering LDL cholesterol, are too expensive to be cost-effective, a JAMA analysis finds.

Researchers used 2015 drug prices and national health data to construct models of cost effectiveness in two groups approved for using PCSK9 inhibitors: people with heterozygous familial hypercholesterolemia and those with atherosclerotic cardiovascular disease. PCSK9 inhibitors cost roughly $15,000 per year wholesale.

Compared with adding ezetimibe to statin therapy over the patients' lifetimes, adding PCSK9 inhibition in familial hypercholesterolemia would prevent over 300,000 additional cardiovascular deaths, nonfatal heart attacks, and strokes -- but at cost of over $500,000 per quality-adjusted life-year (QALY). Similarly, in atherosclerotic disease, over 4 million serious events would be averted, but would cost over $400,000 per QALY.

The authors point out that achieving a QALY of $100,000 would necessitate lowering PCSK9 costs by about two thirds -- to about $4500 annually.

JAMA article (Free)
Background: Physician's First Watch coverage of cost of PCSK9 inhibitors (Free)
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コレステロール抑制PCSK9阻害剤の費用対効果 BioTodayニュースレター 2016年8月18日

PCSK9阻害剤・alirocumabとevolocumabは確かにLDLコレステロールを減らすけれども高値過ぎて費用に見合った効果は得られないと判断されました。ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症(HeFH)や動脈硬化疾患患者のPCSK9阻害剤の昨年の1年間あたりの費用は卸値でおよそ15,000ドルでした。

Recently Approved Cholesterol Medication Not Cost-Effective; Could Substantially Increase U.S. Health Care Costs
Cholesterol-Lowering PCSK9 Inhibitors Way Too Expensive

Cost-effectiveness of PCSK9 Inhibitor Therapy in Patients With Heterozygous Familial Hypercholesterolemia or Atherosclerotic Cardiovascular Disease. JAMA. 2016;316(7):743-753. doi:10.1001/jama.2016.11004

「心の風邪ひき」って
抗うつ薬ビジネスの宣伝文句はとんと聞かなくなったな。
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価値観に応じた前向きな行動を促す簡単な抗うつ治療は高額の認知行動療法に劣らず BioTodayニュースレター 2016年7月26日
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困難な状況を避けることに時間を割くのではなく各々の価値観に応じた前向きな行動を後押しする行動活性化治療(behavioural activation、BA)で認知行動療法(CBT)に引けを取らない抗うつ効果を得うることが示されました。今回の無作為化試験(COBRA試験)結果によると、CBTを実施するような高賃金の専門家を雇わずともBAはより簡単でより安価な訓練を受けることで経験が浅い医療スタッフでも実施可能です。
Simple, Less Expensive Therapy Appears as Effective as CBT for Depression
Behavioral activation as effective as CBT for depression, at lower cost
Beyond methotrexate monotherapy for early rheumatoid arthritis. Lancet.Published Online: 07 June 2016
Cost and Outcome of Behavioural Activation versus Cognitive Behavioural Therapy for Depression (COBRA): a randomised, controlled, non-inferiority trial. Lancet. Published Online: 22 July 2016

どんぐりの背比べ
そしてそのどんぐりのセット販売で収益を目論む会社。それしか売る物がないことが見え見え。他にやることないの?
よっぽど暇なんだね、君たち。
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どの2型糖尿病薬もメトホルミンへの追加は有効〜300の無作為化試験のメタ解析 
BioTodayニュースレター 2016年7月21日
301の無作為化試験のメタ解析の結果、メトホルミン単独治療やメトホルミン-スルホニル尿素併用に比べて心血管死リスクが高い糖尿病薬剤群はなく、どの薬剤もメトホルミンへの追加は有効と予想されました。
2型糖尿病にはまずメトホルミンを使い、個々の患者の状態に応じて追加薬を選ぶことを推奨している米国糖尿病協会(ADA)のガイドラインを今回の結果は支持しています。
No Significant Difference Found Between Glucose-Lowering Drugs for Risk of Death
Type 2 Diabetes: Network Meta-Analysis Confirms ADA Recommendations

Comparison of Clinical Outcomes and Adverse Events Associated With Glucose-Lowering Drugs in Patients With Type 2 Diabetes: A Meta-analysis. JAMA. 2016;316(3):313-324. doi:10.1001/jama.2016.9400
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DPP-4とSGLT-2阻害剤の配合剤、欧州で承認取得  英AZ( 日刊薬業 2016年7月25日 )
英アストラゼネカは25日までに、同社が欧州医薬品庁に申請していた2型糖尿病治療薬「Qtern」について、欧州委員会から承認を取得したと発表した。同社によると、同剤は欧州で初めて承認されたDPP-4阻害剤(サキサグリプチン)とSGLT-2阻害剤(ダパグリフロジン)の配合剤。18歳以上の2型糖尿病患者でメトホルミンかスルホニル尿素(SU)剤、あるいはメトホルミンとSU剤との組み合わせに、サキサグリプチンかダパグリフロジンのいずれかが併用されているにもかかわらず、十分な血糖コントロールが得られない患者を対象とする。このほかサキサグリプチンとダパグリフロジンの2剤をすでに投与されている患者も対象となる。同剤は日本での開発は行われていない。

非侵襲性定位脳手術?それも本態性振戦の治療??
本態性振戦というからには病変部位が特定できない振戦のはずなのだが,何しろ中枢神経ではなく,末梢に原因があるという人もいるぐらい.その病変を特定して,定位脳手術を,それも非侵襲的にやっちまうって??どなたか,どういう代物なのか,教えてください.ひょっとして,フィリピン製の心霊手術の器械だったりして・・?
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本態性振戦をもたらす脳領域をMRI造影を頼りに破壊する超音波装置をFDAが承認 BioTodayニュースレター 2016年7月13日
薬が効かない本態性振戦を治療する非侵襲性超音波装置が米国FDAに承認されました。INSIGHTEC社が開発したこの装置ExAblate NeuroはMRI造影に基づいて超音波を正確に導き、振戦に寄与すると考えられる脳の奥深くの領域を切開や移植なしで破壊します。

THE U.S. FOOD AND DRUG ADMINISTRATION APPROVES EXABLATE NEURO SYSTEM FOR THE TREATMENT OF ESSENTIAL TREMOR
MRI-Guided Ultrasound Device Approved to Treat Essential Tremor
FDA approves first MRI-guided focused ultrasound device to treat essential tremor

遺伝子解析による細菌・ウイルス感染症の鑑別
まず11遺伝子で感染症かどうかを決定し(この段階で悪性腫瘍や膠原病など、感染症と紛らわしい疾患を除外するように書いてあります)、次に7遺伝子で細菌感染かウイルス感染かを弁別するとのことです。ほんとかよ、と思いながら、下記の「Cheap blood test・・・」の記事を流し読みした限りでは、方法論自体が「危うい」とか、これではとても実用にならない という感じはしませんでした。一方で、組み入れ患者の年齢、性別、感染症のfocusとなった臓器、感染症の広がりや重症度といった変数の影響を検証する研究はまだまだこれからという感触を受けました。
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18遺伝子解析で抗生剤が不要な患者を相当正確に識別しうる Biotoday 2016-07-12
血液中の7つのヒト遺伝子を調べることで細菌かウイルス感染かを確実に区別でき、以前の成果での11遺伝子と今回の研究成果の7遺伝子をあわせた18遺伝子の解析(IADM:integrated antibiotics decision model)によって抗生剤が不要な患者をかなり正確に識別しうることが示されました。この方法の実用化には更なる最適化や検証試験が必要だが、やがてはヒトゲノムの分子解析が診療の道具の一部となるだろうと著者は言っています。
Cheap blood test can discriminate between bacterial, viral infections, study finds / EurekAlert
Robust classification of bacterial and viral infections via integrated host gene expression diagnostics. Science Translational Medicine 06Jul 2016: Vol. 8, Issue 346, pp. 346ra91
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HPV関連癌の年間診断率
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2008-2012年の米国のHPV関連癌の年間診断率はその前の5年間に比べて上昇 BioTodayニュースレター 2016年7月11日
2016-07-09 - 米国の2008-2012年のヒトパピローマウイルス(HPV)関連癌の年間診断率は10万人あたり11.7人であり、10万人あたり10.8人だったその前の5年間(2004-2008年)に比べて上昇していました。 HPVに起因する癌の93%近くは利用可能なワクチンに含まれるHPV型によるものであり、ワクチンの普及でHPV癌を減らせると著者は言っています。

HPV-Associated Cancers Increased in 2008-2012 / Physician's First Watch
Human Papillomavirus-Associated Cancers - United States, 2008-2012. MMWR. Weekly / July 8, 2016 / 65(26);661-666

ガドリニウム造影剤とパーキンソン病
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MRIでのガドリニウム造影剤使用に伴うパーキンソン症リスク上昇は認められず BioTodayニュースレター 2016年7月8日
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カナダのオンタリオ州の高齢者データを調べたところ、脳に蓄積しうると米国FDAが警告しているガドリニウム造影剤使用に伴う脳疾患・パーキンソン症(パー
キンソニズム)リスク上昇は認められませんでした。脳や脊椎以外のMRI検査を受けた66歳超高齢者データが調べられ、パーキンソン症発現率はガドリニウム曝露群では1.17%、非曝露群では1.16%でした。ガドリニウムが淡蒼球に蓄積して神経を傷めてパーキンソン症をもたらすという仮説を今回の結果は支持していないと著者は言っています。
Use of Gadolinium Contrast in MRI Shows No Increase in Parkinsonism Risk
No Association Found Between Contrast Agents Used for MRIs and Nervous System Disorder
Association Between Gadolinium Contrast Exposure and the Risk of Parkinsonism. JAMA. 2016;316(1):96-98. doi:10.1001/jama.2016.8096

CTは命を救うか?
生命予後に対する画像診断のアウトカム研究という点で独創的である
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重度外傷患者をすぐに全身CT検査しても入院中死亡率は低下せず BioTodayニュースレター 2016年7月4日
無作為化試験(REACT-2試験)の結果、生命指標の異常、死に至りうる怪我、大怪我を呈する重度外傷患者をすぐに全身CT検査しても必要に応じたCT検査に比べて入院中の死亡率は低下しませんでした。すぐ全身CT検査をする群とまず骨盤/胸部X線検査などをして必要に応じてCT検査をする群の入院中の死亡率は差がなくどちらも16%でした。サブグループ解析の結果、多発外傷(Injury Severity Scoreが16以上)や外傷性脳損傷(TBI)患者においても死亡率に差はありませんでした。

Whole-Body CT of Trauma Patients Might Not Reduce In-Hospital Mortality
Total-body CT for initial diagnosis of severe trauma. Lancet. Published Online: 28 June 2016
Immediate total-body CT scanning versus conventional imaging and selective CT scanning in patients with severe trauma (REACT-2): a randomised controlled trial. Lancet. Published Online: 28 June 2016

みのもんたUK
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スタチンの益害が広く報じられてスタチン服用中止が一時的に増えた BioTodayニュースレター 2016年7月4日
スタチンの益害が盛んに議論されて広く報じられた時期に続いてスタチン使用中止が一時的に増えました。報道が治療の受け方を左右しうることを今回の結果は裏付けていると著者は言っています。
Impact of statin related media coverage on use of statins: interrupted time series analysis with UK primary care data. BMJ 2016;353:i3283
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飲む飲まないは患者さんの自由なんですけどね・・・・
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「薬は飲むな」男性誌キャンペーンで診療不信の患者殺到、病院がパニックに… 週プレNEWS 2016年07月04日
https://news.nifty.com/article/domestic/society/playboy-67471/
極端すぎる「薬は飲むな」キャンペーンで誤った認識が医療現場への不信感に…
 今、あちこちの病院の診察室でパニックが起きている。オジサマたちの愛読誌が、メジャーな薬を片っ端から「飲んだら副作用で死ぬ」と書き立てたからだ。
 きっかけは、『週刊現代』が5月30日売り号に掲載した大特集だった。『ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬』という特集でメジャーな薬49種の副作用を解説。さらには「飲んでも効かない」「寿命は延びない」などと訴えたのだ。
 この特集は大反響を呼び、その号の売り上げを大幅にアップ。翌週以降も、『有名な薬でも医者の言いなりに飲み続けるのは危険です!』『その薬、一度飲んだら最後、やめられません』『医者に言われても断ったほうがいい「薬と手術」』などなど、これまで5号連続で大特集を展開中だ(途中から手術の話題も入ってきた)。
 このブームに『週刊ポスト』、さらにはスクープが売りの『週刊文春』まで便乗。「副作用怖いよ祭り」が続いているわけだ。
 それ自体は「売れてよかったね」という話なのだが、問題は、その記事を読んだ患者さんたちが、かかりつけの病院で、 「私がもらってる薬、飲んじゃいけない薬だったらしいじゃないですか!」「怖いので薬をやめたい」「飲むと死ぬんでしょ?」「もう飲みません!」「もう病院行きません!」 と、医師に訴える場面が激増していることだ。しかも、パニック状態になっているのは記事を読んだ人だけではない。神経内科医の高橋宏和氏(医学博士。松戸神経内科、JCHO東京高輪病院)が、こうため息をつく。
 「一番困るのは、雑誌の新聞広告だけ見た患者さんが『この薬、飲んじゃいけないって“新聞に”書いてありました』と言ってくることです。広告なのに『新聞に載っていた』という記憶にすり替わっているんですね」週プレ読者の若い世代にはピンとこないかもしれないが、団塊世代より上の日本人にとって、新聞は今でも、ものすごくエライのだ。「だから思わず『せめて記事を読んでくださいよ』と言いかけて、いかん、売り上げに貢献してしまうと(笑)」(高橋医師)
 パニックの震源地がオジサマ週刊誌なので当然だが、これらの記事で糾弾されている「危険な薬」は、高コレステロール血症の治療薬だったり、血圧を下げる薬だったりと、高齢の患者さんが長期にわたって服用する性格のものが多い(そして市場としてはものすごく巨大だ)。
 しかし、実はこの話、若年世代にも無縁ではない。オジサマたちの「医療不信」が広まっていけば、若者の中にも「病院は信用できない」と考える人が増えても不思議ではないからだ。
 このような「薬は飲むな」キャンペーンが続けば、本当に患者のためを思って薬を出している医者まで疑われかねず、その影響は患者本人の健康に及ぶ。
 月曜発売の『週刊プレイボーイ』29号では、オジサマたちから広がる「医療現場クライシス」の現状を特集。「薬を出せば出すほど病院は儲かる」というイメージの間違いや「副作用を恐れるあまりに薬を飲まないと生じるリスク」等を検証しているので、是非お読みいただきたい。

■週刊プレイボーイ29号「医療現場クライシス! パニック患者が激増して医者が悲鳴をあげている!」より

2.8ヶ月、p < 0.001
あなたにとって、これらの数字の意味は何だろうか?
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sorafenib治療失敗切除不能肝癌患者の生存がStivargaで2.8か月改善/Ph3試験 
Biotoday 2016/7/1
2016年6月28日、Bayerは、第3相試験(RESORCE)の結果、Nexavar (sorafenib)治療に失敗した切除不能肝細胞癌(HCC)患者のキナーゼ阻害剤Stivarga(regorafenib)治療の全生存はプラセボ群に比べて2.8か月長かったことを報告しました。全生存期間中央値はStivarga群では10.6か月、プラセボ群では7.8か月でした(p < 0.001)。

Phase III Data Show Bayer's Stivarga? (regorafenib) Improved Overall Survival in Previously Treated Patients with Unresectable Liver Cancer

PCSK9阻害薬は滑り込みセーフだったってこと?
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Esperion LDL-C低下薬の米国承認申請は心血管転帰抑制効果の証明を要しうる Biotoday 2016/6/30
2016年6月28日、Esperion Therapeuticsは、スタチンを受けつけない(statin intolerance)患者を含むLDL-Cレベル上昇患者へのコレステロール生合成阻害/LDL受容体亢進薬bempedoic acid(ETC-1002)のLDL-C低下作用を調べる第3相試験や心血管転帰予防効果を調べる試験(CVOT)を今年4Qに実施するが、FDAがLDL-C低下を承認適応とみなさなくなった場合、CVOTが無事完了してから心血管(CV)疾患リスク抑制を適応として2022年までに同剤を同局に承認申請すると発表しました。

欧州にはLDL-C低下作用を調べる第3相試験結果に基づいて2019年までに承認申請され、続いて2022年までにCVOTの結果に基づいてCV疾患リスク抑制の承認申請がなされる予定です。

BRIEF-Esperion Therapeutics provides regulatory update for Bempedoic Acid
Esperion Therapeutics Provides Clinical Development and Regulatory Update for Bempedoic Acid

EMA移転の必要はない!
金がかかると文句を言うのなら移転させなければいいだけだ.ショバ代もこっちの言いなりになるし,高慢ちきで勝手ばかり言ってきた連中に貸しを作る絶好の機会だってえのに,子供みたいな当てつけしか考えられないのかよ.ドイツ人ってのは,あほちゃうか.それに比べてEMA本体は
さすがに大人の対応を示している.
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英国EU離脱決定を受けてロンドン拠点の欧州医薬品庁は移転が必要/ドイツ製薬協会 BioTodayニュースレター 2016年6月27日
Reutersによると、英国の欧州連合(EU)離脱の決定を受け、ロンドンを本拠とする欧州医薬品庁(EMA)は移転せざるを得ないとドイツの製薬団体は言っています.製薬会社が必要な手続きの負担は相当大きくなるとの見解も併せて表明されています。
Relocation of European Medicines Agency seen creating extra administrative hurdles for drugmakers
German pharma lobby says EU drug regulator must leave London
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EU離脱「今後の対応は英国次第」  EMA広報( 2016年6月29日 )
 欧州医薬品庁(EMA)広報は、英国が国民投票で欧州連合(EU)を離脱する意思を示したことに関連し、「英国民の決定を尊重する」とした上で、英国のEMA離脱については明言を避け、今後の具体的な対応は「英国政府次第」との見解を示した。日刊薬業に対しEMA広報が書面で回答した。
 また書面では「欧州連合条約の中には、加盟国が欧州理事会にEU脱退を通知した場合の手続きを見越した規定があるものの、これまでにメンバー国がEUを脱退したという事例がないため、現在のような事態の慣例・前例はない」と指摘。「英国の国民投票の意味するところを予測するのは時期尚早であり、今後もEUの関連機関と密な連携を取っていく方針だ。確定的な情報が入り次第、ステークホルダーと情報を共有する」とした。その上で「EMAは引き続き人と動物の健康を守り、安全・有効・高品質な医薬品のアクセスを担保するという目標に邁進していく」としている。

Adam Feuerstein
こんな奴が日本にいなくてよかったと思っている連中と,いればいいのにと思っている連中.そのどちらが多いかって言えば,やっぱり前者だろうな.
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Northwest社の癌ワクチンのPh3試験が何の説明もなく1年間ストップしている BioTodayニュースレター 2016年6月27日
バイオテック業界の著名ライターAdam Feuerstein氏の記事によると、Northwest Biotherapeuticsの癌ワクチンDCVax-Lの第3相試験は名目上は一時中断となっていますが、昨年の8月から今までの約1年もの間患者は組み入れられることはなく、患者組み入れの再開はなさそうと同社は認めています。信じられないことに、薬剤開発において第3相試験は最も重要であるにも関わらず同社のCEOや経営陣は試験中断の理由を説明していません。

そういう不透明性を許してアメリカ証券取引委員会(SEC)が同社の上場維持を認めていることは不可解であり、第3相試験について完全な説明があるまで同社の株式取り引きは停止すべきだとFeuerstein氏は言っています。
Blame for Northwest Bio Collapse Lies With CEO, Not With Mythical 'Wolfpack'

要は教育次第
nurse practitionerに大反対している爺どもはこういう事態に怯えているのだろう.
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医師に比べて医療提供上級者は価値が低い医療を提供しがちというわけではない Biotoday 2016-06-23
米国の医療提供上級者(Advanced Practice Clinician:APC)・上級看護師(nurse practitioner)や医師助手(physician assistant)は医師に比べて価値が低い医療を提供しがちというわけではないことを裏付ける試験結果が報告されました。 3つの一般的病態・腰痛、上気道感染、頭痛への低価値の対処(X線検査/CT/MRI、ガイドラインにそぐわない抗生剤使用、他の医師の紹介)の頻度はAPCと医師で有意差ありませんでした。

Advanced Practice Clinicians and Physicians Provide Similar Levels of Care for Common Conditions / Physician's First Watch

Advanced Practice Clinicians and Physicians in Primary Care: Still More Questions than Answers. Ann Intern Med. Published online 21 June 2016 doi:10.7326/M16-1326

Comparing Use of Low-Value Health Care Services Among U.S. Advanced Practice Clinicians and Physicians. Ann Intern Med. Published online 21 June 2016 doi:10.7326/M15-2152

SGLT2阻害薬による急性腎障害
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SGLT2阻害糖尿病薬の急性腎障害に関する警告をFDAが発表 Biotoday 2016/6/19
SGLT2阻害糖尿病薬2つcanagliflozin(Invokana, Invokamet)とdapagliflozin(Farxiga, Xigduo XR)使用に伴う急性腎障害(AKI)と思われる報告を受け取っており、医師はそれらの薬剤使用前と使用中に腎機能を検査し、患者はもしAKIと思われる症状や兆候を経験したらすぐに手当てを求めるべきとの警告を米国FDAが発しました。

最近FDAはcanagliflozin使用に伴う脚/足切断リスク上昇の恐れについて調査を始めています。
また、昨年遅くにはSGLT2阻害剤全てにケトアシドーシスと重度尿路感染症(UTI)のリスクが表示されるようになりました。

FDA Drug Safety Communication: FDA revises labels of SGLT2 inhibitors for diabetes to include warnings about too much acid in the blood and serious urinary tract infections

Safety Warnings Added to Newer Diabetes Drugs


Canagliflozin (Invokana, Invokamet) and Dapagliflozin (Farxiga, Xigduo XR): Drug Safety Communication - Strengthened Kidney Warnings

FDA Strengthens Warnings on Two Diabetes Drugs


ミトコンドリアを届ける技術
ミトコンドリア病だけでなく、同様にミトコンドリアの機能障害を原因とするフリードライヒ失調症にも応用できるかもしれない。
参考→父由来のミトコンドリアゲノムが消されるしくみ:一口にミトコンドリアは母系遺伝と言っても、その機序は非常に複雑だったのですね。とっても勉強になりました!地道ながら立派な研究をしている人がいるもんだ。
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光熱利用の超小刀で細胞にミトコンドリアを効率よく入れ込める技術ができた Biotoday 2016-06-10 -
エンドサイトーシスや細胞融合を介さず光と熱を利用した超小刀(photothermal nanoblade)で哺乳類体細胞にミトコンドリアを単一細胞レベルで効率よく入れ込める技術が開発されました。 ミトコンドリア機能を欠く細胞に野生型ミトコンドリアを入れたところミトコンドリア機能と代謝が回復しました。この技術はこれまで不可能だったミトコンドリア研究を可能にして、ミトコンドリア疾患の治療を可能にするだろうとNantWorks設立者Patrick Soon-Shiong氏は言っています。NantWorks子会社NanoCAVが開発したこの技術の試作品は僅か数分で10万細胞にミトコンドリアのようなミクロンサイズの成分を運搬しうるとのことです。

NantWorks Announces Breakthrough Nano-Thermal Blade Technology to Treat Rare Diseases Through Single Cell Surgery Enabling Mitochondria Transfer into Mammalian Cells / BUSINESS WIRE

Mitochondrial Transfer by Photothermal Nanoblade Restores Metabolite Profile in Mammalian Cells. Cell Metabolism. Volume 23, Issue 5, p921-929, 10 May 2016

誰でもできるのに誰もやらない
臨床研究とはそういうものらしい。この研究だって、フィラデルフィアでやる必然性はどこにもなかったのだ。
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救急科の発熱小児の尿検査で不必要な尿道カテーテル留置が半減
BioTodayニュースレター 2016年6月7日
尿道カテーテル留置を採取排尿(urine bag specimen)試験紙検査が陽性の場合に限ることで、尿路感染症(UTI)が疑われる救急科(ED)発熱小児の尿道カテーテル留置率が入院期間の延長やUTIの見逃しを伴うことなく半減しました。 尿道カテーテル留置率は63%から30%未満に低下しました。
Bagged Urine Screens Reduce Unnecessary Catheterization in Young Febrile Children / Physician's First Watch
Two-Step Process for ED UTI Screening in Febrile Young Children: Reducing Catheterization Rates. Pediatrics June 2016

経皮的血糖測定
遺伝子のように一度結果が出れば同じことは二度とやらない検査に比べて,繰り返し行う測定の需要は非常に大きい.90年代半ばに,すでに論文になっていたものが,全世界的にどうしてここまで時間がかかった(ている)のか?おかしいと思いませんか?
特許の関係?検査会社の既得権を守る(試薬やキットを売って収益を上げるビジネスモデルが崩壊する)ため?,悪性腫瘍みたいに患者ロビー活動が盛んであったなら,もっと早くにどうかなっていたのか?,スマホの普及が後押ししたのか?経緯をご存じの方は教えてください..
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非侵襲的な糖レベル測定装置の米国承認申請に向けた試験が3Qに始まる予定 BioTodayニュースレター 2016年6月6日
2016年6月1日、Integrity Applicationsは、2型糖尿病患者や糖尿病発現リスクが高い人の糖レベルを指先穿刺採血せずに非侵襲的に測定できる装置GlucoTrackの臨床試験計画などの申請情報について米国FDAと7月に電話会議すると発表しました。臨床試験プロトコールがFDAに承認されてから同社は今年3Qにピボタル臨床試験を開始する予定です。GlucoTrackは欧州では既に承認されています。
GlucoTrack Maker Submitted Pre-Submission Supplement to US FDA


情報公開の意義
この種の情報公開の意義は,その情報公開が何の役にも立たないという第一級のエビデンスを示すことにある.
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病院の死亡率公開はその低下をもたらさず Biotoday 2016-06-01
米国公的医療の情報公開プログラムHospital Compare参加病院のデータを調べたところ死亡率公開に伴う死亡率低下は認められませんでした。 急性心筋梗塞、心不全、肺炎の死亡率は死亡率公開開始を含む期間中低下し、その低下は死亡率公開前が公開後を上回りました。

Public Reporting Not Associated with Reduced Mortality Rates / Physician's First Watch
Public Reporting of Mortality Rates for Hospitalized Medicare Patients and Trends in Mortality for Reported Conditions. Ann Intern Med. Published online 31 May 2016 doi:10.7326/M15-1462

VW・三菱もびっくり
同じ隠蔽と言っても、有害アウトカムを隠すわけだから、製品の品質を偽装するのとはわけが違う。そもそも、片や、たかが排気ガス、たかが燃費なのに対し、他方は人の体を切り刻むための「最新自動ナイフ」だ。「機械は間違えない」「医療事故は全て人間の仕業だ」という思考停止により維持されてきた、ダ・ヴィンチ神話の終わりの始まりである。
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手術ロボット・ダ・ヴィンチ製造会社の700を超える被害報告の隠蔽を保険会社が告訴
Biotoday 2016-05-27
Bloombergによると、手術ロボット・ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)の700を超える被害報告をそのメーカーIntuitive Surgical社が隠していたと保険会社2社が訴えを起こしました。保険会社のIllinois Unionは、保険適応申請時にIntuitive Surgicalは僅か24の被害報告しか示さずに残り734件を隠しており、過去最悪の隠蔽かもしれないと言っています。

Maker of $1.5 Million Surgical Robot Hid More Than 700 Injury Claims, Insurer Says

国際標準とは何か?
365日24時間MRIを使えるような環境と、手術中にしょっちゅう停電が起きるような環境とでは「ガイドライン」の意味が違うのだよ。「国際標準の医学教育」という言葉に一体どんな意味があるのだろうか?
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医療環境の充足度に応じた浸潤性子宮頸癌の治療ガイドラインをASCOが発表 Biotoday 2016-05-27 -
医療環境の充足度(Basic、Limited、Enhanced、Maximal)に応じた浸潤性子宮頸癌の治療方針をAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO)が発表しました。 理想的な手当てが望めない環境での他の選択肢を提供することを目標としていると著者は言っています。

今回のガイドラインでは手術、薬物療法、化学療法、病理検査、緩和療法の充足度がそれぞれ定義されており、例えば薬物療法については化学療法剤の入手が不確定な環境が最低のBasic、化学療法とbevacizumabが使える環境が最高のMaximalと定義されています。

ASCO Offers Guidelines on Managing Invasive Cervical Cancer in Different Resource Settings / Physician's First Watch
Management and Care of Women With Invasive Cervical Cancer: American Society of Clinical Oncology Resource-Stratified Clinical Practice Guideline. JGO May 25, 2016

心血管疾患リスク予想法の乱立
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一般人口の心血管疾患リスク予想法はおよそ有用性が不明〜検証や比較が必要 BioTodayニュースレター 2016年5月23日
一般人口の心血管疾患(CVD)リスク予想法はたくさんあるものの方法の不備や第三者の検証の欠如などにより大部分の有用性は不明と判断されました。似たCVDリスク予想法を次から次に新しく開発するのではなく、今後は既存の有望な予想法を第三者が検証したり直接比較したりするべきと著者は言っています。
Prediction models for cardiovascular disease risk in the general population: systematic review. BMJ 2016;353:i2416

canagliflozinによる脚/足切断リスク上昇
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糖尿病薬canagliflozin治療患者の脚/足切断リスク上昇が試験の途中解析で判明 Biotoday 2016-05-19

糖尿病薬canagliflozin(Invokana, Invokamet)治療患者の脚/足切断リスク上昇が進行中の試験の途中解析で認められていると米国FDAが発表しました。プラセボ群に比べてcanagliflozin治療群の脚/足切断リスクはおよそ2倍高いことが示されています。ただし、進行中の別の試験では同様のリスク上昇は認められていません。
今回の懸念についてFDAは調査中であり、canagliflozinが脚/足切断リスクを高めるかどうかは不明です。痛み等の下肢症状に気を配りつつ承認用法に従って同剤を使うようにFDAは指示しています。

Canagliflozin (Invokana, Invokamet): Drug Safety Communication - Clinical Trial Results Find Increased Risk of Leg and Foot Amputations / FDA
Diabetes Drug Might Be Tied to Increased Amputation Risk, FDA Cautions / Physician's First Watch

20年経っても
1995年から2014年の20年間で52%から30%と6割までにしか減っていません.同様の時期の日本人男性の喫煙率でさえ,1995年の58.8%から2014年の30.3%まで,ほぼ半減しているというのに.
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米国の医学研究女性への性的嫌がらせや評価の差別は依然として多い Biotoday 2016/5/19
2014年のアンケートの結果、米国の女性の医学研究者の30%が依然として性的な嫌がらせの経験を有し、66%が評価で性差別を受けたと報告しました。1995年の調査での性的嫌がらせの報告率は52%でした。

Sexual Harassment and Discrimination Experiences of Academic Medical Faculty

Sexual Harassment and Gender Bias Still Common in Academic Medicine

Sexual Harassment and Discrimination Experiences of Academic Medical Faculty. JAMA. 2016;315(19):2120-2121. doi:10.1001/jama.2016.2188

週末入院の死亡率上昇の原因
となると要因は患者側,たとえば週末まで我慢した結果,あるいは来週医者に行こうと思っていた結果,重症化した患者が週末に来院するというようなシナリオが考えられる.この仮説を検証するための研究の一つに,週末来院と平日来院の来院患者,入院した患者の重症度を比較することがある.問題は重症度の指標だが,それはごく一般的な指標(バイタルサイン,意識障害の程度)と,ごく一般的な来院状況(来院時間帯,救急車/Walk in等),入院状況(入院時診断,入院病棟:一般病棟か集中治療室か等)でよい.なぜなら普遍性が担保できるから.どうです?やってみませんか?
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週末入院の転帰に寄与する要因を検討〜人手不足や質低下は死亡率上昇と関連せず Biotoday 2016/5/17

英国イングランドの病院での試験の結果、週末の急な入院の死亡率は平日に比べて10%高く、週末は平日に比べて病院医師(hospital specialist)の応対が手薄になるものの、病院医師の充足度と死亡率に関連は認められませんでした。

急性脳卒中による入院患者を調べた別の試験では週末入院に伴う死亡率上昇は認められず、週末の治療品質指標は平日に劣るものの死亡率上昇とは関連しませんでした。

Weekly variation in health-care quality by day and time of admission: a nationwide, registry-based, prospective cohort study of acute stroke care. Lancet. Published Online: 10 May 2016

Weekend specialist intensity and admission mortality in acute hospital trusts in England: a cross-sectional study. Lancet. Published Online: 10 May 2016

Is hospital mortality higher at weekends? If so, why?. Lancet. Published Online: 10 May 2016

↑ と、2016年5月22日にここまで書いたら、翌日にはすぐに全く別の着眼点で素晴らしい研究が行われていることが判明した次第(下記)↓
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入院理由分類事務データの不正確さが週末入院と死亡リスクの関連を誤らせうる Biotoday 2016/5/23
非臨床の事務員によって主になされる入院理由分類事務データ(administrative hospital coding data)に基づいて脳卒中などの急病の転帰への週末入院の影響を調べることは、その分類の間違いにより、患者特徴の補正では解消し得ない不正確な結果を招きうることが英国オックスフォードシャー州のデータ解析で示されました。

平日と週末の入院では分類の正確さに大きな違いがありました。計画的な入院がしばしば急性脳卒中と誤って分類され、よりリスクが低い入院は平日に多く、事務データだけに基づくと脳卒中による死亡が週末に高いという結果を招きました。

一方、脳卒中の確実な新規発症例に限った以前の試験の解析では週末入院に伴う死亡リスク上昇は認められていません。

Inaccurate coding of patient data may explain 'weekend effect'
Biases in detection of apparent “weekend effect” on outcome with administrative coding data: population based study of stroke. BMJ 2016;353:i2648

医療は競馬じゃないことの証明
英国の外来診療,米国の入院診療と,全くsettingが異なるにもかかわらず,両者に共通する結果が得られたのですから,これ以上の頑健なエビデンスはありません.
いくら鼻先ににんじんをぶら下げても,にんじんが欲しくて仕事をしているのでなければ,作業効率改善は期待できないってことです.
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英国の世界最大の一般診療向け成果連動報酬プログラムで死亡率は有意低下せず BioTodayニュースレター 2016年5月20日
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一般診療向けとして世界最大の成果連動報酬支払い(pay-for-performance)プログラムQuality and Outcomes Framework (QOF) 導入に伴う有意な死亡率低下は認められませんでした。英国でのQOFは2004年に全家庭医に導入され、家庭医の収入の最大25%が100を超える特定の成果指標と連動するようになっています。
Does pay-for-performance in primary care save lives?. Lancet. Published Online: 17 May 2016

Long-term evidence for the effect of pay-for-performance in primary care on mortality in the UK: a population study. Lancet. Published Online: 17 May 2016
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成果に応じた報酬や罰金プログラムを導入しても入院患者死亡率は低下せず BioTodayニュースレター 2016年5月16日
治療の手順や転帰・患者の感想・費用効率指標に応じて報酬支払いまたは罰金を科すプログラムHospital Value-Based Purchasing (HVBP) が2011年に米国公的医療メディケアに導入される前とされた後の入院患者データを調べたところ、HVBPプログラム導入と死亡率低下の関連は認められませんでした。HVBPに似た成果に応じた支払い(pay for performance)プログラムの導入を検討している国は違う方法に目を向ける必要があるだろうと著者は言っています。
Association between the Value-Based Purchasing pay for performance program and patient mortality in US hospitals: observational study. BMJ 2016;353:i2214

riociguatの臨床試験中止
既に三極で承認されている薬の臨床試験が第U相で安全性の問題で中止されるとは,穏やかではありませんな.
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Bayer 死亡や重篤有害事象により間質性肺炎患者へのriociguatのPh2試験中止 BioTodayニュースレター 2016年5月13日
2016年5月12日、Bayerは、特発性間質性肺炎(IIP)に伴う肺高血圧症(PH)患者への可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬riociguatの第2相試験中止を発表しました。プラセボ群に比べてriociguat群の方が死亡やその他の重篤有害事象リスクが高い恐れあることを受けて中止となりました。
Bayer Terminates Phase II Study with Riociguat in Patients with Pulmonary Hypertension Associated with Idiopathic Interstitial Pneumonias

遠隔医療に欠けているもの
「妨害要素」なんて呼ぶからわけがわからなくなっちゃうんで(そもそもそういう言葉の背景には,遠隔医療は素晴らしいものだという妄想がある),「普通の医療にあって遠隔医療に欠けているもの」と考えれば,すぐにわかることだ.
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米国の田舎の公的医療受給者が2013年に遠隔医療を受けた割合は僅か0.7% BioTodayニュースレター 2016年5月13日
米国の田舎の公的医療メディケア受給者のうち双方向性通信等を介した遠隔医療を2013年に利用した割合は1%に満たない僅か0.7%でした。この割合は退役軍人における遠隔医療受診率12%を大きく下回りました。今回の試験では精神的な理由による遠隔医療受診が全体のおよそ8割(78.9%)を占めました。

遠隔医療を支払い対象とすることを民間保険に義務付ける州法と遠隔医療の速やかな普及は関連せず、支払い以外の遠隔医療普及妨害要素があるようだと著者は示唆しています。

VA Telehealth Services Served Over 690,000 Veterans In Fiscal Year 2014
Study Examines Use of Telemedicine Among Rural Medicare Beneficiaries
Utilization of Telemedicine Among Rural Medicare Beneficiaries. JAMA. 2016;315(18):2015-2016. doi:10.1001/jama.2016.2186

脳虚血治療に関する話題:NEJMから
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急性脳虚血のチカグレロル治療の重大転帰抑制効果がアスピリンを上回らず BioTodayニュースレター 2016年5月11日
非重度虚血性脳卒中や高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者が参加した無作為化試験(SOCRATES試験)の結果、強力な抗血小板薬ticagrelorの脳卒中、心筋梗塞、死亡の抑制効果はアスピリンを上回りませんでした。重篤有害事象の発現率に有意差はありませんでしたが、ticagrelor群はアスピリン群に比べて服薬中止がより多く、その差は主に呼吸困難や出血に起因していました。

Ticagrelor versus Aspirin in Acute Stroke or Transient Ischemic Attack. NEJM. May 10, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1603060
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アジア人が主の試験で虚血性脳卒中へのtPA低用量が標準量に劣らないことを示せず BioTodayニュースレター 2016年5月11日
アジア人が多く参加した無作為化試験(ENCHANTED試験)の結果、急性虚血性脳卒中患者への低用量alteplase(tPA)静注の90日時点での死亡や身体障害(修正ランキンスケールが2以上)の発現率は標準量alteplaseより高く(53.2% vs 51.1%)、非劣性基準を満たしませんでした。症候性の重大脳出血は低用量群の方が有意に少なかったものの、90日時点での死亡率は低用量群と標準両群で有意差はありませんでした。アジア人やその他の急性虚血性脳卒中に低用量alteplaseを使う意義はないことを今回のENCHANTED試験は示しているとエディトリアリストは言っています。

Finding the Right t-PA Dose for Asians with Acute Ischemic Stroke. NEJM. May 10, 2016DOI: 10.1056/NEJMe1605228
Low-Dose versus Standard-Dose Intravenous Alteplase in Acute Ischemic Stroke. NEJM. May 10, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1515510

正直が一番
わかったかい?効かなかったら、そうと言えばいいだけだろ。下手な子供だましなんてやるもんじゃないんだよ。
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心臓手術前後のロスバスタチン服用で術後の心房細動や心筋損傷を防げず BioTodayニュースレター 2016年5月6日
プラセボ対照無作為化試験(STICS試験)の結果、心臓手術の数日前から術後5日目までロスバスタチン(rosuvastatin)を服用しても術後5日間の心房細動や心筋損傷を防げませんでした。急性腎障害(AKI)がロスバスタチンでより多く生じました(25% vs 19%)。

Perioperative Rosuvastatin Not Beneficial in Cardiac-Surgery Patients
Perioperative Rosuvastatin in Cardiac Surgery. N Engl J Med 2016; 374:1744-1753 May 5, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1507750

DIY認知行動療法の威力
やっぱり医者がプラセボ同然の抗鬱薬を処方するなんかより,はるかに確実に有効性が期待できるようですな
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うつ症状を幾分有する成人の大うつ病発症が自助を促すインターネット介入で減少 BioToday 2016-05-04 -
うつ症状を幾分有する成人に自助を促すインターネットプログラムを提供することで大うつ病発現率が低下しました。12か月間の大うつ病発現率は対照群(一般診療受診群)では41%、インターネットを介した自助プログラム群では27%でした。

Web-Based, Self-Help Intervention Helps Prevent Depression

Effect of a Web-Based Guided Self-help Intervention for Prevention of Major Depression in Adults With Subthreshold Depression: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016;315(17):1854-1863. doi:10.1001/jama.2016.4326

軽度の脱水には電解質維持液よりりんごジュース
掲載されたジャーナルの格を一層高める論文。どこぞのトップジャーナルも見習ってもらいたいものだが、まあ無理だろうな。なお、非劣性を検証するデザインで、結果として優越性が示されている。
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脱水がないか僅かな軽度胃腸炎小児にまず希釈ジュースを与える治療が最適 BioToday 2016-05-04
脱水症状が無いかせいぜい僅かな軽度胃腸炎小児にまず薄めたリンゴジュースを与えて次に好みの飲料を与える水分補給治療は電解質維持液投与に勝ることが示されました。点滴による水分補給、入院、予定外の受診といった治療失敗イベントの発現率は半分に薄めたリンゴジュースがまず与えられた群では17%、電解質維持液が与えられた群では25%でした。ジュースと好みの飲料による水分補給はどの年齢の子にも効果的でしたが、2歳以上の小児には特に有効でした。

Diluted Apple Juice, Preferred Fluids May Be Viable Alternative for Treating Mild Gastroenteritis in Children
Juice Is Best for Treating Mild Gastroenteritis with Minimal Dehydration in Children
Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial. JAMA. Published online April 30, 2016. doi:10.1001/jama.2016.5352

医療行政文書の難易度解析
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乳癌検診結果に付随する高密度乳房通知の大部分は分かり難い/米国 BioTodayニュースレター 2016年4月29日
米国のおよそ半数の州において乳癌のマンモグラフィ検診結果と共に通知される高密度乳房の解説の大部分は高校レベル以上の読解力を要し、分かり難く、州の平均的識字レベルと一致しないことが示されました。

乳房密度の状態、その乳癌リスクへの影響、追検査を受けることの益害について全ての女性が適切に理解できるように高密度乳房通知をより分かりやすくする努力が必要と著者は言っています。

高密度乳房はマンモグラフィでの癌検出を妨げたり癌のリスク因子とされていますが、高密度乳房の女性の追検査が適切かどうかは分かっておらず、それぞれの女性が次にどうすべきかを決めるのを助けるために米国のおよそ半数の州はマンモグラフィ検診結果と共に高密度乳房通知を提供することを法律で定めています。

Study Finds Poor Understandability of Notifications Sent to Women Regarding Breast Density
Content, Readability, and Understandability of Dense Breast Notifications by State. JAMA. 2016;315(16):1786-1788. doi:10.1001/jama.2016.1712

臨床医の思い込みを質す基礎研究
治療法のない難病の発症メカニズム解明だけが基礎研究の標的ではないと思うのです。
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インフルエンザは高齢者を細菌に感染しやすくして好中球による肺破壊を促しうる 2016-04-22 -
老化で自然免疫が損なわれた高齢者のインフルエンザ感染は細菌の二次感染傾向を高め、ウイルスの過剰複製によるのではなくインフラマソームのカスパーゼで活性化した好中球による肺破壊を招きうることがマウス実験で示唆されました。 この現象が確かに人に認められるならウイルス複製の阻止ではなく肺組織を壊す免疫細胞に対処すべきであり、好中球あるいは炎症を促進するカスパーゼの阻害で高齢インフルエンザ患者の死を防ぎうると著者は言っています。
Yale study suggests immune response to flu causes death in older people, not the virus / EurekAlert
Mx1 reveals innate pathways to antiviral resistance and lethal influenza disease. Science 22 Apr 2016: Vol. 352, Issue 6284, pp. 463-466
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ウイルス感染は血管内皮にCXCL10を作らせて海馬神経を害して行動異常を促す 2016-04-22
ウイルス感染は脳の神経細胞ではなく血管内皮にケモカインCXCL10を作らせて海馬の神経発火を害してうつ病様の行動異常や認知機能障害を促しうることがマウス実験で示されました。 CXCL10とCXCL10が結合する神経のCXCR3の連絡はウイルス感染や1型インターフェロン薬使用に伴う行動異常の治療標的となりうると著者は言っています。
Antiviral protein linked to depressed mood in mice / EurekAlert
Brain Endothelial- and Epithelial-Specific Interferon Receptor Chain 1 Drives Virus-Induced Sickness Behavior and Cognitive Impairment. Immunity. Volume 44, Issue 4, p901-912, 19 April 2016

高齢女性の心不全にもβ遮断薬
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正常洞調律の駆出率低下心不全のβ遮断薬治療は年齢や性別を問わず有効 Biotoday 2016/4/22
メタ解析の結果、正常洞調律(sinus rhythm)の左心室駆出率低下(0.45未満)心不全(正常洞調律HFrEF)患者のβ遮断薬治療は年齢や性別がどうあれ死亡や
心不全に関連した入院の減少と関連しました。正常洞調律HFrEF患者全員へのβ遮断薬使用を今回の結果は支持しており、女性や高齢者へのβ遮断薬使用を控える方針はやめるべきと著者は言っています。
Effect of age and sex on efficacy and tolerability of β blockers in patients with heart failure with reduced ejection fraction: individual patient data meta-analysis. BMJ 2016;353:i1855

リウマチ治療のコストパフォーマンス
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関節リウマチの安価な3剤治療は生物薬やtofacitinibに劣らず/メタ解析 BioTodayニュースレター 2016年4月22日
メトトレキサート(MTX)、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキンによる3剤治療の関節リウマチ(RA)治療効果はMTX単独治療に勝り、MTX+生物薬(adalimumab, certolizumab pegol, Etanercept, golimumab, infliximab, abatacept, rituximab, tocilizumab)併用やMTX+JAK阻害剤tofacitinib併用と変わらないことがメタ解析で示されました。生物薬やtofacitinibに比べて安い3剤治療をRAの初治療とすることやMTXの効果が不十分なRA患者に使うことを今回の結果は支持しています。

Methotrexate monotherapy and methotrexate combination therapy with traditional and biologic disease modifying antirheumatic drugs for rheumatoid arthritis: abridged Cochrane systematic review and network meta-analysis. BMJ 2016;353:i1777

ジカウイルス感染:無症候性感染は無視できる
ジカウイルスに触れたかもしれないが無症状の人の感染率は僅か0.3% Biotoday 2016-04-19
ジカウイルスに触れた恐れがあるものの無症状の人のジカウイルス感染率は1%に満たないレベルでした。 ジカウイルス伝播が盛んな地域にいたことがある米国人4500人超を調べたところ、ジカウイルス症状がある人の感染率は12%、無症状の人の感染率は僅か0.3%でした。

CDC: Most Asymptomatic People Tested for Zika Don't Have It / Physician's First Watch
Patterns in Zika Virus Testing and Infection, by Report of Symptoms and Pregnancy Status - United States, January 3-March 5, 2016. MMWR, Early Release / April 15, 2016 / 65

あちら立てれば
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プロトンポンプ阻害剤は急性腎障害だけでなく慢性腎疾患の発現や悪化とも関連 Biotoday 2016-04-19
プロトンポンプ阻害剤(PPI)使用と慢性腎疾患(CKD)発症、CKD悪化、末期腎疾患(ESRD)発現リスク上昇の関連が示されました。 その関連はPPI使用日数が多いほど強いという結果が得られています。PPIと急性間質性腎炎リスク上昇の関連は既に示されていますが、慢性腎疾患との関連はこれまで分かっていませんでした。

Commonly used reflux and ulcer medication may cause serious kidney damage
/ EurekAlert
Long term use of proton pump inhibitors may increase risk of impaired kidney function / BMJ

Proton Pump Inhibitors and Risk of Incident CKD and Progression to ESRD. J Am Soc Nephrol. 2016 Apr 14. pii: ASN.2015121377. [Epub ahead of print]
サイエンスの変身?
地道ですが独創性の高い研究だと思います。ところで、サイエンスって、ここ10年ぐらい読んでいないのですが、こういう論文を載せるようになったのはいつ頃からなのでしょうかね。
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ボランティアの有権者戸別訪問による短い対話でトランスジェンダーへの偏見が減少 Biotoday 2016/4/11
性の認識が生まれながらの性と異なる人(トランスジェンダー)等を支援する組織のスタッフやボランティアが有権者を戸別訪問して玄関で10-15分ほど会話するという地道な活動で有権者10人あたり約1人のトランスジェンダーに対する見方が変わり、そういうトランスジェンダーへの偏見(transphobia、トランスフォビア)解消効果は3カ月後の追跡調査時点でも維持されていました。
Brief face-to-face talk can shift anti-transgender attitudes / EurekAlert
UC Berkeley, Stanford find LA LGBT Center's canvassing conversations reduce transphobia / EurekAlert
Durably reducing transphobia: A field experiment on door-to-door canvassing. Science 08 Apr 2016: Vol. 352, Issue 6282, pp. 220-224

アメフトにおける脳損傷
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引退アメフト選手の40%超に脳損傷〜認知症状も多い Biotoday 2016/4/13
2016-04-13 - 平均年齢36歳の元アメフト選手40人のプロスペクティブ試験の結果、43%(17人)に脳損傷を裏付けるMRI所見が認められました。 また症状もあり、注意や集中、実行機能、学習/記憶の障害がそれぞれ42%、50%、45%に認められました。

Over 40% of Retired NFL Players Show Brain Injury / Physician's First Watch
Study: More than 40 Percent of Retired NFL Players Had Brain Injury / American Academy of Neurology
CBRN対策医薬品開発も楽じゃない
軍から湯水のように研究費が来るというわけでもないようで・・・
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生物テロへの対抗製品を擁するSIGA社が破産から抜け出した BioTodayニュースレター 2016年4月15日
生物兵器や急な病気に対処する製品を開発しているSIGA Technologies社が破産保護状態から脱しました。オルソポックスウイルス感染症を治療する同社の抗ウイルス薬TPOXX(tecovirimat)はFDAにまだ承認されていませんがテロ攻撃に備えた米国の国家備蓄品となっています。
SIGA Emerges from Chapter 11 Bankruptcy Protection

デュシェンヌ治療薬をNICEが推奨
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬Translarnaがイングランド公的医療で使用可能になる Biotoday 2016/4/18
英国イングランド公的医療NHSでの保険対象治療を決める機関NICEがPTC Therapeutics社のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)薬Translarna(ataluren)の使用を推奨しました。ナンセンス変異による5歳以上のDMD患者を同剤で治療することをNICEは支持しています。Translarnaは2014年8月に欧州委員会(EC)に承認され、現在23か国の患者が使えるようになっています。

NICE recommends ataluren for treating Duchenne muscular dystrophy caused by a nonsense mutation
NICE Recommends Translarna? (ataluren) for the Treatment of Patients with Nonsense Mutation Duchenne Muscular Dystrophy in England

懲りない面々
ONTARGETに引導を渡されたDual RAS Blockadeなる亡霊に、まだこだわっていたとは、いやはや、医薬品開発の世界には、随分と暇な連中がいるもんだ。
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心不全のレニン阻害剤治療がACE阻害剤に及ばず〜併用の上乗せ効果も示せず Biotoday 2016-04-05
無作為化試験(ATMOSPHERE試験)の結果、心不全患者のACE阻害剤エナラプリル治療にレニン阻害剤アリスキレン(Aliskiren)を追加しても有害心血管転帰は減らず、アリスキレンがエナラプリルに劣らないことも示されませんでした。エナラプリル治療へのレニン阻害剤追加の効果は認められず、ACE阻害剤の代わりにレニン阻害剤を使うこともよろしくないと著者は言っています。

Aliskiren, Enalapril, or Aliskiren and Enalapril in Heart Failure. NEJM. April 4, 2016DOI: 10.1056/NEJMoa1514859

やらずぶったくり
米国でのインスリンの値段が10年間でおよそ3倍に上昇 Biotoday 2016/4/7
米国でのインスリンの価格は2002年から2013年におよそ3倍に上昇しました。患者1人あたりのインスリンへの出費は2002年には231ドルだったのが2013年には736ドルに増え、インスリン1mLあたりの値段は同期間に197%上昇しました。DPP-4阻害剤については1錠あたりの値段が2006年から2013年に34%上昇し、メトホルミンの1錠当たりの値段は2002年から2013年に93%低下しました。

Significant Increase Seen in Price of Insulin
Cost of Insulin Has Nearly Tripled

Expenditures and Prices of Antihyperglycemic Medications in the United States: 2002-2013. JAMA. 2016;315(13):1400-1402. doi:10.1001/jama.2016.0126

ピオグリタゾンの膀胱癌リスク再び
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ピオグリタゾンの膀胱癌リスクはロシグリタゾンや他の糖尿病薬より高い BioTodayニュースレター 2016年4月1日
英国の14万人超の糖尿病薬治療患者データを調べたところ、チアゾリジンジオン糖尿病薬pioglitazone(ピオグリタゾン)は同種薬ロシグリタゾン(rosiglitazone)や他の糖尿病薬に比べて膀胱癌リスクが高いことが示されました。ロシグリタゾンと膀胱癌リスク上昇の関連は示されませんでした。
Pioglitazone Again Tied to Increased Risk for Bladder Cancer
Selecting the right drug treatment for adults with type 2 diabetes. BMJ 2016;352:i1663
Pioglitazone use and risk of bladder cancer: population based cohort study. BMJ 2016;352:i1541

わが国だけではありません
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医師への8万回の”見せかけ”とされる講演会記録を米国がNovartisに要求/Bloomberg BioTodayニュースレター 2016年3月29日
Bloombergによると、Novartis社の心血管薬を処方してもらえるように医師に飲み食いを提供した8万回の偽の講演イベントの記録提供を米国が同社に要請しています。最高級レストランやスポーツバーでの薬のことは殆ど議論されない見せかけの教育プログラムを介してNovartisは医療提供者に不正な接待をしたとの内部告発が
なされています。
U.S. Seeks Records of 80,000 Novartis `Sham' Events for Doctors

PCSK9阻害剤の真の適応
LDLアフェレーシス療法を受けるほどの重症患者に限るってことでしょ.日本に何人いるんだか知らないけど.
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アリロクマブ、アフェレーシス患者のP3試験で良好な成績 (日刊薬業 2016年3月29日 )
 仏サノフィと米リジェネロンは28日までに、LDLアフェレーシス療法を受ける患者を対象としたPCSK9阻害剤アリロクマブ(一般名)の臨床第3相試験「ODYSSEY ESCAPE」で良好な成績が得られたと発表した。

 試験はヘテロ接合体家族性高コレステロール血症の中でも、重症患者を対象に実施。既存治療にアリロクマブを追加した群は、プラセボ追加群と比較してアフェレーシス療法の施行頻度が有意に75%減少し、主要評価項目を達成した。またアフェレーシス療法が不要となった患者の割合は、アリクロマブ群で63%、プラセボ群で0%だった。同試験に日本は参加していない。アリロクマブは日本で承認申請中。
和食のエビデンス
類似のデザインの先行研究(J Am Diet Assoc. 2009 Sep;109(9):1540-7)が日本から出ているとはいえ、心血管イベント抑制に対する和食の有効性に関する、これほど本格的なコホート研究は今までなかったのでは?興味深いデータはそこここにあるのですが、それは個々の読み手に任せるとして、私が一番たまげたのは、「食事バランスガイド」なる、一見小学生向けの栄養指導教材にしか見えないスコアリングシステムが、そのままこの論文のコホート層別因子として使われていて、得られた結果もその層別の妥当性を頑健に証明していることです。(上記先行研究も同じスコアリングシステムを使用)
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多様な食品をバランスよく食べるのを勧める方針と死亡率低下が関連〜日本人試験 Biotoday 2016/3/28
癌、脳卒中、心疾患、慢性肝疾患の経験がない45-75歳の日本人男女およそ8万人の15年間のプロスペクティブ追跡試験の結果、1日の食事品目の摂取バランスや量の目安Japanese Food Guide Spinning Topにより近い食事をしていることと死亡リスク低下が関連しました。Japanese Food Guide Spinning Topにより近い食事をしている人は死亡率が15%低いという結果が得られており、多様な食品をバランスよく食べることが日本人の長寿に寄与しているようだと著者は言っています。
Adherence to Japanese diet guidelines linked to longer life
Quality of diet and mortality among Japanese men and women: Japan Public Health Center based prospective study. BMJ 2016;352:i1209

INR測定装置の過誤
リバロキサバンの臨床試験の問題が目立たなくなる??
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ワーファリン服用患者のポイントオブケアINR測定装置の安全性をFDAが調査中 BioTodayニュースレター 2016年3月23日
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ワーファリン服用患者の家庭や診察時に使うINR(国際標準比)測定検査装置の安全性を米国FDAが調査しており、専門家会議が金曜日に開催されました。
装置の承認以来数千人の検査結果が不良であり、恐らく誤った検査結果によって2014-15年に18人が死亡したとFDAは言っています。
測定結果の誤りの懸念により2014年には2つの検査INRatioとINRatio2の販売が停止されています。

FDA Examines Safety of INR Point-of-Care Tests
FDA Weighs Danger Tied to Blood-Monitoring Devices

乳房生検病理診断のばらつき
乳房生検のDCISや異型の判断は病理解析者毎にしばしば異なる Biotoday 2016-03-22 - 米国の病理解析担当者115人の試験の結果、乳房生検試料の解釈のおよそ8%は基準見解(3人の専門家の一致見解)と異なっていました。
浸潤性乳癌との判断は基準見解とよく一致していたものの、異型(atypia)や非浸潤性乳管癌(DCIS)は特に基準見解と異なる割合が高く、例えばDCISとされた女性5人あたり1人は基準見解では異型または良性であり、異型とされた女性の半数の基準見解は異型のない良性でした。診断のばらつきを抑制する手立てが必要と著者は言っています。

Breast Biopsy Study Points to Need for a New Gold Standard / Physician's First Watch
Pathologists often disagree on breast biopsy results when diagnosing DCIS / EurekAlert

Variability in Pathologists' Interpretations of Individual Breast Biopsy Slides: A Population Perspective. Ann Intern Med. Published online 22 March 2016 doi:10.7326/M15-0964

慢性腰痛にヨガ・認知行動療法が有効
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瞑想や認知行動療法で慢性腰痛患者の痛みや体の不自由さが軽減  BioTodayニュースレター 2016年3月24日
無作為化試験の結果、瞑想(mindfulness meditation)とヨガの併用(瞑想に基づくストレス緩和療法;MBSR)や認知行動療法(CBT)はどちらも慢性腰痛患者の痛みや体の不自由さの軽減と関連しました。治療遵守率が良くないのに相当な効果が認められており、普及していないことは欠点であるが、もし利用できる環境なら患者にそれらの使用を勧めるべきとNEJM
 Journal Watchのエディターは言っています。

Use of Mindfulness-based Stress Reduction Results in Greater Improvement of Chronic Low Back Pain Compared to Usual Care
Two Mind-Body Interventions Tied to Improvements in Low Back Pain

Effect of Mindfulness-Based Stress Reduction vs Cognitive Behavioral Therapy or Usual Care on Back Pain and Functional Limitations in Adults With Chronic Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016;315(12):1240-1249. doi:10.1001/jama.2016.2323

ticagrelorアスピリンに勝てず
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AstraZenecaの抗血小板薬ticagrelorが脳卒中試験でアスピリンに勝てず BioTodayニュースレター 2016年3月24日
急性虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)患者の心血管イベント(脳卒中、心筋梗塞、死亡)予防効果を調べた世界33か国での大規模試験の結果、AstraZenecaの抗血小板薬BRILINTA/Brilique (ticagrelor)がアスピリンに勝てませんでした。それら心血管イベントはticagrelor群の方がより少なかったものの有意レベルには至りませんでした。
AstraZeneca heart drug fails in key stroke trial
AstraZeneca reports top-line results from the Brilinta SOCRATES trial in stroke

井伊雅子先生の一連の解説
医師誘発需要」か「患者の希望」か―高齢先進国ニッポンを考える
自分たちのやっていることが、どう見られて、評価されているのか、よく勉強しておきましょうね、お医者さん達。
手根管症候群のガイドライン
手根管症候群のガイドラインができた Biotoday 2016-03-09
なにはともあれ式に無節操にMRIや超音波検査をすることは控え、問診・身体検査・観察・神経伝導検査装置などによる特定の診断検査の結果を総合して診断することが推奨されています。治療には固定、ステロイド、ケトプロフェンゲルが推奨されており、磁気療法は否定されています。

Carpal Tunnel Syndrome Guidelines Published / Physician's First Watch

MANAGEMENT OF CARPAL TUNNEL SYNDROME EVIDENCE-BASED CLINICAL PRACTICE GUIDELINE. Published February 29, 2016

卵巣癌でもprecision medicineの動き
乳がんではマンマプリント、オンコタイプDXが有名ですが、卵巣癌でも同様の動きがあります。
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生物指標解析ツールに沿った薬物治療で進行卵巣癌患者の生存が9カ月延長 Biotoday 2016-03-15
バイオマーカー解析ツールCaris Molecular Intelligence(CMI)の結果に基づく薬物治療が施された進行(再発)卵巣上皮癌患者の生存はそうでない患者に比べて9カ月長いことを示した試験結果が論文報告されました。Caris Life Sciences社が提供しているCMIの結果に従えば一連の治療が1.2回少なくて済むという結果も得られており、CMIの有害治療回避効果も示されました。

Caris Life Sciences Announces Publication of Study Showing Nine-Month Overall Survival Increase in Advanced Ovarian Cancer Patients Using Caris Molecular Intelligence to Inform Treatment Selection / prnewswire

Impact of molecular profiling on overall survival of patients with advanced ovarian cancer. Oncotarget. Published: March 01, 2016

禁煙はキッパリ止めた方がいい
指定日にきっぱり止める群と、完全禁煙開始指定日の2週間前までに組み入れ前の75%までに喫煙量を減らす群を比較したRCT。ニコチン補充療法などの他の治療モダリティは二群間で同様。主要評価項目は4週間後の禁煙維持率で、キッパリ群49.0% (95% CI, 43.8% to 54.2%) に対してゆっくり群 39.2% (95% CI, 34.0% to 44.4%)、相対リスクは0.80 (95% CI, 0.66 to 0.93)、副次評価項目である、8週間の禁煙維持率は、キッパリ群36.6% ゆっくり群 29.2%  (RR, 0.80, 95% CI, 0.63 to 0.95)、6ヶ月後では キッパリ群22.0% に対しゆっくり群 15.5% (RR, 0.71; 95% CI, 0.46 to 0.91)となって、いずれの時点でもキッパリ群における禁煙維持率が有意に高く、ゆっくり群の非劣性は示せなかった。
Abrupt smoking cessation yields better quit rates than gradual approach, study finds

N95マスクは手術用マスクを上回らず
N95マスク(N95 Respirator)と手術用マスクの医療従事者の感染予防効果を比較している6試験をメタ解析したところ、N95マスク(N95 Respirator)が確かに勝ることは示されませんでした。 実験環境ではN95マスクの優越性が示唆されているが、いつもの臨床環境でN95マスクが手術マスクより優れているかどうかはデータが不十分で明確に判断できないと著者は言っています。

N95 Respirators Might Not Be Better Than Surgical Masks in Clinical Settings / Physician's First Watch

Effectiveness of N95 respirators versus surgical masks in protecting health care workers from acute respiratory infection: a systematic review and meta-analysis. CMAJ 2016. DOI:10.1503 /cmaj.150835

医療の国際数量比較
医療の国際数量比較−日本の医療は世界一か?  ニッセイ基礎研究所 保険研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   篠原 拓也
一瞥した感想:一般市民にも読みやすく簡単にまとめてあるのですが、入院日数と病床数を論じるときに、特に日本の場合、精神科病床の影響について論じてもらいたかったですね。

検診すればいいってもんじゃない

幼い子全員の自閉症検診の益害バランスは裏付け不十分で判断不可能
/米国 Biotoday 2016-02-17
親も医師も自閉症スペクトラム障害(ASD)の心配をしていない無症状の生後18-30か月の小児のASD検診の益害バランスは裏付けが不十分で判断できないと米国USPSTFが判断しました。 幼い子の自閉症検診の益害データが米国USPSTFに科学的に検討されたのは今回が初めてです。

USPSTF: Not Enough Evidence to Recommend Screening All Young Kids for Autism / Physician's First Watch
Screening for Autism Spectrum Disorder in Young Children: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement. JAMA. 2016;315(7):691-696. doi:10.1001/jama.2016.0018.

「降圧を超えた効果」というデマ
「誇大広告」はノバルティスだけじゃなかったってこと。
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糖尿病患者のRAS阻害剤治療は他の降圧剤に勝らず〜どの降圧剤も使える BioTodayニュースレター 2016年2月19日
20年前の無作為化試験結果に主に基づいて糖尿病患者にまずRAS(レニン-アンジオテンシン系)阻害剤治療を施すことが種々のガイドラインで推奨されていますが、無作為化試験をメタ解析したところ、糖尿病患者のRAS阻害剤治療の心血管/
腎臓イベント(死亡、心血管死、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心不全、血行再建、末期腎疾患)リスク抑制は他の降圧薬治療を上回りませんでした。

腎疾患を有さない糖尿病患者に降圧薬はどれでも使えるとするEuropean Society of Cardiology/European Society of HypertensionとJoint National Committee on Prevention, Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Pressureのガイドラインを今回の結果は支持しています。

Diabetes mellitus as a compelling indication for use of renin angiotensin system blockers: systematic review and meta-analysis of randomized trials. BMJ 2016;352:i438

DPP-4阻害薬による心不全リスク
DPP-4阻害薬で特定の糖尿病患者の心不全入院リスクが少し高まりうる Biotoday 2016-02-19 -
メタ解析の結果、2型糖尿病患者の心不全リスクへのDPP-4阻害剤の影響は明確ではありませんでしたが、心血管疾患(CVD)を合併する2型糖尿病患者や血管疾患リスク因子を複数有する2型糖尿病患者の心不全入院リスクがDPP-4阻害剤使用で少し高まりうると示唆されました。

そのような入院リスク上昇は、CVD合併患者の糖尿病薬を選ぶ上での検討事項の一つとなるだろうと著者は言っています。

Studies Offer Mixed Safety Data on Newer Diabetes Drugs
/ Physician's First Watch

Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and risk of heart failure in type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis of randomised and observational studies. BMJ 2016;352:i610

エビデンスよりも世間体
医師の診療行動変容を起こす動機付け因子には様々なものがあります。下記の事例を見ると、世間体はエビデンスよりも強力な動機付けになるようですが、この「世間体」が何によって構成されるかは、非常に面白い問題です。
例えば、「風邪にはすぐに点滴、抗菌薬」といった診療行動が、医師のpeerばかりでなく、地域住民からどう評価されるか
という問題は、政治家の質はその政治家を評価する市民の民度に依存する という問題に通じるものがあります。
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抗生剤処方が他に比べて多いことを知らせる通知でその使用が減少 Biotoday 2016/2/28

イングランドでの無作為化試験の結果、抗生剤処方率が上位20%の一般診療にそのことを知らせる通知を出したら抗生剤処方が減少しました。世間体を意識させる通知で抗生剤処方の全国的な大幅減少を安く導きうると著者は言っています。

Antibiotic stewardship: prescribing social norms. Lancet. Published
Online: 18 February 2016
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)00007-6/fulltext
Provision of social norm feedback to high prescribers of antibiotics
in general practice: a pragmatic national randomised controlled trial.
Lancet. Published Online: 18 February 2016
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(16)00215-4/fulltext
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さよならゼチア2
絶対リスク減少2.0%、つまりNNTが50だと承認できないということになれば、承認整理になる「ブロックバスター」は山ほど出てくるんじゃないかと思うわけですが、それ以前に、糖尿病治療薬はメトホルミン以外全滅ということになります。
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エゼチミブ,再発予防への適応拡大ならず Medical Tribune 2016.02.17
 Merckは2月15日,米食品医薬品局(FDA)による脂質異常症治療薬エゼチミブ(商品名ゼチーア)の心血管疾患再発予防の適応拡大の申請が見送ら れたと発表した。昨年(2015年)に発表されたIMPROVE-IT(NEngl J Med 2015; 372:2387-2397)で,スタチンの同薬追加群の有意な心血管イベント減少が確認されていたことを受け,適応拡大を申請していた。
諮問委員会で反対が賛成上回る
 IMPROVE-ITは,スタチンへの非スタチン系薬(エゼチミブ)追加による心血管イベント再発予防効果を初めて示した試験として注目を集めた。 一 方,昨年12月に開かれた同薬の適応拡大に関するFDAの内分泌・代謝用薬諮問委員会の審議では,反対10票と賛成の5票を上回る結果だった。同試験の主 要評価項目とされた,エゼチミブ追加群のスタチン単独群に対する主要心血管イベントの絶対リスク減少が2.0%との成績の臨床的意義が焦点となったよう だ。 同社はFDAからの通知を検討した上で今後の方針を決定していくと述べている。
さよならゼチア
エゼチミブがLDLコレステロールを下げる効能効果でFDAによって承認されたのは、2002年である。それ以後はもちろん、それ以前でも、心血管イベントリスクを下げる試験はいくらでもできたはずだ。それを特許切れまで先送りした挙げ句、さらにVytorinの後発品が承認されるに至ってようやく申請を出すなんて、そんな虫のいい話があるか! って怒る元気が、まだFDAには残っていたってこと??
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Merck コレステロール薬の心血管リスク低下効能がFDAに承認されず Biotoday 2016年2月15日
Merck & Coは、冠動脈心疾患患者の心血管イベントリスクを下げるのにZetia(ezetimibe)やVytorin(エゼチミブ/シンバスタチン)を使うことが米国FDAに承認されず、回答(complete response letter)を得たと発表しました。回答の内容をレビューして次にどうするかを決めると同社は言っています。
Merck Receives Complete Response Letter from the U.S. FDA for ZETIA? (ezetimibe) and VYTORIN? (ezetimibe and simvastatin)
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参考→NEJMのゾンビ論文

FDA前長官訴えられる
タイトルだけ見ると大変なスキャンダルのようだが、Levaquinは何のことはない、レボフロキサシンであることそして、ニュースサイトには下記のように、随分と商売熱心な弁護士さんが起こした訴訟であることを踏まえると、途端に興味が失われるのでありました。日本ではマスメディアがやることを、太平洋の向こう側では弁護士がやっているだけのようです。
Klayman has a reputation for controversial hardball tactics. The Washington Post's David Montgomery in 2014 described him as the "lawyer who launched hundreds of lawsuits against federal agencies, White House officials, Cabinet secretaries, judges, journalists, former colleagues, foreign governments, dictators, presidents, this newspaper, and others who offended his hair-trigger sense of right and wrong.

J&Jの抗生剤有害事象情報封じに加担したとしてFDA前長官が訴えられた Biotoday 2016-02-10
医療業界の ニュースサイトによると、米国FDAの前長官Margaret Hamburg氏はJohnson & Johnson(J&J)の抗生剤Levaquinの有害作用の情報封じに加担し、そのおかげで彼女の夫が率いるヘッジファンド Renaissance TechnologiesはJ&J社の株で大儲けしたとの訴訟が起こされました。Levaquin使用で体を害した6人がこの訴訟を起こしまし た。
Former FDA Commissioner, J&J Targeted in Federal Lawsuit / Qmed

MRI病変のないMS?
”85%はMRI病変を有していませんでした”って,あんたねえ,それほんとにMSだと思ってるの?とにかく数を稼ぎたいから、糞も味噌も一緒くたにした組み入れ基準にしたんじゃないの?そんなことやっているから,有効性が出せないんじゃないの?
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一次性進行型多発性硬化症にS1PR調節薬fingolimodが効かず/Ph3試験  Biotoday 2016/2/10
未だに承認治療がない一次性進行型多発性硬化症(PPMS)にS1P受容体(S1PR)モジュレーターfingolimod(フィンゴリモド) が残念ながら効かなかった第3相試験(INFORMS試験)結果が論文報告されました。

コメンテーターによると、抗CD20抗体rituximabのプラセボ対照試験のサブグループ解析の結果、51歳以下のより若い患者やガドリニウム増強MRI病変を有する患者の同剤治療と身体障害進行遅延の関連が示されています。また、別の抗CD20抗体ocrelizumab(オクレリズマブ)のPPMS患者身体障害スコア(EDSS)改善効果がプラセボ対照試験(ORATORIO試験)で確認されていますが、患者の平均年齢は44歳、およそ28%の患者は試験開始時にMRI病変を有していました。

一方、今回のINFORMS試験の被験者の40%超は50歳を超えており、85%はMRI病変を有していませんでした。よってS1PRモジュレーターの特定の患者群への効果を調べるのにサブ解析が役立ちそうとコメンテーターは言っています。

Primary progressive multiple sclerosis-why we are failing. Lancet. Published Online: 27 January 2016
Oral fingolimod in primary progressive multiple sclerosis (INFORMS): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. Published Online: 27 January 2016

当たり前のことを検証する意義
抗生剤処方に際してその妥当性を電子カルテに記入するとか,不適切な抗生剤処方の程度のランク付けを勉強しておくとか,どちらも医師として当たり前のこと.当たり前という意味の中には,その当たり前のことが,きっと抗菌薬の乱用を抑制するという,有効性に対する確信が含まれているわけだけど,それをわざわざ介入試験で証明したわけだ.もちろんいい仕事なんだけど,そういう仕事がJAMAに出ちゃうってことは,如何ににその当たり前のことが実際に実行されていないかっていう現実のエビデンスでもあるんだよね.
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医師の良心や自尊心に働きかける行動介入で不適切な抗生剤処方が減少 Biotoday 2016/2/10
ボストンとロサンゼルスのおよそ50のプライマリーケアが参加した無作為化試験の結果、医師の良心や自尊心に働きかける2つの行動介入の不適切な抗生剤処方抑制効果が示されました。その1つは抗生剤処方に際してその妥当性を電子カルテに記入させる介入で、もう1つは不適切な抗生剤処方の程度のランク付けが毎月通知される介入です。
これらの介入によって急性気道感染症への不適切な抗生剤処方率が介入なしの場合に比べてより低下しました。医師のプライドや成績に着目した今回のような介入は有望であり、電子カルテを備えた診療所なら簡単に実行できるとNEJM Journal Watch General Medicineのコメンテーターは言っています。

Interventions Reduce Inappropriate Antibiotic Prescribing in Primary Care Practices
Study Compares Effectiveness of Behavioral Interventions to Reduce Inappropriate Antibiotic Prescribing

Effect of Behavioral Interventions on Inappropriate Antibiotic Prescribing Among Primary Care Practices: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2016;315(6):562-570. doi:10.1001/jama.2016.0275
Improving Outpatient Antibiotic Prescribing; Another Nudge in the RightDirection. JAMA. 2016;315(6):558-559. doi:10.1001/jama.2016.0430

INR測定機器の欠陥でRivaroxabanが有利との結果に?

これからどうなるんでしょうね。

Earlier last year, The BMJ found that the point of care device used to measure international normalised ratio (INR) in patients taking warfarin in ROCKET-AF had been recalled in December 2014.

An FDA class I recall notice (the most serious kind) said that certain INR devices could deliver results that were “clinically significantly lower” than a laboratory method. It added that Alere―the device manufacturer―had received 18 924 reports of malfunctions, including 14 serious injuries. The company confirmed to The BMJ that the fault went back to 2002, before the ROCKET-AF trial started.

とりあえずROCKET AF Executive Committeeが「問題ない」との再解析結果を出したわけですが(下記記事)、FDA reviewerのletterがNEJMに出るのはこれからのようです。
In a letter submitted to the NEJM (as yet unpublished) and shown to The BMJ, former FDA cardiovascular and renal drug reviewer, Thomas Marcinicak, says: “The care for the warfarin control arm patients [in ROCKET-AF] appears to have been compromised.”
(以上BMJの記事から)

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試験での欠陥機器使用がRivaroxabanをより安全に仕立てあげた恐れあり Biotoday 2016/2/5
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経口抗凝固薬Rivaroxabanの承認を導いたROCKET AF試験で使われた欠陥機器はワーファリンの出血リスクをより高めてRivaroxabanの安全性をワーファリンに比べて相対的により良くしてしまった恐れがあるとの見解がBMJに掲載されました。一方試験の著者は、INR測定に使われた欠陥機器の臨床的に有意な影響は認められなかったとの再解析結果をNEJM誌に発表しています。

Rivaroxaban Trial Threatened by Possibly Flawed INR Measurements
Rivaroxaban: can we trust the evidence?. BMJ 2016;352:i575
Point-of-Care Warfarin Monitoring in the ROCKET AF Trial. NEJM. February 3, 2016DOI: 10.1056/NEJMc1515842

効かない風邪薬,それも一番売れてるやつが
臨床試験なんかしなければよかったのですが.そんなもん,なんでやっちゃったんだか・・・それが,confidentialだったのが,「話題の」親会社のValeantの裁判のとばっちりで,公開しなくちゃならない羽目になって,これがまた,凄いデータで.→裁判に証拠として提出されたコピー
この人気の風邪薬,以前から怪しまれてはいたようなのですが.→What FX? CBC’s Marketplace looks at Cold-fX(4年前の記事です)
ちなみに,成分はAmerican ginseng (Panax quinquefolium) アメリカ朝鮮人参?のようです.
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人気の風邪薬の効果を示せなかった試験結果が長らく隠されていた Biotoday 2016/02/03
Valeant社に対する集団訴訟で公にされた資料に基づくカナダのニュースサイトの報道によると、カナダで最もよく使われている風邪薬Cold-FXの効果がプラセボを上回っていない試験結果が公表されないままとなっていました。
Class-action lawsuit reveals company sat on 2004 study indicating Cold-FX does nothing to fight colds

抗菌薬は日常診療通り、5日〜10日間投与しただけなのに、これだけ長期間にわたって腸内細菌叢の変化が続くというのは驚きです。
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抗菌薬投与の腸内細菌叢に対する長期的影響 Biotoday 2015-11-17
抗菌薬が1年にもおよぶ腸内細菌多様性低下をもたらしうることが欧州でのプラセボ対照無作為化試験で示されました。 クリンダマイシン経口服用での糞中微生物多様性低下は最大4カ月、シプロフロキサシンでは最大12か月まで続きました。特に、腸の酸化ストレス・発癌・炎症の低下と関連する短鎖脂肪酸・酪酸(butyrate)生成細菌が有意に減少しました。また、抗菌薬耐性と関連する遺伝子も増えました。
Certain Antibiotics Could Affect Gut Microbiome for 1 Year / Physician's First Watch
Same Exposure but Two Radically Different Responses to Antibiotics: Resilience of the Salivary Microbiome versus Long-Term Microbial Shifts in Feces. mBio vol. 6 no. 6 e01693-15
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上記と関連して、下記のような話題を思い浮かべました。
短期間の抗菌薬投与が長期にわたって抗菌薬の標的臓器以外で重大リスクを増加させる問題です。
アジスロマイシン・レボフロキサシンにより、不整脈・死亡リスク増加

腸内細菌叢の変化にも良い・悪いの別があって、悪いのは長続きしないのでしょうかねえ。
Long-term Effects of Fecal Transplants Questioned

子供だましの承認
当然FDAは承認するでしょう.だって,自分がやれって言ったんだから.それをどう受け取るか,薬の販売代理業である医師のリテラシーが問われているってことなのです.
参考→歴史に残る子供だまし
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Jardianceの2型糖尿病患者心血管転帰リスク抑制データをFDAが受理 Biotoday 2016/1/27
2016年1月25日、Eli Lillyは、心血管(CV)有害転帰リスクが高い2型糖尿病患者のCVイベントリスクがSGLT2阻害剤薬Jardiance(empagliflozin)で下がることを証明した試験(EMPA-REG OUTCOME試験)結果の米国FDA承認申請が受理されたと発表しました。同剤は2型糖尿病成人の血糖制御を改善する薬としてFDAに承認されています。

U.S. FDA Accepts Filing of Cardiovascular Outcomes Data for Jardiance (empagliflozin)
http://www.prnewswire.com/news-releases/us-fda-accepts-filing-of-cardiovascular-outcomes-data-for-jardiance-empagliflozin-300208820.html

プリオン遺伝子変異の発症リスク
この話題がなぜここに出てくるかは→こちら
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真に病原性のプリオン遺伝子変異の発症リスクは0.1%未満〜100% Biotoday 2016-01-23 -
プリオン病患者16,025人や消費者ゲノム解析企業23andMeの顧客531,575人のデータを含む大規模集団解析の結果、病原性が指摘されているプリオン蛋白質遺伝子PRNPミスセンス変異の幾つかは良性であり、他は確かに病原性ではあるもののそれらの変異による発病リスク(penetrance;浸透率)は0.1%未満から100%まで幅広いことが示されました。 また、PRNP欠損変異の影響はその位置によって異なり、健康な高齢者が機能欠損変異を有することもあり、PRNP機能が低下しても大事に至らず事なきを得うることが示されました。このことはプリオン蛋白質発現を抑制する治療の安全性を支持しています。

Quantifying prion disease penetrance using large population control cohorts. Science Translational Medicine 20 Jan 2016: Vol. 8, Issue 322, pp. 322ra9

医療に過度な期待を持たない職業は?
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終末期医療4報〜医師が職業の患者の場合/良し悪しを決める要素等 Biotoday 2016/1/21

死や終末期というテーマのもとで4つの試験結果が今週のJAMAに掲載されています。

7つの先進国(ベルギー、カナダ、イングランド、ドイツ、オランダ、ノルウェー、米国)での高齢の癌患者の死に方を比較した試験の結果、米国は病院での死
亡率が最も低くて入院日数が最も少ないものの集中治療室(ICU)治療率が他国より2倍以上高いことが示されました。

米国での2つの試験の結果、医師が職業の患者は死を間近にしての治療の強度や病院で死ぬ傾向が一般人口に比べて低いことが示されました。医師以外の医療職患者や医師と同等の学歴の患者と比べた場合には差がありませんでした。

同じく米国での試験の結果、進行癌で死んだ高齢患者の家族の終末期医療の評価が良いことと院外での死亡・死ぬ前30日間のICU回避・より早期のホスピス入室が関連しました。

Physicians Receive Less Aggressive End-Of-Life Care, Less Likely to Die in a Hospital
Findings Suggest Earlier Hospice Enrollment, Avoidance of ICU Admissions, Hospital Deaths Would Improve Quality of End-Of-Life Care
Study Compares Health Care Usage, Costs in Developed Countries for Patients Dying With Cancer

Association of Occupation as a Physician With Likelihood of Dying in a Hospital. JAMA. 2016;315(3):301-303. doi:10.1001/jama.2015.16976.
End-of-Life Care Intensity for Physicians, Lawyers, and the General Population. JAMA. 2016;315(3):303-305. doi:10.1001/jama.2015.17408.
Comparison of Site of Death, Health Care Utilization, and Hospital Expenditures for Patients Dying With Cancer in 7 Developed Countries. JAMA. 2016;315(3):272-283. doi:10.1001/jama.2015.18603.

クラリスロマイシンと心血管有害事象
クラリスロマイシンと短期の心血管有害事象リスク上昇が関連 Biotoday 2016/1/18
香港の18歳以上の成人の観察試験の結果、クラリスロマイシン(clarithromycin)使用はアモキシシリン使用に比べて短期間(使用開始から14日間)の心筋梗塞・不整脈・心臓死リスク上昇と関連しましたが、長期リスク上昇は伴いませんでした。クラリスロマイシンの処方は今回の試験で示されたような短期リスクを警戒して処方すべきであり、心筋梗塞や心臓死リスクが高い75歳以上、高血圧、糖尿病の患者への抗生剤の選択は注意が必要と著者は言っています。

Cardiovascular outcomes associated with use of clarithromycin: population based study. BMJ 2016;352:h6926

ヘタレ新薬エントレストEntrestoに対する批判
これまで何度か取り上げている、毎度お騒がせ、「噂のブロックバスター」エントレストEntresto(LCZ696)だが、提灯持ちばかりではなく、米国でも、批判的な向きはあるということを紹介しておく。
Controversy over Sacubitril–Valsartan in heart failure : A real breakthrough or just a small increment ?

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