食のリスクを問いなおす筑摩書房から新書として2002年8月に出ました.値段は税別で600円.パニックは収まっても食べ物をネタにした勧善懲悪の水戸黄門的ワイドショーの人気は衰えるところを知りません.ネットに縁のない方々にも,問題の本質がどこにあるかを知ってもらいたいと思い,本を出しました.Kindle版を始めとした電子書籍で手に入ります。紙媒体では古本以外には手に入りません。食品リスクリテラシーから科学リテラシー、そしてリスクリテラシー全般を考えるのに好適な書と自負しています。

(まえがきより)
お客様は神様ではなく、かぐや姫だった。生産・流通・小売業者は、かぐや姫をお嫁さんにしたいばっかりに、絶対燃えない火ネズミの皮袋やツバメの子安貝のように、現実には得られないゼロリスクという名の宝物を捜し求め、ある者は遭難し、ある者は転落した。蓬莱山の宝の木を依頼された車持の皇子の場合は、依頼の品をかぐや姫に得意気に見せていたところ、それを作った職人が代金請求で押しかけてきたので、その場で偽物とばれてしまった。食肉偽装事件である。・・・・食の安全というが,BSEを生んだグローバリゼーションの流れの中で,食べ物の全ての身元を明らかにすること自体が不可能だ.地球上には麻薬や武器弾薬を商売にしている連中がいる.そんな連中がうようよしている国からも,日本は食べ物を輸入しなければならない.その食べ物に,正しい表示をしろといっても,おとぎ話だ.ごまかそうとする奴,悪い奴はどこにでもいる.決していなくらない.そういう現実から目をそらして,ゼロリスクを求めるのなら,ないものねだりのかぐや姫と揶揄されても仕方あるまい.

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