遅れてやってきた主役
成人の結核性髄膜炎でもデキサメサゾンは有効
抗酸化サプリメントここでも敗北
DDTかマラリアか
診療報酬による誘導政策
湿布は2週間まで
みのもんたの類にはきちんと反論
脂肪が減っただけじゃだめ
エリスロマイシンの薬物相互作用:カルシウム拮抗薬に注意
Lumiracoxib:ようやくまともなCOX2阻害薬?
前庭神経炎の原因としての単純ヘルペスウイルスの可能性
HRTによる痴呆および軽度認識障害のリスク増加
リツキシマブもRAに有効
セロトニン仮説??
再発性の破傷風
蜘蛛咬傷の神話
屋上屋で雨漏りが;アスピリンとクロピドグレルを重ねても
インフリキシマブ投与下では蚊にも刺されてはいけない?
臓器移植で狂犬病感染
スタチンで脳梗塞が25%減少したのだが
DSMB:独立データモニタリング委員会
学生に教員をやらせれば一石二鳥
肺がん検診に王道なし
コカイン乱用とc-ANCA陽性
確かにCTは多すぎるのだが
散々なHRT:大腸癌でも不利な結果に
ビタミンB2とB6欠乏による皮疹
ベッドの硬さでランセット
劇症型髄膜炎菌敗血症
米帝侮り難し
医者バブル時代の終焉
配合剤の嵐
99年までの話題,2000
年の話題 2001年の話題,2002
年の話題,2003年の話題
遅れてやってきた主役
Emerson SU and Purcell RH. Running Like Water-The Omnipresence of
Hepatitis E. NEJM 2004;351;2367-8
5番目の肝炎ウイルスなんて,もう,出番なんかほとんどないだろうとみんな思っていたのだが,そうではなかった.それどころか,表題のように,あちこちに
いるありふれた肝炎ウイルスであることがわかった.では,今までどこに隠れていたのか?一番初めに名乗りをあげたA型肝炎ウイルスの影に隠れていた.
水系汚染の媒介,流行性,潜伏期間,比較的良好な予後と,A型とE型は臨床的に非常に区別しにくい.だから,E型がその正体を現すまで,長い間,E型肝炎
も,すべてA型の仕業と思われてきた.しかし,熱帯から亜熱帯を中心として,A型肝炎ウイルス抗体価が決して上昇しない謎の流行性肝炎あった.実は十字軍
の時代にまでさかのぼれるそうな.
E型肝炎ウイルスが同定され,診断法が普及して,その疫学が明らかになりつつある.流行地は熱帯から亜熱帯だが,最近話題になっているように,日本でも,
ブタ,イノシシ,シカといった生焼けの肉が原因と思われる散発的な集団感染が起こっている.日本を含む先進各国では,流行がごく希な割には全年齢平均での
抗体価保有率が5%と高いため,不顕性感染があるのではないかと思われている.
心臓血管死の防止で,一敗地にまみれた抗酸化サプリメントだが,またしても敗北を喫した.
コクラン共同計画にもとづき、抗酸化サプリメント(ベータカロチン、ビタミンA、C、Eとセレン)が消化器系ガン(食道、胃、大腸、膵臓、肝臓)の発症と
死亡率を低下させるかどうかについて、14の無作為化試験データ(n=170,
525)をもとに検討した。今回の調査では抗酸化サプリメントが消化器系ガン予防に有効であるという証拠は得られず、むしろ全体的な死亡率を上げるようで
あった。
2005/5/10追記:JAMAにも負けたとの報告
JAMA 293(11)1338-1347/(2005.3.16) 心不全リスク上昇 長期Vitamin
E補充が心血管イベントおよびがんに及ぼす影響:無作為二重盲検プラシーボ・コントロール試験(HOPEおよびHOPE?TOO
Trial)(心血管疾患または糖尿病患者において長期vitamin
E補充は,がんまたは心血管イベントを予防せず,心不全リスクが上昇する可能性がある。関連したBrownらの論説が同誌同号p.1387に掲載されてい
る。
メタアナリシスでも負け
【Ann Intern Med. 2005 Jan 4;142(1):37-46.】
Meta-analysis: high-dosage vitamin E supplementation may increase
all-cause mortality.
Miller ER 3rd, Pastor-Barriuso R, Dalal D, Riemersma RA, Appel LJ,
Guallar E.
:高用量のビタミンE補助療法が死亡率を上昇させる可能性
ビタミンE補助療法と全死亡率の用量反応関係のメタアナリシスを無作為化比較試験のデータを用いて行った。臨床試験は全部で19あり,参加者は
135,967人であった。9試験ではビタミンE単独,残りの10試験では他のビタミンまたはミネラルとの併用であった。ビタミンEの用量は6.5?
2,000 IU/d (中央値 400 IU/d)であった。
高用量ビタミンE (≧400
IU/d)を投与した11試験中9試験では,ビタミンEとコントロールの比較において全原因による死亡率のリスク増加(リスク差>
0)を示した。
高用量ビタミンEにおける累積した全原因による死亡のリスク差は39人/10,000人〔95%CI[3-74人/ 10 000人] ; P =
0.035〕であった。低用量ビタミンEにおけるリスク差は,-16人/10,000人〔95%CI[-41-10人/ 10,000人] ; P
> 0.2〕
であった。
用量反応解析では,ビタミンEが150 IU/d以上の用量でリスク増加があり,ビタミンEの用量と全原因による死亡率に統計的に有意な関連性を示した。高用量ビタミンE(≧400 IU/d)試験は規模も小さくしかも慢性疾患の患者に対して行われている。健康な成人に対して,この知見を一般化できる可能性は不明である。リスク増加の 閾値の正確な推定は難しいが,高用量ビタミンE(≧400 IU/d)療法は全原因による死亡率を増加させる可能性があるため,避けるべきであるとしている。
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DDTかマラリアか
Clare Kapp. World Report: Hazard or help? Lancet 2004;364:1113.
80年代に,マダガスカルでは,マラリアで4万人もの死者が出たが,DDTのおかげで激減した.1958年には15万人が死んだエチオピアでも,マラリア
抑制にはDDTに大幅に頼っている.ついては,先進国の皆様,DDTの引き続きの使用を許可されたしという請願がマラリアに苦しむ各国から出ている.飽食
に明け暮れながら,やれ食品添加物がどうの,環境ホルモンが問題だのと喚いている先進国の皆様におかれましては,彼らの切なる願いをどう考えるのだろう
か.
診療報酬による誘導政策は日本では頻繁に行われているが,英国で行うとなると,"an initiative to improve the quality of primary care that is the boldest such proposal attempted anywhere in the world"なんて間抜けなコメントが出ている.”行政指導”がそのまま英語になっているのに,診療報酬改訂は英語になっていないのは,大本営の宣伝不足 だね.
こういう間抜けなコメントが出てこないようにするには,わが大本営による診療報酬よる誘導政策が如何に効果を上げているか,世界に知らせなくてはい けない.誰かNEJMにcorrespodenceを書いてね.
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湿布は2週間まで
Lin J, Zhang W, Jones A, Doherty M. Efficacy of topical non-steroidal anti-inflammatory drugs in the treatment of osteoarthritis: meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2004 Aug 7;329(7461):324.
変形性膝関節炎に対するNSAIDs外用薬の効果の検証、はじめの2週間だけそれ以降は有効性が証明されなかった。
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脂肪が減っただけじゃだめ
脂肪吸引術のように、単に脂肪を取り除くようなことをやって外見が変わっても、肥満に伴うリスクが減るわけではないという、容易に予想される結果を 述べています。
S. Klein and others. Absence of an effect of liposuction on insulin action and risk factors for coronary heart disease.N Engl J Med. 2004 Jun 17;350(25):2549-57.
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エリスロマイシンの薬物相互作用:カルシウム拮抗薬に注
意
W.A. Ray and others. Oral Erythromycin and the Risk of Sudden Death from Cardiac CausesN Engl J Med 2004; 351 : 1089 - 96
追跡調査 1,249,943 人‐年を含むコホート集団と,心原性突然死が確認された 1,476 例について検討した.この研究で使用された CYP3A 阻害薬は,ニトロイミダゾール系抗真菌薬,ジルチアゼム,ベラパミル,トロレアンドマイシンで,各薬物により,CYP3A 基質に対する時間‐濃度曲線下面積は最低 2 倍になる.また,交絡の可能性を評価する目的で,同様の適応症で心臓の再分極を延長させない抗菌薬アモキシシリンと,これまでのエリスロマイシン使用歴に ついても検討した.心原性突然死の補正発生率は,CYP3A 阻害薬とエリスロマイシンを併用していた患者では,CYP3A 阻害薬もいずれの調査対象抗菌薬も使用したことのない患者の 5 倍であった(発生率比 5.35;95%信頼区間 1.72-16.64;P=0.004).一方,アモキシシリンと CYP3A 阻害薬を併用していた患者,または調査対象抗菌薬のいずれかを現在使用し,過去に CYP3A 阻害薬を使用したことのある患者では,突然死のリスクは上昇しなかった.
日常臨床でしばしば問題になる薬剤相互作用だが,この問題に関する研究のほとんどは,個々の症例報告か臨床薬理学的研究のいずれかであって,これほ ど大規模の集団でのコホート研究は他に類がないだろう.ところで,エリスロマイシンの添付文書では,ジルチアゼム,ベラパミル,ヘルベッサーは併用禁忌に なっていないことに注意.
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Lumiracoxib:ようやくまともな
COX2阻害薬?
鳴り物入りで当初登場したCOX2阻害薬だが,看板に偽りありの品ばかりで,期待はず
れが続いている.COX-2選択性阻害薬は,潰瘍性の合併症が非選択性NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory
drugs)よりも理論的には少なくなるはずだが,その実証データは限定されており,逆にCOX-2阻害薬で心血管系事象のリスクが増大する可能性が示さ
れている。そんな中で,Lumiracoxibは新しいタイプのCOX-2(シクロオキシゲナーゼ2)選択性阻害薬であり,同種阻害薬のうちでCOX-2
選択性が最も高く,また血中半減期が非常に短い。Lumiracoxibが心血管系事象リスクの悪化を伴わずに変形性関節症に有効であるという2件の報告
がTARGET(Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal Event
Trial)から出され,Lancetに掲載された。
ただし,この論文を読むときは,国際的に実施されたこの試験が,lumiracoxibを製造しているNovartis Pharma社から資金援助を受けていることを忘れないでもらいたい。
Schnitzer TJ and others. Comparison of lumiracoxib with naproxen and ibuprofen in the Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal Event Trial (TARGET), reduction in ulcer complications: randomised controlled trial. Lancet. 2004;364:665-74.
TARGET試験(Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal Event Trial)におけるnaproxen,ibuprofenとlumiracoxibの比較,潰瘍合併症の減少:無作為化比較試験
Farkouh ME and others. Comparison of lumiracoxib with naproxen and
ibuprofen in the Therapeutic Arthritis Research and Gastrointestinal
Event Trial (TARGET), cardiovascular outcomes: randomised controlled
trial. Lancet. 2004;364:675-84.
TARGET試験におけるnaproxen,ibuprofenとlumiracoxibの比較,心血管系アウトカム:無作為化比較試験
TARGETにおいては,過剰用量のlumiracoxibの胃腸および心血管系に対する安全性を2種類の被選択性NSAID,naproxenお
よびibuprofenと比較検討している。
50歳以上の変形性関節症患者18,325人を低用量aspirin使用の有無と年齢層の組み合わせによる6層に層別化した後,lumiracoxib
400mgを1日1回(n=9,156),naproxen 500mgを1日2回(n=4,754),ibuprofen
800mgを1日3回(n=4,415)のいずれかに無作為に割り付け,52週間にわたり投薬を行った。Ibuprofen,naproxenそれぞれを
対照とする同じ試験デザインの2件の下位試験として実施した。主要エンドポイントは,上部消化管の潰瘍性合併症(出血,穿孔,閉塞)に至るまでの期間の差
である。心血管系の転帰に関しては,Antiplatelet Trialists'
Collaborationのエンドポイントである心筋梗塞,脳卒中,心血管死を心血管系有害事象の主要測定項目とした。
Aspirinを使用しない患者群における潰瘍性合併症の1年間の累積発生率は,NSAID(64例)が1.09%〔95%CI[0.82?
1.36]〕,lumiracoxib(14例)が0.25%〔95%CI[0.12?0.39]〕であった〔ハザード比0.21[95%CI
0.12?0.37],P<0.0001〕。Lumiracoxibは,集団全体においても潰瘍性合併症が有意に減少したが〔ハザード比0.34
[95%CI 0.22?0.52],P<0.0001〕,aspirin使用患者群では有意でなかった〔ハザード比0.79 [95%CI
0.40?1.55],P=0.4876〕。集団全体で見ると,心血管系事象の差はNSAID群〔0.55%
(9,127人中50人)〕とlumiracoxib群〔0.65%(9,117人中59人)〕とは有意でなかった〔ハザード比1.14[95%CI
0.78?1.66],P=0.5074〕。
以上の結果を総合して,lumiracoxibによる潰瘍性合併症の発現はNSAIDの1/3?1/4で,しかも深刻な心血管系事象の発生率は増大
しない。このことから,骨関節症患者の治療法としてlumiracoxibは適切なものであると考えられると結論している。
TARGETの2件目の報告は心血管系事象の詳細に関するものである。この試験で対象となった変形性関節症患者群は,無症状の非致死性心筋梗塞,脳卒中,
心血管死の発生率が低く,治療群間で有意差がなく,aspirin使用量,年齢,性別,高い心血管系リスク,脳血管系の病歴で分析しても有意差がないこと
が示されている。
1年間の追跡期間においての主要エンドポイントである非致死性無症状心筋梗塞,脳卒中,心血管死の総発生率は,lumiracoxib群が
0.65%(59例)でNSAID群が0.55%(50例)であった〔ハザード比1.14[95%CI
0.78?1.66],P=0.5074〕。主要エンドポイントのうち有症状および無症状の心筋梗塞の発生率に特定すると,naproxen対照試験で
は,集団全体における発生率は,lumiracoxib群が0.38%(18例)で,対照群が0.21%(10例)であった。下位群内の比較では,低用量
aspirinを使用しない患者群〔ハザード比2.37[95%CI
0.74?7.55,P=0.1454〕,集団全体〔ハザード比1.77[95%CI
0.82?3.84],P=0.1471〕,aspirin使用患者群〔ハザード比1.36[95%CI
0.47?3.93],P=0.5658〕における両群間で有意差はなかった。Ibuprofen対照試験では,集団全体における発生率は,
lumiracoxib群が0.11%(5例)で,対照群が0.16%(7例)であった。下位群内比較では,低用量aspirinを使用しない患者群〔ハ
ザード比0.75[95%CI 0.20?2.79],P=0.6669〕,集団全体〔ハザード比0.66[95%CI
0.21?2.09],P=0.4833〕,aspirin使用患者群〔ハザード比0.47[95%CI
0.04?5.14],P=0.5328〕におけるlumiracoxibとibuprofenとの間で有意差はなかった。
以上の結果を総合して,lumiracoxibとibuprofenまたはnaproxenとの間では,aspirinの使用の有無にかかわらず,心筋梗
塞などの主要エンドポイントに差がないとの今回の所見から,心血管系のリスクが高かったり,低用量aspirinを使用していることの多い変形性関節症患
者に対しては,lumiracoxibが適切な治療法であると考えられると結論されている。
注:Lancet同号にはこれらの論文に対する批判的解説記事が掲載されており,TARGETでは全体としての心血管系事象の発生率が低いことの背 景として,重大な冠動脈疾患を有していたり,既往にあった患者を意図的に除外している点が指摘されている。また,肝毒性と心筋梗塞のリスクの上昇に関する 指摘がある。
結果は抗ウイルス薬の効果なし。その代わり、パルスではなく比較的少量のメチルプレドニゾロンが効果があった。主要評価項目は、12ヵ月後のカロ リックテストだから、観察期間も十分あるし、指標の客観性も保たれていて、デザインにも大きな問題はない。無作為化を受けた患者計 141 例のうち,38 例にプラセボ,35 例にメチルプレドニゾロン,33 例にバラシクロビル,35 例にメチルプレドニゾロン+バラシクロビルを投与した.症状発現時には前庭麻痺の重症度に群間差はなかった.12 ヵ月後の追跡時の末梢前庭機能改善の平均(±SD)は,プラセボ群で 39.6±28.1 パーセントポイント,メチルプレドニゾロン群で 62.4±16.9 パーセントポイント,バラシクロビル群で 36.0±26.7 パーセントポイント,メチルプレドニゾロン+バラシクロビル群で 59.2±24.1 パーセントポイントであった.メチルプレドニゾロンはday1-3に100mg, day4-6 80mgというように、3日間毎に20mg減らしていくという、投与方法で、パルスではなく、リスクが少ない量と期間になっている。これなら現実的であ る。やはり単純ヘルペスウイルス一つで説明できるほど,世の中は単純ではないということか.
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HRTによる痴呆および軽度認識障害のリスク増加
JAMA 291(24)2947?2958/(2004.6.23,30)
その昔,アルツハイマー病が女性に多いのは,更年期以降のエストロゲンの減少が一役買っているから,HRTで痴呆が減らせるのではないかと考えられたこと
があった.それも,本物の昔話になってしまったということか.
高令閉経後女性における無作為二重盲検プラシーボ・コントロール試験(Women's Health Initiative Memory Study)(CEE単独療法により痴呆および軽度認識障害の発生率は減少せず,痴呆および軽度認識障害のリスクが増加し,CEEと medroxyprogesterone acetateの併用療法も痴呆および軽度認識障害のリスクを増加させた。)(全体的認識機能スコア(3MSE)の低下)がみられ,ベースラインにおける 認識機能が低かった女性において,それがより顕著であった。)
セロトニンと言えば、うつ病のセロトニン仮説はセロトニン神経系の活動低下として説明されていますが、パニック障害や不安障害はセロトニンの一時的 な過活動だという理屈付けになっている。でも、どちらもSSRIが効く。それを説明するのに、うつ病の場合にはそのまま効いて、パニック障害や不安障害の 場合は、ダウンレギュレーション(過剰なセロトニンに対して、受容体が減少したり受容体以降の細胞内伝達系が抑制される現象)になって効く??ほんとか よ、全くいい加減なんだから。
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再発性の破傷風
M Lindley-Jones, D Lewis, J L Southgate. Recurrent tetanus. Lancet
2004;363:2048
症例は64歳女性.庭いじりの48時間後に牙関緊急,痙笑で発症.挿管を必要とした.彼女は17歳の時に破傷風の既往歴があり,自ら診断して救急外来に
やってきたという.そして33歳の時にブースターのトキソイドの注射も受けていた.その時の皮膚の局所反応が非常に強く,アレルギーがあるので,もうトキ
ソイドの注射を受けてはいけないといわれていた.しかし,今回の破傷風が回復してから,トキソイドを2回注射したが,軽い皮膚反応が起きただけだった.
この症例報告から,学ぶべきことは.
1.破傷風は再発する.(自然感染も,生涯の免疫を保証するものではない)
2.トキソイドの効果は年余に渡って続くものではない.
3.トキソイド注射に対する皮膚反応の強さは,破傷風に対する免疫の強さとは関係ない.
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屋上屋で雨漏りが;アスピリンとクロピドグレルを重ねても
Diener HC and others. Aspirin and clopidogrel compared with clopidogrel
alone after recent ischaemic stroke or transient ischaemic attack in
high-risk patients (MATCH): randomised, double-blind,
placebo-controlled trial. Lancet 2004;364:331-7
いわゆるMATCH trailである.アスピリンとクロピドグレル併用により,アスピリン単独よりも予後が改善することはCURE試験を始めとして冠動脈疾患では当然になっ ているが,脳梗塞・TIAの場合は,そうは問屋が卸さないというこった.アスピリンとクロピドグレルを併用しても,有効性は変わらず,出血の危険性が重な るだけだということがわかった.
最近の虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作後のClopidogrel単独投与と比較したAspirinとClopidogrelの併用:高リスク 患者 7599例における無作為二重盲検プラシーボ・コントロール試験(MATCH trial)(重大な血管イベント低減において,clopidogrelにaspirinを加えても有効性で有意な違いはなかった.aspirinの追加 で,かえって生命を脅かす出血または大出血のリスクの増加がみられた。
・Aspirin/clopidogrel投与群のうち596人(15.7%)が主要エンドポイントに到達した。Clopidogrel単独投与群
では636人(16.7%)であった〔相対リスク減少率6.4%, 95%CI[-4.6?16.3]:絶対リスク減少率1%
[-0.6?2.7]〕。
・生命を脅かす出血は,aspirin/clopidogrel投与群96人(2.6%)においてclopidogrel単独投与群49人(1.3%)よ
りも高率に発現した〔絶対リスクは1.3%,95%CI[0.6?1.9]増加〕。
・重大な出血もまた,aspirin/clopidogrel投与群において増加したが,死亡率に差は見られなかった。
著者らによれば,clopidogrelにaspirinを併用することによってより多く発現する重大または生命を脅かす出血には,主に頭蓋内出血のほか
に消化管出血がある。
著者らは,「リスクとベネフィットを考慮すると,一過性脳虚血発作や虚血性脳血管障害を有するハイリスク患者に対してclopidogrelと
aspirinを併用することに,さらなる臨床的な価値を見出すことはできない」としている。
N. Engl. J. Med. 351(1)42-47/(2004.7.1)
infliximabに関連したミクロスポリジアン感染症による筋炎,死亡 Brief
Report:蚊が媒介する病原体ミクロスポリジアンBrachiola
algeraeによる致死的な筋炎:慢性関節リウマチに対してInfliximab投与を受けていた患者1症例の報告
コメント:
筋肉に、それも、どうも局所の筋肉ではなく、全身の筋肉にほぼ一斉に感染が起こっていたようです(体中痛がっていて麻薬が必要だった)。こういうところ
が、同じ劇症でも、β溶連菌による壊死性筋膜・筋炎(いわゆる人食いバクテリア)とは違うところです。あの場合は、外科的にnecrotomyが必要であ
るということは、裏を返せば、広範と言っても、局所のコントロールが重要ということですから。それにしても、筋肉にあれだけ親和性があるのはなぜなのか?
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臓器移植で狂犬病感染
NEJMでもLancetでもなく,MMWRなのだが,ちょいと気になる報告だったので,ここに掲載する.以下の点が大きな問題.
1.ドナーがコウモリに噛まれたことによって狂犬病ウイルスに感染したと思われるが,潜伏期間だったとは考えにくく,おそらく,無症候感染でずっと 経過していたのだろうか.
2.しかし,血清にも,その他の組織にも狂犬病ウイルス感染のエビデンスは確認されなかったという.(後述の腸骨動脈セグメントは別).すると,術 前のドナーのスクリーニングは無意味ということになる.
3.狂犬病は神経親和性の非常に強いウイルスなので,神経組織ではなく,肝移植でドナーが感染することは非常に考えにくいのだが,腸骨動脈などとい う,とんでもない場所に感染源になっていた.動脈周囲に撒き付いてる自律神経叢が感染源になったのだろうか.
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臓器ドナーおよび移植レシピエントにおける狂犬病感染に関する調査
米アラバマ州,アーカンソー州,オクラホマ州,テキサス州,2004年(Update;新たな動脈セグメントを介した症例):
2004年7月1日,米CDCはBaylor University Medical Center(BUMC)における臓器提
供者と3例のレシピエントにおける狂犬病感染を報告し,米アラバマ州,アーカン
ソー州,オクラホマ州,テキサス州の病院および保健当局は,臓器提供者とレシピ
エントとの接触者を特定するための調査を開始し,暴露リスクを評価し,狂犬病の
暴露後予防を提供した。この結果,アーカンソー州の保健当局は,臓器提供者はコ
ウモリに噛まれていたことを確認した。また,7月7日,米CDCは脳症で死亡した移植
患者の更なる感染症例を確認した。この患者は,5月上旬にBUMCにおいて肝移植を受
け6月上旬に神経異常が発現し,けいれん発作,昏睡,死亡へと至った。7月8日,肝
臓の提供者の組織および血清に狂犬病ウイルス感染のエビデンスは確認されなかっ
た。BUMCにおける手術手順をレビューした結果,将来の肝移植に用いるために施設
で保存されていたドナーから取り出された腸骨動脈セグメントが狂犬病感染してお
り,この動脈セグメントが最も最近確認された狂犬病感染のレシピエントに用いら
れていた。狂犬病感染ドナー由来の動脈セグメントがこのレシピエントの狂犬病感
染源である可能性が示唆されたが,現在調査中である。(CDC/MMWR
53(27)615-616/(2004.7.16))
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スタチンで脳梗塞が25%減少したのだが
Heart Protection Study Collaborative Group. Effects of
cholesterol-lowering with simvastatin on stroke and other major
vascular events in 20 536 people with cerebrovascular disease or other
high-risk conditions. Lancet 2004;363:757-67.
スタチンが、心血管死ばかりでなく、脳梗塞も減らしたという結果である。どのくらい減らしたかというと、対照群の25%である。その数字を聞くと、 すごいじゃないかと思う人も、5.7%が4.3%に減っただけと表現すると、がっかりしてしまうかもしれない。つまり,1000人に57人が1000人が 43人に減ったということだ.このために目の前の患者さんにずーっとスタチンを飲むことを強く勧めるかどうかは・・・・・それも、この効果が出たのは、脳 卒中の既往歴のない人だけで、脳卒中の既往のある人には、二次予防の効果がなかった。ちなみに脳出血では有意差なし。
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2002年に英国で行われたHeart Protection
Studyにおいて,simvastatinによる死亡率および非致死的な心血管系イベント率が有意に低下した。ベースラインの平均総コレステロールは
228mg/dL(5.9mmol/L)であった。今回,脳卒中に関する詳細な分析が行われた。
血中コレステロール濃度は低いと冠動脈疾患のリスクが低いことが知られているが,脳卒中のリスクは低下しないとされている。しかし無作為化試験ではスタチ
ン投与によるコレステロール低下による脳卒中リスクの低下を示唆している。そこで大規模前向き研究を行った。
1994年?1997年にかけて,脳血管疾患患者3,280人(成人)とその他の閉塞性動脈疾患または糖尿病患者17,256人を無作為に1日40
mg simvastatinまたはプラセボに割り付けた(共同研究者および参加病院のリストはhttp:
//image.thelancet.com/extras/04art2126webappendix.pdf)。
主要評価項目は主要血管イベント(非致死的な心筋梗塞または冠動脈疾患による死亡,あらゆるタイプの脳卒中,または何らかの血行再生処置)で行った。
平均フォローアップは脳血管疾患患者で4.8年,その他は5年で,コンプライアンスが80%以上(simvastatin投与群では85%)であった。血
中LDLコレステロール量は両群間で平均39 mg/dL (1.0 mmol/L)の差があった。
結果としては,脳卒中発症率でsimvastatin群が25%の減少率〔95%CI[15?34]〕であった。Simvastatin
群では10,269人中444件(4.3%)に対してプラセボ群は10,267人中585件(5.7%),P<0.0001。特に虚血性脳卒中の発
症率で明らかな減少〔28%,95%CI[19?37]〕が見られ,出血性卒中頻度には差がなかった。脳卒中発作の減少効果は投薬開始一年では差がなく,
2年目の終わり頃には有意差(P=0.0004)が検出された。脳血管イベントの既往歴のある患者の場合,脳卒中の発症率に有意差はなかったが,すべての
血管イベントの発症率は20%〔95%CI[8?29]〕低下した〔406(24.7%) vs 488 (29.8%) ;
P=0.001)。冠動脈疾患患者や糖尿病患者,70歳以上または以下,あるいは血中コレステロール濃度や血圧による各種サブグループ解析でも脳卒中の割
合は1/4減少した。この知見は,血圧,コレステロール〔LDLコレステロール3.0mmol/L(1.6mg/dL)以下の場合でも〕が,異なったレベ
ルでも同様に示された。
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一方、JAMAにはこれまでより、より強力なコレステロール降下療法が必要だとの論文が出てきた。このあたりも、日本人のデータが是非ほしい。誰か やる気のある奴はいないのか。
Nissen SE, Tuzcu EM, Schoenhagen P, Brown BG, Ganz P, Vogel RA, Crowe T, Howard G, Cooper CJ, Brodie B, Grines CL, DeMaria AN; REVERSAL Investigators.Effect of intensive compared with moderate lipid-lowering therapy on progression of coronary atherosclerosis: a randomized controlled trial.JAMA. 2004 Mar 3;291(9):1071-80.
A. S. Slutsky and J. V. Lavery. Data Safety and Monitoring Boards. N
Engl J Med 2004; 350:1143-1147
臨床研究の際に、独立データモニタリング委員会とか、効果/安全性評価委員会とか呼ばれている組織です。私自身は、中間解析の時に独立性を保つために必要
な組織ぐらいの認識しかなかったので、ざっと読んで、 最低限の知識を得るには適当な記事ではないかと思ってご紹介します。
Review: More frequent compared with less frequent chest radiographic
screening may increase lung cancer mortality
ACP Journal Club. 2004 Mar-Apr;140:48.
Manser RL, Irving LB, Byrnes G, et al. Screening for lung cancer: a
systematic review and meta-analysis of controlled trials. Thorax.
2003;58:784-9. [PubMed ID: 12947138]
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コカイン乱用とc-ANCA陽性
Ajda T Rowshani, Linda J Schot, Ineke J M ten Berge. c-ANCA as a
serological pitfall. Lancet 2004;363:782
コカイン乱用でWegenerそっくりの症状、所見を示すとは知らざった。c-ANCA血清検査の落とし穴:PR?ANCA陽性のためヘノッホ-シェーン
ライン紫斑病またはウエゲナー肉芽腫として初期診断されたCocaine乱用による破壊的鼻炎;1症例の報告
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ビタミンB2とB6欠乏による皮疹
A.
Friedli and J.-H. Saurat -Oculo-Orogenital Syndrome A Deficiency
of Vitamins B2 and B6. NEJM 2004;350:1130
アルコール依存症で、野菜の類をほとんど食べていなかった48才の男性に出現した。内眼角、口角、外陰部の特徴ある皮疹に注目。一度見たら忘れないだろ
う。
Garcia-Miguel FJ and others. Preoperative assessment. Lancet 2003;
362: 1749-57
通常の診察とは異なり、検診と同様、麻酔科医による術前評価は、事前のリスクアセスメントとして、エビデンスとコストの両面から検討されねばならない。し
かし、この問題を詳細に検討した仕事は少ない。
中皮腫の診断に血清診断が有用。Mesothelin-related
proteinsが高くなる。特異度は実用的(アスベスト暴露歴のある人で高くなることあり)。感度も37/44=84%とよい。
Bruce W S Robinson and others. Mesothelin-family proteins and diagnosis
of mesothelioma. Lancet 2003; 362: 1612-16
オフィスの換気システムに紫外線殺菌導入がオフィス労働者の健康に有用Dick Menzies and others. Effect of
ultraviolet germicidal lights installed in office ventilation systems
on workers' health and wellbeing: double-blind multiple crossover
trial. Lancet 2003; 362: 1785-91 :レジオネラにも有効か?
また,抗菌グッズとやらの無駄だということを科学的に証明した地味な仕事でも,.Ann Intern Medに載るんだよ。
Elaine L. Larson et al. Effect of Antibacterial Home Cleaning and
Handwashing Products on Infectious Disease Symptoms. A Randomized,
Double-Blind Trial. Ann Intern Med 2004;140:321-329.
では,医師免許を持っているだけでは相手にされない時代の”現実的な期待”とは、何だろうか?それは,自分を使ってもらえる職場を見つけ,そこで自 分の存在価値を認めてもらうことだろう.白衣を着ているだけでは認めてもらえないのだから,必然的に使ってもらえる職場は各人によって多様となる.白衣を 着ているだけでいいと思っている人々は,ハーメルンの笛吹のネズミ達の運命をたどるだろう。
各人がそれぞれの居場所を見つけて、各人が一隅を照らす人になってもらえば、迷路と見えた道筋も明るくなるというもの。行政や司法の分野にも、臨床 現場を知った人がもっと来てもらいたいなと思っている。
→参考:医者の身分の変遷