99年までの話題は→こちらへ
老人保健施設の職員へのインフルエンザワクチン接種は患者のためにもなる
向精神薬と静脈血栓症
肺炎球菌のワクチンは菌交代を起こすか?
2000年裏ノーベル医学賞
下痢でも虫垂炎を考えよ
ロタウイルスの院内感染
またまた新たな喫煙のリスク
プロピレングリコールによる乳酸アシドーシス
ステロイドパルス療法によるワーファリンの効果の増強
SIDS and Long QT
敵さんも本気だぜ
無症候性の肝酵素の上昇を見たとき
軽症頭部外傷のCT適応
進行した痴呆患者における強制栄養
パナルジンの類似薬による血小板減少性紫斑病
仇はとってやる.
マラソン後の肺水腫,脳浮腫,低ナトリウム血症
一人しかいない時は心臓マッサージだけでもいい
犯罪より恐ろしいもの
Pernkopfの秘密
第XI因子と深部静脈血栓症
新たな喫煙のリスク
HBVの変異株
分裂病患者の犯罪
ベーチェットにInterferon alfa-2bが有効
進行した痴呆患者における経管栄養の倫理的な問題
ダウン症候群と悪性腫瘍
病院職員へのインフルエンザワクチン予防接種
白内障の術前検査は意味がない
コンドームとシートベルト
葬儀屋 (embalmer) の結核感染
集団ヒステリーの鑑別診断
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老人保健施設の職員へのインフルエンザワクチン接種は患者死亡率を低下させる
Carman WF, Elder AG, Wallace LA, et al. Effects of influenza
vaccination of health-care workers on mortality of elderly people in
long-term care: a randomised controlled trial [see comments]. Lancet
2000; 355: 93-7.
職員の半分がインフルエンザワクチンを接種した老人保健施設では,確定したインフルエンザ感染による死亡率が102 (13.6%) of 749,職員の摂取率が5%に満たない施設では,154 (22.4%) of 688と,死亡率が優位に低下した.しかし,死亡しないインフルエンザ感染には差がなかった.
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向精神薬と静脈血栓症
4月のランセットの記事
Association of venous thromboembolism and clozapine. Lancet
2000;355:1155で,比較的新しい向精神薬であるclozapineで静脈血栓症が起こることが問題になったが,今度はその他の一般的な向精神薬でも静脈血栓症のリスクがあるというのだ.
Risk of venous thromboembolism with use of antipsychotic drugs.
Lancet 2000;356:1206
Antipsychotic drug use and risk of first-time idiopathic venous
thromboembolism: a case-control study. Lancet 2000;356:1219
精神障害の患者の突然死のリスクが健常人よりも高いことは有名だが,その原因として肺梗塞も考えねばならないだろう.
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肺炎球菌のワクチンは菌交代と新たな悲劇をを起こすのか?
Prevention of pneumococcal disease by vaccination: does serotype replacement matter? Lancet 2000; 336: 1210
肺炎球菌は,90以上の血清型がある.しかし,現在のワクチンはそのうちの7-11の血清型しかカバーしていない.そのワクチンを受けた人の鼻咽腔では,ワクチンに感受性のない血清型の肺炎球菌が,感受性のある血清型を凌駕して定着することが考えられる.実際,このワクチンによる菌交代減少はガンビアの小児での研究で照明されている.では,このワクチン非感受性の肺炎球菌が実際に悪さをするようになるかというと,それはよくわからないというのが正直なところなのだそうな?
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2000年裏ノーベル医学賞:
MEDICINE
Willibrord Weijmar Schultz, Pek van Andel, and Eduard Mooyaart of
Groningen, The Netherlands, and Ida Sabelis of Amsterdam, for their
illuminating report, "Magnetic Resonance Imaging of Male and Female
Genitals During Coitus and Female Sexual Arousal." [Published in
British
Medical Journal, vol. 319, 1999, pp 1596-1600.]
British Medical Journalは誰でも無料でfull paperが読めますから.是非原典を当たってみて下さい.文末のacknowledgementまで興味津々です.論文審査の際のレフェリーのコメントはどうだったのでしょうかねえ,.
PUBLIC HEALTH
Jonathan Wyatt, Gordon McNaughton, and William Tullet of Department
of Accident and Emergency, Western Infirmary, Glasgow, for their
alarming report, "The Collapse of Toilets in Glasgow." [Published in
the Scottish Medical Journal, vol. 38,1993, p. 185.]
Three cases are presented of porcelain lavatory pans collapsing under body weight, producing wounds which required hospital treatment. Excessive age of the toilets was implicated as a causative factor. As many toilets get older episodes of collapse may become more common, resulting in further injuries.
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下痢でも虫垂炎を考えよ
Simon H Murch.Diarrhoea, diagnostic delay, and appendicitis. Lancet 2000;356: 786
虫垂炎では便秘になりやすいから,下痢をともなう腹痛ではまず虫垂炎は考えないというのが,一般通念である.しかし,O157などの病原性大腸菌やサルモネラ感染といった細菌性の下痢に引き続き急性虫垂炎が起こることがある.この場合には,虫垂炎は便秘を起こすが下痢を起こさないという先入観念によって診断が遅れやすい.
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ロタウイルスの院内感染
Emerging group-A rotavirus and a nosocomial outbreak of diarrhoea
Lancet 2000; 356: 1161 - 1162
Rotavirus
P161G9の院内感染.通常は母親からの抗体で簡単にはウイルス感染症には罹らない新生児のユニットでの院内感染であることが問題となっている.
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またまた新たな喫煙のリスク
Arch Dis Child 2000;83:117-121.
NEJMでもランセットでもないのですが,親のタバコが子供の髄膜炎のリスクを3倍にするというお話.
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プロピレングリコールによる乳酸アシドーシス
Kevin C. Wilson and others. Propylene Glycol Toxicity in a Patient Receiving Intravenous Diazepam. NEJM 2000;343:815.
プロピレングリコールはジアゼパムの注射薬に用いられる溶剤だ.人体に無害とされているが,代謝されて乳酸になる.アルコール離脱症状を抑えるために,24時間で3000mg(セルシン30本)を投与された患者に重篤な乳酸アシドーシスが起こったという症例報告である.
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ステロイドパルス療法によるワーファリンの効果の増強
Costedoat-Chalumeau N and others. Potentiation of vitamin K antagonists by high-dose intravenous methylprednisolone. Ann. Intern. Med. 132(8):631-635
ワーファリン投与を受けている患者において,INR が平均2.75 (range, 2.02 to 3.81) だったのが,パルス療法によって 8.04 (range, 5.32 to 20.0) にINRが延長した.ワーファリンの投与を受けている患者にステロイドパルス療法をする際にはINRのモニターが必要である.
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SIDS and Long QT
Peter J. Schwartz and others. A Molecular Link between the Sudden
Infant Death Syndrome and the Long-QT Syndrome. N Engl J Med
2000;343:262
sudden infant death syndrome (SIDS)の少なくとも一部は,Long-QT Syndromeが原因であり,その原因として,cardiac sodium-channel gene (SCN5A)の変異がある.この変異は家族性ではなく,spontaneousにおこる.SIDSの予防のためには,新生児の心電図によるスクリーニングが有効である.
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敵さんも本気だぜ
Elisa K Ong, Stanton A GlantzTobacco industry efforts subverting
International Agency for Research on Cancer's second-hand smoke
study. Lancet 2000; 355: 1253 - 1259
受動喫煙が癌のリスクを増すという学術レポートに対して,アメリカのタバコ会社フィリップ・モリスが,世論操作を行い,自分たちの利益を守るための戦略を立て,遂行していったかというドキュメンタリー.
International Agency for Research on Cancer(IARC)が副流煙により肺癌が16%増えると報告した.フィリップ・モリスは,task forceを作り,この報告をどのようにねじ曲げて解釈し,副流煙では肺癌のリスクが増えないという印象をメディアと世論に与えるかという戦略を立てて,それを遂行していった.IARCは副流煙の研究に10年間で200万ドル使ったが,フィリップ・モリスは何とこのキャンペーンに1年間で200万ドルを使ったそうです.全く何て奴らだ.
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無症候性の肝酵素の上昇を見たとき
Primary Care: Evaluation of abnormal liver-enzyme results in asymptomatic patients. N Engl J Med 2000;342:1266-1271.
GPT/GOT上昇のまれな原因としてヘモクロマトーシス,ウィルソン病,α1-antitrypsin欠損症がある.また筋由来の上昇も忘れないこと.
アルカリフォスファターゼの上昇:
1.血液型がO型あるいはB型の人は,脂肪の多い食事を食べた場合は,腸由来のアルカリフォスファターゼが血液中に流れ込んで血清アルカリフォスファターゼが上昇する.
2.良性家族性高アルカリフォスファターゼ血症では腸のアルカリフォスファターゼ活性が上昇している.
3.40才から65才までの間,特に女性では血清アルカリフォスファターゼは上昇し続け,65才の女性では30才の女性の1.5倍以上になる.
4.高アルカリフォスファターゼが肝由来か骨由来かを決めるには,電気泳動よりもγ-GTPの上昇を伴っているかどうかを目安にする方が実用的である.
γ-GTPの上昇:(大したことは書いてない)
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軽症頭部外傷のCT適応
Micelle J. Haydel and others. Indications for Computed Tomography in Patients with Minor Head Injury. N Engl J Med 2000;343:100-5
意識が清明で神経学的に異常がない軽症頭部外傷は,CTをやってもほとんど空振りだ.ではどんな頭部外傷にCTをやり,どんなものにはやらなくていいのか?この根本的な問いに答えたのがこの論文である.答えは,頭痛,嘔吐,60才以上,アルコールを含む薬物中毒,短期記憶の障害,鎖骨より上の外傷,痙攣発作.この7つの要素のうち,一つでもあれば,CTで陽性所見がある率(感度)は100%だという.
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進行した痴呆患者における強制栄養
Rethinking the Role of Tube Feeding in Patients with Advanced
Dementia. N Engl J Med 2000;342:1755-1756
痴呆が進んで自分の口で物が食べられなくなったら,その時は経管栄養などやってもらいたくない,餓死したほうがましだとあなたは思うだろうか?この問題は脳死患者の人工呼吸器云々などより,はるかに遭遇する頻度の高い(というよりすでに日常化している)問題である.すでに自ら経口摂取できなくなった進行した痴呆患者に経管栄養や胃瘻造設を行うことは,どのような倫理的な問題と関係するのか.説明と同意をとらない勝手な治療であり,患者に苦痛を与えるだけなのか?もし説明と同意が本人はもとより,家族からも得られない時はどうしたらいいのか?痴呆が進行する前にあらかじめ説明し,了承をとるべきなのか(advance directives)? カトリック,あるいはユダヤ教の教義はどう捉えているか等,議論が展開されているので一読をお薦めする.
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パナルジンの類似薬による血小板減少性紫斑病
Charles L. Bennett and others. Thrombotic Thrombocytopenic Purpura
Associated with Clopidogrel. N Engl J Med 2000;342:1773-7
パナルジンの類似薬であるクロピドグレルにより血栓性血小板減少性紫斑病が起こるという報告.血栓性血小板減少性紫斑病は,クロピドグレルの治療開始後 2 週間以内に発症することが多いという.
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仇はとってやる
Craig S. Wong, Srdjan Jelacic, Rebecca L. Habeeb, Sandra L. Watkins, Phillip I. Tarr. The Risk of the Hemolytic-Uremic Syndrome after Antibiotic Treatment of Escherichiacoli O157:H7 Infections. N Engl J Med 2000; 342 : 1930 - 6
そんなに多い数ではない.10才以下の小児71例のコホートだ.なんでもっと早くに日本で同様な研究ができなかったのか.大騒ぎしたのは1996年だったんだ.とっくにもっと凄い論文ができたはずだ.日本人の論文も引用されているが,当然ながらretrospective analysisの欠点を突かれている.
その年だけでも11人も死んだんだぞ.日本の医者は亡くなった患者に申し訳ないとは思わないのか!!裏切り者!!医者なんてやめちまえ.
俺はそんなぼんくら医者には絶対にならないぞ.場所は長崎か札幌か,どこになるかわからないが,必ず仇はとってやる.自分が出会った問題で,NEJMかランセットに必ず論文を書いてやる.
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マラソン後の肺水腫,脳浮腫,低ナトリウム血症
Ayus JC and others. Hyponatremia, Cerebral Edema and Noncardiogenic Pulmonary Edema in Marathon Runners.Ann Intern Med 2000;132:711-714.
7例の症例報告.7例中5例が女性.平均年齢37+-7 (mean+-SD)才.全員非ステロイド系の消炎剤を服用していた.(しかし発症時も腎機能は正常だった)
いずれもゴール後に吐き気,嘔吐,血性の泡沫状の痰を吐いて倒れた.血清ナトリウム値は121+-3mmol/L.酸素飽和度は全例70%以下.胸部写真上は著明な肺水腫を認めたが,胸部写真上で心拡大はなく,心電図に異常なく,心エコーでも壁運動,ejection fractionに異常なし.CKのMB分画,トロポニンも上昇していなかった.肺動脈楔入圧も正常だった.従って心原性の肺水腫は考えられない.脳のCTあるいはMRIでは全例脳浮腫を認めた.腎機能は正常だった.全員挿管,調節呼吸を必要とした.6例で高張性のナトリウム(514mmol/L)が投与され,12時間で10mmol/Lの速度で低ナトリウム血症を補正した結果,この6名は救命できたが,診断が遅れて低ナトリウムの補正を受けなかった1名は脳浮腫,脳ヘルニアで死亡した.
病態:激しい運動の最中は消化管の血液が骨格筋へシフトする.口から入った液体は容易に吸収されず消化管内に留まる.その結果血管内にある血液量が少なくなり,バソプレッシンの分泌が高まる.運動を止めるとそのリバウンドがおきると考えられる.非ステロイド系の消炎剤は(明らかな腎機能障害をともなわなくても)water retensionを起こすので,危険因子となる.
本症は,熱中症や脱水症,心原性ショックと誤診され,低張性補液や逆に利尿剤を投与されて状態が悪化したり死亡する可能性がある.
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一人しかいない時は心臓マッサージだけでもいい
Cardiopulmonary Resuscitation by Chest Compression Alone or with Mouth-To-Mouth Ventilation. N Engl J Med 2000;342:1546-53
心肺蘇生の経験がない一般人が救急蘇生を行わなくてはならない場合,マウスツーマウスと心臓マッサージを併用した場合と心臓マッサージのみの場合では,予後に有意差はなかった.詳しいことは,鹿児島県曽於郡大崎町にある,牧瀬内科クリニック院長,牧瀬 洋一が以下の論文を紹介してくださった.
一人でしかも経験の未熟な心肺蘇生は、心臓マッサージだけでもよいかもしれないという論文です。Basic Life Suppor(BLS)についての話題です。ACLSではありません。しかもSingle-Rescuer Adult Basic Life Supportだとおもいます。
【背景】居合わせたbystanderにより約半数がCPRをなされていない。マウスツーマウス法を教えるためには2.4分必要であり、できれば胸部圧迫(いわゆる心マッサージ)のみであるなら、指導が簡単であるので、CPR施行例を増やすのに有効であろう。
【研究方法】都市部消防救急医療システム集中搬送ランダムに、居合わせた者に電話でその情況を判断し胸部圧迫か胸部圧迫+マウスツーマウス換気かを指示。
【結果】ランダムに割り当て、241名の胸部圧迫法単独、279名の胸部圧迫法+マウスツーマウス換気完全に施行できたパーセントはマウスツーマウスを加えた群は62%であり、胸部圧迫法のみでは81%であった(P=0.005)。胸部圧迫法の指導に要する時間は1.4分で、マウスツーマウスの指導より短い。
結果 胸壁圧迫+マウスツーマウス 胸壁圧迫 two-sided P value diffence(95%CI)
生還退院 29/278 35/240 0.18(-1.5-9.8)
退院 95/279 97/241 0.15(-2.1-15.0)
【結論】胸部圧迫法のみがマウスツーマウス人工呼吸を加えるのとほぼ同等であり、CPR未経験の施行者には胸部圧迫法単独が好ましいかもしれない。(N Engl J Med 2000;342:1546-53.)
AHA(Ventilation Working Group of the Basic Life Support and Pediatric Life Support subcommittees of the American Heart Association)で、“マウスツーマウスは最初の数分間は少なくとも不要であろう.実際、危険性...胃内容物逆流、胸部圧迫がおろそかになるなど”ということですが、呼吸器疾患が原因の場合のためガイドラインを変更する意向はなさそう、、
http://www.americanheart.org/Scientific/statements/1997/049704.html
↑という指摘らしいのですが、Editorialには人工呼吸回数の減少と胸壁圧迫の増加が蘇生率の改善をもたらすとの記載があります.
Assar D, Chamberlain D, Colquhoun M, et al. Randomised controlled trials of staged teaching for basic life support. 1. Skill acquisition at bronze stage. Resuscitation (in press). ↑まだ、発表してないのにー
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犯罪より恐ろしいもの
処方,投薬の誤りは故意に行われた犯罪よりも重大な結果を招く.それを少なくするためにはどうしたらいいか?この論文における処方,投薬の誤りの類型化と対処法は大いに参考になる.
R E Ferner, J K Aronson. Medication errors, worse than a crime. Lancet 2000; 355: 947 - 948
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判決:Not Proven:Pernkopfの秘密
Anatomical science at University of Vienna 1938-45.Lancet 2000;
355: 1454 - 1457
医師免許を持っている人なら誰でも知っている人名というのはそれ程多くはない.Eduard Pernkopfはそのうちの一人である.医学生は誰でも解剖の教育を受ける.その解剖の図譜で最も有名なのがPernkopfの解剖図譜である.しかし,彼がナチの熱狂的な支持者だったことは知られていない.念の入ったことに,彼の初版の解剖図譜原版には鍵十字とナチ親衛隊のロゴマーク(稲妻型のSS)が入っている.それが,1933年にウイーン大学第二解剖学教室の教授,オーストリアが第三帝国に併合された1938年にはウイーン大学医学部長になった経歴の背景である.
この事実を踏まえると,現在でも世界中の外科医の座右の書となっている彼の図譜が,強制収容所で処刑されたユダヤ人の死体の上に成り立っているのではないかという疑問が当然出てくる.その疑問に答えるため,戦後50年後に国際的な調査チームが編成され,調査が行われた.この記事はその報告である.
結論はNot Proven,すなわち,ユダヤ人強制収容所由来の処刑死体を使った証拠は見出されないということである.もちろん戦後50年以上たっており,調査は困難を極めたが,ウィーン大学の協力を得て,公正に精力的に行われた.
ちなみに,Pernkopfは第三帝国の崩壊と共に刑務所入りになり,2年の刑期の後出所した.以後公職に復帰することはなかったが,ウィーン大学神経学教室に二部屋与えられ,そこで1955年に死亡するまで解剖図譜の仕事を続けたという.
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第XI因子と深部静脈血栓症
Joost C.M. and others. High Levels of Coagulation Factor XI as a Risk Factor for Venous Thrombosis. N Engl J Med 2000;342:696-701.
第XI因子の高値は深部静脈血栓症の危険が2倍になるという.オランダでは,第XI因子の高値を示す人が人口の一割を占めるという.深部静脈血栓症の頻度が白人で高く,日本人で少ないのは,第XI因子の高値を示す人が少ないためか?
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新たな喫煙のリスク
たばこを吸っていると重症の肺炎球菌感染になりやすい.リスクは非喫煙者に比べて4倍も高い.
J. Pekka Nuorti and others. Cigarette Smoking and Invasive Pneumococcal Disease. N Engl J Med 2000;342:681-9.
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HBVの変異株
HBsAg mutants cause increasing concern. Lancet 2000;355 (9206): 811
after antiviral nucleoside drug therapy, and liver transplant recipients treated with hepatitis B immunoglobulinといった人々,あるいはワクチンを接種の既往のある人々の間でもHBsAg mutantsが見出されていて,この変異に対して野生型のワクチンによって産生される中和抗体は無効という懸念が広がっている.
水平感染,垂直感染ともにありうる.
the Gly145Arg mutant is the most common post-vaccination HBsAg
mutation seen in infants in Singapore. This mutant is increasingly
being detected in vaccinated individuals in several other countries,
he said, and an intrafamilial analysis indicates that it can be
transmitted vertically or horizontally to immune individuals and to
carriers of wild-type HBV.
更に問題なのは,この変異は通常のHBVスクリーニング検査をすり抜けるということ.
Viruses carrying these mutations may not be detected with standard
immuno-based assays for HBV, warned Arie Zuckerman (Royal Free
Hospital, London, UK), and this could lead to HBV being undetected in
blood supplies.
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分裂病患者の犯罪
Paul E Mullen and others. Community care and criminal offending in schizophrenia. Lancet 2000; 355: 614 - 617
ここ20年間で分裂病患者の犯罪率は上昇傾向にあるが,この傾向は対象となる一般集団の上昇傾向と同様であり,有意差はない.従って,この20年間で,地域社会で,デイケアなどで,入院以外の診療が増えたからといって分裂病患者による犯罪が増えたとはいえない.
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ベーチェットにInterferon alfa-2bが有効
眼症状が出ていないベーチェット患者に対して,6ヶ月間,コルヒチンの経口投与とbenzathine penicillin120万単位を3週間毎に筋注に加え,300万単位の interferon alfa-2b を一日おきに 皮下注した群(n=67)とコルヒチンとbenzathine penicillinのみの投与群(n=68)とを比較したところ,Interferon alfa-2b投与群の方が明らかに眼症状の発生率が低かった.
Demiroglu H and others. Interferon alfa-2b, colchicine, and benzathine penicillin versuscolchicine and benzathine penicillin in Behcet's disease: a randomisedtrial Lancet 2000; 355: 605-09
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進行した痴呆患者における経管栄養の倫理的な問題
経管栄養は嚥下性肺炎のリスクを低下させない,患者の命を長らえない,苦痛を軽減しない,経管栄養を中止することは倫理的に間違っているのか,等,話題が豊富.
Muriel R. Gillick. Rethinking the Role of Tube Feeding in Patients with Advanced Dementia. N Engl J Med 2000;342:206-210
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ダウン症候群と悪性腫瘍
ダウン症候群は若い頃は白血病になりやすく,年をとってからは固形腫瘍を発生しにくい.このことから,21番染色体に白血病の原因遺伝子と,固形腫瘍の抑制遺伝子が見いだせるのではないかという論旨.
Henrik Hasle Risks of leukaemia and solid tumours in individuals with Down's syndrome. Lancet 2000; 355: 165-69
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病院職員へのインフルエンザワクチン予防接種
William F Carman and others. Effects of influenza vaccination of
health-care workers onmortality of elderly people in long-term care:
a randomisedcontrolled trial. Lancet 2000; 355: 93-97
高齢者の療養施設で働く職員に対するインフルエンザワクチン接種は,入院患者の死亡率は減少させるが,死亡までには至らない感染は減少させない.
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白内障の術前検査は意味がない
結論は以下のごとく至って簡単.Conclusions. Routine medical
testing before cataract surgery does not measurably increase the
safety of the surgery.
意味がないのは何も白内障の術前検査ばかりじゃあるまい,と思うのは私だけではないだろう.
Oliver D. Schein and others. The Value of Routine Preoperative Medical Testing before Cataract Surgery. (N Engl J Med2000;342:168-75.)
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コンドームとシートベルト:
シートベルトで運転者の被害が減るのは,シートベルトをすることによってより安全な運転をするようになるからであって,シートベルトが運転手を守るからではないという仮説がある.(あるいはシートベルトをするような人はもともと安全運転をする)(The risk compensation hypothesis).
同様にコンドーム着用によって性病が減るのは,コンドームが病原体の伝播を予防するからではなく,コンドームをつけるという習慣によって性行動(パートナーの選択や性行為そのもの)が変化するからだという仮説がある.この仮説が正しければ,HIV感染の予防にコンドームを奨励しても,もし,コンドーム使用によっても性行動が変わらなければ,HIV感染も抑制できないことになる.発展途上国におけるコンドームの奨励が,必ずしもHIV感染の減少に結びついていない事実を考えると,この仮説が少なくともある国では正しい可能性があり,コンドームの奨励も再考しなくてはならないのかもしれない.
John Richens, John Imrie, Andrew Copas. Condoms and seat belts: the parallels and the lessons. Lancet 2000; 355: 400-403.
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葬儀屋 (embalmer) の結核感染
米国では死に化粧embalmingの技術が発達しており,それを専門とするembalmerという商売がある.この商売ではご遺体に密接に接触するわけだから,結核感染のリスクもあるわけだ.地味だが,大切な症例報告.
Timothy R. Sterling and others. Transmission of Mycobacterium
tuberculosis from a Cadaver to an Embalmer. N Engl J Med 2000;342
(4)
集団ヒステリーの鑑別診断
Timothy F. Jones and others. Mass Psychogenic Illness Attributed to Toxic Exposure at a High School. N Engl J Med 2000;342:96-100.
日本でも,内分泌攪乱物質(いわゆる”環境ホルモン”),生物兵器によるテロ,特殊な感染症に対して人々が非常に敏感になっている.そんな状況の中で,非常に小さなきっかけで,いわゆる”集団ヒステリー”の患者が一度に大量に出る素地は整っている.”買ってはいけない”のベストセラー化は,その一亜型だろう.
この論文は,一人の女教師が,”ガソリンのような臭い”を感じたように思ったのがきっかけで,”ガス中毒”患者が大量に出た事件を詳しく調査した報告で,結局は心因反応であったとの結論を得た論文である.
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高血圧:”新薬”は何のため?
Full
paperだが結論は明快だ.利尿薬やbeta-blockerなど古くて安い降圧薬を使おうが,カルシウム拮抗薬やACE阻害薬などの高くて新しい薬を使おうが,治療効果は変わらないってこと!!
では,カルシウム拮抗薬やACE阻害薬のあの売れ行きって一体何なのさ!!って言いたくなるよな.あたしゃ,自ら進んでACE阻害薬を処方するような真似は以前からしていませんよ.どこのお偉いさんが,何と言おうと,ひどい糖尿病でもない限り,降圧利尿剤からまず入りますね.それが正しいってことが証明されたわけだ.
Lennart Hansson and others. Randomised trial of old and new antihypertensive drugs in elderly patients: cardiovascular mortality and morbidity in the Swedish Trial in Old Patients with Hypertension-2 study. Lancet 1999; 354: 1751-56
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うまい話あり:カテーテルを抜かずにカテ先感染を迅速に診断する
中心静脈カテから1ml足らずの血液を採取して,グラム染色とアクリジンオレンジ染色を行い,UV光で鏡検するという,簡単な方法.
Kite P. Dobbins BM. Wilcox MH. McMahon MJ. Rapid diagnosis of central-venous-catheter-related bloodstream infection without catheter removal. Lancet. 354(9189):1504-1507, 1999 Oct 30.
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髄膜炎菌のワクチン
髄膜炎菌の流行地帯であるガーナで,流行時期に合わせて緊急にワクチン接種をするのと,流行とは関係なく,多くの人々に定期的にワクチンを接種するのと,どちらがいいか,実行可能性(資金,人手),効果といった多角的な面から検討した.その結果,流行時期に合わせて感受性の高い群にしぼって緊急にワクチンを接種する方が現実的だという結論になっている.これは,髄膜炎菌のワクチンの効果が特に小児では短期間しか持続しないこと,また,定期的に多くの人数に接種するのは,資金,人手,行政能力の面から,ガーナでは無理なこと,などが理由として挙げられている.
Christoper W Woods, Gregory Armstrong, Samuel O Sackey, et al. Emergency vaccination against epidemic meningitis in Ghana: implications for the control of meningococcal disease in West Africa. Lancet 2000; 355: 30-33.
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BCGは無効
インドでの15年間のfollow up
studyでは,成人においてはBCGは無効,小児でも有効性は低いと出た.
15-year follow-up shows BCG vaccine is not effective in India.
Lancet 1999;354:1617
もう一つインフルエンザに有効な薬
zanamivirと同じくインフルエンザウイルスのneuraminidaseの阻害薬oseltamivirで流行期間中,一日2回,6週間の服用で有効であるとのこと.
F. G. Hayden and others. Use of the Selective Oral Neuraminidase
Inhibitor Oseltamivir to Prevent Influenza. N Engl J Med 341:
1336-1343 (1999)
カルシウム拮抗薬の総説
Calcium -Antagonist Drugs. N Engl J Med 1999;341:1447-57.
くも膜下出血には少し効くが脳梗塞には効かない.ガンのリスクを増やすと言われたことがあるが,その後の研究ではそれを裏付けるデータは出ていない,
カルシウム拮抗薬で血中濃度が上がるもの
ジギタリス,カルバマゼピン,H1ブロッカー,シサプリド,HMG-CoA還元酵素,シクロスポリン,たくろりむす,ベータブロッカー,テオフィリン,HIV
protease inhibitor
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安静にしていてもだめ:その2
座骨神経痛の時,安静にしていてもだめっていう論文を以前紹介しました.今度はランセットに,ベッド上安静は意味がないばかりでなく,かえって害がある可能性があるとの論文が出ました.文献的考察なのですが,腰椎穿刺,脊椎麻酔,心カテ,腰痛,妊婦の蛋白尿と高血圧症,急性肝炎といった,ベッド上安静が当然と思われていた病態で,ベッド上安静が有効だと証明された報告はなく,中にはかえって病態が悪化するという結果が得られた報告も多いのです.
Chris Allen and others. Bed rest: a potentially harmful treatment needing more careful evaluation. Lancet 1999;354:1229.
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妊娠可能な女性における葉酸投与は神経管欠損の頻度を低くする
1991年,UKのMedical Research Council (MRC)の報告により,妊娠可能な年齢の女性に葉酸を服用させることによって神経管欠損の頻度が低くなることがわかっていた (1).しかし私は神経管欠損は白人に圧倒的に多くて有色人種に少ないと思いこんでいたので,日本人にはあまり関係ない話だと思っていた.しかしそれはとんでもない誤解だったことがわかった.日本での神経管欠損の発症頻度は,英国や合衆国とそれほど変わりないのだ (2).しかも,同じアジア系である中国では,神経管欠損の頻度が非常に高い中国北部ばかりでなく,神経管欠損の頻度が日本とほぼ同じである中国南部 でも,葉酸の効果が確認された (3).こうなると日本でも母子保健指導で葉酸摂取を奨励しなければならないのではないだろうか.
余談だが,この研究にはCDCが関わっている.日本の頭越しに中国に行っちゃうんだなと思うと,寂しいね.日本ではまともな臨床研究ができないと思われているんだ.
1. MRC Vitamin Study Research Group. Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. Lancet 1991;338:131-7.
2. L. D. Botto and Others. Neural-Tube Defects. N Engl J Med 1999;341:1509-1519.
3. R. J. Berry and Others. Prevention of Neural-Tube Defects with Folic Acid in China. N Engl J Med 1999;341:1485-90.
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OTCの肝臓を移植
Death after Transplantation of a Liver from a Donor with
Unrecognized Ornithine Transcarbamylase Deficiency. NEJM
1999;341:921-22.
”原因不明の脳浮腫”で亡くなった26才の男性から,肝硬変,肝癌の65才の女性に肝移植を行ったところ,高アンモニア血症で移植後6日目で亡くなった.ドナーがOrnithine Transcarbamylase Deficiencyだったのだ.時間との闘いである移植治療では,ドナーがどうして脳浮腫で死んだかなんてことを顧みている暇はないのだろう.
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漢方薬による腎障害
Lord GM and others. Nephropathy caused by Chinese herbs in the
UK. Lancet 1999;354:481-2
Chinese herbal remedy linked to kidney failure. Lancet 1999;354:494
Chinese herbs nephropathyは1993年にベルギーで100人以上の被害者が出てから有名になったが,現在も被害者がわが国を含む各国で出ている.一般の薬剤性腎障害と異なることは,急速に腎機能障害が進行し,原因薬剤を中止しても腎機能障害は進行し血液透析になる.組織学的には糸球体そのものには病変は認められず,間質の広汎な線維化と尿細管の変性,萎縮,消失が見られる.原因は一部の漢方薬に含まれるaristolochic acidアリストロキア酸である.現在,保健適応薬ではチェックが行われているが,民間で売られている漢方薬による被害は今後も続く可能性がある.大切なのは,勝手に怪しげな薬を飲まないことだ.厚生省が認可した薬でさえ,とんでもないことが起こるのだから,ましていわんやである.
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なぜ人はおぼれ死ぬのか?
Michael Tipton, Clare Eglin, Mikael Gennser, et al. Immersion deaths
and deterioration in swimming performance in cold water: a volunteer
trial. Lancet 1999;354:626.
泳げる人間は低体温で溺死するのではない.溺死の救急蘇生法は再考の余地があるか?
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都市部でのレプトスピラの流行
これからは黄疸をともなう発熱を見たら,都市部であってもレプトスピラを鑑別診断にあげなくてはならないか・・
Albert I Ko, Mitermayer Galvao Reis, Cibele M Ribeiro Dourado, et al. Urban epidemic of severe leptospirosis in Brazil. Lancet 1999;354:820
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Tissue plasminogen
activatorの遺伝的多形と髄膜炎菌感染
Tissue plasminogen
activatorの遺伝的多形が髄膜炎菌感染における敗血症への進展に大きな影響を与える.Tissue
plasminogen
activatorの遺伝的多形は,他の感染症や循環器疾患,脳卒中とも関係はないだろうか?
Peter W M Hermans, Martin L Hibberd, Robert Booy, et al 4G/5G promoter polymorphism in the plasminogen-activator- inhibitor-1 gene and outcome of meningococcal disease. Lancet 1999;354:556.
Rudi G J Westendorp, Jouke-Jan Hottenga, P Eline Slagboom.Variation in plasminogen-activator-inhibitor-1 gene and risk of meningococcal septic shock. Lancet 1999;354:561
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NEJMの編集長がクビに
今年1月のJAMAの編集長の解任に引き続き,NEJMの編集長JP
Kassirerがクビになった.原因はNEJMのブランドで一儲けを企んだ親会社の方針にKassirerが抵抗したたためである.
Richard Horton. An unwilling exit from the NEJM. Lancet 1999;354:358
Confusion as New England Journal editor is forced out. Lancet 1999;354:399
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Rota virusワクチン2題
小児において冬の下痢症の主な原因となるrota
virusに対するワクチンが有望視されているが,関連の記事がランセットに2題出ていた.一つは確かに有効であるという報告
(1),もう一つは副反応として腸重積が起こる可能性があるので,FDAが接種を差し止めている
(2)という報告である.
1. David I Bernstein, David A Sack, Edward Rothstein, et al. Efficacy of live, attenuated, human rotavirus vaccine 89-12 in infants: a randomised placebo-controlled trial. Lancet 1999;354:287
2. Rotavirus vaccine put on hold in USA after intussusception
reports. Lancet 1999;354:309
便潜血反応
D. C. Rockey Occult Gastrointestinal Bleeding. N Engl J Med
1999;341:38-45.
便潜血反応に関するいくつかの基本的な知見を再確認しよう.
1.グアヤックテストは
1)ヘモグロビンの偽性ペルオキシダーゼ活性を利用している.一部に誤解されているごとく,経口の鉄分,鉄剤では陽性にはならない.(ただしグアヤックテストの青とタール便の緑黒色を見誤らないこと)潜血食が必要な理由は鉄分を除くのではなく,ヒト由来以外のヘモグロビンや食事由来のペルオキシダーゼ活性を除くためである.
2)ヘモグロビンは小腸でヘムとポルフィリンに分解されて偽性ペルオキシダーゼ活性を失うので,グアヤックテストは上部消化管出血の検出感度はあまり高くない.しかしより感度を高めた第二世代のグアヤックテストはOK.
2.ヒトヘモグロビンの免疫化学的反応は
1)ヘモグロビンはペプシンや膵消化酵素でヘムとグロビンに分解されて抗原性を失うので上部消化管出血の検出には役立たない.もっぱら下部消化管出血の検出に有効である.
以上より.グアヤックとヒトヘモグロビン免疫化学的反応を組み合わせて消化管出血の部位を判定する.
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確定診断はペプシコーラで
あなたの外来に72才の男性が来た.主訴は失神発作である.とくに冷たい炭酸飲料を飲むとくらくらして気を失ってしまうとのことである.一般身体所見,神経学的所見に異常はない.頚動脈洞マッサージをしても失神発作は誘発されない.
あと,あなたはどんな検査をするか?頚動脈ドプラー,tilt table test,ホルター?全部問題ないよ.MRI? CT?一体どんな病変を予想して脳の画像をとるの?そりゃ72才だから小梗塞の2つや3つはあるだろうよ.でもそれで失神発作を説明できるの?脳波はちょいと遅かったけど,フェニトイン投与でも失神発作は押さえられず.
そんなに大層な検査をいくつもやる必要はないんだ.冷えたペプシコーラ(まあ,コカコーラでもいいんだが)を一缶買ってきて,目の前で飲んでもらって発作が誘発されればそれで診断確定.
Deglutition syncope ws a dysautonomic syndrome associated with intense vagal afferent activation due to esophageal stimulation. It evokes sympathetic inhibition with vagal efferent activation, causing bradycardia, peripheral vasodilation, and hypotension. Cold beverages frequently trigger delutition syncope. The problem can be treated with avoidance of the stimulus.
Olshansky B. A Pepsi Challenge. N Engl J Med 1999;340:2006.
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ECにおけるダイオキシン汚染肉騒動
99/5/27に始まったベルギー産鳥肉豚肉のダイオキシン汚染騒動は当局が汚染の事実を知りながら6週間も隠していたこともあって,狂牛病騒動にも劣らない大きな政治問題に発展した (1).しかし,本当にダイオキシンが癌を起こすかどうかは未だに明かではない (2).
1. European dioxin-contaminated food crisis grows and grows. Lancet 1999;353:2047.
2. Public-health message about dioxin remains unclear. Lancet 1999;353:1681.
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無脾症における敗血症
無脾症における敗血症の原因菌としては,肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌が有名であるがグラム陰性菌としてはどんなものがあるだろうか?特に犬に咬まれたという病歴のある場合.
また,この論文を読むと,無脾症における予防接種は,最低,肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌のワクチン接種を考えなくてはならないことがわかるが,わが国の現状はどうだろうか.とくに髄膜炎菌,インフルエンザ菌のワクチン接種などは全く考えられていない状態には,行政ばかりではなく,医師一人一人にも責任がある.
J. Parsonnet and J. Versalovic. Weekly Clinicopathological Exercises: Case 17-1999: A 42-Year-Old Asplenic Man with Gram-Negative Sepsis. N Engl J Med 1999;340:1819-26
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Nipah virus
1998年10月以来、マレーシアのNegri Sembilan, Perak,および
Selangor州において発生していたウイルス性脳炎は流行が発生してから、合計258例の患者と100例の死亡が確認された。一時日本脳炎かと大騒ぎになったが
(1),新種のHendra-like virusであるニパウイルス(Nipah
virus)が主犯であることが判明し,流行も終息したと宣言された.詳しく調査された71例のなかで20例の患者と8例の死亡者については日本脳炎のみが原因であり、28例では日本脳炎とニパウイルスの混合感染であり、そのうちの17例が死亡した。ニパウイルス単独では139例の患者とそのうちの49例の死亡が確認されている。ニパウイルスは豚との直接かつ濃厚な接触によって感染するが,蚊を媒介しての感染や人から人への感染は起こらない.詳細は感染症情報センターを参照
1. Watts J. Malaysia - Japanese encephalitis outbreak leads to
military intervention. Lancet. 353(9158):1075, 1999 Mar 27.
キノロン耐性のCampylobacter jejuni
ミネソタというと卵売りですが,卵を売れば鳥肉も売る.その鳥にシプロフロキサシンを含めたキノロン系の抗生物質がばんばん使われている.そのためにキノロン耐性のキャンピロバクターが出てきたというお話です.Vancomycin-resisitant Enterococcusだけではないのです.食用動物にはとにかく人間様顔負けにいろんな抗生物質が使われているのです.
K. E. Smith and Others.Quinolone-Resistant Campylobacter jejuni Infections in Minnesota, 1992-1998. N Engl J Med 1999;340:1525-32.
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cyclosporinは癌の成長を促進する
Natureの論文なのですが,臨床的にも重要だとおもったので紹介します.in
vitroばかりでなく,in
vivoでもマウスの腺癌の転移を促進する作用があります.その作用にはtransforming
growth factor betaが関与しています.
Hojo M, Morimoto T, Maluccio M, et al. Cyclosporine induces cancer progression by a cell-autonomous mechanism. Nature 1999;397:530-534.
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アスピリン使用制限でライ症候群が消えた
CDCからの論文.そう,消えたんだ.嘘じゃない.1980年には合衆国で555例あったのが,アスピリンとの関連が示唆されてから,その数は激減の一途をたどり,94年以降は絶滅に近い状態となっている.公衆衛生,疫学の重要性,正しい学問的知見を世間一般に広げることが如何に重要かをこの論文は物語っている.
著者らは,今後ライ症候群とおぼしき例に遭遇したら,ライ症候群そのものではなくて,類似の代謝異常症を疑って検索すべきだと言い切っている.合衆国でライ症候群と診断することは,誤診か医療過誤のどちらかだと自ら宣言することになる.
ひるがえって,わが国では,アスピリンとライ症候群の関係の密接さがどんな科の医師にも,また親にも,あまねく知られているとはとても言えない.これは血友病患者のHIV以上の悲劇を現在も引き起こしているのではないだろうか?
”小児用バファリン”これは日本でだけ使われている薬なのか?脳梗塞の大人に使われるだけならいいのだが,読んで字のごとく,素直に子供にも使われているだろう.保険点数も子供でないと通らないことだし.
E. D. Belay and Others. Reye's Syndrome in the United States from 1981 through 1997. N Engl J Med 1999;340:1377-82.
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エクスタシー後のパーキンソニスム
Parkinsonism after Taking Ecstasy. N Engl J Med
1999;340:1443.
が,そう訳されているんです.
何とかならんのかね.この訳は.日本語を読めば,誰だって,気持ちいいことをした後,パーキンソニスムになったと思うじゃないか.大丈夫ですよ.そんなことはありませんから,安心して励んで下さい.(事情がよくわからない人のために解説しておくと,ecstasyとは,3,4-methylenedioxy-methanphetamine (MDMA)のことである)
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体細胞クローンのリンパ組織発達障害
日本でも体細胞クローンの牛の死亡率が高いことが問題になった.また体細胞クローンではないが,embryo
splitting(受精卵分割)で作られた牛が日本で市場に出回っていることが騒ぎになった
(1).
今回の報告 (2) では体細胞クローンの牛が生後7週で急激な貧血とリンパ球減少を起こし,51日目に高度の貧血で死亡したことが報告されている.剖検では胸腺の萎縮とリンパ組織の発達障害が見られたが,その他の異常はなかったという.今回の体細胞クローニングではnuclear transferという技術が用いられており,核と細胞質の関係を含めて遺伝子のプログラミングに異常をきたしたのではないかと推測されている.急激な貧血とリンパ球減少ということだが,このような病態でどんな遺伝子がどのように障害されているのかは非常に興味があるところだ.Dollyのtelomereが短い (Nature 1999;399:316-7)ことと何か関係があるのだろうか.
1. Watts J. Japanese outcry at the sale of beef from 'cloned cows'. Lancet 1999;353:1422
2. Renard J-P and others. Lymphoid hypoplasia and somatic cloning.
Lancet 1999;353:1489-91.
再び降圧剤の選択について
Choosing antihypertiesivesと題してLancet 1999;353,
1503に掲載されていた文章である.私がなぜ新しい降圧剤を目の仇にするのか,わかってもらえると思う.結局,薬屋が高いか低いか心配するのは,薬の値段であって,血圧ではないのだ.
Drug companies have stopped advertising beta-blockers and diuretics and have switched their marketing campaigns almost entirely to calcium channel blockers, according to a reprot in Circulation (1999;99:2055-7). Moreover, the campaigns have worked. Calcium-channel blockers now account for 38% of US prescriptions for antihypertensives against only 19% for beta-blockers and diuretics. But, say the authors, current evidence indicates that the older types of antihypertensives are usually more effective than newer ones.
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フルミナントという名の薬
”テルビナフィンとフルミナントによる肝不全”と訳されてNEJM日本語目次に掲載されておりました.
Terbinafine and Fulminant Hepatic Failure. N Engl J Med 1999;340:1292.
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ワトソン君の疑問
”シャーロック,大変だ.血清カリウム値が12なんだ!!”
”また新しい研究かい,ワトソン君,死体から血清を取ってカリウムを測ろうなんて”
”そうじゃないさ,シャーロック,生きている人間だからあわててるんだ”
”生きている人間の血清カリウムが12っていうことは,何もあわてることはない.それは嘘の値だからさ.問題は誰が何のために嘘をついたかだ.”
さあてその種明かしは?
Extreme Hyperkalemia in Munchausen-by-Proxy Syndrome. N Engl J Med 1999;340:1293-94.
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合衆国の中での医学論文数の地域差
人口当たりの医学論文の数は北東部で高く,北西部,中西部で低い.カリフォルニアは中程度というのが意外でしたね.フロリダが最下位グループに入っているのはやはり,あんな土地柄では実験室に閉じこもって研究しているのが馬鹿らしくなるからでしょうか?そんなことを思いながら州別に色分けされた地図を見ていると興味は尽きません.
Geography of U.S. Biomedical Publications, 1990 to 1997.N Engl J Med 1999;340:817-8.
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筋肉マンの弱点
ムキムキの筋肉マンがおなか痛いよーって泣いて救急外来に来たとしたら,あなた,何を考えますか?
Large Hepatic Hematoma and Intraabdominal Hemorrhage Associated with Abuse of Anabolic Steroids. N Engl J Med 1999;340:1123-24.
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トップレベルの実態
学生時代,外科の教授が,日本の胃癌の診療は世界でトップレベルだと言っていたが,そのトップレベルの国で行われている二次リンパ節廓清に疑問符がついた.胃癌患者で,日本が標準術式としているD2リンパ節廓清は,入院期間を長くするだけで,5年生存率,5年再発の累積リスクはD1廓清と変わらないということだ.この論文の著者の一人は国立ガンセンター外科医長の笹子三津留である.
そもそも,胃癌におけるリンパ節廓清をどこまで行うかという基本的な問題に関して,科学的根拠を示した論文が日本から出ていない(すくなくとも下記の論文で引用文献が全くない)というのはどういうこっちゃ.これが世界でトップレベルだというんだから恐れ入ります.日本の外科医からの反論を望む.
J.J. Bonenkamp and others for the Dutch Gastric Cancer Group. Extended lymph-node dissection for gastric cancer. N Engl J Med 1999;340:908-914.
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ランセット編集長の誤診
Horton R. The uses of error. Lancet 1999;353:422-3.
ランセットの編集長,Richard Hortonによる”誤診”の告白です.一気に読んでしまうこと請け合いです.是非ご一読を.
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定期検診の胸のレントゲンは意味がない
Mangura BT Reichman LB. Periodic chest radiography: unnecessary,
expensive, but still pervasive. Lancet 1999;353:319-320.
肺ガンのスクリーニングに胸のレントゲン写真による定期検診が役立たないことはご存知の通り.しかし,結核のスクリーニングはおろか,患者のフォローアップにも定期的な胸のレントゲンは役立たないことをご存知でしたか.これは冗談でも何でもありません.これこの通り,ランセットに堂々と書いてある.誰か,余計な被爆はやめるべきだという趣旨で訴訟でも起こしてくれないかな.唯一の被爆国でこのような訴訟が起きてこそ,日本の評価が高まるというものだ.
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妊娠可能な女性における葉酸摂取の奨励
RL Bekkers and TKAB Eskes Periconceptional folic acid intake in
Nijmengen, Netherlands. Lancet 1999;353:292.
神経管欠損の頻度が多い白人では,妊娠可能な女性に対して葉酸摂取が奨励されているが,日本でははっきりした基準がない.黄色人種には神経管欠損が少ないから問題ないと済ましていていいものだろうか?→参考コメント(在英の日本人向けに書いたものです)
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本当に必要な降圧剤は?
降圧剤が何種類もある愚については既に述べた.その数ある降圧剤の中でもangiotensin-conerting
enzyme (ACE)
inhibitorはカルシウム拮抗薬と並んで世界中で最も売れている薬の一つである.ACE
inhibitorの家元のカプトプリルは,発売以来15年たち,WHOのessential
drugsのお墨付きももらっている.押しも押されぬ大立者である.
カルシウム拮抗薬が癌のリスクを増すという衝撃的な報告 (1) でけちがついたのを尻目に,(実はけちがついてもよく売れているが,それは薬屋からお金をもらっている研究者が,カルシウム拮抗薬に有利な研究結果を出すからだ.休憩小話の冗談じゃないさ,天下のNEJM (2)にそう書いてある.)ACE inhibitorは順調に売れている.しかし,その売れっ子の化けの皮をも剥がそうという報告が現れた (3).もてはやされているACE inhibitorを使おうと,古ぼけた利尿剤やβブロッカーを使おうと,循環器系の病気の確率は変わらないっていうんだ.高いお金を出してACE inhibitorで血圧を下げようと,安い昔風の降圧利尿剤を使おうと,結果は同じってわけだ.今や世界中で売れているACE inhibitorの額って言ったら,日本の”脳代謝賦活剤”の比じゃないぜ.もし,ACE inhibitorが全部降圧利尿剤に置き換わったら潰れる会社がいくらでも出てくる.
”新薬”とか”医学の進歩”というものが如何に当てにならないか,新しい治療法の評価に如何に長い時間がかかるかということが,この論文だけでもわかっていただけると思う.
1. Pahor M, Guralnik JM, Ferrucci L, et al. Calcium-channel blockade and incidence of cancer in aged populations. Lancet 1996;348:493-7.
2. Stelfox HT, Chua G, O'Rourke K, Detsky AS. Conflict of interest in the debate over calcium-channel antagonists. N Engl J Med 1998;338:101-6.
3. Captopril Prevention project study group. Effect of angiotensin-conerting enzyme inhibition compared with conventional therapy on cardiovascular morbidity and mortality in hypertension: the Captopril Prevention Project (CAPPP) randomised trial. Lancet 1999;353:611-16.
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冷凍イチゴによるA型肝炎の流行
A型肝炎の流行の原因食品として,これまで貝,レタス,冷凍のラズベリー,冷凍のイチゴが報告されている.冷凍の果物というと,汚染食品として奇異な印象を受けるかも知れないが,バクテリアと違って敵はウイルスだから,冷凍でも生き延びて食品の中に潜んでいる可能性が十分あるのだ.またA型肝炎ウイルスは自然感染のチャンスの多い開発途上国よりも先進国の方で抗体保持者が少ないから,先進国だからとてリスクが低いわけではない.ちなみに下記の論文はミシガン州とメイン州での流行である.
Y. J. F. Hutin and Others. A Multistate, Foodborne Outbreak of Hepatitis A. N Engl J Med 1999;340:595-602
PCAJ Vroomen and others. Lack of Effectiveness of Bed Rest for
Sciatica. N Engl J Med 1999;340:418-23
医者と政治のかかわり
99/1/15の金曜日,日本では成人の日だな,JAMAの編集長ジョージ・ランドバーグが,アメリカ人の性行動に関する論文をJAMAに掲載を許可したことで,クビになった
(1-3).どうしてそんな論文を載せただけでクビにならなくちゃいけないかって?
その論文の内容は,アメリカの学生に対して,口と性器の接触が”セックス”と受け取れるかどうかというアンケートの結果だった.59%は,セックスではないと答えた.陰茎と膣の合体こそがセックスであるとの答えだ.そう,当たり前だ.ここまで読んだだけでクビの理由がわかった人は大したもんだ.わからない人は続けて読んでね.
さて,ここからが本題.JAMA編集部は,press releaseの中で,”この論文は最近の大統領の声明と関連してとても興味深い”とやっちまったんだ (1).つまり,大統領の行為は”不適切”であってもセックスじゃないってことなんだな.
さて,このことを休暇先のフロリダで1月12日に知ったAMAの副会長,ラトクリフ・アンダーソンがあわててAMAの理事会の了解を取り付けて,1月13日の水曜日にたまたま肘を骨折して入院していたランドバーグが電話の受話器を取れるようになった1月15日の金曜日に電話でクビを言い渡したってわけさ (1).
アンダーソンがそこまであわてたのには訳がある.まず,AMAは1997年に金儲けの目的でSunbeam Cooperationという会社と,AMAの商標を独占的に使うことを許す契約を結んだんだな.これが非難ごうごうで,結局AMAは契約を撤回,首脳陣は総辞職,損害賠償と訴訟費用で1320万ドル(1ドル120円とすると,16億円)を失う羽目に追い込まれた.この事件以来,AMAは外部の目に極端に神経質になっていた.この事件のあと,空軍軍医総監からAMAに迎えられたのがアンダーソンというわけだ (1).
AMAの政治的立場も今回の事件と大いに関係がある.AMAは共和党シンパだからだ (1).たかが学生へのセックスのアンケート調査のおかげで,乏しい財布の中から献金したなけなしの金を無駄にしたくなかったってわけさ.
Lancet (1)でもNEJM (3)でも編集長がeditorialで非難の声明を出しているが,その論調が対照的で面白い.LancetのHortonの方はアンダーソンとの電話の会話やこれまでの経緯を交えながら,ランドバーグの編集姿勢やアンダーソンの行動の背景をかなり詳しく述べて結論を出している.客観的に事実関係を明らかにして,自らの意見を導き出そうとという態度だ.英国人独特のシニカルな姿勢も随所に見られる.一方NEJMのKassirerは,医学ジャーナリズムは社会にどんどん関わっていかなくてはならないという信念の元に,自らがどう行動してきたか,編集者はどうあらねばならないかを手短に述べている.Hortonの文章よりも簡単でより直接的な表現に満ちている.どちらも読んでいて面白い.ふだんはeditorialなどお読みにならない方もぜひどうぞ.
1.Horton R. The sacking of JAMA. 1999;353:252-53.
2.Frankel DH and Horton R. Medicine and politics of medical journalism. Lancet 1999;353:518
3.JP Kassirer. Should Medical Journals Try to Influence Political Debates? N Engl J Med 1999;340:466-467.
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街角に出世のネタが
教授と合わなくて大学を離れてしまい,立身出世の道がなくなったと悶々としている皆さんに耳寄りなニュースです.あなたもNEJMに論文が書けます.やつらを見返してやるチャンスです.
Brouqui P and others. Chronic Bartonella quintana Bacteremia in Homeless Patients. N Engl J Med 1999;340:184-9
著者らは71例(たったの71です.新宿や上野をお散歩すれば一日でリクルートできる数!!)のホームレス患者の血液培養,抗体価測定,そしてキモノジラミ採取をしてPCRにかけた(これなら往診で検体を採取できる!!)だけで,Bartonella quintata感染症の臨床研究としてNEJMのフルペーパーに仕立て上げてしまったのです.さあ,書を捨てて町に出よう.
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Dietary supplements database
NIHがDietary supplements
databaseをインターネット上で無料で公開している.
http://dietary-supplements.info.nih.gov
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万引き防止装置はペースメーカー植え込み患者には有害
Santucci PA and others. Brief Report: Interference with an Implantable Defibrillator by an Electronic Antitheft-Surveillance Device. N Engl J Med 1998;339:1371-4.
何かとおさわがせの砒素ですが,急性前骨髄球性白血病によく効くということをご存知でしたか?all-trans-retinoic acidと同じく,またまた中国からの報告が元になっているんです.これがまた,化学療法後に再燃した患者12人に使って11人を完全寛解に持ち込んだと言う驚異的な効果です.使った亜砒酸の量も少なくて,副作用も軽度だったとのこと.どうして効くかというと,caspase 1とcaspase 3を活性化してアポトーシスを誘導するからだっていうんですね.all-trans-retinoic acidの分化誘導とは作用機序が違うから,all-trans-retinoic acid抵抗性の急性前骨髄球性白血病やall-trans-retinoic acidに一旦感受性になって寛解に持ち込んだ後再燃したような例でも砒素が効くんだそうです.
中国っていうのはいろいろ新規な使い方を開発してくれますね.これは漢方薬の有効成分を分析していく過程で得られた結果でしょう.漢方薬にはもともと砒素が含まれているものがあるのです.しかし,中国では治験計画とかインフォームドコンセントとか,どうしているのかね.日本の製薬会社も英国で治験したりしないで,中国でやったらどう?(^^;)
The MIST study group. Randomised trial of efficacy and safety of inhaled zanamivir in treatment of influenza A and B virus infections. Lancet 1998;352:1877-1881
人間の最終処分場の職員は人間から出る毒の汚染を受ける.ご遺体の歯にアマルガムの詰め物がしてあれば火葬場の職員は当然水銀の汚染を受ける.
NEJMの同じissueには同じように,herbal medicineの重金属汚染 (1)(砒素,水銀,鉛→カレーばかりが毒じゃない),”健康食品”に含まれるbutyrolactoneによる中枢神経抑制 (2) の報告が載っている.まったく油断できない世の中になったもんです.
1. Ko RJ. Adulterants in Asian Patent Medicines. N Engl J Med 1998;339:847.
2. LoVecchio F and others. Butyrolactone-Induced Central Nervous System Depression after Ingestion of RenewTrient, a "Dietary Supplement". N Engl J Med 1998;339:847.
Arnold J and others. Case report. A young woman with petechiae. Lancet 1998:352;
Robinson SM and others. Psychological effect of witnessed resuscitation on bereaved relatives. Lancet 1998;352:614-617
1. Edwards CQ, Kushner JP. Screening for hemochromatosis. N Engl J Med 1993;328:1616-20.
2. Hemochromatosis Presenting as Acute Liver Failure after Iron Supplementation. N Engl J Med 1998;339:269-270.
FDAによれば,合衆国では93年より,シサプリド(日本での商品名はアセナリン,リサモール)に関連したと思われる死亡が38例に達している.以前よりアズール系抗真菌剤との併用は禁忌とされていたが,日本でも最近,併用禁忌薬剤としてエリスロマイシン,クラリスロマイシン,インジナビル,リトナビル,ネルフィナビルが加わったが,FDAはシサプリドを極力使わないように警告を発している.私は,これしきの薬を”last resort”として使わなければならない状態はほとんどないと考える.だから使わないでいいと思う.
Liver Failure and Death after Exposure to Microcystins at a Hemodialysis Center in Brazil. N Engl J Med 1998;338:873-8.
Reduction of Plasma Homocyst(e)ine Levels by Breakfast Cereal Fortified with Folic Acid in Patients with Coronary Heart Disease. N Engl J Med 1998;338:1009-1015.
Mechanisms of Disease: Homocysteine and Atherothrombosis. N Engl J Med 1998;338:1042-1050.
血管炎と聞くと,アレルギー・膠原病に興味を持っている内科医以外は苦手と感じる人が多いのではないだろうか.私もその一人である.microscopic PN, ウェジナー,Good-Pasture, Churg-Strauss etc.一体どこがどう違うんだろうって,いつも思う.この総説はそういう素朴な疑問に答えて,とてもわかりやすく解説されている.専門分野にかかわらず,すべての内科医にお勧めする総説である.
HIV患者血液の針刺し事故後のHIV感染率は0.3%と言われているが,一体どういう針刺し事故がリスクが高いのか,たとえば,傷の深さ,針への血液の付き加減,処置した患者のHIVの病期などがどのように針刺し後の感染の成立のリスクと関わるのか,針刺し事故後のzidovudineの投与は効果があるのか,など,素朴な疑問に答えるためにこの研究は行われた.結果は,傷が深くて,針が肉眼ではっきりわかるほど血にまみれていて,かつ処置した患者が末期に近ければ感染のリスクが高まるとわかった.zidovudine投与の効果は弱いながらも認められた.→GO TOP
carboxymethylcelluloseは医薬品ばかりでなく,食品や化粧品の添加物としてもひろく使われている.セルロースだから消化管から吸収されないとされているが,胃透視の造影剤の成分として含まれていたcarboxymethylcelluloseのアナフィラキシーの報告例がNEJMに載った.症例はアレルギー歴のない63才女性で,過去の消化管造影では問題なく検査を受けていた.胃透視の30分後に発疹,血圧低下,意識消失を起こした.皮内反応と白血球からのヒスタミン遊離でcarboxymethylcelluloseのアナフィラキシーが証明された.
1例の症例報告だが,このような報告の価値を認めて掲載するNEJMのeditorial handlingを賞賛したい.そしてこの症例報告書いた岡山大学薬理学教室のスタッフも賞賛したい.
喘息の子供の中でゴキブリに対するアレルギーを示す割合は,ダニ,ネコの毛に対するアレルギーの割合よりも高い.また,ゴキブリアレルギーを持ち,高濃度のアレルゲンに暴露されている喘息の子供は,ダニ,ネコの毛に対するアレルギーを持つ子供よりも,入院,予定外の外来受診,喘鳴,学校の欠席,不眠が多い.
同じ号のeditorial(世界の疫学的な傾向も含めて書いてあり,こちらもなかなか面白いです)にダニ,ゴキブリのアレルゲンのことが書いてあります.ダニ,ゴキブリのアレルゲンの遺伝子の多くはクローニングされており,そのホモロジーから既知の蛋白であることがわかっています.例えばダニのDer1というアレルゲンは消化管で産生されるシステインプロテアーゼであり,ゴキブリのBla g2というアレルゲンはアスパラギン酸プロテアーゼだそうです.ゴキブリのアレルゲンは糞,唾液,あるいは虫体に由来すると考えられています.→GO TOP
36才の女性.電話の子機を右耳と右肩の間に挟んで32分間話しながらアイロンをかけていたところ右頚部痛が生じた.右内頚動脈解離壁内血栓により内腔は完全に閉塞していた.
Murad J-J, Girerd X, Safar M. Carotid-artery dissection after a
prolonged telephone call. N Engl J Med
1997;336:516.→GO TOP
併用薬剤で特に問題なのはimidazole系の薬剤(ケトコナゾール,フルコナゾ ール,イトラコナゾール,メトロニダゾール)とマクロライド系の薬剤.これらの薬剤は肝臓の酵素P-450に干渉してシサプライドの代謝に影響を及ぼすと思われる.その他,不整脈に関係のある基礎疾患やリスクファクターとして,虚血性心疾患,腎機能障害,電解質異常,フェノチアジン(QT延長を起こす)の服用がある.
(コメント) この薬は喘息も悪化させるようですので(近着の厚生省副作用情報参照),類似のプリンペランに比べてひどく見劣りがしますね.だから新しい薬は大嫌いになってしまいます.