スタア誕生

ある製薬メーカーからダイレクトメールが来た.新しい降圧薬の宣伝だ.アンギオテンシン受容体の拮抗薬でこれまでにないタイプなんだそうだ.結構なこった.

利尿剤,αメチルドーパ,レセルピン,カルシウム拮抗薬,βブロッカー,αブロッカー,アンギオテンシン転換酵素阻害剤・・・一体いくつ降圧剤を作れば気が済むのか.新しい降圧剤が出ると,それまで人気があった降圧剤に不思議と必ずイチャモンがついて,それまでの人気者はとたんに見向きもされず,薬価が高い新しいスタアが誕生して,製薬会社という名のプロモーターは大喜びという筋書きだ.

こうなると降圧薬の選択なんてのは,流行歌と同じだね.臨床雑誌はヒットチャート誌と同じ.だからいつまでたっても降圧利尿薬を使っている私なんざ,カラオケで演歌しか歌えないおっさんってこった.

新しい歌は歌ってみたい.しかし新しい薬を率先して使おうとは思わない.なぜなら,流行歌と薬とは違う点があるからだ.

いつも申し上げるように,”のぞみ”や”ゆりかもめ”といった乗り物が開業当初よく故障して止まったのを覚えていらっしゃる方は幸いである.新薬だといわれて有り難がって飲むような真似はなさらないだろうから.

エアバスA300の欠陥が,大事故を起こして初めて見つかったことを忘れてしまった人は不幸である.自分自身が,治験では見つからなかった新薬の副作用の症例報告のネタになる可能性があるからだ.

歌は新しいほど下品だということは決してないが,薬は新しい物ほど危険だということだ.

メディカル二条河原へ