ご挨拶
拝啓 皆様におかれましては、益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。
このたび、さいたま市大宮区ソニックシティにおいて第45回日本骨形態計測学会を開催する運びとなりました。1979年に骨形態計測ワークショップとして発足した、長い歴史を持つこの学会の学術集会を開催できることを大変光栄に存じます。
私が骨形態計測に初めて触れたのは1999年のことでした。ちょうど、遺伝子解析やノックアウト・ノックインマウス、クローン技術、リアルタイムRT-PCR、免疫沈降、in situ hybridizationといった分子細胞学的手法が骨研究の世界に紹介され始めた時期であり、RANKLやOPG、osterix、PPARγといった骨代謝に関わるタンパク質が発見されました。また、DXAによる骨密度測定やq-CT、micro-CTなどの画像技術も発展しつつありました。
当時、初学者だった私は、骨形態計測が泥臭く、時代遅れにすら見え、「骨が増えた・減った」はX線を用いた手法で定量化し、形成と吸収は遺伝子発現の変化で研究が完結するのではないかと考えたこともあります。実際に、現在も同様に考えている骨研究者は少なくないかもしれません。
時が進み、CT技術は飛躍的に進歩し、非常に高精細な画像を提供してくれるようになりました。一方、従来のCTでも解析結果を画像によって印象付けるのに効果的でしたが、最新の機器による解析結果と一致しないこともあります。さらに、類骨のような低石灰化骨を特定することは未だに困難ですし、生体が引き起こす構造変化を説明するには、組織のレベルに立ち戻らなければなりません。また、分子細胞学的手法は近年さらに発展を遂げ、次々に新しい情報がもたらしています。しかし、新たな分子や機序がもたらすものが、生体内におこす細胞の動員や増殖、分化を組織レベルで説明できなければ、CT画像を見せられても十分に納得することはできません。逆に、組織を観察しなければ、仮説では説明しきれない現象を見逃す危険性すらあります。
第45回日本骨形態計測学会では、「骨研究の要」という主題を掲げました。本学会には、医歯学系の基礎研究者や臨床家だけでなく、工学や生物学の研究者も一堂に会します。組織に生じた現象を数値化し理解することが、ミクロな遺伝子研究やマクロな構造研究、さらには素材や薬剤の開発、そして骨粗鬆症治療においても極めて重要であることを、広く知っていただきたいと考えております。
学会では、骨形態計測のガイダンスとして「ハンズオンセミナー」を開催するほか、各分野のエキスパートによる教育講演やシンポジウムなど、初学者から第一線で活躍する研究者・臨床家まで楽しんでいただけるプログラムをご用意いたしました。
今年の関東地方は、1年の半分近くが夏日だったとのことです。季節はこれから秋、冬、春と移り変わってまいりますが、異常気象は身体にも大きな負担をもたらします。皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。
初夏を過ぎたころ、交通の要所である大宮で皆様とお目にかかれますことを楽しみにしております。
敬具
第45回日本骨形態計測学会
会長 田中伸哉
(東都春日部病院整形外科・人工関節センター 部長)