PASセルフケアセラピィ(PAS-SCT)とは精神、看護におけるこれまでのオレム・アンダーウッドのセルフケアプログラム実践を支援する技法を再体系化したものです。オレム・アンダーウッドモデルが依拠してきた事後性ベイスの力動論に加えて,量子力学的な多元同時並行異方向的な力学的ベクトル展開をも前提とした現代的な力動論を展開しているPAS理論(Psychoanalytic Systems Theory,精神分析的システムズ理論,小谷)による技法を再編しました。
PAS-SCTは,高度実践看護師(APN)によるオレムならびにオレム・アンダーウッドのセルフケアプログラム看護を発展させた力動的技法ですが,当該患者のみに対応する単一技法ではありません。困難患者は,医師,看護師だけでなく,そのチーム,家族をも巻き込みます。患者の反治療的反応や行為は,それら関与する人に脅威を与えるだけでなく,自死や他者への傷害にも至る自己破壊,他者破壊,さらには組織を混乱させることにもおよびます。
APNは,直接に患者に関わるだけでなく,チーム,病棟,さらには事故対応等において組織の長の決断にも関与します。つまり,個人だけでなく病院,コミュニティ,家族等の集団,組織への介入も欠かせません。必ずしもそれらの集団,組織への直接介入をする必要がないと思えても,行動化の激しい困難患者の行動予測等について,その力動をそれら集団,組織力動から分析することが必要となります。また入退院を繰り返す困難患者に対するAPNの支援は,病院とコミュニティとの間に展開をすることもあります。PAS-SCTは,患者個人への直接介入に加えて,集団,組織も分析対象とする総合的介入技法なのです。