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研究成果

パプアニューギニアにおける麻疹ワクチン受種のSSPE発生予防効果

研究協力者:高須俊明 医療法人崇徳会長岡西病院神経内科、
分担研究者:中村好一 自治医科大学地域医療センター公衆衛生部門、
共同研究者:三木健司、他4名

パプアニューギニア国(PNG)東部高地州における1997年から1998年にかけてのSSPE発生率は20歳未満人口100万当たり年間98で、日本やアメリカ合衆国の約100倍であった。多発の理由として、麻疹ワクチンの接種を受けていなかった者が多かったのかというと、そうではなかった。我々が集めたSSPE患者46名中ワクチンを受けていなかったのは2名(4.3%)に過ぎず、15名は受けたか受けなかったかが不明であって、残る29名(63.0%)はワクチンを受けていた。PNGにおけるSSPE多発の原因を明らかにするためには、PNGにおける麻疹ワクチン受種のSSPE発生予防効果を明らかにする必要がある。




ワクチンを受けた者を層別した(上表)ところ、麻疹ワクチン受種のSSPE発生予防効果の実態が明らかになった。オッズ比が1より小の場合、SSPE発生予防効果があり、1より大の場合、SSPE促進効果があると考える。ワクチンを受けて麻疹に罹らなかった者のオッズ比は0.15であった。麻疹に罹る前にワクチンを受けた者と、麻疹に罹る前にワクチンを受けた上にさらに麻疹に罹った後にワクチンを受けた者のオッズ比は有意でなかった。麻疹に罹る前にワクチンを受けず麻疹に罹った後にワクチンを受けた者のオッズ比は21.46かであった。
これより、ワクチン受種で麻疹が予防できた場合にはワクチン受種にSSPE発生予防効果があったが、ワクチン受種で麻疹が予防できなかった場合にはSSPE発生予防効果はなかったと言えた。PNGにおけるSSPE多発の原因の一部は、麻疹予防効果のないワクチン受種にあると考えられる。

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