研究成果
麻疹ウイルスの中枢神経系感染成立のメカニズム:動物モデルとウイルス・受容体相互作用
分担研究者:九州大学大学院医学研究院ウイルス学 柳 雄介
われわれは、麻疹ウイルスの受容体が免疫系細胞に発現しているSLAM(CD150)であることを明らかにした。SLAMは免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する分子であり、そのVドメインが受容体機能に重要である。麻疹ウイルス感染の小動物モデルを開発するために、マウスSLAM遺伝子をヒトの遺伝子で置き換えたSLAMノックインマウスを作製した。SLAMノックインマウスを1型インターフェロン受容体欠損マウスと交配し、麻疹ウイルスを感染させたところ、全身のリンパ組織で麻疹ウイルスの感染、増殖を認めた。このSLAMノックインマウスは、中枢神経系でのウイルス感染およびSSPEの発症機構の解明に有力なモデルになることが期待される。
麻疹ウイルスの受容体認識の構造基盤を明らかにするために、受容体結合蛋白質(H蛋白質)の結晶構造解析を行った。その結果、H蛋白質の受容体結合ドメインは、6つの羽根を持つプロペラ状の構造をしていることが分かった。H蛋白質は二量体構造をとり、その大部分は糖鎖に覆われている。しかし、糖鎖に覆われていない領域があり、その部分で受容体SLAMと結合していることが分かった。また、中和活性を持つ抗H蛋白質抗体のエピトープも同じ領域にマップされる。今後、SLAM結合部位の構造を基にした抗ウイルス薬の開発が期待される。