研究成果
正常型プリオン蛋白質の動きを見る
東京医科大学医学部神経生理学講座:金子清俊
正常型プリオン蛋白質 (PrPC)の働きを明らかにするために、生きた細胞の中でのPrPCの動きを観察しています。蛍光を出す蛋白質をつけたPrPCを遺伝子導入すると、細胞中でのPrPCの動きを見ることができます。その行く先は?そして、その働きは?それらを明らかにする研究が精力的に進められています。この研究を通じ、PrPCから異常感染型プリオン蛋白質 (PrPSc)への変換がいつどこで生じるのかが、明らかになるでしょう。
以下は、やや専門的な説明です。これまでに、マウス神経芽細胞腫由来N2a細胞およびGFP融合PrPCを用いて、生細胞内輸送機構を解析し、PrPCが微小管依存性に局在・移動していること、また、順方向性輸送がキネシンスーパーファミリー分子依存性、逆行性輸送はダイニン依存性であることを見出しました。さらに神経成長因子NGFによる分化誘導前後でのPrPCの細胞内輸送を解析した所、別種のキネシンスーパーファミリーへの輸送蛋白質の乗り換えを推測させるような、神経突起内における著明な順行性輸送速度の低下が見らました。他方、逆行性輸送速度には変化は見られませんでした。