教室の沿革
1894年 神経精神病学の島村俊一先生が、裁判医学を講義
1911年 法医学教室が開設し、京都帝国大学の小南又一郎先生が講師となり、講義を開始
1954年 小南講師が逝去され、錫谷徹助教授(後の、北海道大学 名誉教授)が教室管理に従事
1957年 鳥取大学の小片重男 先生が初代教授として着任
1958年 3月12日 第1例目の司法解剖開始
1965年 小片重男教授が、アルコール医学会設立に尽力された
1974年 東京大学助教授の山澤吉平先生が、第二代教授として着任
1981年 山澤吉平教授が急逝された
1982年 滋賀医科大学教授の古村節男先生が、第三代教授として着任
1997年 古村節男教授が退官
1998年 東京都監察医務院の安原正博先生が、第四代教授として着任
2008年 安原正博教授が退職
2008年 警察庁科学警察研究所の池谷博先生が、第五代教授として着任
現在の教室
2008年 4月 身元不明死体の出身地域推定検査の開始
2008年 7月 司法解剖に関する専門医学検査の開始
2008年 8月 司法解剖に関する歯科検案の開始
2009年 4月 薬物検査定量の開始
2010年 1月 CT装置導入
2010年 2月 身元不明歯科データベース構築
2011年 4月 法医学教室解剖3000体柱法要・法医学教室開講100周年記念会
2011年 9月 CT装置 ECLOS(2M)(HITACHI)を機器更新
2012年 1月 司法解剖データベース運用開始
2013年 3月 UPLC-MS(ChromaLynx XS)を導入
2014年 2月 液体クロマトグラフ質量分析 UPLC-Q-TofMS(Waters)を導入
2017年 8月 CT装置 Supria16(5M) (HITACHI)を機器更新
2018年11月 バーチャルスライド Nano Zoomer S210(浜松ホトニクス)を機器更新
2018年12月 スライドプリンタ(武藤化学)を機器導入
2019年 2月 NASサーバ 32TB を追加
2019年 3月 液体クロマトグラフ質量分析 LSMS-8045(島津製作所)を機器更新
2019年 7月 PACSサーバ SonicDICOM PACS(ジウン)を更新
2019年 8月 解剖室自動ドア工事施工
2019年 9月 ティシュー・テック クライオ・コンソール TEC-P-CC-J0D(サクラファインテック)を機器更新
2019年12月 ガスクロマトグラフ Nexis GC-2030(島津製作所)を機器更新
2020年 3月 自動染色装置 DRS-Prisma-P-JD(サクラファインテック)を機器導入
2020年 6月 自動封入装置 SCA-Film-JO(サクラファインテック)を機器導入
2020年 6月 クライアント端末 を10台更新
2020年11月 解剖室感染対策工事施工
2021年 3月 CT装置 Aquilion Helios 160スライス(Canon)を機器更新
2021年 3月 CTワークステーション Zaiostation2(ZIO)を機器導入
2021年 6月 NASサーバ 64TB を追加
2021年11月 CTワークステーション Zaiostation2(ZIO)をバージョンアップ
2022年 1月 液体クロマトグラフ質量分析 H-Class/Xevo G2-XS(Waters)を機器更新
2022年 2月 デジタル式口外汎用歯科X線診断装置(ADX4000W)を機器導入
2023年 6月 人工知能処理用 NVIDIA GeForce RTX4090 24G をPC2台導入
2023年12月 密閉式自動固定包埋装置 ティシュー・テック VP1(サクラファインテック)を機器更新
2023年12月 NASサーバ 128TB を追加
2024年 3月 感染症対策解剖台(加藤萬製作所)2台更新
法医学とは
私は、法医学の使命とは「主に医学的な知見を用いて、さらに必要な場合にはその他の関連分野の知見から、死者の死因を究明することに最善を尽くすこと」と考えています。また、死因の究明の他にも、死者の身元を明らかにしたり、生前にできた傷について検討すことも主な仕事になります。 死因の究明とは、人の最期において何があったのかを明らかにすることですが、それは死者に対して私たちの社会が最期にできることであります。 だからこそ、私たちは「礼意」をもって解剖を行っています。 また、視点を変えれば、死者の死因を究明することによって、私たちが生きている社会の問題を解決する手がかりにしたいと考えています。
京都府立医科大学法医学教室には、ウィーンの病理学者であるKarl von Rokitanskyの言葉の「此処は死者が生者に貢献する場所である」を掲示しています。 法医学は、時に「裁判医学」と呼ばれることがあるように、主に刑事事件・刑事裁判において重要な役割を果たします。 被疑者・被告人が犯罪行為を行ったのか、それが真実であればどのような処分を科すかという重大な判断について、大きな影響を与えます。 また、起こってしまった犯罪を見逃すことなく、正しく厳正に処分することを目的にする刑事制度においては、法医学が重要な犯罪行為に対する抑止力を担っているともいえます。 民事事件の領域でも、死者の死への過程は、例えば、ご遺族に支払われる保険金額に影響をすることがあり、法医学が果たす役割は大きいです。
しかし、それ以上に、純粋に死因を知りたいという社会やご遺族の想いに応えることが、この仕事において忘れてはならない使命であります。
我が国を取り巻く現状
近年、日本では異状死体(法医学会の定義では、医師が確実に診断した病死以外の全ての死体)の数が大幅に増えています。 10年前と比較すると、その数は約2倍に増えました。今後、高齢化社会がますます進むはずですから、孤独死も増えてきます。 人が誰かに看取られることなく1人で亡くなった場合には、その最期に何があったかが誰にも分からないので、それを私たちが明らかにする必要があります。 法医学が関わるケースの数は、ますます増えるでしょう。また、社会が発展し複雑になれば、様々な形の犯罪が増えることも考えられますから、それに対応できるように、 これまでの概念に縛られない革新的な研究を進めたり、新たな技術を開発したりして、法医学も進歩し発展していかなくてはなりません。 つまり、法医学を量の面でも質の面でも、より充実させる必要があります。ところが、日本全体を見れば、どこも法医学教室は人手が足りません。まず、法医学に携わる医師の手が足りないという実情があります。 1年間に日本では、死因が明らかではない死者の数が約14万人いるのですが、それに対して司法解剖と行政解剖を合計で1万件しか行えません。 それは、法医学者(解剖医)の数が、日本全国で約150人しかいないからです。解剖率にしても、解剖医の数にしても、先進諸国と比較しても圧倒的に少ない数です。 これでは、法医学自体が前進どころか後退し、やがては機能しなくなってしまうかもしれません。 現に、法医学教室の教授が不在となったり、教室自体を閉鎖せざるを得なくなったりする大学がいくつかあります。 このままでは、次々に同じ道をたどる大学が出てきてしまうでしょう。 世間では知られていませんが、日本の法医学はそれほど危機的状況に直面しているのです。 それでは拙いということを、私たち法医学者が声を上げ続け、少しずつ状況が改善されつつあります。
当教室は比較的早期に導入したCT装置を使った検案は、解剖をしなくても死因を究明するための新しい取組みの1例です。 また、2012年6月に成立した、死因究明推進関連2法(死因究明等の推進に関する法律、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律)は、 日本の死因究明制度および法医学教室の現状を変えることが期待されます。
当教室の特徴
法医学とは、本来色々な分野に広がりを持つ学問ですが、多くの法医学教室はある分野に特化しています。それに対して、当教室には、医師だけでなく、薬剤師、検査技師、歯科医師、生物学、法学の専門家が在籍しています。 これほど多彩な人員と広い研究領域が整備されている法医学教室は非常に珍しく、この先もなかなか現れないでしょう。 設備の面でも、ご遺体用CT装置、大型薬物分析機器、DNA検査機器等の各種検査機器も充実しています。
また、当教室は、京都府立医科大学の臨床や基礎の各教室との繋がりを広く、深く持っており、研究と業務の点で互いに協力関係を築いています。 このように、実に恵まれた環境であるから、多様な研究ができ、より多角的で深く精度の高い死因究明を行うことができます。 ただ、既に述べたように、当教室は医師以外の各種専門家が多いため、お互いに上手くチームを組めるような人でなければ、そのような研究は難しいでしょう。 臨床の世界では、チーム医療という理想が最近になって大きく主張されるようになりましたが、医師同士で物事を進めることがまだまだ多いと思います。 それに対して、例えば、医師が法医学教室に来て、医師以外の人と協力してやっていくことには、思考や知識の面において違いがあり、時には難しさを感じることもあります。 しかし、それぞれが各々の専門領域の力を持ち寄り、協力し合うことで初めて、当教室の素晴らしい環境を研究に活かすことができるのです。
素晴らしい人員と設備は揃いつつあり、これから拡充していきたいと思っています。
今後の展望と法医学を目指す人へのメッセージ
現在の社会問題として、医療崩壊・医師不足が大きな注目を集めていますが、それは臨床ではない法医学の分野でも同じです。 これは、学問としての法医学としても、社会機能を果たすための法医学としても、早急に対策を講じるべき非常に重大な問題です。 ですから、当教室としては、第一に法医学教室の中心になれる医師が必要としています。解剖医の数が増えることは、単純に解剖件数を増やすことにつながります。解剖件数が増えることは死因不明のケースを減らすことであり、ひいては社会の安全の一端を担うことになります。 当教室としては、今後は少しずつでも解剖件数を増やして、京都で行うべき全ての異状死に対する死因究明を担える対応力を持てるようになりたいと思っています。
強調して繰り返しますが、法医学の研究や実務に関して、当教室には全国でもトップクラスの環境が整備されています。 何でもやれると言ってもいいでしょう。だから、一人でも多くの方に来ていただきたいのです。 例えば、医師であっても、解剖の経験は問いません。これまでの専門性を生かした形で、法医学の発展に貢献できる人に来てほしいと思います。 自分の力を法医学という道で社会のために活かしたいという方なら、ここで学んでいくことで、将来の法医学を牽引する人材になれると思います。 まだまだ発展の余地がある日本の法医学をレベルアップさせるために、色々な領域の方から来てほしいと思います。 日本の法医学を発展させることを手伝ってほしい。 この声に耳を傾けていただける方、少しでも法医学に興味を持っていただける方と一緒に働けることを、楽しみにしています。
募集要項
解剖医が居ない都道府県へ解剖医を派遣いたします。お困りの際は、是非とも一度ご相談ください。法医学に興味のある医師、大学院生の方は、お問い合わせください。
リンク
日本法医学会日本アルコール・薬物医学会
警察庁 科学警察研究所
死因究明・個人識別研究会
日本法医画像研究会
千葉大学 法医学教室
東京大学 法医学教室
滋賀医科大学 法医学部門
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