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Lower prevalence of anti‐HTLV‐1 as expected by previous models among first‐time blood donors in Japan

ジャーナル: Journal of Medical Virology (2023)
著者: Masahiro Satake, Yasuko Sagara, Isao Hamaguchi (佐竹正博、相良康子、浜口功)
所属: 日本赤十字社血液事業本部中央血液研究所、日本赤十字社九州ブロック血液センター、国立感染症研究所
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmv.28606

要約

2020年と2021年の2年間の全国の初回献血者のHTLV-1抗体陽性率を調べ、全国のHTLV-1キャリア数を推定した。調査対象数は59万6千人余り、陽性者数は491人、60歳代の粗陽性率は、男0.74%、女0.70%であった(全国データ)。キャリアの多くは乳幼児期の感染であるため、出生コホート効果により、年齢別の陽性率は、男女とも2006/2007年の前回調査に比べて大きく低下した。年齢層別の女の陽性率は男のそれと同等か低くさえあった。男の陽性率の年齢分布は、2006/2007年のデータに出生コホート効果を加味して予測したものにほぼ一致していたが、女のそれは予測された分布を下回った。全国的な妊婦検診の開始により、キャリアが献血から外れていることも一因と思われるが、詳細は不明である。男から女への方向が優勢である水平感染の効果により、年齢層別の女の陽性率が男のそれの一定の倍率で高いと仮定し、前回調査での倍率を当てはめて全国のキャリア数を推定すると、65万8千人余りであった。これは過去14年間に約40%減少したことになる。

インパクト

2011年に全国的に開始された公費による妊婦のHTLV-1抗体検査や、国やメデイアによる啓蒙キャンペーンなどにより、キャリアの発掘と認識は広まっているものと思われる。このため、初回献血者の陽性率は、もともと実際よりも低く推定される傾向があるが、今後はさらに実勢から乖離していく可能性がある。現在のキャリア数のピークは70歳代にあり、約18万人と推定される。60歳代のキャリア数は、現在約14万人であるが、2030年には7万5千人、2040年には2万8千人に減少するものと推定される。ATLなどの関連疾患の発症数もこれに応じて減少するものと思われる。

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